土地家屋調査士になるには? 資格を取るには?
土地家屋調査士になるまでの道のり
資格を取得するまで
土地家屋調査士になるためには、国家試験に合格して、土地家屋調査士資格を取得する必要があります。
試験を受けるにあたって必要となる学歴や実務経験などはとくになく、誰でも受験することが可能です。
試験は、例年10月第3週の日曜日に行われる筆記試験、翌年1月中旬頃に行われる口述試験の2回に分けて実施され、筆記試験合格者だけが口述試験に進めます。
口述試験に合格すると各都道府県の土地家屋調査士会名簿に登録可能で、25,000円の登録手数料を納めて登録することで、土地家屋調査士として働けるようになります。
なお、試験を受ける以外にも、法務省の職員として一定年数勤務した後、法務大臣の認定を受けることで資格を取得する方法もありますが、国家試験を受験する人が圧倒的多数です。
資格を取得してから
資格制度上は、試験に合格しさえすれば、土地家屋調査士を名乗って業務を請け負えるようになるものの、資格を得ることと実際に仕事を手掛けることは、まったく別の話です。
試験をパスできるだけの知識があっても、それはあくまで土地家屋調査士として必要最低限の基礎を身につけたにすぎません。
実地での測量作業や、CADを用いた計算と製図、法務局への申請手続きなど、一連の業務をこなせるようになるには、数年単位の時間をかけ、少しずつ実務経験を積んでいかなくてはなりません。
すべての業務を単独でこなし、顧客から報酬を受け取れるようになってはじめて、一人前の土地家屋調査士になったといえるでしょう。
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土地家屋調査士の資格・難易度
土地家屋調査士は、法務省が主管する国家資格であり、「表題登記」や「筆界特定」など、資格保有者しか手掛けることのできない「独占業務」を有しています。
土地家屋調査士試験は、不動産登記や民法などの法律問題や、専門的な作図問題・計算問題が出題される難関であり、近年の合格率は8%~9%という非常に低い水準で推移しています。
合格するために必要な勉強時間は700~1000時間が目安とされており、1年~2年ほどの期間をかけて受験勉強に励むケースが一般的です。
なお、「測量士」「測量士補」「一級・二級建築士」のいずれかの資格を有している場合、平面測量と作図に関する試験が免除されるため、難易度は大きく下がります。
受験者の多くは、取得難易度の低い測量士補の資格を先に取って、免除要件を満たしてから、土地家屋調査士試験に臨むようです。
土地家屋調査士になるための学校と学費(予備校・大学・専門学校)
土地家屋調査士になるための学校の種類
土地家屋調査士の国家試験には受験資格がなく、誰でも自由に受験することが可能です。
つまり、土地家屋調査士になるにあたって、どこかの学校に通うことは必須ではありません。
しかし、試験は合格率一桁台の難関であり、不動産登記法に関する法律知識や、測量に必要な三角関数の計算方法など、高度な専門スキルを身につけないと合格できません。
このため、学歴不問とはいえ、ほとんどの受験者は、民間の予備校や大学、専門学校など、いずれかの学校に通い、専属の講師による対策授業を受けて試験勉強に励んでいます。
また、地方在住で近くに学校がなかったり、仕事の都合で定期的に通学することが難しい人の多くは、予備校などの通信講座を受講して自宅で学習しています。
制度上はまったくの独学だけで受験することもできますが、試験の難易度を考えると、いずれかの学校・講座を利用したほうがよいのは間違いありません。
土地家屋調査士になるための予備校
土地家屋調査士になるための学校として最も一般的なのは、民間の予備校・スクールです。
大手であれば、日建学院、LEC、東京法経学院などがあります。
試験を熟知している経験豊かな講師陣による手厚い指導が受けられますし、社会人でも通いやすいよう、夜間や土日にも授業が開講されています。
初学者向けや学習経験者向け、免除者向け、答練対策専門など、複数のコースが選べる点も魅力ですし、通学コースだけでなく、通信コースも併設されています。
全国47都道府県に展開している日建学院を除くと、学校の多くは東京や大阪などの大都市圏に集中しているため、地理的に通えない場合は通信コースがおもな選択肢となるでしょう。
