漁師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「漁師」とは

漁師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

狙う魚介類に応じた漁法で獲物を釣り上げ、それらを出荷することで利益を得る。

漁師とは、川や海などで魚介類を獲り、それらを売ることで生計を立てる職業です。

漁場の違いによって「沿岸漁業」「沖合漁業」「遠洋漁業」などに分かれており、魚を捕らえる方法も「底引き漁」「はえ縄漁」「定置網漁」とさまざまな方法があります。

漁師になるためには、気象や魚類の生態に関する知識、長時間の船の上での肉体労働に耐える体力が必要です。

また、漁業をする際には各地にある漁業組合に加盟して「漁業権」を得ることが必要になります。

自然を相手にする仕事のため、収穫高や漁の種類によって収入は大きく変わります。

近年では、漁獲高の減少や魚の価格の下落・原油価格の高騰など、漁師を取り巻く環境も厳しくなってきています。

後継者不足に悩まされている漁協も多く、若い力の参入が望まれています。

「漁師」の仕事紹介

漁師の仕事内容

海や川で魚を獲って市場へ流通させ、生計を立てる

漁師とは、川や海に出て漁をし、魚や貝類を獲って生計を立てる人のことをいいます。

使う漁船や漁業を行うエリア(水域)によって「沿岸漁業」「沖合漁業」「遠洋漁業」といった呼ばれ方の違いがあります。

魚を捕らえる方法も、「底引き漁」「定置網漁」「はえ縄漁」などさまざまで、狙う魚介類の習性や住んでいる場所に適した方法で漁を行います。

周囲を海に囲まれている日本では、魚介類の消費量も非常に大きなものとなっています。

漁師は、人々の豊かな食生活を支える重要な役割を担っています。

陸上での仕事もある

漁師が働くのは、船に乗っている時間だけではありません。

陸に戻った後は、獲った魚を選別して出荷作業を行ったり、網の手入れ、船の洗浄などを行ったりします。

また、自ら育てた魚介類を出荷する「養殖業」を専門にする漁師もいます。

養殖業では、餌をやったり生簀の掃除をしたりして、質の高い魚が育つように手をかけていきます。

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漁師になるには

学歴や年齢はまったく関係なくなれる

漁師になるのに、学歴は一切関係ありません。

年齢も問われず、10代のうちから親の跡を継ぐために漁師として修業をはじめる人も多いです。

このほか、水産高校を卒業して漁師を目指す人や、20代や30代以上で脱サラをして漁師へ転職するような人もいます。

沖合・遠洋漁業の漁師になりたい場合は、各地の「漁業協同組合(漁協)」が出している乗組員の求人に応募して採用されれば、すぐに働き始めることができます。

このケースでは、就職時に特別な資格や免許なども必要ありません。

就職せずに個人で仕事をしたい場合

沿岸部で小型船の漁師として個人で仕事をしたい場合は、船を動かすための「小型船舶操縦士免許」や「海上特殊無線技士免許」などの免許、そして「漁業権」が必要となります。

