保育士の年収・給料はいくら? 手取り額や初任給も解説

保育士は若い世代が多く活躍していることもあり、その平均年収は、日本人全体の平均年収と比べるとやや低めです。

子どもたちを支える社会になくてはならない職業ではあるものの、仕事の大変さと待遇が見合っていないという声も多く出ています。

この記事では、保育士の年収事情について、さまざまな手当や福利厚生も含めて紹介します。

保育士の平均年収・給料の統計データ

保育士の平均年収・給料は、ほかの職業に比べやや低めです。

保育士は、子どもたちの安全や健康を守るなど重い責任を担う一方で、勤務先によっては基本給の水準が低く、さらに福利厚生や待遇が他の職業に比べて充実していないことがあります。

そのため、一部の保育士は待遇面に不安や不満を感じて、早期に離職してしまうケースもあるのが実情です。

ただし、保育士の勤務先は「公立保育園」「私立保育園」「民間企業」などさまざまで、各施設が異なる給与水準や福利厚生を提供しています。

公立保育園や一部の私立保育園では、比較的安定した給与と福利厚生が用意されていることもあります。

一方、平均と比べても、かなり給与が低く、福利厚生も充実していない施設も存在します。

そのため、勤務先を選ぶ際には給与面はもちろん、各種労働条件や福利厚生もよく調べておくことが大事です。

保育士の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

保育士の平均年収_2023

令和5年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は38歳で397万円ほどとなっています。

  • 平均年齢: 38歳
  • 勤続年数: 8.5年
  • 労働時間/月: 167時間/月
  • 超過労働: 3時間/月
  • 月額給与: 271,400円
  • 年間賞与: 712,200円
  • 平均年収: 3,969,000円
  • ※出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」

    保育士の年収の推移_r5

    ※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
    ※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

    保育士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

    保育士の平均年収は、約300万円から350万円程度と考えられています。

    ただし、実際の給与には公立保育園と私立保育園、雇用形態などによって大きな差があります。

    公立保育園では、自治体が定めた給与表に基づいて給与が支給され、ボーナス(期末・勤勉手当)も確実に支給されることが一般的です。

    賃金構造基本統計調査によれば、ボーナス支給額は全体で約70万円程度ですが、公立と私立では支給額に2倍ほどの差がある場合もあります。

    したがって、年収300万円から350万円でボーナスが給料の2ヵ月分支給される場合、月給は約21万円から25万円ほどと考えられ、手取り給与は約16万円から20万円ほどになるでしょう。

    保育士の初任給はどれくらい?

    公立の保育園で働く場合、地方公務員の身分となるため、各自治体の地方公務員の給与規定に基づいた給与が支給されます。

    給与水準には全国の自治体でバラつきがありますが、大都市圏の自治体や東京都などでは一般的に高めの給与が支給される傾向があります。

    一方、私立保育園の場合は、勤務先によって給与制度や待遇などが異なります。

    初任給は一般的に18万円から20万円ほどで、各種税金や保険料などを差し引くと、正規雇用の場合でも手取りが約15万円ほどになることがあります。

    保育士の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)

    保育士の年収は、ほぼすべての年代で300万円~400万円台となっており、年収の上昇はあまり見込めないようです。最も年収が高い世代は、65~69歳の483万円です。

    全年代の平均年収は397万円となっています。

    保育士の年収(年齢別)_r5

    保育士の勤務先の規模別の年収(令和5年度)

    保育士の年収は、勤務先の企業規模とあまり相関がないようです。

    10〜99人規模の事業所に勤める保育士の年収は397万円、100〜999人規模は401万円、1,000人以上規模は385万円、10人以上規模平均は397万円となっています。

