不動産営業の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「不動産営業」とは
不動産業界の会社に勤務し、お客さまに向けて不動産に関する提案を行う営業職として働く人。
不動産営業とは一般に、不動産業界の会社で「営業職」として働く人です。
営業のスタイルは大きく、店舗に来店されたお客さまを接客する「内勤営業(カウンターセールス)」と、見込み客を見つけて外回りをする「外勤営業」の2種類に分けられます。
人によって分譲マンションや一戸建て、注文住宅、賃貸物件、投資用マンションなどさまざまな種類の不動産を扱います。
この仕事では学歴がさほど重視されず、未経験者を歓迎する傾向も強いことが特徴です。
専門的な知識も就職した時点ではほとんど不要で、働きながら宅建業法や建築基準法などを学んでいきます。
年収は400万円~600万円程度がボリュームゾーンですが、多くの場合、給料は「基本給+歩合給」の形で設定されています。
売上や契約数を伸ばせば伸ばすほど、たくさんの収入を手にすることが可能で、経験や実績よりも実力がものをいう職業といえるでしょう。
衣食住の一端を担うビジネスとして需要があるものの、この業界はいまだ古い体質の会社も多いといわれ、厳しい労働条件で働く人もいるようです。
「不動産営業」の仕事紹介
不動産営業の仕事内容
不動産を賃貸、売買する専門の営業職
さまざまな不動産を取り扱う
不動産営業は不動産を取り扱う営業職ですが、企業や担当業務によって仕事内容は大きく異なります。
最もイメージしやすいのは「不動産仲介」でしょう。
駅前や街中に営業所を構えて、住居や事務所、店舗を借りたい人に物件を紹介し、借りたい人と貸したい人(大家さん)を結びつけるのが賃貸仲介の仕事です。
この関係が「買いたい人」と「売りたい人」になれば売買仲介となります。
他にも、自社で建てる住宅やマンションを販売する注文住宅営業や分譲住宅営業、リフォーム専門の営業などもあり、一口に不動産営業といっても、求められる知識もノウハウもそれぞれです。
また、取り扱う商品が同じでも、来店した顧客に対応する店舗型営業なのか、顧客を訪問する外回り営業なのかという営業スタイルの違いもあります。
不動産営業の役割
不動産営業は、社会にとって大事な資産である不動産を有効活用するため、賃貸取引や売買取引を円滑化します。
不動産は、人間の生活に不可欠なものですが、物件ごとの差異が大きいうえ、複数の法律が絡んだり、権利関係が入り組んだりするなど非常に複雑かつ難解です。
また金銭的にも非常に高額なため、一般の人が不動産取引を行うことはきわめて困難です。
予期せぬトラブルに見舞われたり、詐欺などの被害に遭ったりする危険性も決して低くはありません。
不動産営業は、各種法律に関する専門知識を備えた「不動産のプロ」として、安心かつ安全に不動産取引をできるよう、お客さまをサポートするという大きな役割があります。
不動産営業になるには
誰でもなれるが、続けられるかは人によるところが大きい
特別な学歴や資格は必要なし
不動産営業をするために学歴や特別な資格は必要ありません。
業界全体でそこまで学歴を重視するという風潮になく、まったく学歴を問わないという企業も数多くあります。
でも平等にスタートラインに立つチャンスがあるのは、不動産営業という職業の魅力のひとつといえるでしょう。
不動産業界の代表的な資格として「宅地建物取引士」があり、資格保有者はできる業務が増えるので優遇されますが、必須ではありません。
不動産営業として入社した人は、簡単な研修を終えた後すぐ現場に出て、お客さまを接客するケースが一般的です。
併せて、宅建士や「ファイナンシャルプランナー」といった資格勉強にも励み、自身の専門性を伸ばしてきます。
その後はひとつの会社に勤め続け、管理職に昇進して部下を率いる人もいれば、よりよい待遇を求めて別の会社に転職する人も大勢います。
営業成績を上げることが求められる
資格よりもはるかに大切なのは、「営業成績をあげること」です。
担当する業務がなんであれ、営業職には顧客を掴んで目に見える成果を出し続けることが求められます。
営業職を続けていくには、ノルマをこなすこと、そしてノルマに追われる厳しさに耐えることが必要です。
成績に基づいて評価されたほうがモチベーションが上がるというタイプの人や、成績が数字でわかりやすく出る方が好きだという人であれば、不動産営業としての適性があるでしょう。
不動産営業の学校・学費
学歴が問われることはほぼない
