司法書士試験の難易度は? 実質合格率は3%より高い?
司法書士試験に受験資格はありませんが、その難易度は非常に高く、「司法試験」に次ぐレベルといわれており、例年の合格率は4~5%程度です。
この記事では、司法書士試験の内容、難易度・合格率、勉強方法などについて詳しく解説しています。
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司法書士資格とは
まずは、司法書士資格とはどのようなものなのか、その概要を説明します。
司法書士とはどんな資格?
司法書士は、国家資格のひとつであり、法律に関する書類作成や法律上の手続きを代行する専門家です。
司法書士の主な業務内容は、以下の通りです。
- 土地や建物の不動産登記
- 法人の商業登記
- 相続手続き
- 成年後見制度手続き
- 債務整理
なかでも不動産登記・商業登記は、司法書士資格を持つ人だけが手掛けられる「独占業務」であり、司法書士は「登記のスペシャリスト」とも呼ばれます。
司法書士の資格を得る方法は、大きく分けて2パターンあります。
多くの人は、この記事でも詳しく紹介する「1」のルートを選択して司法書士を目指しています。
司法書士資格取得のメリットは?
司法書士試験は難関ですが、それを突破して司法書士資格を得た人は、苦労に見合うだけのメリットを享受できるでしょう。
司法書士資格取得のメリットとして、以下のようなことが挙げられます。
- 専門性の高い業務に携わることができる
- 就職・転職時に有利
- 独立・開業を目指しやすい
司法書士は、その専門性が何よりの強みになります。
不動産登記・商業登記関連の業務は司法書士の独占分野ですし、高度な専門性が求められる仕事をするからこそ、収入面でも優遇されることが多いです。
司法書士の主な勤務先としては司法書士事務所のほか、一般企業の法務部や、金融業界・不動産業界などでのニーズもあります。
また、司法書士としての知識・経験を発揮し、独立・開業を目指す人もいます。
開業して事業が軌道にのれば、年収1000万円以上を安定的に得ていくことも不可能ではありません。
なお、司法書士取得後に所定の研修などを受けて「認定司法書士」になると、簡易裁判所で取り扱う少額の訴訟事件については、弁護士と同じ代理人業務を行うことが可能です。
司法書士試験の出題内容・形式
司法書士試験は、「7月実施の筆記試験」「10月実施の口述試験」の2段階選抜形式です。
筆記試験に合格した人だけが口述試験に進むことができ、口述試験を突破すると最終合格となります。
筆記試験
筆記試験は午前の部と午後の部に分かれ、以下の形式で実施されます。
試験内容は範囲が広く、また問われる法解釈のレベルも高度です。
合格のためには、午前の択一問題・午後の択一問題・午後の記述問題の3つすべてで基準点を満たし、かつ合格点に届いてなければなりません。
口述試験
口述試験の内容は、口頭での会話形式で出題された設問に対して、口頭で回答する形式の試験です。
筆記試験のようにじっくりと考える時間の余裕がなく、その場で機転を働かせて即座に回答する必要がありますが、筆記試験ほど難しくはありません。
実際、司法書士試験の口述試験は不合格になることはほとんどなく、合否を決定するというよりも、受験生のレベルを探るために行われているといわれます。
司法書士試験の実質的な山場は、7月の筆記試験にあるとみておいて間違いありません。
司法書士試験の受験資格
司法書士試験には、受験資格がありません。
そのため、学歴・年齢・実務経験などは問わず、誰でも受けることが可能です。
「令和5年度司法書士試験の最終結果について」によれば、合格者の最低年齢は19歳で1人、最高年齢は82歳で1人となっています。
幅広い年代・職業の人が受験していることが特徴です。
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司法書士試験の難易度は高い?
司法書士試験の合格率は4~5%
司法書士試験の合格率は、毎年4~5%前後という非常に低い水準で推移しています。
一方、同じ法曹資格である「弁護士・検察官・裁判官」になるために受験する「司法試験」の合格率は30~40%前後です。
司法試験は、そもそも受験資格を得るためのハードルが非常に高いために、試験自体の合格率はやや高めという事情もありますが、合格率だけをみれば司法書士試験の方が圧倒的に低いです。
また、司法書士試験については「毎年の合格者を一定数に絞る」という方針が続いており、合格率は低いままです。
今後についても同程度の合格率が維持される見通しで、狭き門となっていることで司法書士は資格の価値が守られているともいえます。
司法書士試験の合格率が低い理由は?
