【2022年版】社会保険労務士試験の難易度・合格率

「社会保険労務士」は、人事・労務管理のエキスパートとして、各業界の企業をはじめとする多方面で活躍しています。

年に1回実施される社会保険労務士国家試験に合格すれば、社会保険労務士としての専門的な業務に従事することができます。

近年では「働き方改革」の推進によって、ますます注目度が高まっている人気国家資格の一つでもあります。

この記事では、そんな社会保険労務士試験の試験内容や難易度・合格率、勉強方法などについて詳しく解説しています。

この記事のポイント

・30代~50代の受験者・合格者が多い人気国家資格
・合格までに必要な勉強時間の目安は1000時間、1年程度の勉強期間が必要
・合格率は6~7%程度と低めだが、ポイントを抑えて継続的に勉強すれば合格可能

社会保険労務士資格とは

社会保険労務士とはどんな資格?

社会保険労務士は、企業にとっての重要な経営資源である「人材」に関するエキスパートであり、社会保険労務士国家試験に合格することで取得できる国家資格です。

社会保険労務士の資格を持つ人は、労働問題と社会保険制度の専門家として「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」などに応じています。

社会保険労務士の国家資格の誕生は、およそ半世紀前にさかのぼります。

戦後、労働三法の制定により、労務に関する専門家の存在が必要とされることになったことから、1968年に社会保険労務士法が制定。そして社会保険労務士の資格が生まれました。

参考:社会保険労務士法

社会保険労務士のニーズが大きくなるにつれて、この資格を取得する人も増えており、いまでは全国に44,063人の社会保険労務士が登録しています(2021年9月30日時点)。

社会保険労務士資格取得のメリットは?

現代の日本では、「働き方改革」や「少子高齢化」など、「働く人」や「労働」に関連する社会問題が多々発生しています。

また「年金問題」も複雑化しており、それらに関する専門的知識を持つ社会保険労務士が活躍できる場は、さらに広がりを見せています。

社会保険労務士は、企業にとっての重要な経営資源である「人材」に関するエキスパートとして、日本全国どこでも高く評価される資格です。

企業の人事部や総務部などで活躍することはもちろん、独立・開業して自分の力で事業を営んでいくことも可能です。

また、社会保険労務士には、法律によって「独占業務(特定の資格を持っている人でなければ携わることができない業務のこと)」が定められています。

社会保険労務士の場合は「1号業務」と「2号業務」と呼ばれるものが独占業務となっており、具体的には「各種書類の作成」「提出手続きの代行」「事務代理」などが該当します。(ただし例外として、弁護士には広く「法律事務」をおこなう権限が認められており、上記の「1・2号業務」に携わることも可能です)

独占業務があることは、この職業の専門性が高く評価されているということで、実際に就職時の待遇面でも優遇されることが多いです。

ただし、昨今は社会保険労務士資格の取得者数が増えて、競争が厳しくなっているのも事実です。

この資格取得を目指す人は、資格取得後のキャリアプランをよくイメージしておくとよいでしょう。

業務の親和性が高い「行政書士」「司法書士」「フィナンシャルプランナー」などの資格を併せて取得し、自分の強みを打ち出して成功を目指す人も増えているようです。

社会保険労務士試験の出題内容・形式

社会保険労務士試験は、試験日午前に行われる「選択式試験」と、午後に行われる「択一式試験」の2種類の試験で構成されています。

選択式試験

各問題の文章中に5つの空欄があり、選択肢の中から適切な語句を選択する試験形式です。

  • 80分間
  • 40点満点
  • 大問8つ(1つの大問につき小問5つ)
  • 合格基準点は合計28点以上かつ各科目3点以上

択一式試験

問題に対する解答を5つの選択肢から1つ選ぶ「五肢択一式」の試験形式です。

  • 210分間
  • 70点満点
  • 大問7つ(1つの大問につき小問10つ)
  • 合格基準点は合計49点以上かつ各科目4点以上

出題科目は以下の通りで、大きくは「労働関係科目」「社会保険関係科目」の2種類に分けられます。(※科目名の右に記載している表示は、左から選択式試験・択一式試験それぞれの出題数です)

