猟師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「猟師」とは

猟師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

動物の狩猟を行い肉などを販売する

猟師とは、動物の狩猟を行い、それを販売するなどして生計を立てている人のことです。

主にシカやウサギ、鳥、クマ、イノシシなどをとり、仕留めた動物をさばいて食肉として販売する方法が一般的ですが、仕留めた動物の皮や骨を加工し販売する人もいます。

もともと猟師は自給自足の生活のために猟をしていましたが、明治時代ごろからは趣味として個人で猟をする人も増えてきています。

ただし、山梨県などでは現在もシカやイノシシ猟を専業にしている人たちがおり、伝統的な猟の方法が代々受け継がれています。

猟師ははただやみくもに動物を仕留めるのではなく、その地域の自然や生態系、在来種保護の観点などさまざまな知識や経験をもって猟をしています。

ときには増えすぎた動物の駆除や、人里におりて人間や田畑に害を与える動物の駆除を担うこともあります。

大型の動物を仕留めるときには猟師が集まりチームで猟を行うことも多いため、協調性やコミュニケーション能力が必須です。

また、仕留めた獲物のさばき方や処分の仕方、販売ルートの確保など猟の技術以外にもさまざまな知識が求められます。

さらに、猟を行うためには猟銃の所持やわな猟の免許など危険物に対するさまざまな資格が必須であるため、責任感を持ち周囲から信頼される人間でなくてはなりません。

「猟師」の仕事紹介

猟師の仕事内容

野生動物を仕留め、肉などを販売して収入を得る

猟師の仕事は、野生の動物を仕留めることですが、山や森にいる動物を自由に捕っていいわけではありません。

狩猟は、「法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をする」ことと定義されており、環境省によって定められた狩猟鳥獣以外の鳥獣の狩猟は禁じられています。

実際に猟が行われるものはシカやイノシシ、鴨といった鳥類が多くなっており、とくに北海道や東北地方などで、クマなどを捕らえる猟師は「マタギ」とも呼ばれています。

猟の仕方には、銃を利用する「銃猟」、わなを仕掛けて動物を獲る「罠猟」、網を利用する「網猟」の3種類があります。

猟師はそれぞれ資格をもち、これらの方法を駆使して動物を仕留め、その肉をさばき、食肉加工工場や地元の飲食業、旅館などに売ることで生計をたてています。

肉をさばくときに出た骨や角、皮などを利用し加工品を作成し販売する人もいます。

こうした方法以外に収入を得られるものとして「害獣駆除」があります。

人に危害を加えたり、農家の田畑を荒らしたり、数が増えすぎたりした動物を駆除するのが目的で、自治体から僚友会を通して依頼が来ると、報奨金や協力金が得られます。

また一般向けに狩猟体験を行ったり、大学の調査などで生体観測のために狩猟をしたりすることもあります。

なお猟ができる期間や場所は都道府県ごとに細かく指定されているところが多いため、猟師の多くは農家や旅館業、飲食業などと兼業していることが多いです。

猟師になるには

猟を行うにはさまざまな資格や手続きが必要

猟師になるためには、まずさまざまな手続きが必要です。

猟師になる為に必ず必要となるのが「狩猟免許」です。

狩猟免許は国家資格であり、猟法(狩猟をする方法)の種類に応じて以下の4つにわけられています。

・第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)
・第二種銃猟免許(空気銃)
・網猟免許
・わな猟免許

狩猟免許は筆記実技の試験に合格すれば得られますが、ただ狩猟免許を取得しただけでは狩猟をすることはできません。

銃を所持するには銃を所持する許可が必要ですし、猟をする際には自治体などに狩猟者登録をする必要があります。

こうした資格取得や手続きを行うには時間とお金がかかりますし、猟に必要な道具をそろえるのにも費用が掛かります。

猟師を目指す際には費用と時間に余裕を持って行うことが大切です。

実際に猟に出る際には、まず先輩となる猟師や地域の猟友会などに相談し、知識や技術を教えてもらいながらはじめるのが一般的です。

山や森の生態系や鳥獣に関する知識は、実際に足を運びその場で体験しないとわからないことも非常に多いです。

こうしたことを身に付けながら、猟の仕方を徐々に覚えていくとともに、捕らえた動物の解体技術も習得していきます。

また、各自治体や猟友会では初心者向けに猟の仕方や解体の仕方を講習会などの形で指導してくれるところもあるため、まだ猟に慣れないうちは積極的に利用するとよいでしょう。