司法書士試験の合格率が低い最大の理由は、そもそも難易度が高い試験であるからです。
司法書士試験には科目別の合格制度がなく「一発勝負」であること、さらに試験が絶対評価ではなく「相対評価」であることと、各科目で基準点による「足切り」があることなどが、この試験をパスする難しさです。
試験科目は11科目もあり、合格基準とされる「上位5%以内」に入るためには、各科目について確実に知識を深めていかなくてはなりません。
また、司法書士試験の合格率が低いもうひとつの理由として、学歴・実務経験などの受験資格が存在せず、誰でも受験できる試験であることが挙げられます。
受験者の中には、あまり本気度が高くない「記念受験」の人も一定数含まれていると考えられます。
実際、受験志願者のうち約2割が欠席したり午前中の部だけ受けたりしています。
司法書士試験の合格率は4~5%前後で推移していますが、本気で勉強して受験している人だけでみれば、実質の合格率はもう少し高いでしょう。
司法書士試験令和3年度の合格者の例です。
人数(人) | 合格者割合 | |
---|---|---|
受験者数 | 11,925 | - |
午前基準点クリア | 3,509 | 29.4% |
午後基準点クリア | 2,515 | 21.1% |
択一式クリア | 2,082 | 17.5% |
記述式基準点クリア | 1,113 | 9.3% |
総合合格点クリア | 686 | 5.8% |
合格者数 | 613 | 5.1% |
受験者約1万2千人のうち、午前・午後の択一式問題の基準点合格者は約2千人、そのうち記述式をクリアしたのは約千人。
すべての基準点を満たした人の中から、合格したのは成績上位者の約7百人です。
口述試験は、欠席するなどしなければ合格するため、筆記試験の合格者が実質の合格者といえます。
司法書士試験の難易度偏差値は?「税理士」「弁理士」「行政書士」と比較
司法書士試験は、難関と言われている税理士よりも難易度が高いと言われています。
また、司法書士と同じく受験資格に制限のない弁理士の合格率は6~7%で、司法書士の合格率4~5%前後と比較すると高くなっています。
司法書士試験には科目別の合格がなく、一発勝負であることも難易度が高いと言われる理由です。
よく比較される行政書士は、基準点に達すれば全員合格の「絶対評価」で、合格率は例年10%です。
代表的な資格試験と例年の合格率の目安は以下の通りです。
資格 | 例年合格率目安 |
---|---|
司法書士 | 4~5% |
行政書士 | 10%前後 |
税理士 | 12~17% |
公認会計士 | 10%前後 |
社会保険労務士 | 7%前後 |
宅地建物取引士 | 15%前後 |
不動産鑑定士(論文) | 10~15% |
弁理士 | 6~7% |
通関士 | 10%前後 |
ただし、合格率は一つの目安です。
たとえば、公認会計士や税理士の国家試験は科目別合格制度があり、何年かに分けて全科目合格を目指す人も少なくありません。
合格率には数年かけて合格科目を積み上げてきた人も含まれるため、あくまでも参考程度に見ておくとよいでしょう。
司法書士試験の勉強時間・勉強方法
司法書士試験の勉強方法の種類
資格予備校・スクールに通う
司法書士試験は難関試験ゆえに、すべてを独力で勉強していくのは厳しいと考える人が少なくありません。
司法書士試験の主な勉強方法のひとつが、資格予備校・スクールへの通学です。
司法書士試験の通学講座で有名なのが「TAC」「LEC」「伊藤塾」などです。
これらは知名度が高く実績も豊富なので、安心感は抜群といえるでしょう。
ただし、他の学習方法や中小規模の予備校・スクールに比べると費用は割高で、入学金もあわせると50万円程度かかる講座が目立ちます。
そのぶん、ポイントを押さえたわかりやすい教材が用意がある、多数の合格者を輩出している有名講師の指導が受けられる、合格まで徹底的にサポートしてくれるなど、さまざまな魅力があります。
通信講座を受ける
上記で紹介した大手資格予備校・スクールに加え、「アガルート」「スタディング」「ユーキャン」「クレアール」など、たくさんの会社が司法書士試験講座を提供しています。
費用は10万円程度のものから50万円程度のものまで幅がありますが、講座によっては通学講座よりも費用をかけずに学ぶことが可能です。
教材の内容・カリキュラムは講座によって異なり、中にはWebやスマホを活用することでスキマ時間を活用して学べる講座もあります。
通信講座の場合、疑問点が出たときに講師にメール等で質問ができるかどうかのサポート体制も重要なポイントです。
各講座の特徴をよく比較して、ご自身にとって最適な通信講座を選んでください。
独学
独学の最大のメリットは、何といってもコストを抑えられることでしょう。
独学であれば、市販の参考書や問題集を購入し、必要最小限のお金で合格を目指すことも可能です。
とはいえ、司法書士試験はやはり難易度が高いため、勉強中に疑問点や不明点が出てくる可能性も十分に考えられます。
そうしたとき、予備校・スクールや講座のように気軽に講師に質問できないのは独学のデメリットです。
また、毎日継続的に勉強を続けていく意思やモチベーションの維持も重要です。
勉強に行き詰まり、試行錯誤していろいろな教材に手を出したり情報を集めたりしているうちに時間もお金も想定以上にかかってしまったという人もいるため、慎重に選択する必要があるでしょう。
司法書士試験の勉強時間は約3000時間・勉強期間は1~3年
司法書士試験は、法曹資格のなかでは司法試験に次ぐ難易度とされ、合格するまでには3000時間ほどの勉強時間が必要といわれています。
1年で合格したいのなら1日に約8時間、2年での合格を目指すのであれば1日に約4時間の勉強時間が必要な計算です。
フルタイムで働きながら試験合格を目指す人は、3年ほどかけて合格を目指していくこともあります。
ただ、大学などで法律について学んでいた人の場合、まったく知識がない人よりも、司法書士試験の勉強はスムーズに進めやすいでしょう。
自身のライフスタイルや知識量、勉強に使える時間をよく考えて、計画を立てていくことが重要です。
司法書士試験は独学で合格できる?
