【2023年版】通関士試験の難易度・合格率

通関士試験は、貿易業界唯一の国家資格である「通関士」を取得するための国家試験です。

この試験に年齢・学歴・実務経験などの受験資格はありませんが、貿易や関連法令に関する専門的な内容が出題されるため、きちんとした対策をしていかなければ合格は難しいです。

この記事では、通関士試験の概要や難易度・合格率、勉強方法の種類などについて詳しく解説しています。

この記事のポイント

・貿易業に関連する唯一の国家資格
・合格率は10~15%程度、専門的な知識が問われるため十分な対策が必要
・合格までに必要な勉強時間目安は400時間程度

通関士資格とは

通関士とはどんな資格?

通関士は、輸出入の際に必要な「税関手続き」を代行するために必要な資格です。

貿易に関連する唯一の国家資格で、財務省が管轄しています。

通関士の資格を取得した人は、通関書類の作成や通関手続き、また申請が許可されなかった場合の不服申し立てなどの業務に携わることができるようになります。

通関士試験は年に1回実施されており、この試験に合格すれば通関士として認定されます。

通関士資格取得のメリットは?

通関士の資格を持っている人の多くは、「通関業者」と呼ばれる専門の会社に勤務しています。

貨物の輸出入審査と税関への申告は、法律上、通関士にしか認められていない業務です。

また、通関業を営む場合には営業所ごとに必ず通関士を配置することが義務付けられているため、通関士の資格保有者の需要は一定数あります。

このほかにも、通関士は貿易・流通に携わるさまざまな企業で活躍できます。

たとえば、物流業や倉庫業を営む企業でも通関士が必要とされることもありますし、航空会社海運会社、海外との取引を行う商社やメーカーでの活躍も可能です。

これらの企業への就職・転職を目指すのであれば、通関士を取得するメリットは十分にあるといえるでしょう。

とくに実務経験がない、もしくは少ない場合には、先に通関士の勉強をし、資格を取っておくことは有利になるケースが多いです。

ただし、いくら国家資格とは言っても、貿易・流通・通関業務には関連しない業界で働く場合には、通関士の資格や試験勉強で身につけた知識はほとんど役に立ちません。

専門的な資格であるため、あくまでも関連業界で働きたい人におすすめの資格です。

通関士試験の出題内容・形式

通関士試験の試験科目は、以下の3種類です。

通関士試験の試験科目
  • 通関業法
  • 関税法、関税定率法その他関税に関する法律および外国為替および外国貿易管理法(同法第6章に係る部分に限る)
  • 通関書類の作成要領その他通関手続の実務

それぞれの科目で、原則として60%以上を得点すれば合格となります。(年度・科目によっては50%などに変動することもあります)

なお、通関業務に従事した期間によっては、以下のように一部試験が免除されます。

【5年以上の場合の免除科目(1科目)】
・通関書類の作成要領その他通関手続の実務

【15年以上の場合の免除科目(2科目)】
・関税法、関税定率法その他関税に関する法律および外国為替および外国貿易管理法(同法第6章に係る部分に限る)
・通関書類の作成要領その他通関手続の実務

出題形式

すべてマークシート式です。

ただし、その具体的な回答方式は以下の4種類に分かれます。

  • 択一式:5つの選択肢の中から該当する1つをマークする
  • 選択式:文章の中の空欄に対し、与えられる語群の中から該当する番号をマークする(語群選択式)、5つの選択肢の中から該当するものをすべてマークする(複数選択式)
  • 計算式:貨物の価格や税額を計算して正しい額をマークする
  • 申告書:与えられる資料から貨物を正しく分類し、選択肢の中から正しい番号をマークする

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通関士試験の受験資格は?

通関士試験には受験資格がありません。

年齢・学歴・実務経験・国籍関係など関係なく受験することが可能です。

ただし、通関士試験は専門的な内容であることから、一般的にはすでに通関業務に携わっている人、もしくは通関業界で働きたい人が受験しています。

すでに通関業務に携わっている人の場合は、業務上必要となって、もしくはキャリアアップのため自分の意志で受けるケースもあります。

卒業後に通関業界で働きたいと考える学生が、就職活動を有利に進めるために受験することもあります。

貿易業界に就職するにあたって通関士資格が必ず求められるわけではありませんが、仕事をしながら勉強を続けるのはなかなか大変です。

通関業界を目指す気持ちがあるのなら、学習慣れしており、時間に余裕がある学生のうちに取得した方がよいかもしれません。

通関士試験の難易度はどれくらい?