猟師の学校・学費

特別な学歴がなくても猟師になれる

猟師になるために特別な学歴は必要なく、狩猟に関する資格を取得し手続きをとればだれでも猟師になることはできます。

銃猟の第一種免許は20歳以上、第二種免許は18歳以上という年齢制限がありますが、高校卒業後や大学在学中に狩猟の免許を取得することは可能です。

『ぼくは猟師になった』の著者として知られる千松信也さんも、京都大学文学部在籍中に狩猟免許を取得し猟をはじめています。

特別な勉強をしなくても猟師にはなれますが、学校で獣医学、環境学、地域社会などを学んでおけば、猟師になったときによりその知識を生かすことができるでしょう。

猟師の資格・試験の難易度

狩猟免許以外にもさまざまな手続きが必要

狩猟免許は、以下の4つがあり、それぞれ各都道府県で年に数回試験が実施されています。

・第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)
・第二種銃猟免許(空気銃)
・わな猟免許
・網猟免許受験

参考:神奈川県

狩猟免許試験は、知識検査・適性検査・技能検査の3つの試験が行われます。

知識試験・技能試験は70%以上、適性試験は全ての項目について基準を満たせば合格です。

試験内容は、動物や猟に使われる用具に関することや、猟に関する法令など幅広い知識が求められます。

とくに鳥獣保護管理法や銃刀法、火薬類取締法など普段あまり目にすることのない法令について深く知らなくてはならないため、「狩猟免許予備講習会」という試験対策を受けるのが効果的です。

また、銃やわな、網を所持するのにも手続きが必要です。

とくに銃を所持するためには、銃刀法に基づき講習や考査を受けなくてはなりません。

非常に複雑な手続きが必要であるため、実際に猟銃を所持できるようになるまでには数ヶ月から半年ほどかかることもあります。

さらに、狩猟免許を取得し銃やわなを所持しただけでは狩猟をすることはできず、猟を行う都道府県に狩猟者登録を行う必要があります。

狩猟者登録をするには狩猟税を納め、保険に加入する必要があります。

この登録がなくては猟を行うことはできず、登録が受理され「狩猟者登録証」や「狩猟者記章」をもらってはじめて猟に出ることができるのです。

猟師の給料・年収

猟の収穫により収入は安定しない

猟師の収入だけで生活することは難しい面があります。

それは純粋な狩猟とその肉の販売のみで収入を賄うことは難しく、さまざまな方法で収入を得る努力をしなくてはならないからです。

狩猟は自然や動物を相手にする仕事であり、毎月コンスタントに動物が取れるとは限りません。

また、悪天候や災害などにより狩猟ができなくては収入がゼロになってしまいます。

そこで多くの猟師は、害獣の駆除などを行って収入を補填しています。

本来狩猟時期は秋から冬にかけての期間に限られていますが、有害鳥獣駆除は年間を通して行われています。

地域により条件や金額は違いますが、シカやイノシシなどを捕獲すれば補助金が10000円前後もらえ、たとえば、わなを使って年間100頭のシカを捕まえると100万円ほどとなります。

