不動産鑑定士の勉強方法・働きながら合格するには?
勉強方法の全体像
不動産鑑定士試験は、短答式で行われる一次試験と、論文式で行われる二次試験の2段階試験となっています。
出題される科目は複数ありますが、一次・二次で共通しているのは鑑定評価理論のみであり、一次では行政法規が、二次では民法、経済学、会計学が、それぞれ各試験独自の科目として出題されます。
さらに、一次試験と二次試験では出題形式が異なることはもちろん、根本的に試験自体の難易度に大きな開きがあります。
したがって、不動産鑑定士試験の勉強方法については、一次試験と二次試験を別々に考えるべきといえるでしょう。
以下では、それぞれの勉強方法について、具体的にご紹介します。
短答式試験の勉強方法
短答式試験は、5つの選択肢のなかから1つを選ぶマークシート形式で、出題されるのは鑑定評価理論と行政法規の2科目です。
鑑定評価理論は、評価基準とその留意事項、およびその解釈についての問題が出され、覚える知識量自体はそれほど多くない一方、かなり細かいところまで理解する必要があります。
行政法規は、鑑定評価理論とは逆に、都市計画法や建築基準法、土地区画整理法など、学習範囲が非常に広い一方、そこまで細かい内容をおさえておく必要はありません。
2科目は対照的な特徴を持っているといえますが、短答式試験の問題は過去問に倣って出題されることが慣例であり、基本的にはどちらも過去問を中心に勉強していくとよいでしょう。
5者択一の試験であるうえ、最低合格ラインは6割弱といわれているため、合格することはそこまで難しくはなく、独学で突破することも決して不可能ではありません。
少なくとも5年分、できれば10年分の過去問を繰り返し勉強し、出題形式に慣れるとともに、選択肢を絞るコツなどを身につけましょう。
論文式試験の勉強方法
論文式試験は、短答式試験とは比較にならないほどの難易度であり、一次試験と二次試験というよりも「短答式試験に受かってやっとスタートライン」というのが感覚的には近いかもしれません。
出題範囲も一次試験よりかなり幅広く、鑑定評価理論、民法、経済学、会計学の4科目です。
いずれも高度な知識が求められるうえ、解答の記述形式にもある程度ルールが定まっていることから、文章作成方法にも習熟しなければなりません。
民法科目についての書き方を例に取ると、まずはその事案のなかで何が論点なのかという「問題提起」から始まり、一般論としての結論を述べる「規範定立」へと進みます。
その後、規範定立を各個別事案に応用させた「あてはめ」で意見を述べ、最後に「結論」を書いて締めくくります。
このような規定の様式に基づいて文章を作成しないと、たとえ記載内容自体に誤りがなくても、試験の答案としては十分に評価されません。
勉強方法としては、書き方を頭で「覚える」よりも、実際にどんどん演習を重ねて、書き方に「慣れる」トレーニングを積んだほうが効率的です。
こうした記述試験の対策は、自分で自分の書いた文章を添削しにくいという難点もあるため、資格専門学校などに通って講師の指導を受けることが望ましいでしょう。
働きながら不動産鑑定士試験に合格するには?
どうやって勉強時間を確保するか
不動産鑑定士試験は30代、40代の合格者も多く、社会人として働きながら試験勉強に励んでいる人も大勢います。
その際に最大のネックとなるのは、どうやって膨大な勉強時間を確保するかということです。
不動産鑑定士試験に合格するためには2000時間ほどの勉強が必要とされており、人によっては5000時間かかることもあります。
1日の大半を仕事に費やさなければならない社会人が勉強に充てられるのは、仕事を終えた後の夜間や、休日などに限定されるでしょう。
解決方法のひとつは、より長期の学習計画を立てて、自分のペースでコツコツと勉強を続けることです。
不動産鑑定士試験は、対策におよそ1年半~2年ほどの期間をかけるケースが一般的ですが、働きながら合格を目指すなら、3年~5年ほどの計画を立てたほうが無難かもしれません。
仮に、毎日仕事が終わった後に1日1時間ずつ勉強する場合、2000時間こなすには約5年半ほどかかる計算になります。
昨今はインターネット環境さえあれば、Web上で講義を受講することが可能となっているため、通勤時間や休憩時間を有効活用するとよいでしょう。
あるいは、仕事終わりに予備校の夜間講座などに通って、経験豊かな講師から試験対策のコツを学ぶことで、勉強時間そのものを短縮する方法も考えられます。
どうやってモチベーションを維持するか
不動産鑑定士試験は、質・量ともにハイレベルであり、途中で試験勉強を辞めたくなることもあるかもしれません。
モチベーションを維持し続けるためには「なぜ不動産鑑定士になりたいのか」「不動産鑑定士になって何がしたいのか」という動機を自分のなかで明確にしておくことが大切です。
目標が具体的であればあるほど、途中で挫折する可能性は低くなるでしょう。
また、一人で勉強し続ける自信がなければ、予備校などに通学し、同じ道を志す受験者どうしで励まし合ったり、わからない箇所を教え合うことも、ときには有効かもしれません。
予備校に通うことは、受験対策ができることとあわせて、仲間を見つけられるメリットもあります。
なお、たとえ他人の意見がほしくても、インターネットの掲示板やSNSを検索する行為には要注意です。
Web上の発言には匿名性があり、発言者に責任が伴わない以上、根拠のない誹謗中傷が圧倒的に多いため、モチベーションを保つにあたってはむしろ逆効果となりやすいでしょう。