建築士の年収・給料はどれくらい? 初任給やボーナス、統計データも解説
雇われて働くだけではなく、独立して自分の設計事務所を開業する人も多く、活躍ぶりによっては高収入を手にできます。
この記事では、建築士の給料・年収の特徴について紹介しています。
建築士の平均年収・給料の統計データ
建築士は、難しい試験を突破して資格を取得した人だけが就ける、専門性の高い職業です。
このため、建築士の給料は勤め先の規模や個人の能力などによって幅があるものの、おおむね平均的な会社員を超える、恵まれた給与水準となっています。
独立・開業して成功すれば年収1000万円に到達することも不可能ではなく、夢のある職業といえるでしょう。
ただし、それらはあくまで一級建築士の話であり、同じ建築士でも、二級建築士や木造建築士の給料はそれほどではありません。
一級建築士になるには国家試験に受かることのほか、学歴に応じた実務経験も必要になるため、努力が必要ですし、時間もかかります。
建築士の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、建築士の平均年収は、43.5歳で633万円ほどとなっています。
※出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
求人サービス各社の統計データ
職業・出典 | 平均年収 | 年収詳細 |
一級建築士 (転職Hacks) |
703万円 | 一級建築士300万円~1000万円 |
二級建築士300万円~700万円 | ||
建築士 (転職ステーション) |
402万円 | - |
建築士 (indeed) |
5,185,514円 | 時給1,818円 |
日給 22,713円 | ||
月給367,143円 | ||
一級建築士 (施工管理求人.com) |
500万円~600万円 | 二級建築士は350万円~500万円 |
一級建築士と二級建築士が混ざっているものもありますが、各社の統計データによれば、一級建築士の年収は550万円~600万円前後が最も多いようです。
厚生労働省の平均年収より実態が下回っているのは、一部の大きく成功している独立開業者が、全体の数字を大きく押し上げているためだと考えられます。
建築士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
賃金構造基本統計調査から、建築士のボーナスは月収の約4か月分であると推定されます。
各社の統計データを基に、一般的な一級建築士の年収を580万円と仮定すると、月収は約36万円、ボーナスは約145万円となります。
そこから、所得税や住民税、年金や健康保険料などを差し引くと、独身者の場合、月々の手取りは27万円~29万円、ボーナスの手取りは約114万円と計算されます。
建築士の初任給はどれくらい?
建築士の初任給は、就職先や地域にもよりますが、およそ20万円~25万円が相場とされています。
一般企業の大卒者の平均初任給が20万円弱であることを考えると、建築士という難関国家資格をもっているぶん、スタートから給料水準は高めとなっているようです。
ただし、建築士の給料は実力に左右される面が強く、その後の給料は個人の実力によって大きく伸び幅が変わるため、建築士にとって初任給はさほど重要ではありません。
建築士の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
建築士の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、55~59歳の796万円です。
全年代の平均年収は633万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「建築技術者」で建築施工管理技士など他職業を含むデータです。
建築士の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
建築士の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤める建築士の平均年収は571万円、100〜999人規模は623万円、1,000人以上の規模では720万円、10人以上規模の事業所平均は633万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「建築技術者」で建築施工管理技士など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
20代で正社員への就職・転職
建築士の福利厚生の特徴は?
建築士の福利厚生は、勤め先の企業による差が大きいのが実情です。
ゼネコンをはじめとする大手企業では、住宅手当や休日出勤手当、有給休暇制度などが整っている一方、小規模の設計事務所などでは、充実しているといいがたいところもあります。
設計事務所は少人数で運営しているところが多く、人手に余裕がないために、なかなか有給を取得できなかったり、産休や育休を取得しにくいというケースが目立ちます。
家庭の都合などで、働き方にある程度の弾力性を持たせたいと考えている人については、できるだけスタッフを多く抱える企業に就職したほうが望ましいかもしれません。
建築士の給料・年収の特徴
ここからは、建築士の給料・年収の特徴を詳しく紹介します。
特徴1.年収のピークが40代に訪れる