大手不動産会社に就職を希望する場合は大卒などが採用条件になりますが、それを除けば、多くの不動産営業の求人は学歴不問で、採用された後も学歴が問われることはありません。
専門的な知識も就職した時点ではほとんど不要で、実際に働きながら宅建業法や建築基準法などの法律知識を学んでいくことが一般的です。
ただ、多くの営業職は、顧客や物件を一日中回り続けなければならないため、学歴や知識よりもむしろ、体力・持久力が問われるといえるかもしれません。
なお、不動産を取り扱う上では、法律知識があると業務に非常に役に立つため、法学部や法律系専門学校に進学して専門知識を勉強して入社するという道もあります。
不動産営業の資格・試験の難易度
宅地建物取引士は取得していれば有利
宅地建物取引士
不動産営業に求められる資格として、「宅地建物取引士」、通称「宅建士」があります。
不動産会社として営業するためには、その店舗や事務所ごとに、勤務する5人に1人以上の割合で、宅地建物取引士の有資格者を配置しなければならないと法律で定められています。
契約時に必須となる重要事項の説明の際にも宅地建物取引士が必要になりますから、資格を有していれば就職の際に有利ですし、待遇面でも優遇されることが期待できます。
難易度は合格率20%前後と決して高くありませんが、受験資格はなく誰でも試験を受けられますし、営業にとっても努力する価値は十二分にあります。
民間の資格予備校では多数の対策講座が開講されており、それらを受講する人もいますが、通信教育などを利用して、独学で合格を目指すことも可能です。
関連資格は多数ある
宅地建物取引士のほかに、以下のような資格を持つ人も多いです。
・公認不動産コンサルティングマスター
・FP(ファイナンシャルプランナー)
・マンション管理士
・建築士
・司法書士
・土地家屋調査士
・不動産鑑定士
・インテリアコーディネーター
・住宅ローンアドバイザー
不動産に関する資格は、国家資格から各種団体の公認資格まで、さまざまなものがあり、不動産関連の資格を複数保有しているという人も珍しくありません。
不動産営業は、不動産のみならず法律・税金・建築・測量・資産運用など、さまざまな知識が必要になるため、興味のある分野や業務に必要なものにチャレンジしてみるのもよいでしょう。
不動産営業の給料・年収
稼げる人と稼げない人の差が大きい
担当する業務内容によって差がある
不動産営業の給料は、年収400万円~600万円程度がボリュームゾーンとなっているようです。
ただし、同じ不動産営業でも、賃貸仲介、住宅販売、リフォームなど担当する業務内容によって働き方などは異なり、給料にも差が出てくるといえるでしょう。
扱う商品(不動産)の金額の違いもあり、賃貸仲介よりも売買仲介を行うほうが給与水準は高めの傾向にあるようです。
「基本給」と「歩合給」
不動産業界では多くの場合、「インセンティブ制度」が導入されており、固定の「基本給」と自分の成果に応じて支払われる「歩合給」に分かれています。
なかには基本給がなく「完全歩合制(フルコミッション)」で働く不動産営業もいます。
基本給はそこまで高い金額ではありませんが、歩合給がつくため、個人の売上によって収入は変わってきます。
他の業種と比較して歩合給の割合が大きく、その月の営業成績がよければ月収100万円を超えるケースもある一方で、成績をあげられなければ基本給のみで月収15万円となることもあるようです。
また歩合給には年齢や役職、勤務年数は関係ありませんので、20代のうちの年収1000万円を得ることも可能です。
不動産営業は、経験や実績よりも実力がものをいう職業といえるでしょう。
また、「宅地建物取引士」といった不動産業関連の資格を取得することで、基本給に加えて「資格手当」がつく会社もあります。
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不動産営業の現状と将来性・今後の見通し
需要は変わらないが、業務内容は変化の兆し
不動産は人々の暮らしに必要不可欠であり、不動産取引が今後もなくなることはありませんが、人口減少・世帯数の減少に伴って、住宅の取引件数は減少傾向にあります。
それに代わって増加しているのが投資的性格の強い「収益不動産」の取引です。
ゼロ金利政策が長引く現状、新たな運用先として不動産を選択する投資家や、遊休地の活用方法としてアパートを建てる地主が増えているようです。
不動産営業の取り扱う業務も少しずつ変わっていくものと予想され、今後は競合他者との差別化を図れるような独自のフィールドを見つけ出すことができるかがカギとなるでしょう。
