ケアマネジャーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介・役割
本記事では、現在の福祉や介護業界において欠かせない存在となっている、ケアマネジャーの業務内容やその役割について詳しく紹介します。
ケアマネジャーの仕事とは
ケアマネジャーは、正式名称は「介護支援専門員」といい、通称では「ケアマネ」とも呼ばれます。
平成9年に、介護を必要とする高齢者を社会全体で支えるための「介護保険制度」がスタート。ケアマネジャーは、そのサービスの中核を担うための職種として設置されました。
ケアマネジャーは、介護を必要とする人(サービス利用者)やその家族から依頼を受けると、相手の現在の状況や困りごとをヒアリングします。
そのうえで「どのような介護が必要なのか?」「どのような生活を望んでいるのか?」を考えて、具体的な「ケアプラン(介護計画)」を立てていきます。
どのような介護サービスを、いつどこで受けるのかを計画し、実際にサービスを利用できるまでにすることを「ケアマネジメント」ともいいます。
ケアマネジャーの業務内容
ここでは、ケアマネジャーの業務をご紹介します。
業務内容は、大きく以下の5つに分けることができます。
業務内容1.高齢者やその家族との介護相談
ケアマネジャーの仕事は、高齢者とその家族からの介護相談から始まります。
依頼は本人や家族から入ることもあれば、地域包括支援センターなどから入ることもあります。
その相談内容をもとに、よりよい介護サービスを受けられるようサポートしていきます。
適切なサポートをするには、高齢者と関わりのあるすべての人やサービス(家族・親族・かかりつけの病院や介護サービス)などと連携をとることが必要です。
利用者がすでに介護サービスを使っている場合は、主治医や事業所から情報を入手し、定期的にサービス担当者会議(高齢者と利用するサービスの担当者、主治医などが集まり話し合いをおこなう場)をセッティングします。
業務内容2.要介護認定の書類作成代行
「新たに介護保険サービスを利用したい」「病気やけがで今までよりも介護が必要になった」といったときには、地方自治体への要介護認定の手続きが必要です。
要介護認定とは、介護が必要な状態であると市区町村が認定することで、この認定を受けることによって、介護保険の給付を受けられるようになります。
しかし、要介護認定の手続きには専門的な知識が必要な上、さまざまな書類を作成しなくてはなりません。
そこでケアマネジャーが高齢者または家族に代わり申請書類を作成し、認定調査を受ける手配を行うことでスムーズに手続きができます。
業務内容3.ケアプランの作成
ケアプランの作成は、ケアマネジャーの多様な業務のなかで、最も重要な仕事といえるでしょう。
ケアプランは、介護サービスの説明書とスケジュール表のようなもので、ケアプランなしには介護サービスを受けることはできません。
「訪問介護」や「施設のデイサービス」など介護の方法はさまざまであり、ケアマネジャーはその中で最適なプランを考えます。
ケアプランは高齢者とその家族の要望から、どんなサービスがその人に最も必要なのかを吟味してつくられ、サービスの目的・サービスを受ける日時・サービス内容などが記載されています。
高齢者や利用する介護サービス事業所にも配布されるので、わかりやすい言葉でていねいに作成することも大切です。
またケアプランに沿って介護サービスを提供するためには、実際に支援を行うサービス事業者の選定が必要です。
利用者の意向を尊重してどの事業者を選定するのかを決定し、連絡・調整を行います。
業務内容4.モニタリング
実際に介護サービスが開始されると、ケアマネジャーは利用者の元へ定期的な訪問をし、健康状態やサービスなどをモニタリングします。
- サービスはしっかりと提供されているか
- サービスが利用者に合っているか
- 利用者の状態に変化はないか
- 利用者本人や家族がサービスに満足しているか
上記を確認し、必要に応じてケアプランの変更も行います。
業務内容5.ケアマネジャーのその他の業務
上記に挙げたもの以外にも、ケアマネジャーには以下のようにさまざまな業務を行っています。
- 介護保険の給付請求
- 各介護サービスとの連絡調整
- 新規利用者の獲得
ケアマネジャーは、高齢者が安心して介護サービスを受けるために、福祉・介護保険の専門的知識を生かして活躍する、縁の下の力持ちといえるでしょう。
ケアマネジャーの役割
ここからは、ケアマネージャーの社会における役割を、さらに詳しく説明します。
利用者の課題を明らかにしていく「アセスメント」を行う
ケアマネジャーは「要介護認定」を受けた人に対して、どのような介護サービスを使えば、よりよい生活を送られるかを指南する役割を担っています。
