ひよこ鑑定士とは? 年収・収入や必要な資格、仕事内容について解説

「ひよこ鑑定士」とは

ひよこ鑑定士とは? 年収・収入や必要な資格、仕事内容について解説

ニワトリのヒナの雄雌鑑別をする専門職。養鶏産業を陰で支えている。

ひよこ鑑定士とは、ニワトリのヒナのオスとメスの鑑別をする専門職で、正式名称は「初生雛(しょせいひな)鑑別師」といいます。

ひよこは、早期からオスとメスで目的別のエサを与える必要があるため、養鶏産業にとって非常に重要な職業とされています。

ひよこ鑑定士になるためには、まず「初生雛鑑別師養成所」という学校で、5ヵ月間の訓練を受ける必要があります。

さらに実務経験を積み、公益社団法人畜産技術協会の予備試験と高等考査に合格することで初生雛鑑別師資格が取得できます。

その後は、大規模ふ化場などに就職して働く流れが一般的です。

就職先は決して多くありませんが、ひよこ鑑定士の高齢化が進んだことで、若手の新規鑑定士を求めるところも出てきています。

通常、給料は歩合制で、1羽の鑑別につき4~5円、平均年収は500万円~600万円程度とされますが、時期によって月収が変動しやすいです。

ヨーロッパでは需要が大きい職業であり、海外での活躍を視野に入れて働く人もいます。

「ひよこ鑑定士」の仕事紹介

ひよこ鑑定士の仕事内容

ひよこのオス・メスを鑑別する専門家

ひよこ鑑定士とは、ニワトリのヒナのオス・メスを鑑別をする職業で、正式名称は「初生雛(しょせいひな)鑑別師」です。

ひよこの性別を鑑定することで、食用の卵を産むメスと、鶏肉になるオスを鑑別します。

早期からオスとメスでは目的別のエサを与える必要があるため、養鶏産業にとって非常に重要な職業とされています。

ひよこ鑑定士はおもに日本各地にある商業目的の大規模なふ化場で仕事をしますが、とくに需要の大きなヨーロッパで働く人もいます。

正確かつスピード感をもって鑑別する技術が求められる

ひよこのオス・メス鑑別の方法は何種類かありますが、おもに羽毛鑑別と肛門鑑別が行われています。

羽毛鑑別は、独自の交配法により、オスとメスで羽の伸びる速度の違いを利用した鑑別法で、商用として大量生産されるひよこは、この方法が用いられます。

肛門鑑別法は日本で開発されたもので、ヒナの排泄口を見ることによってメスとオスの区別をする、非常に高度な技術です。

経験を積んだ鑑定士は、2~4秒ほどで1匹の鑑別をしており、正確さとスピード感が求められます。

ひよこ鑑定士とは、一般的にこの技術を持つ人のことを指します。

ひよこ鑑定士になるには

日本で唯一の養成所に入所し、所定の講習を受けて試験合格を目指す

ひよこ鑑定士になるまでのルート

ひよこ鑑定士への第一歩は、「初生雛鑑別師養成所」の入所試験に合格することです。

この養成所には、大きく分けて以下の2つの受験資格があります。

(1)満25才以下で、高校卒業者もしくは同程度の資格があること
(2)視力が1.0以上で身体強健であること

養成所では「初等科」にて、5ヵ月間の専門的な教育を受けます。

卒業してもすぐにひよこ鑑定士として働けるわけではなく、まずは「鑑別研修生」として、ふ化場でプロの指導を受けながら鑑別の研修を重ねます。

その後、高等考査に合格することで、ようやく職業鑑別師として資格を得ることができます。

人によって差がありますが、高等考査にパスし、ひよこ鑑定士になるまでには最低でも1年~2年はかかると考えておいたほうがよいでしょう。