労働関係科目
  • 労働基準法:3問・7問
  • 労働安全衛生法:2問・3問
  • 労働者災害補償保険法:5問・7問
  • 雇用保険法:5問・7問
  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律:0問・3問
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識:5問・5問
社会保険関係科目
  • 健康保険法:5問・10問
  • 厚生年金保険法:5問・10問
  • 国民年金法:5問・10問
  • 社会保険に関する一般常識:5問・5問

社会保険労務士試験では、択一式試験・選択式試験それぞれに合格基準点が定められており、両方をクリアしなくてはなりません。

それと同時に、選択式試験は各科目3点以上、択一式試験は各科目4点以上を取らなくてはならないという細かな基準も設定されています。(※ただし、年度ごとの出題難易度を考慮して、合格基準をもとに補正が行われています)

社会保険労務士試験の受験資格は?

社会保険労務士国家試験は誰でも受験できるものではありません。

本試験を受けるためには、「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」のどれか一つの条件を満たす必要があります。

学歴による受験資格
  • 大学、短期大学卒業
  • 大学(短期大学を除く)における修得単位数
  • 専門学校卒業
  • 厚生労働大臣が認めた学校卒業
  • 各種学校等卒業
  • 専門職大学、専門職短期大学卒業
  • 高等専門学校(5年制)卒業
  • その他(旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による大学予科又は旧専門学校令による専門学校を卒業し、又は修了した者)
実務経験による受験資格
  • 労働社会保険法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く)又は従業員として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
  • 国又は地方公共団体の公務員等
  • 日本郵政公社の役員又は職員
  • 全国健康保険協会又は日本年金機構の役員又は従業員
  • 社会保険労務士又は弁護士の補助者(社労士法人、弁護士法人を含む)
  • 労働組合の専従役員
  • 会社その他の法人(法人でない社団又は財団を含む)の労務担当役員
  • 労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の従業者
試験合格による受験資格
  • 社労士試験以外の国家試験合格
  • 司法試験予備試験等の合格
  • 行政書士試験の合格

試験申込み時には、受験資格を有することを明らかにすることができる書面「受験資格証明書」を提出する必要があります。

各受験資格の詳しい条件は、以下の社会保険労務士オフィシャルサイトにてご確認ください。

参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

なお、受験資格に「年齢」に関する要件はないため、上記いずれかの受験資格さえ満たしていれば何歳でも挑戦することができます。

社会保険労務士試験の難易度はどれくらい?

社会保険労務士試験の難易度・合格率

社会保険労務士試験の合格率は6~7%

社会保険労務士試験の近年の合格率は「6~7%台」で推移しています。

年度によって変動がありますが、2011年から2021年までの試験では、合格率が10%を超えたことは一度もありません。

ちなみに2015年の合格率は2.6%で、このような非常に低い数字になる年度も見られます。

合格率の低さからしても、社会保険労務士試験は決してやさしい試験ではありません。

とはいえ、公認会計士」など最難関国家資格ほどの膨大な勉強量は必要ないため、ポイントを抑えてコツコツと勉強していけば合格の光は見えてくるでしょう。

社会保険労務士試験の合格率が低い理由は?

社会保険労務士試験は、「公認会計士」や「司法書士」などと比べると難易度は低めではあるものの、それでもやや難しい部類に位置づけられる国家試験です。

社会保険労務士試験の合格率が低い理由として、主に以下のようなことが挙げられます。

  • 科目数が多く勉強範囲が膨大

  • 各科目で定められている「合格基準点」を超えないと不合格(足きり)になる

  • 試験当日の集中力が求められる(一発勝負)

社会保険労務士試験は、細かく分けていくと10科目で構成されており、出題範囲が広いことが特徴です。

たくさんの科目を勉強していかなくてはならないことは、この試験の大変な点の一つです。

また科目ごとに基準点が定められており、そこをクリアできないといわゆる「足きり」として、他の科目の出来がどれだけ良くても試験には不合格となってしまいます。

苦手科目をつくるわけにはいかず、全科目をまんべんなくしっかりと理解していかなくてはならないことに苦労する人もいます。

また、社会保険労務士試験は午前・午後あわせて290分間の長丁場です。

5時間ほどの試験で集中力を保ち続ける訓練をしておかないと、いざ試験当日、本来の力を発揮できずに不合格になってしまうかもしれません。

社会保険労務士試験の勉強時間・勉強方法

社会保険労務士試験の勉強方法

社会保険労務士試験の勉強方法の種類

スクール・予備校に通う

社会保険労務士の勉強方法としてスタンダードといえるのが、資格スクールや予備校に通うことです。

自分で勉強計画を立てるのが難しいと思う人や、他の受験生のがんばっている姿を見ながらモチベーションを保ちたいなどと考える人は、スクール・予備校への通学が適しています。