市場が先細っていくなかでも活躍し続けるためには、時代やニーズの変化に合わせて柔軟に対応していくことが必要です。
不動産営業の就職先・活躍の場
就職先の選択肢は多数あり、求人数も多い
不動産営業の就職先は幅広く、誰もが知る東証一部上場企業から個人で行っている不動産屋まで、業務内容も規模も待遇も忙しさもさまざまです。
顧客と共にゼロから注文住宅を建てることも、1億円を超えるタワーマンションを販売することも、上京してきた学生にワンルームを紹介することも、くくりでいえば同じ営業職です。
就職先を選ぶ際には、後から後悔することのないよう、自分がどんな営業をしたいのか、どんな働き方をしたいのか、具体的に希望を固めておくとよいでしょう。
また入れ替わりの激しい業界であるため、求人は全国的に見ても多くあり、求人情報を探すのに困ることはないでしょう。
不動産営業の1日
いつ来店客が来てもいいよう準備しておく
不動産営業の賃貸仲介では、「カウンターセールス」と呼ばれる内勤の営業スタイルが取られているケースが一般的です。
1日のスケジュールはお客さまの来店するタイミング次第で流動的に変わりますので、臨機応変に対応できるよう、事務作業などを手際よく済ませておくことがポイントになります。
<内勤で働く不動産営業の1日>
関連記事不動産営業の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
不動産営業のやりがい、楽しさ
努力して結果を出せばその分だけ評価をされる
不動産営業は、自分の努力した結果が「成約件数」などの個人の数字として目に見えやすい仕事です。
不動産営業の給料は、歩合制の割合がかなり高く設定されているケースが一般的であり、賃貸や売買の契約成立時に得られる「仲介手数料」の一部が、直接自分の給料に還元される仕組みとなっています。
月々の給与も自分のがんばり次第でアップしていきますし、若くして高給を得られる可能性がある点が魅力といえます。
また、依頼者や大家さん、建設業者などとの話し合いや交渉を経験していくことで、コミュニケーション能力を高められることもメリットです。
不動産は誰にでも必要なものですから、さまざまな人と出会えることもこの仕事の楽しさといえるでしょう。
不動産営業のつらいこと、大変なこと
さまざまな数字に追われ続ける生活
営業職は日々、「成約件数」や「仲介手数料総額」といった自分に課されたノルマを意識して働かねばならず、うまく成果があがらないときには精神的にきつい場合があります。
不動産は一般的な買い物とは違ってきわめて高額であり、そう簡単に売れるものではありません。
ときにはどれだけがんばっても成約に結び付かないこともあり、営業成績しだいでは先輩や上司に厳しい言葉をぶつけられてしまいます。
また多くの不動産会社は給与に歩合やインセンティブを導入していますので、その月の成績によって収入が大きく上下します。
不動産は住む人の生活に関わる、人生にとって大きな買物ですので、毎月コンスタントにそういった取引を成約させることは至難ですが、営業職には常に結果を出し続けることが求められます。
不動産営業に向いている人・適性
プレッシャーに負けない精神的にタフな人
不動産営業は非常にシビアな世界ですので、プレッシャーを楽しみ、ストレスを力に変えられるタイプの人や、結果にこだわることのできる人が向いています。
不動産営業は、あいまいな基準ではなく明確な成果で評価される仕事であるため、性格的にハッキリしたことを好む人や、何事にも公平性を求める人には、不動産営業の適性があるでしょう。
また不動産営業は、さまざまな面でストレスのかかりやすい仕事です。
日々のノルマとも戦っていかなくてはならないため、不動産営業には、ちょっとやそっとのことではへこたれない精神的なタフさ、「ストレス耐性」が必要です。
嫌なことやうまくいかないことがあっても、すぐに気持ちを切り替えて前を向ける人が向いているでしょう。
関連記事不動産営業に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
不動産営業志望動機・目指すきっかけ
収入の大きさと影響力の大きさが魅力
不動産営業の志望動機として最も多いのは高収入に憧れて、というものです。
また不動産という人々の生活に密接に結びついた仕事に携わりたいというのも志望動機として一般的です。
戸建て住宅やマンションは、多くの人にとって一生に一度の、人生で最大の買い物であり、そこに住む人々の生活を変える影響力を持っています。