ただし、訓練を実施する「公益社団法人 畜産技術協会」によれば、1年足らずで合格する人もなかにはいるそうです。

ひよこ鑑定士の学校・学費

養成所ではひよこ鑑定の専門的な技術を一から学ぶ

ひよこ鑑定士を養成する「初生雛鑑別師養成所」は、日本にひとつしかありません。

毎年、通常は4月から8月までの5ヵ月間で「初等科コース」が開講され、そこで鑑別師養成のための講習を受けることができます。

なお、実施地域は年度によって変わる可能性があるため、訓練を主催する畜産技術協会に確認することをおすすめします。

養成所の入所試験の内容自体はそれほど難関ではありませんが、採用人数は非常に少ないとされています。

また、入所後にかかる諸費用は100万円以上で、訓練内容が専門的であることもあって、資格取得に至らずに中退してしまう人もいます。

養成所での訓練を修了し、さらに研修も終えて実際に資格を取得するのは、入所者の半数ほどともいわれています。

ひよこ鑑定士の資格・試験の難易度

ひよこ鑑定士の資格認定試験では正確な鑑別技術が問われる

ひよこ鑑定士として働くには、初生雛鑑別師養成講習を受講し、ふ化場で鑑別研修生として所定の実地研修を受けたのち、「高等鑑別師」の資格取得を目指す必要があります。

正確には、この資格は「高等鑑別師一種」といわれるもので、養成所で学ばない限りは取得できません。

資格認定のための検定試験(予備考査と高等鑑別師考査)は、通常、春と秋の年2回実施されています。

予備考査では卵用種を、また高等鑑別師考査では卵用種と肉用種を、定められた時間内で正確に鑑別していく技術が問われます。

そこまでに、初等科での訓練や実地研修にて、鑑別技術を十分に磨いておくことが重要です。

資格取得後は、ふ化場を中心に勤務

高等鑑別師考査に合格した人は、畜産技術協会の高等鑑別師として登録され、地域鑑別師会の構成会員となります。

その後は、日本各地にある「ふ化場」を中心に勤務することになります。

日本のひよこ鑑定士の技術は海外でも高く評価されており、ヨーロッパの国を中心に、海外へ派遣されることもあります。

ひよこ鑑定士の給料・年収

時期によって業務量に差があり、収入も変動する

世間では、ひよこ鑑定士に対して「高収入が得られる仕事」というイメージをもつ人も少なくないようです。

しかし、実際には日本国内では歩合制での勤務が多く、1羽につき4〜5円、平均年収はよくても500万円〜600万円程度といわれています。

また、シーズンによって鑑別数や依頼数が増減するため、月収の変動が大きいことも特徴です。

実務に就いて間もない頃は、月収は手取りで20万円程度にしかならない人もいます。

しかし熟練鑑定士になれば、平均年収を大幅に上回る人も出てきます。

常にスキルを磨き、高い精度で時間内により多くの鑑別ができるようにし、鑑別数や依頼数を増やすことができれば高収入も期待できるでしょう。

海外で大きく活躍する人も

ひよこ鑑定士の主要な勤務先は「ふ化場」ですが、地域によって養鶏業が非常に栄えているところと、そこまででもないところがあります。

あくまでも、ふ化場の都合で仕事量が決まってくるため、需要が大きな地域で勤務できればより高収入が見込めます。

また、日本以上に海外ではひよこ鑑定士のニーズが高く、ヨーロッパ(ベルギー、ドイツ、フランスなど)やアメリカ、ニュージーランドなどに日本人の鑑定士が派遣されることがあります。

