天文学者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「天文学者」とは

天文学者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

天体の観測と計測を行い、宇宙や地球の新しい現象や法則を明らかにする天文学の研究を行う。

天文学者とは、大学や天文台などの研究機関において、宇宙や地球に関する研究を行う人のことです。

天文学とは宇宙と天体に関わる学問で、おおまかに位置天文学、天体力学、天体物理学、宇宙物理学などに分けられます。

研究方法には、天体を計測し、得られたデータから物質などを分析する観測アプローチと、物理学や数学、化学などの知識から理論的にアプローチする2つの方法があります。

天文学者になるためには、大学で天文学を専攻し、大学院を卒業して修士号や博士号を取得しなくてはなりません。

多くの天文学者は、大学の研究室や国や海外の研究機関、天文台などで働きながら、それぞれの専門分野で研究をすすめていきます。

こうした職業としての天文学者以外に、アマチュア天文家という道もあり、仕事を持ちながら趣味で天文の研究を続け、好きな天体や好きな分野の研究を自由に行う人も多いです。

天文や宇宙に関する分野は現代でも未知の部分が多く、近年機器の発達や宇宙開発により急速に研究が進化するなか、これから多くの発見が期待されています。

一方で、成果を出すための研究には長い時間が必要で、観察や研究を地道に続けていく根気やこつこつと仕事に取り組む姿勢が大切です。

「天文学者」の仕事紹介

天文学者の仕事内容

天文や宇宙に関する研究をし、論文を発表する

天文学者とは、大学や研究機関、天文台などで、天文や宇宙についての研究を行う人のことをいいます。

天文学には天体の位置を研究する「位置天文学」、天体の動きを研究する「天体力学」、天体の状態や進化などを研究する「天体物理学」、宇宙の構造や起源などを研究する「宇宙物理学」などがあります。

天文学の仕事には天文学者の仕事は主に「観測」と「理論」という2つにわけられます。

観測は、実際に天文や宇宙の様子を観測し、集めた観測データを解析することで論文を書きます。

また理論は、観測から導き出されたデータからさまざまな結論を考えることです。

そのほか、望遠鏡や観測機器など、天文を観測するための装置を作る人もいます。

それぞれが天文学に関する高い専門知識を持ち、研究を続けています。

天文学者のなかには、大学院を卒業した後、そのまま大学に所属して研究を続ける人もいますが、国立や民間の研究機関、天文台などで働く人も少なくありません。

宇宙に関する分野は、現代でも未知のことも多く日々進化と発展が続いており、新しい知見を求めて、日々研究に励む研究者が多くいます。

天文学者になるには

大学院に進学し、修士課程、博士課程を修了する

天文学者になるためには、まず大学や大学院で天文や宇宙に関する研究をしなくてはなりません。

全国には天文や宇宙について学べる学部が多くあり、天文を専門とする研究室もさまざまあります。

そこで修士課程を修了し、さらに「博士号」の取得を目指すのが一般的です。

資格を多く取得したり、難関大学・大学院に進んだりしたほうが有利と考える人もいますが、
実際は「どのような論文を書いたか」と、「論文がどのような学術誌に掲載されたか」が重要視です。

