学芸員の給料・年収はいくら? 収入について詳しく解説

美術や文化的なもの、歴史に興味がある人にとって、美術館や博物館で働く学芸員は、理想の職業のひとつかもしれません。

大切な文化財の価値を伝えていく意義のある仕事に携わりますが、収入や待遇については、やや厳しいといわれる面もあります。

この記事では、学芸員の年収・給料の事情について、勤務先や雇用形態による違いも含めて詳しく解説します。

学芸員の平均年収・給料の統計データ

学芸員の仕事には専門性が求められるものの、給与水準はさほど高くはないのが実情です。

公立の博物館に勤める場合は地方公務員の扱いとなり、各自治体の給与体系に従って給与が支給されるため、収入・待遇は比較的安定しています。

しかし、採用人数は若干名であり、狭き門となっています。

こうした理由から、学芸員はパートなどの非正規雇用で働いている人もたくさんいます。

学芸員の平均年収・月収・ボーナス

学芸員の求人を見てみると、月給は15万~20万円からのスタートとなる場合が多いようです。

ただし、美術館・博物館の規模や来館者数によっては、この金額より低くなったり高くなったりする場合もあります。

たとえば、地方都市にある小さな史料館では月給13万~14万円ほどの求人が出ている一方、都内の大規模な博物館では月給26万円ほどとなることもあります。

なお、これはあくまでも正規雇用の学芸員の場合で、非正規であると、もう少し給与水準は低めになります。

学芸員の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

学芸員の手取りの平均月収は、15万~20万円ほどと考えられます。

しかしながら、イベントや展示会の開催時期は多忙になることが多いため、残業代が増える傾向があります。

また、正規雇用の学芸員として働いている人は、月給に加えてボーナスも支給されます。

たとえば、民間施設では企業の規定に沿って年に数回(ない場合もあります)、公的施設では、公務員のルールに則って6月と12月に支給されることになります。

さまざまなデータを基にすると、20代の学芸員の平均月収は16万円〜21万円、平均年収は250~300万円程度と考えられます。

学芸員の初任給はどれくらい?

学芸員の初任給は、15万~20万円に設定されることが多いようです。

民間会社員の初任給と比べて、決して高い金額とは言い難いです。

なお、地方よりも都心の美術館・博物館に勤務するほうが、初任給は高くなる傾向があります。

学芸員の福利厚生の特徴は?

学芸員の福利厚生の内容は勤め先によって異なります。

全体として、正規雇用であれば福利厚生が整っていることが多いです。

また、地方公務員として働く場合は、一般事務職などの公務員と同じような休暇制度、各種手当などが支給されます。

なお、学芸員は女性が多く活躍している職業ですが、産休・育休、時短勤務などの制度を利用し、結婚や出産後も仕事を続ける人もいます。

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学芸員の給料・年収の特徴

ここからは、学芸員の給料・年収の特徴を紹介します。

特徴1.正規以外の雇用が多い

学芸員の主要な勤め先である博物館では、職員に臨時職員、嘱託職員、アルバイトなどの人材を活用することで、人件費の削減を図ろうとする流れがあります。

このような雇用形態では、正社員以上の給与は期待できませんし、社会保険などの待遇面も劣ります。

一般企業の初任給程度で長期間の更新制という契約もあり、生活は苦しいものになるかもしれません。

家族を養えるほどの十分な収入を得ることが難しく、主婦のパート代わりの職、と割り切って働いている人もいるそうです。

特徴2.金銭面を重視する人には厳しい面も

博物館や美術館の学芸員は、学芸員の資格や修士号以上の学歴が必要で、就職の競争率も高いです。

学芸員は正社員の募集が非常に少なく、就職先を探すこと自体が困難なため、待遇がよくなくても働きたいという人が数多くいるのです。

それは、給料の高さより「自分の好きなことに関われる」という仕事の魅力があるからです。

学芸員の職に就いている人は、学芸員の仕事が好きだからという人がほとんどでしょう。

好きな分野に携わることができる、やりがいの大きな仕事ではありますが、仕事内容も楽なものではなく、金銭面を重視される人には、あまり望ましい職とはいえないかもしれません。