通関士試験の難易度・合格率

通関士試験の合格率は10~15%

通関士試験の合格率は10~15%程度となっています。

ただし、実施年によってややばらつきがあることが特徴です。

令和4年までの過去10年の試験を振り返ると、平成28年試験の合格率は9.8%と最も低かったのに対し、平成29年には21.3%と最も高くなりました。

なお、「一部科目免除制度」を利用して受験している人のうち、とくに2科目免除者の合格率は、全体の合格率よりも4~5倍程度高くなる傾向が見られます。

つまり、科目免除者が全体の合格率を押し上げていると考えられるのです。

実際には、全受験者の約9割が3科目すべてを受験していることを考えると、3科目受験する人の合格率は、全体合格率の数字以上に低いと考えておく必要があります。

通関士試験の合格率が低い理由は?

通関士試験の合格率が低い理由はいくつか考えられますが、そのひとつは、年齢や実務経験などの受験資格がなく、誰でも受けやすい試験であることです。

また、通関士の受験手数料は3,000円と、他の国家試験よりも圧倒的に安いです。(一例を挙げると、令和5年現在で「行政書士」の受験料は10,400円、「中小企業診断士」の受験手数料は1次試験が14,500円、2次試験が17,800円です)

気軽に受験しやすいことから、「とりあえず国家試験がほしい」という考えで、勉強が十分でないまま受験している人もいるようです。

しかし、実際の試験では法律や貿易に関する専門用語がたくさん出てきますし、通関業務の申告書に関する計算など、素人には答えられないような問題ばかり出題されます。

また、マークシートとはいっても複数の形式で出題されるため、十分な対策をして形式にも慣れた上で試験に臨まなければ合格は難しいです。

ただし、通関士試験は相対評価ではないため、原則として各科目で6割以上得点すれば合格できます。

合格率は気にし過ぎず、苦手科目をつくらないようにして、最低でも6割を超える得点率を目指していくことが確実に合格するためのポイントです。

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通関士試験の勉強時間・勉強方法

通関士試験の勉強方法

通関士試験の勉強方法の種類

予備校・スクールに通う

通関士試験の勉強方法の一つめは、資格試験対策を行っている予備校・スクールに通う方法です。

大手予備校として有名な「資格の学校TAC」のほか、「神戸大阪通関貿易教育研究社」「吉田クラス」などが、通関士の通学講座を開講しています。

通学講座では、カリキュラムに沿った講義日程が細かく組まれているため、自分で学習計画を立てなくても確実に試験範囲を学んでいくことができます。

また、他の受講生と共に学ぶことで自身のモチベーションアップにつながったり、情報交換ができたりするのも通学するメリットです。

初学者が一から合格を目指すのに適した総合講座のほか、「計算編」「申告書編」のように単科講座を設置する予備校・スクールもあります。

基本は自主学習を中心とし、苦手な科目のみ講座を活用することも可能です。

通信講座を受ける

近隣に通学できる予備校・スクールがない場合や、自分のペースで勉強していきたい人は、通信講座の利用がおすすめです。

通信講座は、コストパフォーマンスにすぐれた勉強方法としても人気があります。

「LEC東京リーガルマインド」「資格の学校TAC」などの大手のものだけでなく、「ユーキャン」「アガルート」「フォーサイト」「日本関税協会」「MHJマウンハーフジャパン」など、多数の会社が通関士の通信講座を出しています。

受講費は5万円~20万円ほどと幅がありますが、金額だけではなく、教材の種類や内容、サポート体制、返金制度の有無なども比較しながらご自身に合うものを選んでください。

とくに通信講座の場合、自主学習を進める中でわからないことが出てきたときに、質問ができるかどうかが重要です。

講座によっては質問に回数制限を設けていることもあるため、その点にも注意して選んでいkとよいでしょう。

独学

貿易や関連法令についてある程度の基礎知識がある人、時間をかけてでもコツコツと勉強する自信がある人なら、独学する方法もあります。

独学の場合は、市販の参考書や問題集を主に使って学んでいくことになるでしょう。

複数の関連テキストが市販されているため、独学することは十分に可能ですし、実際に独学で合格している人もいます。

ただし、「税理士」や「行政書士」のような国家資格に比べると、通関士は受験者層が限られることもあって一般に出回っている情報がそこまで多くありません。

そのため、試験対策のコツ・ポイントのような情報集めに苦労する可能性も考えられます。

できるだけ時間にゆとりを持った勉強計画を立てておくとよいでしょう。

独学の学習で求められるスキルは?