大学院で学ぶうちに論文を書き、学会などで評価されることによって、その後の進路の選択肢は広がっていきます。

なお、天文学者という求人は一般的ではありません。

博士号を取得した人の大半は、大学で研究を続けるか、他の研究機関へ就職するかを選び、大半の場合はそこで進路が決まります。

大学の場合は「博士研究員」や「ポスドク」といった名称で呼ばれる立場となり、経験を積みながら助教授や講師、准教授を経て教授へとステップアップしていきます。

最初から潤沢な研究費や給料がもらえることは少なく、別のアルバイトをしながらポスドク生活を送る人も少なくありません。

研究機関や天文台では「研究員」「研究職」などの専門職として働きます。

研究機関の場合は、本人の専門分野や研究内容によっては、それまで研究してきたことがあまり生かせない場合も少なくないため、進路選択の際は慎重に行いましょう。

天文学者の学校・学費

大学で天文や宇宙に関する勉強をする

天文学者になるためには、天文や宇宙に関して学べる理工学系の学部を卒業し、大学院に進学しなくてはなりません。

国公立大学に進学する人が多い傾向にありますが、私大の理工学系学部に進学する場合は学費が高額となることも少なくありません。

大学卒業後はそのまま大学院の研究室へと進むことが一般的なルートで、前期博士課程で修士号を取得後、さらに後期博士課程で「博士号」の取得を目指します。

大学院での生活は学部生と比べると非常に忙しく、とくに学者や研究者としての道を考えると、日々研究をし論文を発表するなど成果をあげなくてはなりません

天文学者の資格・試験の難易度

資格よりも研究成果が重要

天文学者をはじめ、学者や研究者として名をあげようとする際に、資格はあまり重要視されることはありません。

もちろん難関大学や大学院に進んだ方が就職の際に有利にはたらくこともありますが、それはほかの大学よりも優れた研究ができる環境にあるからであり、大学名で採用が決まることはほとんどないでしょう。

それよりも、「どのような研究をしたか」「どんな論文を発表したか」といった研究内容の方が重要視されます。

できるだけ大学や大学院在学中に研究を進め論文を書き、学術誌に掲載されたり学会に参加したりといった結果を残すことが大切です。

ただし、研究者として語学力を身に付けて置くことは非常に大切です。

天文学者を目指すのであれば、英語で論文を書くことは必須ですし、論文などの原典にあたったり海外に留学したりするため、英語だけでなくほかの言語を学ぶ人も多いです。

特別な資格は必要ありませんが、最低限でも英語だけは高いレベルで読み書きできるようにしておくと、研究を進める上でも有利となるでしょう。

なお、研究機関等に就職するにあたっては、専攻分野によって特定の資格や語学レベルが求められることがあります。

あらかじめ希望する研究室や所属先がある場合は、学生のうちからリサーチしておくことが必要です。

天文学者の給料・年収

所属先により年収に違いがある

天文学者の給料は、どのような場所で勤務し、どのような立場で働くのかによって大きく異なります。

天文学者として働き始めることができても、安定した身分になったり生計をたてられるようになったりするまでは非常に険しい道のりです。

博士号を取ったばかりの大半の人は「ポスドク」といわれ、不安定な身分な上に平均年収は200~300万円程度と、一般的な職業の平均年収を大きく下回ります。

アルバイトをしながら生活を支える人も多く、若いうちは苦しい生活を強いられることも覚悟しておく必要があります。

実績を積み教授になれば年収1000万円以上も夢ではありませんが、教授になる人は一握りで、更に長い時間がかかるため、生涯賃金で考えると他の職業と比べ決して高いとは言えません。

一方、研究機関や民間企業等に就職した場合は、企業の規模などによっても変わりますが、年収400万円~500万円ほどが相場とされています。

しかし日系企業では、博士号があってもさほど高く評価されない傾向があるため、よりよい給料や研究体制を求めて海外に拠点を移す人も少なくないのが現状です。

また、研究費についても差が大きく、十分にもらえているところと、自ら負担しなければならないところがあります。

ときには研究に必要な高価な資料や書物などを購入するために、自腹で負担することも珍しくありません。

天文学者の現状と将来性・今後の見通し

さらなる飛躍が期待される天文学

日本は「科学技術国」として、科学分野に長年力を入れてきましたが、不況が続いたことにより、研究予算のカットや研究員の削減などで、急速に世界から遅れをとり始めました。

海外に研究の拠点を移す人も非常に増えつつあり、国内の優秀な研究者の流出を避けようと、世論も動き始めています。

近年、国立天文台水沢VLBI観測所がブラックホールの姿を史上初めて写真撮影する、小惑星探査機「はやぶさ2」が帰還するなど、天文分野では発展がめざましく成果を上げています。