新規参入の際には船を用意するために多額の費用がかかりますが、人材不足が深刻な昨今では、各地の漁協で援助や、独立支援を行うケースが増えています。

未経験からいきなり独立は難しいため、まずは漁協で情報を集めてみるとよいでしょう。

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漁師の学校・学費

水産高校で水産業について学ぶことができる

漁師として働くために、学歴はまったく関係ないといっても過言ではありません。

義務教育を終えて、すぐに親の跡を継いで漁師としてのキャリアをスタートする人もいます。

しかし、最近では漁師になるための勉強をしつつ、高卒の学歴は得ておきたいと考える人も増えています。

そのような人におすすめなのが、中学卒業後に「水産高校」へ進学する方法です。

水産高校では、水産業に関する技術や知識を習得できるほか、学校によっては漁業の経営や船の操縦、潜水についても広く学べます。

水産を専門に勉強していなくても、漁師を目指すことは十分に可能ですが、学校で勉強をしたい気持ちが強い人は進学を検討してみるとよいでしょう。

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漁師の資格・試験の難易度

働き方によっては免許や資格が必要

個人経営の漁師になる場合、必要になるのが「小型船舶操縦士免許」です。

この免許を取るには国家試験に合格しなくてはなりません。

学科試験の対策は独学でも可能ですが、実技については教えてもらわないと難しいため、一般的には「登録小型船舶教習所」か「免許スクール」に通うことになります。

教習はさほど難しいものではなく、基本的には1~2日通えば既定のカリキュラムを修了することができます。

もう一つ、漁師に必要な資格が「海上特殊無線技士免許」です。

船の上では無線による情報交換が欠かせないため、無線に関する専門知識を習得することが重要です。

漁業権を取得する

商売として漁業を営む場合には「漁業権」の取得も必要になります。

漁業権は「漁業法」という法律で定められている権利であり、簡単にいえば、権利を持たない人が、勝手に海などで漁をしないようにするためのものです。

漁業権は日本各地の漁協で管理されており、取得のためには漁協に加盟し、その漁協の取り決めに沿う必要があります。

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漁師の給料・年収

漁業の種類や漁獲高によって収入は大きく変わる

漁師の給料・年収は、どのように漁業に関わるのかや、獲る魚の種類や漁獲量などによっても大きく変動し、漁師によって年収には非常に幅があるのが特徴です。

肉体的にはハードですが、経験を積んで船長になれば年収1000万円を超える人も出てきます。

一方、ボリュームゾーンは400万円前後といわれ、とびぬけて高額な収入を得るのは限られた人のみとされています。

外部要因で収入が変動することも

漁業はそのときどきの漁獲高によって収入に影響が出るほか、気象条件によって船を出せないこともあり、どうしても不安定な生活になりやすいです。

さらに、燃油価格が高騰すれば、船に使用するガソリンのコストがかさみます。

また、船の維持費や、漁に関する設備などを整えるにもお金がかかり、支出が多くなりがちです。

とくに自営で漁師をする場合、安定した漁獲量を維持できないと、赤字になってしまう可能性も否定できません。

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漁師の現状と将来性・今後の見通し

新たに漁師を目指す若者の活躍に期待が集まる

漁獲高の減少や原油価格の高騰など、近年、漁業をとりまく環境は厳しくなっています。

また、輸入ものや養殖ものが安価で手に入ることになったことから、「命がけで獲ってきた魚が高く売れない」といった事態も発生しています。

現代の漁師には、できるだけ経費を抑えて売上を伸ばすための知恵と工夫が求められています。

もう一つ、漁業従事者の高齢化も、大きな課題です。

最近では若手漁業従事者を増やすための制度や取り組みが各地で急増しているため、まったく異業種から漁師を目指したい人にとっては、活躍できる機会が増しているといえるでしょう。

サポートを積極的に受けることで、これから漁師を目指す人でも成功に近づく可能性と、チャンスは大いにあります。

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漁師の就職先・活躍の場

漁協や漁業会社などへの就職が中心

漁業に従事する方法はいくつかありますが、漁業協同組合(漁協)か、民間の漁業会社に就職するのが一般的です。

漁協は全国各地にあり、人手が必要な際に随時、乗組員が募集されています。

一方、民間の漁業会社は、そのほとんどが個人経営となっており、大きな組織は決して多くありません。

独立して働くことも可能な仕事ですが、船を動かすための資格・免許や、「漁業権」の取得が必要になることもあり、未経験者がいきなり独立というのは現実的ではありません。

独力でやっていきたい場合でも、まずは先に挙げたような場へ就職して経験を積み、独立というのが一般的な流れとなっています。

漁師の1日

夜明け前から仕事を始める人が多い

漁師の中でもとくに多いのが、沿岸部を中心に、日帰りで漁をする「沿岸漁業」の漁師です。

この漁師の場合、夜明け前の時間帯に起きて漁に出かけ、昼過ぎには仕事を終えます。

夕食や就寝も自然と早い時間帯になるため、一般的なオフィスワークの会社員の生活とはまったく異なるスケジュールになります。

ここでは、沿岸漁業をする漁師のある1日を紹介します。

3:30 起床・出勤 
4:00 出港
4:20 漁場に到着後、漁を開始
6:00 船の上で簡単な朝食
9:00 帰港
9:30 魚の選別や出荷準備
11:00 食事・休憩
13:00 網の修理や仕掛けの準備
14:00 業務終了