一般的な企業に勤めるサラリーマンの場合、基本的に収入は勤続年数に応じて年功序列で上がっていくため、年収のピークは定年直前の50代後半あたりとなります。
しかし、建築士は実力主義の傾向が強く、最も体力・気力ともに充実し、たくさんの案件を手掛けられる40代あたりにピークを迎え、そこから徐々に年収は下がり始めます。
管理職に就く年代になると、残業代なども支給されなくなり、立場とともに仕事内容も収入事情も大きく変わるため、働き方や生活スタイルを見直す必要が生じるでしょう。
特徴2.生涯年収はそれほど高くない
一級建築士は、職業としての平均年収は一般的な日本国民の中央値を大きく上回っています。
しかし一級建築士になるには、少なくとも数年、人によっては10年以上、二級建築士としての下積み期間が必要であり、その期間の給料は一般的な会社員とほぼ同じです。
そして給料のピークを迎えるのがかなり早く、体力が衰えてくると、経営者か役員にでもならない限り高収入を維持することは困難です。
働き盛りの年収は高くても、生涯年収は2億6000万円ほどが平均とされており、一般的なサラリーマンの生涯年収2億7000万円と変わらないか、やや見劣りする水準です。
一級建築士というと、世間的には高収入と思われがちですが、一部の著名建築家の華やかなイメージが先行している部分も大きいといえます。
特徴3.高収入を稼ぎたいならハードワークが必要
設計事務所でも建設会社でも、どこの職場でもいえることですが、建築士として高収入を狙うなら数多くの案件をこなすか、規模の大きな案件をこなすか、基本的にはそのどちらかが必要です。
ゼネコンに勤めれば高待遇が期待できるのは間違いありませんが、労働時間が長引きやすいうえ、現場ごとに全国各地を転々としなければならず、肉体への負担は重くなるでしょう。
設計事務所で売れっ子になれば、やはり給料面は高くなりますが、各クライアントとの打合せや設計のやり直しなどで仕事が深夜におよぶことも多く、プライベートな時間はほとんど取れないかもしれません。
建築士は、稼ぎたいお金の量と、健康面や私生活とのバランスに頭を痛めることの多い職業といえるかもしれません。
20代で正社員への就職・転職
施設別に見る給料・年収
建築士の勤務先はいくつも考えられます。
ここでは、代表的な勤務先・施設別の給料・年収の特徴を紹介します。
ゼネコン勤務の建築士の給料・年収
ゼネコンに勤める建築士の給料は年収500万円~1000万円くらいが相場であり、開きがあるものの、全体的に給与水準は高めです。
とくにスーパーゼネコンともなると、規模別の年収の通り平均年収が1000万円を超えますし、中堅クラスのゼネコンでも、管理職になれれば年収700万円を下ることはほぼありません。
ただ、高給の裏には重い責任と長時間残業があり、仕事内容は質・量ともに非常にハードです。
設計事務所勤務の建築士の給料・年収
設計事務所で働く建築士の給料は、年収400万円~550万円前後が相場ですが、他の業態の企業と比較すると、事業規模の大小も請け負う案件の種類もまちまちで、給料事情の差も大きい点が特徴的です。
ただ、行政とのパイプが太く、橋や公園、美術館や博物館などを手掛ける事務所や、民間企業が造るオフィスビルやマンションなどを取り扱う事務所は、一般住宅の設計を行う事務所よりも待遇がよい傾向にあります。
建築士の仕事は法律などによって単価が規定されているわけではなく、デザイン料などはお客さまと交渉して自由に設定することができます。
このため、手掛ける案件の規模がそこまで大きくなくても高収入が得られる職場もあり、就職先を選ぶ際には、それぞれの設計事務所の強みをよく見定める必要があるでしょう。
ハウスメーカー勤務の建築士の給料・年収
ハウスメーカー勤務の建築士の給料は、CMなどで目にする大手ハウスメーカーの場合、年収600万円~700万円前後、中堅クラスのハウスメーカーの場合年収500万円~600万円くらいが相場です。
ハウスメーカーでの設計業務は、自社の商品に合わせてある程度最初から規格が定まっており、作業がパターン化しやすいため、仕事の負担がそこまで大きくない点がほかの企業にはないメリットといえます。
収入面、業務量、企業規模など、ハウスメーカーはゼネコンと設計事務所のちょうど間くらいといえるでしょう。
建築士が収入を上げるためには?
建築士が収入を上げるには、ゼネコンなどで管理職に昇進する、設計事務所などで施工管理技士やインテリアコーディネーターなどの関連資格を取ってスキルアップする、といった方法が考えられます。
しかし、最も収入を大きく伸ばせる可能性があるのは、独立・開業して自身の設計事務所を立ち上げる方法です。
十分な案件を得られる人脈がなかったり、経営者としての手腕が足りなかったりすると、収入が勤務時代を下回るどころか、廃業してしまうこともありますので、独立には相応のリスクも伴います。
その代わり、デザインや機能性などにオリジナリティが認められたりして売れっ子建築士になれれば、年収数千万円、あるいは1億円を稼ぐことも夢ではないかもしれません。
「建築士の給料・年収」まとめ
建築士の平均年収は、一級建築士になれば600万円ほどに達するとされており、比較的よい給料が期待できます。
ただし、個々の実力が重視される職業であることや、高収入を得る建築士ほど激務になりやすいこともあり、決して楽に稼げるわけではありません。
建築士は独立・開業する道もあり、経営者として成功すればさらなる収入アップも望めます。