近年は、Web上で答練に取り組めたり、講師への質問ができるなど、通信コースでも通学コースとそん色なく学習できるようになっており、通信講座を利用して合格している人も大勢います。
予備校にかかる学費については、初学者の場合、通学コースで年間30万円~50万円ほど、通信コースで年間20万円~30万円ほどが相場です。
土地家屋調査士試験の合格率を勘案すると、一発で合格できるとは限らないため、場合によっては100万円以上かかることも想定しておかないといけないかもしれません。
ただし、コースによっては、「教育訓練給付制度」の対象となっており、一定の社会人経験があると、国からの補助が受けられる場合もあります。
土地家屋調査士になるための大学
中学生や高校生など、これから進路選択を控えている人については、4年制大学に進学するという道も非常に有効です。
土地家屋調査士を目指せる学部・学科としては、工学部や理工学部の、土木工学科、まちづくり学科、建築学科などが挙げられます。
不動産登記法や民法などの法律知識も求められるため、法学部に進むというルートも考えられますが、三角関数などの数学分野を自分で勉強しないといけないため、ややハードルが高いかもしれません。
必要となる学費は、国公立か私立かによって差がありますが、おおむね4年間で400万円が目安となるでしょう。
さらに、大学の場合、予備校とのダブルスクールで国家試験対策を行う人もめずらしくなく、学費はかさみがちです。
経済的負担は重く、また社会に出るまでに時間がかかる点もネックですが、就職に際しては、大卒という学歴が得られることは大きなメリットといえます。
土地家屋調査士になるための専門学校
土地家屋調査士になるための専門学校としては、測量科や測量設計科のあるところをはじめとした、土木系、建築系、工業系の専門学校が候補です。
授業内容は、大学と比べると、より国家試験を意識した実践的なものとなり、「測量士補」や「CADオペレーター」など、土地家屋調査士以外の資格を同時に目指せるところもあります。
上述した民間予備校の東京法経学院と提携し、在校生の資格取得をバックアップしている近畿測量専門学校というところもあります。
土地家屋調査士を養成する専門学校は1年制のところが大半であり、長くても2年制となっているため、早く働き始めたいという人については、大学よりも専門学校のほうがおすすめです。
学費は年間100万円~120万円前後が相場ですが、独自の奨学金制度や特待生制度を設けている専門学校もあるため、各学校に問い合わせてみるとよいでしょう。
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土地家屋調査士に向いている人
土地家屋調査士に向いているのは、能力的なバランスが取れている人です。
たとえば、土地家屋調査士には、法務局への申請手続きに必要な法律知識と、測量作業に必要な三角関数などの数学スキル、その両方が求められるため、文系科目も理系科目もこなせる人に適性があります。
同じように、土地家屋調査士は書類作成などのデスクワークと、物件調査などのフィールドワーク、どちらもこなす必要があり、事務処理能力もあるし、体力もあるという人に適性があります。
どれかひとつの能力が突出しているけれども、苦手分野も多いという人よりは、際立った得意分野はないけれども、なんでも平均的にこなせるという人のほうが、土地家屋調査士に向いているでしょう。
土地家屋調査士のキャリアプラン・キャリアパス
土地家屋調査士のキャリアとしては、資格取得後、土地家屋調査士事務所や測量会社などに勤め、数年程度の実務経験を積んでから独立するという流れが一般的です。
いきなり独立することも不可能ではありませんが、上述したように土地家屋調査士には現場での経験が大切であるため、まずはどこかに就職することが望ましいでしょう。
ただし、試験合格後すぐに独立したい場合は、予備校が開講している測量の実践研修などを受け、必要な実務スキルを身につけるという方法もあります。
独立に際しては、個人事務所を開く人もいれば、親の事務所を継ぐ人もいます。
また複数の資格保有者で土地家屋調査士法人を設立する人、行政書士や司法書士などと組んで、共同で事務所を経営する人もいます。
資格取得後も勉強に励み、士業系国家資格などを取得してキャリアアップし、手広く事業展開するケースもよく見受けられます。
土地家屋調査士を目指せる年齢は?