今後もさらに研究が飛躍していくことが期待され、成果を上げ天文分野がさらに盛り上がっていくにつれ、それを支える天文学者も増えていくと考えられます。

天文学者の就職先・活躍の場

全国の大学や研究機関、天文台がメイン

天文学者の就職先は、主に大学や研究機関、天文台や科学館などです。

天文学者を目指す場合の一般的なルートは、大学から大学院修士課程に進み、さらに博士課程を経て博士号を取得することです。

大学の研究職の場合は、「ポスドク」と呼ばれる非常勤、任期制の研究職も多く、安定した身分になるために長い時間がかかります。

また、日本で天文学を専門としている大学や研究機関は少ないため、国立や民間の場合でも就職は非常に狭き門となります。

研究環境や研究資金の事情も異なるため、安定したポストが得られる人はほんの一握りだけということを覚悟しておきましょう。

天文学者の1日

大学に所属するかそうでないかで異なる

天文学者の1日は、どこで働くかによっても大きな違いがあります。

ここでは、大学に所属して働く天文学者のある1日を紹介します。

8:00 起床 出勤準備。
9:00 出勤
研究室に出勤し、授業の準備をする。
10:45 授業開始
授業の人数によって、難易度や教え方を変え、分かりやすい授業ができるよう工夫します。
12:30 授業終了
研究室に戻り休憩をしながら、研究に必要な資料を読みます。
13:30 データ解析
研究室で実験データを精査します。
大学院生に手伝ってもらうこともあります。
17:00 学生の指導
授業が終わると研究室に所属している学生が集まるため、論文の指導などを行います。
19:00 教職員ミーティング
教授陣が集まり、大学の運営や各自の研究についてなどを報告し合います。
21:00 退勤

天文学者のやりがい、楽しさ

天文や宇宙の研究に打ち込める

天文学者の最大のやりがいは、自分が好きな天文や宇宙についてとことん突き詰めて考えられることです。

「天文の謎を解き明かしたい」「宇宙についてもっと知りたい」と考える人が研究に没頭できるのは、大きな喜びでしょう。

また、研究には長い時間や多大な費用がかかるものですが、それを仕事とし、好きな研究を続けられることは大きな魅力です。

天文学者に限らず、学者や研究者を目指す人は知的好奇心が旺盛で、勉強が好き、もっと新しいことを知りたいという向上心を持つ人ばかりです。

こうした人たちに囲まれ、切磋琢磨していくなかでたくさんの刺激を得ることで、自分もより成長していくことができるでしょう。

天文学者のつらいこと、大変なこと

天文学者になるまでが難しい

天文学者になるまでが難しい

天文学者に向いている人・適性

地道にこつこつと研究に打ち込める人

天文学者は、それぞれ専門とするテーマに沿って研究を行います。

成果を出すには長期間にわたり研究を行うため、日々こつこつと地道に活動ができる人、努力を積み重ねられる人が向いています。

また、目標や疑問をもってとことん突き詰めて考えられる粘り強い人も向いているでしょう。

天文学者をはじめ、学者や研究者はひとり机にむかって黙々と研究を重ねるイメージを持つ人もいますが、研究を続けるには他者との協力やコミュニケーションが欠かせません。

コミュニケーション能力は非常に重要であるほか、海外の論文を読んだり、海外スタッフと交流したりする機会も多いため、英語などの語学力も必須です。

天文学者志望動機・目指すきっかけ

天文・宇宙への興味関心がきっかけ

天文学者を目指す人は、幼いころから天文や宇宙に関心がある人が大半で、高校までの間に数学や物理などに興味を持ち、さらに深く勉強したくなったという人も多いです。

天文学は現代においてもまだ解明されていないことが多く、発展途上の分野であるため、未知の謎を解き明かしたい、という知的好奇心が旺盛な人も少なくありません。

さらに非常に幅が広い分野でもあるため、その点が魅力と感じる人も多いです。

天文学者の雇用形態・働き方

勤務先や雇用形態によって働き方に違いが

天文学者は、研究者として大学や研究室で研究活動をする人、研究機関や天文台などに職員として雇用される人など、どのような立場で働くのかには違いがあります。

大学で働く場合、正規雇用されれば給料も待遇も安定できますが、「ポスドク」と呼ばれる非常勤、任期制の職に就いている人が多く、不安定な身分で給料が低い研究者も多いです。

