土地家屋調査士と司法書士の違い・兼業は多い?
土地家屋調査士と司法書士の仕事内容の違い
「土地家屋調査士」と「司法書士」は、どちらも法務局における「不動産登記業務」を手掛ける専門職です。
不動産の登記情報は、所在地や用途、面積などが記載された「表題部」と、所有者や抵当権者の住所や氏名などが記載された「権利部」で構成されています。
土地・建物の形状や構造を調べたり、測量したりして、表題部を登録するのが土地家屋調査士の仕事です。
一方、不動産の買主の情報や銀行の担保設定情報など、権利部を登録するのが司法書士の仕事です。
このため、たとえば建物を新築した場合など、両方の情報登録が必要になる場合は両者が協力してひとつの案件にあたります。
また、登記業務のほか、土地家屋調査士は土地の境界を確定させる「筆界特定」業務が、司法書士は会社の代表者や役員の情報を登録する「商業登記」業務が、それぞれの代表的な仕事として挙げられます。
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土地家屋調査士と司法書士のなる方法・資格の違い
土地家屋調査士・司法書士ともに、業務を行うには国家資格を取得して、資格を各職域団体に登録することが必要です。
土地家屋調査士資格を得るには、国家試験を受ける方法と、法務省職員として登記業務に携わったのちに法務大臣の認定を受ける方法の2種類がありますが、ほとんどの人が受験によって資格を取得します。
司法書士資格を得る方法も2つあり、試験を受ける方法と、裁判所事務官や検察事務官として10年以上勤め、法務大臣の認定を受ける方法があります。
司法書士については、土地家屋調査士の場合とはやや事情が異なり、後者の方法で資格を得ている人も一定数いますが、同制度は裁判所や検察庁の定年退職者のために利用されているのが実態です。
このため、どちらの資格についても、これから資格取得を目指す人については、実質的に国家試験を受ける方法が唯一のルートとなるでしょう。
土地家屋調査士と司法書士の資格の難易度の違い
土地家屋調査士試験は、不動産登記法や民法などの法律と、測量に必要となる三角関数などの計算や製図、文系・理系双方の分野を勉強しなくてはならない難関です。
必要となる勉強時間は700時間~1000時間が目安とされており、近年の合格率は8%~9%で推移しています。
一方、司法書士試験は、出題内容は法律が大半であるものの、土地家屋調査士よりも範囲がはるかに広大で、商法や民事訴訟法なども加えた六法全般、そして商業登記法などの専門法律も学ばなくてはなりません。
このため、合格までにかかる勉強時間は1400時間~2000時間が必要とされており、その合格率もわずか3%~4%と、土地家屋調査士をさらに下回る非常に低い水準となっています。
両者の難易度を比べると、司法書士のほうが土地家屋調査士よりだいぶ難しく、おおむね土地家屋調査士の2倍の努力が必要になるといえるでしょう。
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土地家屋調査士と司法書士の学校・学費の違い
土地家屋調査士と司法書士は、どちらの試験についても学歴などの受験資格は定められておらず、誰でも受験可能です。
そのため、制度上は学校に通うことは必須ではなく、独学だけで合格を目指すこともできます。
しかし、どちらも非常に難関であるため、大学や専門学校、予備校、通信講座など、いずれかの学習手段を利用して、入念な対策を行ってから試験に臨む人が大半を占めます。
中学生や高校生など、進路決定を控える人については、土地家屋調査士の場合は大学の理工学部や測量系・土木系の専門学校が、司法書士の場合は大学の法学部や法律系専門学校が、進学先の選択肢となるでしょう。
社会人など、すでに学校を卒業している人については、民間の資格予備校に通うか、予備校が開講している通信講座を受講するケースが一般的です。
学費について比べると、たとえば民間予備校の場合、土地家屋調査士は年間30万円~50万円、司法書士は年間50万円~70万円が相場です。
司法書士のほうが学習量が多いぶん、土地家屋調査士より経済的負担も重くなりやすいようです。
土地家屋調査士と司法書士の給料・待遇の違い
土地家屋調査士は、独立開業して自身の事務所を経営する人が大半であり、その収入事情は個人の能力次第といえます。
大きく成功している人のなかには、年収1000万円を稼いでいる人もいる一方で、売上はある程度あっても、事務所経費などを差し引くとほぼ収支トントンで食べていくのが精いっぱいという人もいます。
その平均年収は400万円~600万円前後が相場とされていますが、かなりばらつきが大きいのが実情です。
一方、司法書士の場合、土地家屋調査士と同じく独立開業する人もいますが、司法書士事務所や司法書士法人に勤務する人もおり、その働き方はさまざまです。
平均年収は土地家屋調査士と同じく400万円~600万円前後が相場であり、年収1000万円以上稼いでいる人も一定数いるという点も共通しています。
ただし、たとえ収入が同じでも、独立している人と組織に所属している人とでは、福利厚生面や安定性において明確な差があります。
司法書士は、勤め人のままでも高収入が期待できる一方、土地家屋調査士はリスクを背負って独立しない限り、高収入が望めません。
このため、給与だけでなく、待遇面を総合的に比較した場合、司法書士のほうが土地家屋調査士よりも恵まれており、経済的に安定しやすいといえるでしょう。
土地家屋調査士と司法書士はどっちがおすすめ?
土地家屋調査士と司法書士は、どちらも仕事の根幹に登記業務があるものの、その特色はかなり異なっています。
土地家屋調査士は土地の測量や建物の調査などを手掛ける「不動産」のプロである一方、司法書士は不動産に限定せず、幅広い業務を手掛ける点が特徴的で、弁護士に近い「法律」のプロといえます。
したがって、不動産と法律を比べてみて、より自身にとって興味のあるほうの職業を選択するとよいでしょう。
また、必要となるスキルを比較すると、どちらの資格についても法律知識は共通しているものの、土地家屋調査士の場合、三角関数などの計算能力も求められます。
このため、サイン、コサイン、タンジェントといった数学の勉強に抵抗がないなら土地家屋調査士が、難易度は高くても法律知識のほうが頭に入りやすいという人は司法書士が、それぞれおすすめです。
土地家屋調査士と司法書士の兼業は多い?
土地家屋調査士と司法書士は、上述の建物新築時の登記をはじめとして、相続、土地売買時の分筆・合筆、境界確定など、ひとつの案件に両資格者が必要になるケースが頻繁にあります。
このため、クライアントからダブルで報酬を受領するために、一人で双方の資格を取得し、兼業で働いている人もいます。
顧客の側からしても、本来であれば二人の専門家に依頼しなければならないものを一括で済ませられるというメリットがあるため、ダブルライセンスの人に仕事を依頼したいというニーズも少なくありません。
両方の資格取得を目指すなら、まとまった勉強時間を確保できる学生の間に司法書士の資格を取って、土地家屋調査士については、司法書士として働きながら通信講座などを利用して勉強するのがよいでしょう。
土地家屋調査士の場合、「測量士補」という関連資格を取ることで、試験の難易度を大きく下げることも可能ですから、段階的に勉強していくなかで、忙しく働きながらでも着実に資格取得に近づくことができます。