    保育士の年収(規模別)_r5

    賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

    保育士の給料・年収の特徴

    ここでは、保育士の給料・年収の特徴を紹介します。

    勤務先や地域によって差が出やすい

    保育士の給料は、勤務する保育園が公立・私立か、また働く地域によっても大きく差が出ることが一般的です。

    一般的に、公立保育園の給与水準は、私立に比べて高めとされています。

    公立の場合、地方公務員の身分であることから、地方公務員の給与規程に基づいて支給されるためです。

    ただし、私立の保育園でも、好待遇で保育士を採用している園は存在します。

    地域ごとの給料に関しては、東京都や政令指定都市なの大都市圏では、給与が比較的高めに設定されていることが多いです。

    一方、地方の保育園や保育施設などでは、基本給が都市部の7~8程度となることもあります。

    年齢による給料の上がり幅は小さめ

    保育士の年収は年齢とともに上がっていく傾向がありますが、他の職業に比べると給料の上がり幅は小さめです。

    とくに一般的な保育士の給与は、昇進によって大幅にアップさせることが難しい場合もあり、昇給がほとんどない場合もあります。

    保育士は女性がなることが多く、結婚や出産後に正社員やフルタイムでの勤務を辞める人も少なくありません。

    そのため、出産後は非常勤やパートタイムでの勤務が増え、これが保育士の平均給与・年収を押し下げる一因となっています。

    一方、主任や園長などの管理職に昇進することで大幅な給与アップが期待できるため、保育士の中にはそのようなキャリアパスを目指す人もいます。

    保育士の勤務先別の給料・年収

    保育士には、さまざまな勤務先で活躍しています。

    ここでは代表的な勤務先を取り上げて、それぞれの給料・年収の特徴を紹介します。

    勤務先1.公立の保育園

    公立の保育園で働く保育士は、地方公務員として各自治体の「一般行政職」の給与体系が適用されます。

    この給与体系は通常、年功序列で昇給していくため、長期間勤務すれば自然と給料がアップします。

    また、地方公務員としての保育士は、役所などで働くほかの地方公務員と同じ給与体系や福利厚生が適用されるため、安定感があります。

    さまざまな民間企業の調査でも、公立と私立の保育園を比較した場合、公立のほうが10万円以上高い給与を受け取ることが多いとされています。

    これは、公立の保育園が地方公務員の給与規程に従っているためであり、給与水準が一般的に高めに設定されているためです。

    保育士の中には主任や園長などの役職に昇進し、大幅な休養アップを目指す人もいます。

    勤務先2.私立の保育園

    私立の保育園の給料は、各園によって異なるため、比較することは難しいといえます。

    一部の私立の保育園は、地方公務員の給与規程を適用しているところもありますが、多くの私立園は独自の給与体系を持っています。

    一般的な傾向として、公立の保育園に比べて私立の給与水準はやや低めとされています。

    これは、私立園が収益を上げる必要があるため、経営コストを抑える傾向があることが影響しています。

    特に若手や新人の保育士の給与は、公立に比べてかなり低いことが多いとされます。

    これは、給与の上昇には勤務年数や資格、役職昇進が関わっており、経験が積まれるにつれて給与が増えていくためです。

    勤務先3.一般企業

    共働き家庭や一人親家庭の増加に伴い、一般企業内に託児所や保育施設を設けるケースが増えています。

    企業が保育施設を設けることで、社員のワークライフバランスをサポートし、働きやすい環境を提供する取り組みが増えていることが背景にあります。

    企業内での保育士の雇用は、通常の社員として採用されるため、他の社員と同じ給料が支給されます。

    また、保育士としての専門資格を持っているため、比較的好待遇で雇用されることがあり、大手企業であれば福利厚生も充実していることが多いです。

    求人は主に都市部が中心となりますが、企業内の保育施設は安心して働ける環境を提供し、保育士の新たな就職先として人気が高まっています。

    保育士の給料以外の手当

    保育士は、さまざまな手当が支給されます。

    勤務先にもよりますが、以下で代表的な手当の種類とその特徴を紹介します。

    給料以外の手当

    保育士の給料は、基本給のほか、以下のような各種手当が合算されて支給されることが一般的です。

    • 通勤手当: 通勤にかかる交通費を一部または全額補助するもの
    • 調整手当: 特定の業務やシフトに従事する場合に支給される手当。非常勤や夜勤、休日出勤などの条件によって支給される
    • 住宅手当: 住宅の賃貸料やローンに対して一部が支給される
    • 扶養手当: 扶養家族がいる場合に支給されるもの