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漁師のやりがい、楽しさ

自然の中で狙った魚、大量の魚を獲る喜び

漁師が最もやりがいを感じるのは、狙っていた魚が大漁に獲れた瞬間です。

厳しい自然に立ち向かいながら、苦労して大きな魚が網にかかれば興奮します。

また、大漁に獲れた魚を市場に出して、高い値段がついたりお客さんに評価してもらえたりすることが漁師にとっては誇らしく、何よりの喜びとなります。

大物をたくさん釣り上げる凄腕漁師は、漁師仲間からも一目置かれます。

また、この仕事は肉体労働ですが、その分、体は鍛えられます。

大自然のなかで汗を流しながら思いきり働きたいという人にとっては、日々充実感が得られるでしょう。

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漁師のつらいこと、大変なこと

船に乗るときは常に危険と隣り合わせ

船に乗るときは常に危険と隣り合わせ

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漁師に向いている人・適性

大自然が好きで、船の上で働くことを楽しめる人

ほとんどの漁師は、1日の多くの時間を船の上で過ごすことになります。

船は漁師にとって大事な職場であるため、そこで長時間過ごすことを心地よく感じられる人が漁師に向いています。

海の厳しさも覚悟した上で、思いきり体を動かしたいと考える人には適性があるといえます。

また、漁師は大自然をフィールドに働く仕事であるため、気象学をはじめとする自然のしくみにも興味を持ち、進んで知識を身につけようとすることも重要です。

もちろん、漁師として厳しい下積み生活を送り、一人前の漁師になる努力ができること、漁師の仕事に情熱を注げることは、漁師を目指すための前提条件です。

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漁師志望動機・目指すきっかけ

自然に立ち向かい、自分の力で魚を釣り上げる熱意

漁師になる人は、かつては「祖父や父親の跡を継いで」というケースが多く見られました。

しかし、最近では必ずしもそればかりではなく、自分で選択する職業の一つとして漁師になる人、あるいはまったく異業種から漁師へ転職する人なども増えています。

そういった人が漁師になりたいと考えるきっかけとしては、「海や魚が好きだから」「自然の中で働きたいから」「体を動かす仕事がしたいから」といったものが多いようです。

また、テレビ番組などで描かれる漁師の姿に魅了されたり、船に乗って自分の力で魚を釣り上げることに魅力を感じたりして、漁師を目指す人もいます。

漁師の雇用形態・働き方

別の仕事との「兼業」で働く人もいる

漁師の働き方は、大きく分けると「遠洋漁業」に携わり各地の漁業協同組合(漁協)の乗組員として働く人と、「沿岸漁業」の個人事業主として働く人がいます。

前者は一般的な会社員と似たような形で、毎月決まった給料をもらって働きます。

繁忙期を中心に、アルバイトとして働く人もいます。

後者の場合は会社などから給料をもらうわけではなく、自分で経営を行っていくスタイルになります。

このほか、漁業と同時に農業など他の仕事もしながら生計を立てている「兼業漁師」をしている人たちがいます。

兼業漁師の場合、一週間のうち何日かだけ漁に出たり、あるいは短時間だけ漁に出たりというスタイルをとることで、複数の仕事を両立させています。

漁師の勤務時間・休日・生活

どのような漁師になるかで生活は異なる

漁師は朝が早いといわれる仕事ですが、実際の勤務時間などは、漁のスタイルによっても異なります。

沿岸漁業の漁師は、3時くらいの夜明け前に起床し、すぐに出港、そして午前中に港へ戻り、魚の選別や出荷準備をして、夕方までには仕事を終えるのが一般的な生活スタイルです。