司法書士試験には受験資格がないため、学歴は関係なく、また独学でも合格を目指すことは可能です。
問われる知識量や知識レベルを考えれば、「法学部出身者でないと太刀打ちできないのでは?」と不安に思うかもしれません。
しかし、合格できるかどうかは学習方法次第であり、毎年法学未修者も多数合格しています。
要点を抑えて、効率よく試験対策を行うことが資格取得への近道といえるでしょう。
しかし、繰り返しにはなりますが、司法書士試験は片手間の勉強で合格できるような簡単な試験ではありません。
ご自身のライフスタイルとも照らし合わせ、本当に独学を長期間続けていく自信があるかどうかをよく考えて勉強方法を決めることをおすすめします。
場合によっては、リーズナブルに学べる通信講座を活用しながら効率よく勉強していくほうが、結果的にスムーズに合格に近づける可能性があります。
司法書士に独学で合格できる?メリット・デメリットは?
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令和5年度司法書士試験の受験者数・合格率の推移
司法書士試験受験者数の推移
司法書士試験の受験者数は、平成23年度試験以降、減少傾向にあります。令和5年度試験の受験者数は前年よりもやや増加し13,372人となりました。
過去10年間で受験者数は約半分になっています。
理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 少子化
- 景気回復により一般企業への就職者数の増加
- 親によるダブルスクールの費用負担の嫌厭
司法書士試験の受験者は、大学に通いながら、司法書士試験対策を行う専門学校へ通うダブルスクールが一般的です。
親への金銭的な負担が非常に大きいことも、司法書士試験受験者が減少する一つの要因と考えられます。
司法書士試験合格率の推移
司法書士試験の合格率は、例年ほとんど変化がありません。
令和5年度試験の合格率も5.2%という低い数字となっています。
受験者数が10年で半分まで減っているものの、合格率は上がっていません。
したがって、合格者数も減少しています。
令和5年度 司法書士試験合格者男女比率
令和5年度試験における司法書士試験合格者の男女の合格者数内訳は、男性が487人(70.1%)、女性208人(29.9%)となっています。
令和6年度司法書士試験の概要
試験日 | ・筆記試験:令和6年7月7日(日) ・口述試験:令和6年10月15日(火) |
---|---|
試験地 | 法務局および地方法務局の所在地など全国各所 |
受験資格 | 特に制限はありません。 |
試験内容 | |
試験科目 | (1)憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む。)および刑法に関する知識 (2)不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む。) (3)供託並びに民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識 (4)その他司法書士法第3条第Ⅰ項第Ⅰ号から第5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力" |
合格基準 | 午前の部の試験の多肢択一式問題、午後の部の試験の多肢択一式問題又は午後の部の試験の記述式問題の各成績のいずれかがそれぞれ一定の基準に達しない場合には、それだけで不合格 |
合格率 | 5.2%(令和5年度) |
合格発表 | 筆記試験結果発表:令和6年10月3日(木) 最終合格者発表:令6年11月5日(火) |
受験料 | 8,000円 |
詳細情報 | 法務省 司法書士 |
「司法書士試験の難易度・合格率」まとめ
司法書士試験は、法曹資格のなかでは「司法試験」に次ぐ難易度とされており、合格率は毎年4~5%前後という非常に低い水準で推移しています。
合格するまでには3000時間ほどの勉強時間が必要とされ、長期間にわたる努力が求められる中、いかに効率よく、ポイントを押さえて学習を進めていけるかが重要です。
試験内容は範囲が広く、また問われる法解釈のレベルも高度のため、民間の資格予備校・スクールに通って試験対策をする人も多くいます。