助手や講師となり、さらに准教授、教授とステップアップできれば道が開けますが、ここまでたどり着けない人も多いのが現状です。

一方、「研究職」などとして働く場合、勤務先から給料をもらいながら安定して働けますが、給料や研究体制などには大きな差があります。

天文学者の勤務時間・休日・生活

大学などでの研究とその他への就職で異なる

天文学者は、おもに大学や研究機関で働いています。

大学に所属する天文学者は、新人のうちはポスドクなど非正規雇用で不安定な身分となり、1日の大半を研究に費やします。

しかし生計を立てるのが難しいため、時間をやりくりしてアルバイトをしたり、ほかの大学などで講師として会働いたりする人も非常に多いです。

正規職員になれば、授業や研究の時間が固定化され、一定の生活リズムで働くことができます。

一方、研究所など勤務する場合は各職場の勤務時間や休日に沿って働き、基本的には朝から夕方や夜までの勤務が一般的です。

休日はそれぞれ異なり、天文台など土日祝日も営業している機関の場合は自身も勤務となる場合があります。

天文学者の求人・就職状況・需要

「天文学者」という求人はほとんどない

「天文学者」という求人が出されることは一般的ではありません。

天文学者とは天文学について専門に研究する人のことで、職種として募集されることはあまりなく、求人も限定的であるため、なるためには非常に険しい道のりです。

博士号を取得し、なお天文学を極めたいという人は、大学に所属し研究を続けるか、他の研究機関や民間の施設などへ就職するかを選択します。

大学に所属する場合、「博士研究員」や「ポスドク」となりますが、全員がなれるわけではありません。

非正規雇用のまま研究を続ける人も少なくなく、よい待遇で働けるとは限りません。

さらに、助教授や教授などその上のポストとなれば、非常に狭き門で、なれるのは成果を上げ、実績や運、人との出会いなどに恵まれた一握りの人のみとなります。

その他の研究機関等に就職する場合は、さまざまなところで博士課程修了者を募集しています。

ただし、天文学を研究しているところは限られるため、博士号を持っていれば必ず就職できるわけではありません。

さらに、研究機関や民間の場合は、研究内容がある程度絞られていることも多く、大学で行ってきた専門分野や研究内容がそのまま生かせない場合もあるため注意が必要です。

こうした研究を専門に行う職種につけず、小中高の教員、博物館や科学館などで働くなどといった他の選択肢をとる人も少なくありません。

天文学者の転職状況・未経験採用

他の研究所や企業への転職は珍しくない

大学研究者から民間企業へ転職したり、民間で働いていた人が研究職になったりするケースは、珍しくありません。

他機関での成績が認められ大学教授になる人は少なくなく、その逆で大学に所属していた人が研究機関へ就職することも多いです。

また、定年退職まで特定の研究機関に勤めあげるという人は少なく、全国にある研究機関や天文台の間で転職、異動をしたりする人も多いです。

とくに優秀な成績を残したり成果を上げたりした人は、スカウトの声がかかることもあります。

さらに、よりよい待遇や研究体制を求めて、海外の大学へ行ったり、海外で研究室を構えたり、知識を深めるため留学したりする人も少なくありません。

ただし、こうした転職は天文学で論文を書き、実績を認められた人のみで、まったく天文学の知識がない未経験者が、一から研究職になれる可能性はゼロに等しいのが現状です。

大学教授や研究職として安定した身分を得るためには時間がかかる場合が多く、生活を成り立たせるのが大変なため、素人が天文学者を目指して転職するのは非常にハードルが高いです。

転職の際には、研究内容や知識、これまでの実績が問われることが多いため、天文学者を目指す場合、進路選択は早めにしておいた方がよいでしょう。

有名な天文学者

日本にも多数の天文学者が活躍

日本初の天文学者として知られるのが渋川春海です。

江戸幕府初代の天文方(天文や測量などに関わる業務)に任命され、日本独自の新しい暦を編纂しました。

天体の動きを把握するために、自ら装置を作り、天体観測を行なったことで知られ、日本の天文学の基礎を築きました。

次にあげられるのが、国立天文台の第3代台長を務めた海部宣男です。

すばる望遠鏡の建設に関わるなど数々の功績を残し、天文学の世界的リーダーとして活躍しました。

2019年、ブラックホールの撮影に世界で初めて成功し、一躍脚光を浴びたのが国立天文台教授・水沢VLBI観測所所長の本間希樹です。

子ども向け番組に出演するなど、研究の傍ら天文や宇宙の魅力を伝える活動もしています。