毎日同じような時間で働きますが、気象条件によっては、何日も漁には出られない日々が続くこともあります。

自然を相手にする以上、自分の力だけではどうにもならない現実にも直面します。

狙う魚の種類によって、繁忙期とそうでない時期がハッキリ分かれることも珍しくありません。

一方、遠洋漁業の漁師は、日本だけにとどまらず世界各地の海を旅することになります。

数ヵ月~1年にもおよぶ航海を続け、燃料の補給や休憩のために異国の港に立ち寄る機会もあります。

漁師の求人・就職状況・需要

若い人の積極的な採用活動が行われている

農業と同様、漁師の世界でも高齢化が課題となり、後継者の迎え入れや、若手の育成に取り組もうとする漁協や水産会社が増えています。

学校を出たばかりの人はもちろんのこと、脱サラして漁業を始めたいと考えている社会人、あるいは定年退職して新たに漁業を始めたいと考える人でも、漁師を目指しやすい時代になっているといえます。

新規で漁業に就業したい場合は「一般社団法人 全国漁業就業者確保育成センター」などのセミナーに参加してみるとよいでしょう。

一般の人にとって、漁業はなかなか身近な仕事ではないため、しっかりと情報収集をし、人脈を広げていくことで就職先を見つけやすくなるでしょう。

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漁師の転職状況・未経験採用

まずはどのような働き方をしたいかを考える

漁師になる時点で、特別な経験や知識・スキルなどが求められることはほとんどありません。

漁師になりたいという熱い気持ち、そして覚悟さえあれば、誰でも漁師の世界へ飛び込むことができます。

とくに大型船の乗組員として世界各地の海で漁をする「遠洋漁業」の漁師になる場合、個人で取得しなければいけない資格や免許はありません。

各地の漁協などの求人情報を探してみるとよいでしょう。

一方、「沿岸漁業」の漁師になりたいのであれば、基本的には個人事業主として自分の船と漁具で仕事をするため、それらを揃えたり、「小型船舶操縦士免許」や「海上特殊無線技士免許」の取得に向けて動くなどの準備が必要になってきます。

決しては安くはない初期投資も必要になるため、まずは漁師として弟子入りしたり、漁協へ就職して仕事を覚えながらお金を貯める人が多いです。

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脱サラして漁師になるには

志望者は増えているが、厳しい世界

近年、脱サラして漁師になりたいと考える人が増えているようです。

漁師の世界では人材の高齢化が課題となっており、若い力が求められているため、新規で漁業に参入するチャンスはおおいにあります。

漁師を目指すのであれば、まずは情報入手をするところからスタートしましょう。

全国漁業就業者確保育成センターでは、全国の漁協や漁業会社の求人情報の公開や、漁業関連のフェア・セミナー開催、情報提供などを積極的に行っています。

いきなり個人で独立というのは現実的ではないため、アルバイトでもいいので、まずは雇われる形で漁業に従事してみることをおすすめします。

経験を積み、人脈も広がれば、独立して営むのに必要な「漁業権」なども取得しやすくなります。

なお、漁師の仕事は「自然の中で働ける」「大きく稼げるチャンスがある」などの魅力がある反面、陸上の仕事やデスクワークなどとはまったく異なる難しさや厳しさもあります。

本当に漁業が自身に合っているのか、続けていけるのかを確認するためにも、まずは一度漁師の仕事を体験してみるほうがよいでしょう。

漁師にはどんな種類がある? 1年をどう過ごす?

漁師によって生活スタイルはまったく異なる

漁師は魚を獲る仕事ですが、その種類を大きく分けると「沿岸漁業」「遠洋漁業」「沖合漁業」があり、仕事のスタイルが異なります。

<沿岸漁業>
沿岸部を中心に日帰りで行う小規模な漁法です。

個人事業主が小型船を使って行うことが多く、日本では非常にポピュラーな漁業となっています。

狙う魚の習性に合わせた仕掛けを工夫し、基本的には毎日決まった時間帯で仕事をするため、規則正しい生活が送れます。

<遠洋漁業>
遠方の海まで行って大規模な漁をします。

「マグロ漁船」「カツオ漁船」などが有名ですが、日本のみならず世界中の海が漁場となります。

大型船に乗って大規模な漁ができる魅力がありますが、一度漁に出たら数ヵ月以上家には帰れないこともあります。

<沖合漁業>
遠洋漁業よりは近場の、日本の200カイリ水域を中心漁場とします。

一回の漁の期間は日帰りから1ヵ月ほどで、アジ、サバ、サンマなど、食卓でお馴染みの魚を多く狙います。

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