    これらの手当が給与にプラスされることで、実際に受け取る給与額を増やすことができます。

    特殊業務手当

    保育園には「特殊業務」という手当があります。

    特殊業務手当とは、保育園での各種行事(入園式・卒業式・クリスマス会・運動会など)に参加・関与する保育士に支給される手当を意味します。

    なお、これらの手当ては、保育園や職場によって名称や支給条件が異なることがあります。

    このほか、管理職になる保育士には管理職手当が付きます。

    賞与(ボーナス)

    保育士の賞与(ボーナス)は、一般的には夏と冬の2回に支給され、夏のボーナスよりも冬のボーナスのほうが金額が高くなることが多いです。

    なお、保育士のボーナスの支給額は、年によって大きな変動がない傾向があります。

    これは、保育園の業績が比較的安定しており、子どもの入所数が急激に減少することが少ないためです。

    1年目の保育士のボーナスは、一般的にはあまり高い金額にはならないでしょう。

    ただし、2年目以降は夏のボーナスで毎月の給料の倍、冬のボーナスで毎月の給料の2.5倍ほどの金額をもらえることが多いとされています。

    実際の支給条件や待遇は、保育園ごとに異なります。

    保育士が支払わなければいけないもの

    保育士が保育園などで雇われて働く際には、保育士の自己負担が必要な支出があります。

    その代表的なものを紹介します。

    • 健康保険:健康保険の加入が必要となり、健康保険料は給与から天引きされます。
    • 厚生年金:厚生年金にも加入が必要で、給与から天引きされます。
    • 雇用保険:雇用保険料も給与から天引きされます。
    • 所得税:給与から源泉徴収された所得税は、年末に確定申告を行うことで調整されます。
    • 共済会費:一部の職場では共済会に加入する必要があり、費用が発生します。
    • 給食代:保育士が給食を提供される場合、給食代が月額で差し引かれることがあります。
    • その他雑費:保育園で必要な教材や用具、絵本、エプロンなどを購入する際に費用がかかります。ただし、一部の保育園では園がまとめて購入し、保育士に割引価格で提供することがあります。

    保育士の福利厚生・待遇

    公立保育園で働く場合、各自治体の地方公務員としての福利厚生が適用されます。

    各種休暇や手当は充実しており、比較的安心して働きやすいといえるでしょう。

    一方、私立保育園においては、福利厚生の内容は各園によって異なります。

    公立保育園に比べて充実した福利厚生を提供している私立園もあれば、それほど充実していない場合もあります。

    保育士が採用先を選ぶ際には、福利厚生や待遇をよく確認し、自身のライフスタイルやニーズに合った園を選ぶことが大切です。

    有給休暇について

    年次有給休暇(通称:有給休暇)は、保育士にももちろんあります。

    基本的には勤務開始から6か月後に、最低でも10日間の有給休暇が法律で付与されます。(※一部の労働契約や就業規則によって異なることがあります)