利用者が自立した日常生活を営めるように、支援する上で解決すべき課題を把握することは、「課題分析」または「アセスメント」と呼ばれます。
これは、ケアマネジャーの重要な役割のひとつです。
介護サービスはさまざまな種類があり、要介護者やその家族自身が、どういったサービスをいつ使えばよいのか選ぶことは非常に難しいものです。
そこで、ケアマネジャーは以下のような介護サービスに関わる事柄を一手に引き受けています。
- 介護サービスやサービスを行う事業所の情報を収集する
- 担当する要介護者一人ひとりに合ったサービスを紹介する
- 介護サービス等の利用計画を立てる
- 実際にサービスを利用した後のフォローをする
こういった役割を果たすために、ケアマネジャーには、介護サービスに関する正しく幅広い知識と、要介護者が必要とする適切なサービスを選び取る力が求められます。
さまざまな関係者と連携を図り、介護チームの調整役となる
在宅介護を受ける要介護者の場合、たいていは複数のサービスを利用することになるうえに、家族やかかりつけ医などさまざまな人が介護に関わってきます。
ケアマネジャーはそのチームの調整役といえ、要介護者に関係するすべての人やサービスを総括していくことになります。
たとえば、ケアマネジャーが主催する「サービス担当者会議」というものがあります。
この場は、サービスを利用している要介護者やその家族、介護サービスを提供しているすべての事業所の担当者、かかりつけ医などが出席し、よりよい支援が受けられるための話し合いをする機会となります。
ケアマネジャーは、会議の主催者として日程調整や司会進行役もこなさなくてはならず、自身の力量が試される場でもあります。
介護の専門家としての役割
ケアマネジャーは、介護職員のように、自分自身で身体介護をするわけではありません。
しかしながら、介護保険の専門家として、介護を必要とする人や、その家族からの信頼は絶大なものとなります。
担当する要介護者が、自分の計画したサービスを利用することで自立度が改善した時の喜びは何ものにも代えがたく、やりがいに満ちた仕事といえるでしょう。
ケアマネジャーの就職先と活躍の場
ケアマネジャーには、大きく分けて2つの活躍の場があります。
それぞれの特徴について詳しく説明します。
活躍の場・勤務先1.居宅介護支援事業所(居宅ケアマネ)
居宅介護支援事業所とは?
居宅で働くケアマネジャーは、「居宅介護支援事業所」といわれる場所に勤務しています。
居宅介護支援事業所とは、在宅で介護を受けている高齢者に、居宅介護サービスを提供するために必要な支援をする場です。
ここでは、すべての業務をケアマネジャーが主体となって行います。
人が介護を必要とするとき、真っ先に相談をする場所が居宅介護支援事業所だといってもよいでしょう。
最近では、どの病院でも入院の日数が短くなっています。
しかしながら、医療的なケアは必要なくとも、家族や介護サービスの力を借りなくては生活できない高齢者は大勢います。
そのような自宅で暮らす高齢者に対して介護サービスを紹介し、実際にいつ、どんなサービスを受けるかの計画を立てるのが、居宅介護支援事業所のケアマネジャーです。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの仕事
居宅介護支援事業所のケアマネジャー1人が担当する利用者は、標準で35人以下と法令で定められています。
また、通常は1人の利用者に対し、1人のケアマネジャーが付きます。
公的な介護サービス(ホームヘルパーやデイサービスなど)を利用するためには、まず利用を希望する高齢者が、どのくらい介護が必要な状態なのかを審査する「要介護認定」を受けなくてはなりません。
要介護が認定されると、ケアマネジャーは利用者のもとへ足を運び、介護に関する相談や要望をヒアリングします。
また、こうした業務に従事する一方で、更新研修や実務従事者基礎研修、専門研修など、専門性を高めるための研修にも参加することを求められます。
さらに休日や夜間は交替で緊急専用電話を携帯し、緊急の要件があればすぐに利用者のもとへ駆けつけるなど、いわば自宅での介護のフルサポート役として働きます。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの役割
一般の高齢者は、介護サービスの知識をほとんどもっていないため、与えられるサービスをそのまま利用しているのが現状です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは利用者の高齢者の代弁者として、担当する高齢者に、いま何が一番必要なのかを考える役割を担います。
高齢者の立場に立った支援を行うことが求められます。
活躍の場・勤務先2.介護保険施設(施設ケアマネ)
「介護保険施設」でも、ケアマネジャーが活躍しています。