大手のスクール・予備校として「資格の大原」や「TAC」、また「LEC東京リーガルマインド」や「資格スクール大栄」などがよく知られています。

講座によっては20万円以上かかるなど費用負担は決して少なくありませんが、プロの講師の指導を受けながら効率的に学びたい人にはおすすめです。

通信講座を受ける

社会保険労務士試験合格に向けて、スクール・予備校よりもリーズナブルに学べる通信講座を利用する人も多くいます。

ただ、通信講座といってもさまざまで、通信講座のみを専門的に提供している会社の講座もあれば、大手スクール・予備校が通学講座とは別の形態で提供する「通信(オンライン)講座」もあります。

社会保険労務士の通信講座として有名なものには「フォーサイト」や「クレアール」、またスマホ学習をウリにしている「スタディング」などがあります。

さらに、通学講座と通信講座の両方を提供している「資格の大原」や「資格の学校TAC」なども含めると、たくさんの講座があります。

費用や学習形態、カリキュラム、サポート体制などをよく比較して、ご自身に合う講座を選んでください。

独学

社会保険労務士は人気資格であり、独学に適した市販の参考書や問題集が多く出ています。

自分が学びやすいと感じるテキストを一通り購入したとしても、スクール・予備校や通信講座で学ぶのと比較すれば、費用は圧倒的に抑えられるケースがほとんどです。

また、自分の好きなペースで自由に勉強を進められることも独学のメリットといえます。

計画を立てるのが苦手ではない人や、仕事などと両立させてコツコツと継続的に勉強する自信がある人は、独学で社会保険労務士試験合格を目指すことは可能でしょう。

社会保険労務士試験の勉強時間は約1000時間・勉強期間は1年

社会保険労務士試験合格までに必要になる勉強時間は、その人がもともと持っている知識や、独学か資格学校に通うのかによっても大きく変わりますが「1,000時間程度が目安」といわれることが多いです。

1日平均3時間程度勉強して、1年ほどはかかる計算です。

ただし、社会保険労務士を目指すのはすでに働いている社会人が多いため、勉強時間の確保に苦労した場合など、1年では合格できない人も見られます。

3~4回ほど挑戦して、ようやく合格している人もいるのが実情です。

社会保険労務士試験合格は独学で可能?

独学で合格している人もいる

社会保険労務士試験の合格者は、30歳代~50歳代が大きな割合を占めることが特徴です。

また職業別でみると「会社員」が約6割を占めており(令和3年度試験の場合)、働きながら試験勉強をしている人が多いです。

多忙で予備校に通う時間がとれない、自分のペースで自由に勉強したいなどの理由から、あえて独学を選ぶ人もいます。

さまざまな予備校・スクールの調査などから、合格者全体の2~3割程度は独学で合格しているというデータも見られますし、独学は決して無理というわけではありません。

独学の注意点

しかしながら、独学合格までの道のりは険しいものになるのも確かです。

社会保険労務士は試験科目が多く、また試験範囲に関連する法改正が毎年のように実施されています。

細かな改正内容について自分で追っていくのは時間がかかり、勉強効率が落ちてしまうかもしれません。

また一般常識の問題についても、直近の厚生労働初白書や国の報道発表などから毎年新しい内容が出題される傾向にあり、自分であらゆる情報を集めていくことは困難です。

こういった点を踏まえると、完全に独学をするのはハードルが高いと考えておいた方がよさそうです。

スクール・予備校に通うのは難しい場合には、通信講座を活用しながら足りないところは独学するなど、効率的に勉強を進めていくことを検討するとよいでしょう。

社会保険労務士試験の受験者数・合格率

社会保険労務士試験受験者数

社会保険労務士試験の受験者数は、平成23年度より減少傾向にあります。令和3年度試験の受験者数は、37,306人となりました。

社会保険労務士試験受験者数_令3

社会保険労務士試験合格率

社会保険労務士試験の合格率は27年度大幅に下降しましたが、令和3年度試験の合格率は7.9%となりました。

社会保険労務士試験合格率_令3

令和3年度 社会保険労務士試験合格者職業別構成

合格者の職業別内訳は、会社員60.4%、無職10.3%、公務員7.8%、その他21.5%となっています。その他の内訳は、団体職員5.6%、自営業4.2%、役員3.4%、学生1.1%、その他7.2%です。