    また、未使用の有給休暇は翌年に繰り越すことができます。

    さらに、勤続年数に応じて有給休暇日数が加算され、たとえば6.5年以上の勤務で20日間の有給休暇が付与されるという規定があります。

    なお、有給休暇は、個人の休息や家庭の事情、旅行、病気、子どもの看護など、さまざまな目的で利用できます。

    ただし、有給休暇を利用する際には、雇用主に前もって届け出る必要がある場合があり、保育士の人数の少ない園では自由に取得できない場合もあります。

    出産時の福利厚生

    保育士が妊娠した場合、産前休暇を取得できます。

    出産予定日の42日前から出産当日までの間を産前休暇として取得できます。

    ただし、双子などの多胎の場合は98日前から取得可能です。

    また、保育園側は産前・産後休暇中、およびその後の30日間内に保育士を解雇することは法律で禁止されています。

    さらに出産した日から56日後までの期間が産後休暇となります。

    医師助産師の許可がある場合、保育園での仕事を再開することは出産後42日後から可能です。

    育児時間・育児休暇

    育児中の保育士は、育児休暇を取得できます。

    育児休暇は、出産から58日目から子どもが1歳の誕生日を迎える前の日までの期間が対象です。

    ただし、一定の条件を満たす場合、子どもが1歳6か月になるまで取得できることがあります。

    育児休暇は男性保育士にも適用され、子育てに貢献することができます。

    なおパートタイム労働者やアルバイトの場合、育児休暇の取得が制約されることがあり、これは雇用契約や労働条件に応じて異なります。

    育児時間は、1歳未満の子どもを育てながら働く女性保育士は、30分の育児時間を1日2回、合計1日1時間の育児時間を取得することができます。

    まとめて1時間を育児時間に当てることも可能です。

    その他の福利厚生

    生理休暇は、女性特有の生理痛や不快症状に対処するために必要な休暇です。

    法律上は無休でも問題ありませんが、保育園の方針や雇用条件によって有給休暇として取得されることもあります。

    事前に園の方針を確認しておきましょう。

    このほか、退職金制度についても園や施設ごとに異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

    保育士の正社員以外の給料・年収

    保育士は、派遣やパートなど、正社員以外の形態で働く人もいます。

    以下では、雇用形態別の給料・年収の特徴を紹介します。

    派遣社員

    派遣の保育士は、保育の経験を持ち、即戦力として現場で活躍できる人材が求められます。

    そのため、時給は通常高めに設定されることがあり、地域によっては1,200円以上の時給が提供されることもあります。

    一方で、派遣の保育士は限られた期間や時間帯での勤務が多いため、毎月の収入の安定性は低いことがあります。

    また、ボーナスなどの手当が支給されない場合もあります。

    パート

    パートの保育士は、非常勤や臨時職員として雇用され、通常は1日に数時間などの短い時間帯で勤務します。

    主な仕事内容は、正社員や常勤の保育士をサポートをすることです。

    パートの保育士の給料は、通常「1時間あたりの給与」で契約されるため、勤務時間が増えれば収入も増加します。

    経験やスキルに応じて昇給の機会がある場合もあります。

    ただし、パートの保育士の多くは、ボーナスや手当の支給がないことが一般的です。

    パートの保育士は、家庭との両立やライフスタイルに合わせて柔軟な働き方ができるため、結婚や出産後、またはフルタイム勤務が難しい状況の人が選択することが多いです。

    保育士の働き方の種類とその特徴

    保育士が収入を上げるためには?

    公立の保育園で保育士として働く場合、年齢が上がるにつれて少しずつ昇給が期待でき、福利厚生も充実しています。

    一方、私立や民間企業での保育士の仕事は、勤務先によって給与面でのバラつきが大きいです。

    業績の良い施設では給与やボーナスが魅力的な場合もありますが、それとは逆に昇給の見込みが少ない場合もあります。

    少しでも待遇がよい保育園へ転職をすることで、収入を上げることが可能です。

    また、同じ保育園の中でも、役職が上がることで大幅な昇給や手当の増加が期待できることもあります。

    なお、最近では保育士資格を持つ人材が、託児施設を置く一般企業で求められることが増えています。

    待遇の良い企業は人気がありますが、経験を積んで他の職場に転職することも検討する価値があるでしょう。

    「保育士の年収・給料」まとめ

    保育士の年収は、その専門性や業務の負担を考慮すると、明らかに低いといわれることが多いです。

    しかしながら、保育士の仕事には多くの魅力があり、給料・年収だけでなく、仕事にやりがいを感じている人も少なくありません。

    現在は、保育士がより適正な給料や待遇の下で働くための労働環境の改善が少しずつ進んでいる状況です。