そのほか、数は少ないですが動物の皮や角を加工して販売する、猟師が自らジビエ料理を振る舞う飲食店を経営するなどの方法があります。

なお、肉を食肉加工場や処理施設に引き取ってもらう場合はシカ一頭2000円前後、イノシシであれば1キロあたり500円~700円ほどとなります。

肉の状態が悪ければ値段が下がってしまう一方、良質の肉がとれればさらに買取の金額はアップします。

シカよりもイノシシの方が高値で買い取りされることが多いため、専業で猟師をしている人はイノシシをメインに狩る場合が多いです。

なお、害獣の駆除でとった肉は販売することができないため、大半は自家消費されているのが現状です。

猟師の現状と将来性・今後の見通し

若い世代の台頭が期待される

専業で猟師をする人は年々減り続けており、猟友会の高齢化が問題となっています。

これは森林が少なくなり野生動物が減少したことや、食肉の流通が一般化し猟師のニーズがなくなってきたことによります。

一方で、シカやイノシシが増えすぎたことで田畑が荒らされたり、森林が破壊されたりするなどの害獣による被害は深刻化してきています。

こうした動物を駆除できる経験豊富な猟師は需要が高まっており、害獣駆除に高い報奨金を出す自治体もあります。

さらに近年はジビエ料理や漫画の流行などもあり、若い世代にも猟師に関心を持つ人が増えてきており、とくに若い女性が猟に関心を持つ人が増えてきています。

これから猟を始めたいという人にはチャンスといえるでしょう。

猟師の就職先・活躍の場

猟友会は就職先ではない

猟師の多くは個人事業主や自営業です。

猟師の仕事だけで生計をたてているという人は少なく、多くの人が平日は会社員で土日に猟をするといったスタイルや、農家や飲食業、旅館業などと兼業をして猟師をしています。

また、猟が解禁になる時期だけ猟を行い、それ以外の時期は別な仕事をするというスタイルの人もいます。

多くの猟師は「猟友会」に所属していますが、これは就職先ではなく、特定の条件を満たした狩猟者であればだれでも入ることのできる団体組織です。

狩猟者登録の手続きを代行してくれたり、ほかの猟師と知り合うきっかけになったりというメリットはありますが、年間費用がかかることや、高齢化で若手が少ないなどのデメリットもあります。

猟師の1日

やま

猟はたいてい1日で完結するため、猟を行うときは毎日山や森に通います。

仕留めた獲物はすぐに解体しなければ鮮度が落ちてしまうため、素早く運び解体するのも猟師の仕事です。

7:00 山に集合
ほかの猟師と協力して猟を行う場合は、作戦をたて各持ち場にまわります。
8:00 猟場に到着
動物が集まるポイントに到着し、足跡やふんの痕跡がないかを確認します。
9:00 待機
動物が現れるまでひたすら待ちます。
11:00 シカを仕留める
たいていは2~3時間待って動物が現れないと場所を変えたりその日の猟を終えたりします。
きょうは銃猟でシカを仕留めました。
11:30 解体
仕留めた動物はその場で解体するか、山から降ろして加工場で解体するかのどちらかです。
今回はその場で解体することに決め、開けた場所に猟師たちがあつまり協力して行います。
14:00 山をおりる
協力して解体すると、肉を山から運び出します。
16:00 小屋へ戻る
ふもとの加工場やや作業場に戻り、それぞれ肉を配分して仕事を終えます。
そのまま猟師同士が集まり、肉を食べることもあります。

猟師のやりがい、楽しさ

動物と命のやりとりをすること

猟師のやりがいは、自分で動物を仕留めて肉を調達するというダイナミックさです。

現在、流通している食肉は多くが畜産農家と加工場によって生産されており、自ら肉を作るという仕事は猟師にしかできません。

大自然のなかで動物と駆け引きをしながら猟をし、命を頂くという行為は何事にも代えがたいことでしょう。

また、自治体や農家などから動物を駆除してほしいと依頼を受けて、無事に仕留めることができたときには大きな達成感を感じます。

どれだけ技術が発達したとしても、人間は動物には太刀打ちできない場面も多くあります。

猟師としての腕が人々や田畑の安全を守り、地域の人々の役に立っていると実感できることでしょう。

猟師のつらいこと、大変なこと

動物が相手で自分の思い通りにいかないことが多い

動物が相手で自分の思い通りにいかないことが多い

猟師に向いている人・適性

自然や動物が好きで猟に対する責任感が持てる人

猟師に向いている人は、自然や動物が心から好きだという人です。

猟は動物の命をもらうことであり、仕留めた動物は自ら解体しなくてはなりません。

普段動物園で見る動物や、スーパーで売っている食肉にしか触れたことがない人がいきなり猟師になるのは、非常に無謀なことともいえます。

ただ猟が楽しいという気持ちだけでなく、自然や動物の命に感謝し、その体を最後まで始末するという責任感を持てる人がこの仕事に向いているでしょう。

また猟のスタイルは、複数人で行う場合や個人で行う場合などさまざまです。

数人で協力して行う場合はコミュニケーション能力が欠かせませんし、個人で行う場合は一人で何でもできるバイタリティーある人が向いています。

猟師志望動機・目指すきっかけ

テレビや本などがきっかけ

日本国内には、猟が盛んに行われている地域や、猟友会が積極的に活動している地域も多くあり、こうした場所で育ったことで猟を身近に感じていたという人は少なくありません。