特徴3.全国的に求人・募集が少なめ

学芸員は募集が少なく、欠員があるときに募集がかかることが多いです。

そうでありながら、安定した公務員の立場で学芸員になりたい人がたくさんいるため、応募者数が非常に多くなります。

有名な博物館が学芸員を募集するときは、倍率が100倍を超えることも珍しくありません。

大学を卒業して学芸員の資格を取得しても、求人が少ないため、学芸員としての仕事がなかなか見つからない人もいます。

そんなときには、博物館などの文化施設でアルバイトをしながら、求人に応募していく道を選ぶのが一般的です。

非正規で働きながら自分の専門分野の研究を継続することは難しいため、学芸員として就職するまでは非常に険しい道であるといえるでしょう。

特徴4.公立博物館と私立博物館でも給料・待遇に差が出る

地方公共団体が設置する博物館を「公立博物館」といい、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定める法人(日本赤十字社および日本放送協会など)の設置する博物館を「私立博物館」といいます。

公立博物館で働く場合、学芸員は地方公務員の立場になり、勤務年数によって徐々に給与は上がっていきます。

学芸員は専門職として採用されることが多いため、行政職員ほど昇給があることはあまりありませんが、一度採用されれば失職の可能性はなく、残業代やボーナスなども支給されます。

一方で、私立博物館に勤務している学芸員は、昇給がない場合も見受けられます。

勤務先によってはボーナスも支給されない場合もあり、給与ではなくやりがいによって続けている、また公立博物館で働くための下積みと考えている人も多いようです。

給与体系や待遇については、圧倒的に国公立の博物館や美術館のほうが整っているといってよいでしょう。

しかし、前述のとおり、国公立の博物館や美術館の採用は非常に限られていますし、欠員も少ないです。

また、公立の博物館や美術館施設で働く場合も、NPOなどに運営を委託する指定管理者制度を導入している場合があります。

この場合は公務員としてではなく非正規の職員・社員として採用されるため、収入は低くなりがちです。

学芸員の勤務先別の給料・年収

ここからは、学芸員の勤務先別の給料・年収の特徴を紹介します。

県の博物館で働く学芸員

国公立の博物館で正規雇用される学芸員の場合、地方の採用試験に合格して地方公務員として働くことになります。

一例を挙げると、大学卒の学歴の人が愛知県の採用試験に合格して学芸員として働く場合、初任給は、203,202円 地域手当を含む)です。

上記の初任給のほか、支給要件に該当する人には、扶養手当、住居手当、通勤手当などが支払われます。

この金額は2022年4月時点のものであり、採用年度や各自治体によって多少異なる可能性があります。

大学の博物館で働く学芸員

博物館のなかには、独立行政法人の博物館もあります。

一般的には、私立大学の有名な博物館や、規模の大きい大学博物館は、学芸員の月収も高い傾向があります。

一例ですが、早稲田大学の演劇博物館の学芸員の月収はおよそ26万円です。

私立博物館で働く学芸員

私立美術館で働く場合、規模や知名度によって大きく違いがあります。

一般的には、国公立や大学の博物館に勤務するよりも給料が低い傾向があります。

国公立や大学博物館に比べると、求人数も多いため、まずは私立博物館で働きながら経験を積み、国公立や大学博物館の学芸員へとキャリアアップしていこうという人も少なくありません。

2022年の求人データを見ると、金沢21世紀美術館が修士課程以上で月給213,100円、世田谷美術館では220,440円〜、となっています。

国立博物館で働く学芸員

国立博物館に勤めた場合、学芸員としての初任給は年収300万円程度から始まります。

国家公務員は、一般的に経験年数が増え職位が上がると、月収や年収も増えていく傾向があります。

2020年のデータによると、独立行政法人国立科学博物館の常勤職員は104人で、平均年齢は46.9歳、年収は約807万円です。

そのうち、事務・技術職の年収は約670万円で、 研究職種の年収は約929万円となっています。

国立博物館の館長クラスでになると年収一千万円を超える人もいるようですが、公務員は人件費削減の傾向がすすんでおり、今後の待遇は悪化する可能性も高いです。

美術館や科学館で働く学芸員(専門員)