介護保険施設のケアマネジャーの主な仕事内容は、以下の通りです。
- 施設で暮らす高齢者の要介護度認定の更新など各種手続きの代行や生活相談を行う
- 介護計画を作成し施設でよりよい支援を受けられるようサポートする
施設ケアマネが活躍する介護保険施設
以下で、施設ケアマネが活躍する代表的な介護保険施設を挙げていきます。
介護老人保健施設は、病気療養後、病院を退院となったものの、すぐに自宅での生活を送るには不安が残る高齢者を対象に、在宅生活に戻るためのリハビリや介護を受けることのできる施設です。
そのため、入所期間は3か月から半年と比較的短期間であることが特徴です。
特別養護老人ホームは、24時間体制の介護が必要な人や、家庭事情などを理由に、一人での生活が困難な高齢者が入所する施設です。
公的な事業のひとつで、特定の基準を満たしている人のみが入居できます。
いったん入所すると、看取りまでその施設で過ごす利用者が多く、終の棲家としての役割も重要視されています。
介護療養型医療施設は、病状が比較的安定しているものの、医療的なケアやリハビリが必要な高齢者を対象とした施設です。
医師により在宅での生活が可能と診断されると退院となります。
有料老人ホームで働くケアマネジャーの仕事
上記以外に、ケアマネジャーの比較的新しい職場として「有料老人ホーム」があります。
有料老人ホームは、営利を目的とした民間企業が運営しています。
サービスはそれぞれの企業により異なりますが、公的機関よりもサービスが充実しているところが多く、一般的にはプライバシーに配慮した個室の生活空間が提供されます。
ホテルのように優雅な食事が楽しめるレストランやカラオケルーム、シアタールームなどが完備されているケースもあります。
また、医療機関と連携して医療サービスも受けられるところもあります。
ケアマネジャーは、こうした施設でも介護保険を利用する人の相談に乗ったり、ケアマネジメントを行ったりしています。
実際には各企業独自の方針があり、それによってケアマネが担う業務の範囲は異なります。
どのような事業所に勤めても、基本的なケアマネジメント業務に変わりはありません。
ただし、介護付き有料老人ホームであれば施設ケアマネに近い仕事を、住宅型有料老人ホームであれば居宅ケアマネに近い仕事をするなど、若干の違いはあります。
有料老人ホームの種類
有料老人ホームには、いくつかの種類があります。
入居すると、介護を必要としたとき、施設でそのまま介護サービスを利用できます。
施設というよりはアパートの個室に居住して、生活援助やレクリエーションなどのサービスを受けられます。
軽度の要介護の利用者であれば、外部の訪問介護を利用してホームでの生活が可能です。
独居でひとりでの生活に不安を持っているものの、介護は必要としない人が対象です。
介護が必要になった際には、退去しなくてはいけません。
ケアマネジャーの仕事の流れ
-
1.相談を受ける
介護を必要とする本人やご家族、地域包括支援センターなどから相談を受けます。どんなことに困っているのか、生活状態はどのようになっているかなどを聞き取ります。
-
2.要介護認定のための書類を作る
介護を必要とする人やご家族に代わり、地方自治体に提出する要介護認定のための書類を作成します。 -
3.ケアプランの検討・作成
要介護者がどのような状態なのかをもとに、最適な介護サービスの内容を検討し、ケアプランとして作成します。 -
4.モニタリング
介護サービスがスタートしてからも、サービス利用者のところへ定期的な訪問をして、健康状態やサービス内容に問題がないかなどをモニタリングします。
ケアマネジャーと関連した職業
ケアマネジャーと似た仕事に「ソーシャルワーカー」があります。
ケアマネジャーの仕事は、要介護認定を受けた人やその家族と、介護保険サービスの橋渡しを行うことです。
一方、ソーシャルワーカーの仕事は、病気やけが、あるいは高齢や障害などを抱える人やその家族に対し、日常生活を送るうえでの不安や困りごとの支援をすることです。
介護分野に限らず、社会福祉全体に関わり利用者の早期社会復帰や社会参加を支援していく点が、ケアマネジャーとの違いです。
ケアマネジャーの仕事内容のまとめ
ケアマネジャーは正式名称を「介護支援専門員」といい、介護を必要とする高齢者と介護保険サービスをつなぐ大切な役割をもっています。
介護サービスを必要とする高齢者やその家族からの介護相談を受け、彼らに代わって申請書類を作成し、認定調査を受ける手配をします。
その後、どんなサービスが必要なのかを吟味してケアプランを作成し、定期的な訪問で健康状態やサービスなどのモニタリングをします。
また、ケアマネジャーは、自宅で生活する人を担当する「居宅ケアマネ」と、特別養護老人ホームなどの施設に暮らす人を対象とした「施設ケアマネ」に大きく分けられます。