国によっては、日本以上に稼げることがあるとされています。

ひよこ鑑定士の現状と将来性・今後の見通し

新規のなり手が不足しているため、若者にもチャンスはある

日本国内において、大規模工場では羽毛鑑定がメインになっていることもあり、高度で正確な鑑定技術を備えたひよこ鑑定士の需要はやや小さくなっています。

しかし、ひよこ鑑定士は高齢化が進んで新規のなり手が不足しているため、若手人材にはチャンスがある状況です。

今後、機械の活用などによる革新的な鑑別法が発見されない限り、ひよこ鑑定士は養鶏産業を支えるために必要とされる職業です。

養成所できちんと学び、研修を終えて資格を取得すれば、活躍の場は見つかるはずです。

海外も視野に入れて将来設計を

ひよこ鑑定士の仕事は、日本以上に海外での需要が大きいことが特徴です。

とくに日本のひよこ鑑定士のレベルの高さは海外諸国で高く評価されており、資格取得で安定した技術をもつ人材は、アメリカやヨーロッパなど、さまざまな国に派遣されています。

ひよこ鑑定師として安定的かつ長期的に働きたいとなると、海外での活躍を視野に入れて将来設計を立てていく必要があるでしょう。

ひよこ鑑定士の就職先・活躍の場

日本各地の「ふ化場」や、海外諸国で活躍する

ひよこ鑑定士の主要な勤務先は、ニワトリの卵をふ化させる「ふ化場」です。

国内では、日本各地にふ化場がありますが、地域によって規模の大きさはさまざまで、働くひよこ鑑定士の人数も異なります。

正社員として常勤採用されるケースはほとんどなく、ふ化場で発生する仕事量に合わせて、フリーランスのひよこ鑑定士が活躍するケースが多くなっています。

また、ひよこ鑑定士は海外での需要が大きく、ドイツやフランス、イタリア、ベルギーといったヨーロッパ各国、またアメリカやニュージーランド、オーストラリアなど、さまざまな国で日本人のひよこ鑑定士のニーズがあります。

国内でひよこ鑑定士としての資格を取得した人は、畜産技術協会から海外に派遣されて働くケースもあります。

ひよこ鑑定士のやりがい、楽しさ

海外で活躍できるチャンスもある

ひよこ鑑定士は、国内よりも海外で需要が大きい職業です。

国内での勤務先は限られているため、鑑定士として身を立てたいと考えている人は、将来的に海外で仕事をする可能性も考えておきましょう。

海外志向が強く、海外でも仕事をしていける気概がある人にとっては、むしろ魅力的な職業といえそうです。

また、基本的にひよこ鑑定士は「職人的」な仕事であり、コツコツとした作業を、どれだけ正確に、素早く進めていくかが重視されます。

自分の能力次第で稼げる金額も変わってくるため、技術を高めていくことそのものにやりがいを感じる人も少なくありません。

ひよこ鑑定士のつらいこと、大変なこと

思うように収入に結びつかないこともある

思うように収入に結びつかないこともある

ひよこ鑑定士に向いている人・適性

同じ作業を繰り返し行っても集中力を保てる人

ひよこ鑑定士は毎日数千〜1万羽ものひよこの肛門を見て、オスとメスの鑑別を行います。

熟練の鑑定士は1羽あたり約2秒で鑑別し、100%近い精度を求められます。

このため、集中力があり、ひとつの作業を持続できる人に向いている職業といえるでしょう。

単調な作業の繰り返しになるため、長時間同じ作業を行うのが苦手な人には向いていません。

また、視力がよいこと、同じ姿勢を長時間保てる体力があることもプラスになります。

ひよこ鑑定士志望動機・目指すきっかけ

あまり知られていない、特殊な仕事に魅力を感じた人が多い

ひよこ鑑定士は、近年少しずつ知名度が上がってきているようですが、それでも多くの人にとってはあまりなじみのない職業といえるでしょう。

そのため、テレビの特集、ネットの記事など、なんらかのきっかけでこの職業のことを知ったときに、純粋に「おもしろそう!」と感じたことが、目指すきっかけになるケースが多いようです。