通学や通信講座はカリキュラムや進め方が決まっているため、それに沿って学習を進めれば徐々に理解度も増すようになっています。

しかし独学の場合は当然、学習する内容や順序、試験までの計画をすべて自分で行わなければならず、かなりの自主性が求められます。

具体的には、

・効果のある参考書、問題集を自分で選ぶことができる
・学習スケジュール管理ができる
・参考書の内容が理解できる
・得意と不得意を見極め、弱点を克服する対策が自分でできる

などのスキル・ノウハウを持っておかなければなりません。

いくらマークシート形式の試験とはいえ、あてずっぽうな答え方ばかりで万が一合格してしまったら実務で苦労するだけでなく、クライアントや在籍する会社に多大な迷惑と損害を与えかねません。

独学の学習方法は?

学習方法は人それぞれ、効果的なやり方があり一概には決められませんのであくまでも一例として紹介します。

通関士試験は「通関業法」「関税法等(関税法、関税定率法その他関税に関する法律、および外国為替、外国貿易管理法)」「通関書類(通関書類の作成要領、その他通関手続の実務)」の3科目に分けられています。

「通関業法」「関税法等」は基本的に暗記することが対策となるため、とにかく参考書を読み込み、何度も問題集をこなすなどの反復学習が効果的かと思います。

一番問題なのは「通関書類」だといわれています。

用語や法律を理解していないとそもそも問題の意味も分からないでしょうし、税率計算や表の見方、書類作成方法などもマスターしていなければまず正解できません。

しっかりと「通関業法」「関税法等」を覚えるのはもちろん、結局は過去問題や問題集を繰り返し行うしか方法はないでしょう。

独学のメリット・デメリット

独学で通関士試験対策をする際のメリットは、自分のペースで行える点とコストを抑えられる点です。

自分で計画を立て効果的な学習方法を身に付け、試験内容の傾向を正しく分析できれば市販の問題集や税関で公開している過去問題集をこなすだけでも合格することは可能でしょう。

通信講座も自分のペースで行えますが、少なくても5万円のコストはかかるためその出費はなくなります。

反対にデメリットは相当な自主性が求められる点と理解力が必要な点です。

学習するもしないも自分で決めなればならず、甘えが出てしまうと試験結果にも影響をおよぼしかねません。

また用語の意味や計算の仕方、法令の意味などで分からないことがあってもすべて自分で解決しなければならず、理解力が乏しいとその時点で学習もストップする上に、時間もロスしてしまいます。

このように独学でのメリット・デメリットを踏まえ、自分はどの学習方法が一番効果的かを見極めて選択することをおすすめします。

通関士試験の勉強時間は約400時間・勉強期間は半年

通関士試験合格までに必要な勉強時間は、400時間程度が目安といわれています。

1日に2時間程度勉強するとして、半年ほどかかることになります。

社会人で、仕事がある日にはあまり勉強時間が取れない場合には、休日を使い、まとまった時間を確保するなどの工夫が必要でしょう。

貿易や法令関連の知識がすでにある人なら300時間程度で合格するケースもあります。

一方、初めて学習する範囲が多い場合や独学をする場合には、500時間以上かかることも考えられます。

通関士試験の受験者数・合格率

通関士試験受験者数

通関士試験の受験者数は、6000~7000人を推移しております。令和4年度の受験者数は前年よりわずかに減少し6,336人となりました。

通関士試験受験者数_令4

通関士試験合格率

通関士試験の合格率は、実施年によってややばらつきがあります。令和4年度試験の合格率は19.1%となっています。

通関士試験合格率_令4

令和4年度通関士試験の概要

試験日 令和4年10月2日(日)
願書受付 令和4年7月25日(月)から同年8月8日(月)
試験地 北海道、新潟県、東京都、宮城県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県
受験資格 受験資格に制限はありません
試験内容 1.通関業法
2.関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
3.通関書類の作成要領その他通関手続の実務
合格基準 ・通関業法:満点の60%以上
・関税法等:満点の60%以上
・通関書類の作成要領その他通関手続の実務:満点の60%以上
(参考:平成29年度試験合格基準・事前非公表)
合格率 19.1%(令和4年)
合格発表 令和4年11月8日(火) ※合格者受験番号の税関ホームページ掲載
令和4年11月25日(金) ※合格者氏名及び受験番号の官報掲載
受験料 3,000円
詳細情報 税関 通関士試験

通関士試験の難易度まとめ

通関士試験の近年の合格率は10~15%程度で、決して高いわけではありません。

専門的な内容が出題されること、また全3科目それぞれで最低6割以上の得点率を目安に取らなくてはならないことを考えると、十分な対策が必要です。

自主学習が得意であれば独学での合格も目指せますが、貿易に関する知識を持たない初学者の人や、できるだけ短期間で確実に合格したい人は、予備校・スクールや通信講座の活用を考えてみるとよいでしょう。

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