美術館や科学館などで学芸員や専門員として働く場合も、同程度の年収となることが多いようです。

2020年のデータによると、独立行政法人国立美術館の常勤職員は43人で、平均年齢は40.2歳、年収は約652万円です。

ただし、これも施設の規模や経営状況などによって大きく異なり、ほかのアルバイトと同程度の収入で働いている人も大勢います。

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学芸員の正社員以外の給料・年収

学芸員は、パートなどの非正規雇用で働く人も多い職業です。

ここからは、学芸員の正社員以外の給料・年収について詳しく紹介します。

派遣社員

博物館で働く学芸員のなかには、派遣会社を通して紹介を受け、派遣されている社員がいます。

勤務時間は9時から17時半頃までとなることが多く、実働時間は7時間45分ほどで、基本的には週休2日制です。

派遣社員は時給制で働くことになり、時給1,500~2,000円前後となることが多いようです。

派遣社員であっても学芸員の資格を求められることから、時給は高めになっています。

パート・アルバイト

パートやアルバイトの学芸員として働いている人もいます。

「好きなことを仕事にできる」「知的好奇心が満たされる」という理由から、主婦のパートやアルバイトとしても人気があります。

給料は、時給1000円前後で働くことが多く、一般的なほかのアルバイトとさほど変わりありません。

2022年の求人では、岡本太郎美術館の会計年度職員の時給は1,086円となっています。

学芸員の働き方の種類・雇用形態

学芸員の年収が低いといわれる理由は?

学芸員の年収が低いといわれるのは、需要と供給のバランスが崩れていることが大きな理由のひとつです。

学芸員に限らず、日本において文化・芸術分野では、職員全体の数が少なく求人数も限られていることが多いです。

人件費を削減するために、非正規雇用や会計年度職員などの不安定な立場の学芸員が年々増えており、正規雇用よりも低い収入でありながら、実質的には正規雇用の学芸員と同程度の仕事をまかされています。

国公立の博物館で働きながら、安定した収入が得られているのはごくわずかの学芸員のみです。

こうした背景から、学芸員は社会的に貢献する役割を果たしながらも、年収が低いといわれているのです。

男性学芸員と女性学芸員で年収に違いはある?

学芸員は女性も多く働いている職業であり、男性と同様に活躍することができます。

ただし、学芸員は契約制や臨時での採用が多いため、妊娠や出産などで一度キャリアを断絶してしまうと、再度同じ仕事を続けることが難しいのが現状です。

国公立博物館で働いている場合は公務員と同様の福利厚生が得られるものの、私立博物館で働く場合や、非正規雇用で働いている場合は、キャリアアップに制限が出るかもしれません。

また、昨今の行政改革の煽りで公務員の人件費削減も相次いでおり、文化関係などは真っ先に削られる対象となりやすい状況です。

学芸員は、仕事内容としては性別問わず長く働きやすい仕事ではあるものの、雇用状況から見ると、安定した働き方を実現するのは簡単ではないと考えておいたほうがよいでしょう。

海外の学芸員の給料は?

アメリカの「美術館長協会」の調査によると、2019年の主任学芸員の平均年収は、15万200ドル(約1575万円)となっています。

また同じくアメリカの「サラリー・ドットコム(Salary.com)」の「美術館キュレーター(学芸員)」の2021年10月29日の給料を見てみると、平均年収は61,239ドル(約700万円)となっています。

日本と比べると、非常に高い給料が設定されていることがわかります。

しかしながら、一方では「海外の学芸員の給料は低い」という声も流れています。

2019年には、アメリカの学芸員やキュレーターがお互いの年収をスプレッドシートに入力して公開するプロジェクト「Art + All Museum Salary Transparency 2019」がありました。

それを基に見ていくと、実際には海外でも年収10万ドルを超えるような人は一部に限られ、アシスタントなどの非正規雇用で、低賃金で働く人も決して少なくないようです。

学芸員が収入を上げるためには?

学芸員が収入を上げるためのポイントは、正規雇用を目指すことです。

学芸員の求人は、臨時職員やパートなどの非正規雇用が非常に多くなっています。

キャリアの最初はこのような非正規雇用からスタートした人も、正規雇用を目指してコツコツと経験を積み、少しでもよい待遇の求人を探して転職活動を続けるとよいでしょう。

正規雇用の学芸員になれば、将来的にはキャリアアップして管理職を目指す道も開けます。

「学芸員の平均年収・給料」まとめ

学芸員の年収は、日本の職業全体の平均年収に比べると、やや低めです。

公立博物館の学芸員(正規雇用)になることができれば、地方公務員としての待遇や福利厚生が充実した環境で働けます。

しかしながら、学芸員は採用人数も限られているため、競争率が非常に高くなっています。

非正規の募集も多いため、安定した収入を得るには相当な努力や運なども必要な職業といえます。