土地家屋調査士試験に年齢制限はありませんので、何歳でも受験することが可能です。
近年の試験合格者をみても、平均年齢は40歳前後となっており、一般的な職業と比べても、土地家屋調査士は遅くから目指せる職業といえるでしょう。
ただし、ある程度の実務スキルを身につけるためには、どこかの事務所や企業に就職することが必要であり、年齢を重ねれば重ねるほど、実務未経験で雇ってくれる先を見つけることは困難になります。
したがって、30代や40代から土地家屋調査士になるなら、先に就職し、測量に関する実務経験を積むか、あるいは測量士補など土地家屋調査士より楽に取得できる資格をまず目指したほうがよいかもしれません。
測量士補として測量会社などに勤めながら、土地家屋調査士へのステップアップを目指して、仕事の合間に勉強に励んでいる人も大勢います。
土地家屋調査士は女性でもなれる?
土地家屋調査士会に所属する個人会員は全国に約17,000人弱いますが、そのうちの女性はたった500人程しかおらず、割合にしてわずか3%程度です。
これは、土地家屋調査士が、デスクワークだけでなくフィールドワークもこなすことを求められる職業であることが大きく影響しています。
重い測量機器をかついで森の中や山の中を歩き回るなど、体力が求められることも少なくありませんし、真夏の炎天下や風雨にさらされながら、過酷な環境下で作業しないといけないこともあります。
しかし、それはあくまで「土地家屋調査士になりたいと思う女性がさほど多くない」というだけであり、女性であっても、土地家屋調査士として活躍することは十分可能です。
近年は、技術の進歩によって機材も軽量化されていますし、女性の不動産所有者が増えたことで、同性の土地家屋調査士に任せたいという依頼も増えています。
とくに相続が絡む場合、自身や家族のデリケートな事情に触れることもあって、女性同士のほうが相談しやすいと考えるお客さまもいます。
土地家屋調査士の働き方の種類・雇用形態
土地家屋調査士の働き方の種類
土地家屋調査士の多くは、独立開業して自分の事務所を開設する、あるいは親の開設した事務所を継いで経営者として働いています。
ただし、土地家屋調査士の業務は高度な専門的スキルが必要となるため、一通りの実務経験を積むために、土地家屋調査士事務所や測量会社の職員・社員として働いている人も一定数います。
また、無資格の状態で土地家屋調査士事務所などに就職し、働きながら国家資格の取得を目指している人も少なくありません。
雇用される場合の契約形態は、ほとんどが正規職員または正社員ですが、アルバイトやパートなどの非正規で働いている人も一部見受けられます。
以下では、それぞれの雇用形態における特徴や給料などの待遇面について、比較しながらご紹介します。
正規雇用の土地家屋調査士
正規雇用の特徴
一般的な職業の場合、正規雇用者は労働時間が長く、責任も重い反面、安定的に働けるという点が特徴的ですが、土地家屋調査士については、あまりあてはまりません。
上述したように、土地家屋調査士はその大半が独立する職業であるため、たとえ正規雇用であっても、数年程度で退職するケースが一般的で、雇う側としても基本的に終身雇用を前提としていません。
また、土地家屋調査士事務所の多くは個人経営であり、雇用期間は代表者の意向に左右されやすく、代表者が事務所をたたんでしまえば雇用契約もそれまでです。
最初から独立する意思がなく長期的に勤め続けたいなら、正規雇用を選択するのはもちろん、法人形態の企業を選んだほうがよいでしょう。
正規雇用の待遇
個人事務所の場合、たとえ正規雇用であっても、勤めている期間は、やがて独立するための「修業期間」とみなされるため、給料面はあまり期待できません。
年収にして300万円~350万円ほどが相場であり、とても難関国家資格に見合うだけの給与水準とはいえません。