社会保険労務士試験合格者職業別構成_令3

令和3年度 社会保険労務士試験合格者年齢別構成

令和3年度試験の社会保険労務士試験の合格者の年齢構成は、30歳代が最も多く35.6%となっています。次いで、40歳代28.5%となっており、30代、40代が合格者の中心となっています。

社会保険労務士試験合格者年齢別構成_令3

令和3年度 社会保険労務士試験合格者男女別構成

社会保険労務士試験の合格者男女比率は、男性61.7%、女性38.3%となっています。

社会保険労務士試験合格者男女比率_令3

社会保険労務士登録者数

令和3年9月30日時点における、社会保険労務士登録者数は44,063人となっています。

社会保険労務士登録者数_令3

令和4年度 社会保険労務士試験の概要

試験日 令和4年8月28日(日)
申込期間 令和4年4月18日(月)~令和4年5月31日(火)
試験地 北海道、宮城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県
受験資格 次のいずれか1つに該当する方は社会保険労務士試験を受験することができます。

学歴

1.学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学、短期大学若しくは高等専門学校(5年制)を卒業した者(専攻の学部学科は問わない)
2.上記の大学(短期大学を除く)において学土の学位を得るのに必要な一般教養科目の学習を終わった者 上記の大学(短期大学を除く)において62単位以上を修得した者(卒業認定単位以外の単位を除く(卒業認定単位は大学へご照会ください)。)
3.旧高等学校令(大正7年勅令第389号)による高等学校高等科、旧大学令(大正7 年勅令第388号)による大学予科又は旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を卒業し、又は修了した者
4.前記01又は03に掲げる学校等以外で、厚生労働大臣が認めた学校等を卒業し又は所定の課程を修了した者
5.修業年限が2年以上で、かつ、課程の修了に必要な総授業時間数が、1,700時間以上の専修学校の専門課程を修了した者

実務経験

1.労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く。)又は従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
2.国又は地方公共団体の公務員として行政事務に従事した期間及び特定独立行政法人、特定地方独立行政法人又は日本郵政公社の役員又は職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
3.社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人又は弁護士若しくは弁護士法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
4.労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事(いわゆる「専従」という。)した期間が通算して3年以上になる者又は会社その他の法人(法人でない社団又は財団を含み、労働組合を除く。以下「法人等」という。)の役員として労務を担当した期間が通算して3年以上になる者
5.労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の従業者として労働社会保険諸法令に関する事務(ただし、このうち特別な判断を要しない単純な事務は除く。)に従事した期間が通算して3年以上になる者

厚生労働大臣が認めた国家試験合格

1.社会保険労務士試験以外の国家試験のうち厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
2.司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験、旧司法試験の第一次試験又は高等試験予備試験に合格した者
3.行政書士となる資格を有する者

試験内容 選択式および択一式の筆記試験
試験科目 ・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
・雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
・労務管理その他の労働に関する一般常識
・社会保険に関する一般常識
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法
合格基準 合格基準点は、選択式試験及び択一式試験のそれぞれの総得点と、それぞれの科目ごとに定めます。各成績のいずれかが合格基準点に達しない場合は不合格となります(合格基準点は、合格発表日に公表されます。)。
合格率 7.9%(令和3年)
合格発表 令和4年10月5日(水)
受験料 15,000円
詳細情報 社会保険労務士試験公式ホームページ

社会保険労務士試験の難易度まとめ

人事・労務管理の専門家として活躍できる社会保険労務士は、「働き方改革」の推進などの影響もあり、近年ますます注目度が高まっている国家資格です。

独立・開業を目指すこともできますが、地域によっては資格者数が増えて飽和状態に陥っているケースもあるようです。

資格取得後にどのようなキャリアを積んでいきたいのかについて、見通しをしっかり立てて効率的に勉強することが大切です。

試験範囲が広く、合格までには最低でも1000時間程度の勉強時間が必要とされているため、完全独学では不安という人は、資格スクール・予備校や通信講座を活用することも検討してみるとよいでしょう。