地味ながらも養鶏業を支えていく重要な仕事であること、自分の腕ひとつで稼げる職人的な仕事であること、また海外でも活躍しやすいことなどの点に魅力を感じる人もいます。

人とは少し異なる分野に進みたいと考える人にとっては、ひよこ鑑定士は非常にワクワクする仕事かもしれません。

ひよこ鑑定士の雇用形態・働き方

正社員雇用はほとんどなく、フリーランスとして働くのが一般的

日本国内におけるひよこ鑑定士の多くが、フリーランスとして養鶏場と契約を結ぶ形で仕事をしています。

複数の職場を掛け持ちして働く人もいますが、実力や経験が認められないと、なかなか仕事に結びつかない可能性もあります。

また、海外では、ひよこ鑑定の専門的技術をもつ人材はとくに高く評価されやすく、フリーランスでも労働ビザを取得できる可能性があります。

この場合、勤務先工場からのビザサポートが必要になります。

ただし、国によってはフリーランスでのビザ取得が難しく、日本での正社員に当たる待遇で働く人もいるようです。

ひよこ鑑定士の勤務時間・休日・生活

勤務先工場の事情に合わせて働く

ひよこ鑑定士の生活は、民間企業勤めの人に比べると流動的ですが、基本的に工場の営業時間や、取引先が希望する作業時間に合わせて勤務をします。

シーズンやふ化状況に準じて鑑別数が増減するため、繁忙期と閑散期があります。

勤務時間については平均で1日7時間ほど作業することが多いですが、繁忙期になると1日12時間作業という長時間勤務になることもあります。

休日は勤務先工場に準じます。

フリーランスとして活動する場合、休日についてはある程度融通が利き、収入には響きますが、必要に応じて勤務時間を短縮することも可能でしょう。

閑散期には取引先と相談の上で長期休暇を取れるのも魅力的です。

ひよこ鑑定士の求人・就職状況・需要

国内でも勤務できるが、海外での需要が大きい

ひよこ鑑定士の日本での就職先はあまり多くありません。

鑑定士を雇う経済力のある大規模ふ化場の数が少ないためです。

ただし、ひよこ鑑定士の高齢化が進み、なり手が減っていることから、若手の鑑定士を求めるところも一部あるようです。

また、海外では非常に重宝される資格です。

とくにヨーロッパでは人材不足が深刻で、日本の初生雛鑑別師資格を持っていれば、海外各国での就職に有利になります。

資格を取得し、確かな知識や技術があると認められた人は、畜産技術協会からあっ旋を受けて海外で活躍することも可能です。

ひよこ鑑定士の転職状況・未経験採用

資格取得のためには満25歳以下でなくてはならない

ひよこ鑑定士として働くこと自体に、基本的に年齢制限はありません。

しかし、日本でひよこ鑑定士になるには、畜産技術協会の「初生雛鑑別師養成講習」を受講し、実地研修を受けるといったステップを踏みます。

この養成講習の受講資格のひとつに「満25歳以下であること」という要件があるため、転職で目指す場合は、25歳になるまでに挑戦する必要があります。

学歴は「高卒以上」であれば応募でき、また前職の業種などもとくに問われないため、その点では広い人に門戸が開かれています。

ひよこ鑑定士に年齢制限がある理由は?

年齢が上がることでの視力低下、体力低下の懸念が理由になると考えられる

ひよこ鑑定士になるためには、畜産技術協会の「初生雛鑑別師養成講習」を受講する必要があります。

この講習は誰でも受けられるものではなく、受講資格として「満25歳以下」という年齢制限が設けられています。

年齢制限がある明確な理由ははっきりとは公表されていないようですが、もうひとつの受講資格に「身体強健で、視力1.0以上(矯正可)の人」とあることから、体力や視力が重要視されていると考えられます。

ひよこ鑑定をする際には、非常に小さなひよこの肛門を見て、速やかにオス・メスを判断しなくてはなりません。

視力が低いと業務に差し障りがあるため、できるだけ視力が低下しづらい若者が好まれるのでしょう。

また、業務中は高い集中力を保って何百匹、何千匹というひよこを見分けなくてはならないため、体力の面でも若い人のほうが有利になると考えられます。