さらに、無資格で補助スタッフとして働く場合はより給料は低水準で、年収200万円ほどしかもらえず生活していくのがやっとということもあり得ます。
「お金をもらいながら独立に必要なスキルを教わっている」と考えて、経済的な部分は割り切ることが必要になるでしょう。
一方、測量会社や建設会社といった法人の場合、初任給こそ個人事務所とさほど変わらないものの、キャリアに応じて徐々に昇給していき、やがて年収500万円前後にまで達します。
管理職に昇進したり、大手企業に勤めたりすれば、それ以上の収入を得ることも十分に可能ですし、福利厚生面も個人事務所より手厚いケースがほとんどです。
非正規雇用の土地家屋調査士
非正規雇用の特徴
非正規雇用の場合、手掛ける仕事は土地家屋調査士有資格者の補助作業が主となります。
正規雇用と比べると責任は軽くなりますし、働く日数や時間についても、ある程度自由に調整できます。
このため、土地家屋調査士の実務を経験したいけれど、試験勉強を最優先でがんばりたいという場合などは、正規スタッフよりも非正規スタッフとして働くほうが都合がよいでしょう。
一方、非正規雇用は、契約形態が不安定である点が最大のデメリットといえます。
しかし、最初は契約社員として入社しても、国家資格を取得した後には正社員として再雇用するという企業も少なくありません。
自身の努力次第では、長期にわたって勤め続けることも可能です。
企業によっては、正社員だけでなく、アルバイト社員やパート社員の教育にも熱心で、教材費を負担するなどして国家資格取得を後押ししてくれるケースもあります。
非正規雇用の待遇
非正規雇用の給料は、地域にもよりますが時給1,000円前後が相場であり、一般的なアルバイトとさほど変わらない水準です。
ただし、測量技術やCAD操作技術など一通りの専門スキルを身につけた後は、時給1,500円程度まで上昇することもあります。
また、職場によっては、「測量士補」や「宅建士」など、土地家屋調査士の業務と関連性のある資格を持っていれば、即戦力人材として時給が優遇されるケースもあるようです。
たとえば家事や育児をこなさなければならない主婦など、1日に働ける時間が限られている人については、資格や専門知識があれば、ほかの仕事より効率的に稼げるでしょう。
独立して働く土地家屋調査士
独立開業者の特徴
独立して働く土地家屋調査士の特徴は、土地家屋調査士としての業務だけでなく、経営者としての業務もこなさなければならないことです。
補助者や事務アシスタントを雇うケースもありますが、顧客との面談から事前調査、測量、製図、法務局への登記申請、報酬の請求まで、ほぼすべてを単独で手掛けるという人もめずらしくありません。
また、伝票処理や経費精算など事務所の運営業務も行わないといけませんし、案件を獲得するための営業活動や広告宣伝も必要です。
独立開業というと、自由に働けるイメージが強く、たしかに仕事には融通が利きやすくなるものの、実際には数多くの仕事に追われて勤務時代より忙しくなることのほうが多いようです。
独立開業者の待遇
独立して働く土地家屋調査士の収入は、年収400万円~600万円前後が相場とされています。
実際にどれだけ稼げるかは個人の実力次第といえるものの、測量会社などにサラリーマンとして勤める土地家屋調査士と、平均年収にそこまで大きな差はありません。
より高収入を求めるなら、土地家屋調査士の資格だけでなく「司法書士」や「行政書士」など、ほかの士業系国家資格も取得して、手掛けられる業務の幅を拡げることが必要になるでしょう。
独立開業者のなかには、ダブルライセンスで働いたり、不動産会社や建設会社と太いパイプを築いたりして、年収1000万円以上を得ている人もいます。
独立にはリスクもありますが、勤め人よりも稼げるチャンスが大きくなるのは間違いないでしょう。