そうした人生を左右するような大きな場に関わり、その手助けをしたいということも、不動産営業を目指すきっかけとなっているようです。
不動産営業の志望動機はどのようなものだとしても、熱意さえ伝えることができれば問題ありません。
しっかりと自分の言葉で話すことができれば、内定を得ることはさほど難しくはないでしょう。
関連記事不動産営業の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
不動産営業の雇用形態・働き方
働き方は多様化していく傾向にある
不動産営業は基本給と歩合給が定められた正社員として雇用されることが一般的です。
ただし、完全歩合制のケースもあり、そうした場合の雇用形態の多くは契約社員です。
成果が上がらなければ給料はゼロですが、出勤日数や出勤時間にとらわれないというメリットがあるため、必ずしも固定給が必要でない専業主婦などの女性を中心に増えつつあります。
不動産営業はその高い離職率から常に新規採用を必要としているため、今後も雇用形態は多様化してくるものと考えられます。
不動産営業の勤務時間・休日・生活
顧客を優先するため休日は不規則になる傾向
不動産営業は基本的に自分のシフトや予定よりも顧客のスケジュールを優先しなければならないため、勤務時間や休日はどうしても不規則になりがちです。
オフィス勤務の場合は、一般的なサラリーマンと同じように9時~18時前後で働くケースが一般的です。
外回り型の不動産会社は、店舗の営業時間ではなく、早朝や夜遅い時間帯に働くことも多く、働く時間帯は店舗型より不規則になりやすい傾向にあります。
顧客が働いている場合は、仕事終わりを待って夜遅くのアポイントになることが多いですし、土日には物件の現地説明会などの集客イベントが開催されることもよくあります。
契約の予定があれば休日でも出勤しなくてはなりませんし、できる営業マンほど、勤務時間は長びき、休日は少なくなる傾向にあります。
不動産営業の求人・就職状況・需要
求人は多数あるので条件をよく見ることが大切
不動産営業の求人は時期や場所を問わず多数あります。
これは、不動産業界は人材の出入りが激しいのが特徴で、高収入を夢見て就職したものの、ノルマがこなせなかったり、体力的にきつかったりして辞めていく人が多いためです。
新しいなり手の需要は常にあり、不動産業務は地域を問わず全国にあるため、求人を探すのはさほど難しくないといえるでしょう。
求人を選ぶ際には、どのような営業形態なのか、何を主に取り扱っているのかといった業務内容だけでなく、給与体系やノルマの量、勤務時間、休日設定などの待遇をよく確認しましょう。
「高収入・高時給」を標榜する求人は少なくありませんが、その文言に捉われず、中身をよく吟味することが重要です。
不動産営業の転職状況・未経験採用
不動産業界は非常に出入りが激しい
不動産業界は転職率、離職率共に高いことで知られており、ノルマのきつさやストレスから多くの人が短期間のうちに業界を去ってしまいます。
そのため、各企業は常に、他社や他業界からの人材を募集しています。
企業によって仕事内容やノルマの大小、勤務体系、給与、職場の雰囲気が大きく違いますので、自分にあった働き方を求めて転職する人が多いです。
人材確保のために各社は未経験者も歓迎しており、企業によっては実務の勉強会を定期的に開催したり、宅地建物取引士の資格取得を補助したりしています。
未経験から不動産営業を目指す場合は、人材育成に積極的で、教育制度の充実している職場を選ぶとよいでしょう。
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不動産営業ではどんな勉強が必要?
不動産に関係する法律や金融知識が必要
不動産営業として真っ先に求められるのは、法律に関する知識です。
一連の法律知識は、非常に複雑な不動産取引を手掛けるうえで、大前提となるものであり、入社後に研修を受けたり実務を通したりしながら、基礎的な分野・重要な分野から、順番に身につけていくことになります。
法律に次いで重要になるのが、金融に関する知識で、月々の返済可能額や適正な借入金額、期間、金利など、お金のことに関する相談を受ける機会も非常に多くなります。
万一のときに備えた生命保険や損害保険など、金融商品一般に関する知識と合わせて、学んでいくことが望ましいでしょう。
また建築に関する知識が求められるケースも数多くあります。
とくに、売買仲介や自社物件の販売を手掛ける場合は、建築に関する知識は非常に重要です。