ただし、こうした地域以外に住む人にとっては、猟師という仕事は普段身近に感じることは少ないため、テレビや本などを見て興味を持ったという人が多くなっています。

また近年ではアウトドアブームもあり、後継者不足に悩む猟師たちが積極的にSNSで情報を発信したり、動画を公開したりしています。

とくに若い世代では、こうした様子を見て猟をしてみたいと思うようになった人が非常に多く、近年は女性の猟師志望者も増えてきています

猟師の雇用形態・働き方

多くは個人事業主か兼業猟師

猟師のなかには、猟の仕事だけで生計を立てている人もいますが、多くは趣味や兼業として猟を行っています。

猟師の仕事だけで生活を賄える人はほとんどいないこと、また猟のシーズンが国で決められているため、その期間は無収入となってしまうことなどが理由として挙げられます。

とくに食肉を目的として狩猟をしている人は、個人事業主や自営業として行っている人が多く、自ら食肉を加工して販売したり、猟師の傍ら飲食業や旅館業を営んだりしている人もいます。

自治体などの指示で鳥獣駆除の場合には報奨金や協力金などがもらえますが、それだけで生計を立てていくのは非常に大変です。

猟師の勤務時間・休日・生活

猟のシーズンは毎日猟に励む

猟師は、猟ができる期間は毎日山や森で動物を獲るという人が多く、それ以外の期間はほかの仕事をしている場合が多いです。

猟ができる期間は秋から冬にかけてが多く、自治体によって細かく制限されています。

そのため猟ができる期間に一気に動物を仕留め、猟の期間が終わるとそれを加工品として売ったり、飲食店などに提供したりする人が大半です。

猟の仕方によって従事する時間はさまざまですが、シーズンは朝早くから山に入り、陽が落ちる夕方までに帰宅するというパターンが一般的です。

遭難や動物との接触など危険性が高いことから、夜通し猟を行ったり夜間に山や森に入ったりすることはまずありません。

猟師の求人・就職状況・需要

猟師という求人は基本的にない

猟師という求人が行われることはまずなく、猟師になるには自ら狩猟免許を取得し、手続きを行わなくてはなりません。

自ら行動しなければ猟師になることはできないため、猟師を目指す人は積極的に情報を集め、動く必要があるといえます。

猟の盛んな地域では、猟をしたい人や始めたい人のために、講習会を行ったり体験会を開いたりしています。

ますは自分がどのような猟の仕方をしたいか、どのような動物を捕らえたいかを考えて調べ、猟ができそうな地域や教えてくれそうな場所はないかを探してみましょう。

近年ではインターネットでも狩猟に関する情報が多く集められますが、まったくつてがない場合は自治体などに問い合わせてみるのもひとつの方法です。

猟師の転職状況・未経験採用

転職や兼業の猟師も多い

猟師は転職や兼業で行っている人も多く、仕事を持ちながら趣味で猟をはじめたことがきっかけで本格的に猟師になったという人も少なくありません。

また、近年では地方への移住や地域おこし協力隊となったことがきっかけで猟をはじめたという人も多いです。

猟はどうしても山や森など自然があるところでしか行えないため、都心部に住んでいる場合は移動が大変な面もありますが、サラリーマンとして働きながら週末に猟をするという人もいます。

猟師は安定して収入を得られる仕事ではないため、本格的に猟師を目指すのであれば、まずはこうして趣味の範囲からはじめてみるのもよいでしょう。

副業で猟師になれる?

副業や趣味で猟をする人も多い

副業として猟をする人も多く見られます。

実際に収入になるだけの猟ができるかはそれぞれの力量や猟をする地域にもよりますが、有害鳥獣を駆除し安定的に報奨金を得られれば、数十万円から100万円程度の収入になります。

ただし、副業である場合捕らえた動物を解体して販売するのは難しいため、純粋に報奨金だけの収入となる場合が大半です。

解体施設にそのまま運び出し販売する方法もありますが、食肉として販売できる人に比べるとどうしても収入が減ってしまいます。

また、移動の際のガソリン代や道具などの維持費がかかってしまうため、収入を大幅アップさせようと考える人は少なく、あくまで趣味として行うという人が大半です。