【2021年版】鵜匠の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「鵜匠」とは

鵜飼いを行い人々を楽しませる

鵜匠とは、鵜飼いをする人のことです。

鵜飼いとは、鵜という鳥の習性を利用し、鵜を潜水させ鮎などの魚を捕る伝統的な漁のしかたです。

鵜飼いは日本では岐阜や愛知、京都などで行われており、鵜匠は漁服や烏帽子、胸当て、こしみのといった伝統的な装束を身にまとい、鵜を操って魚を獲ります。

律令時代から伝統的に続いている漁ですが、現在では観光のひとつとしてとらえられており、漁師のように実際に魚を売って生計をたてているわけではありません。

ただし、長良川で働く鵜匠は「宮内庁式部職鵜匠」とされ、公務員として働いています。

鵜匠は世襲制が多く、たいていの場合は親や家族が鵜飼いをしていたことがきっかけで鵜匠になります。

企業のように一般に募集されることはありませんが、世襲以外でも鵜匠のもとで、鵜飼いの修業をさせてもらうことでなることができます。

鵜飼いは日本の伝統文化のひとつとして古くから継承されてきたものであり、それを後世に次ぐことや、伝統を受け継ぐ担い手としての責任感が求められます。

また、鵜という動物を相手にする仕事であることから、動物や自然に関しての知識も必要な仕事です。

近年では鵜飼いは漁としてではなく観光として認識されていることが多いため、観光客に対してのコミュニケーション能力やパフォーマンス能力も必要な仕事といえるでしょう。

「鵜匠」の仕事紹介

鵜匠の仕事内容

鵜飼いをするためにさまざまな仕事をこなす

鵜匠の仕事内容は、鵜飼いを行って魚をとることです。

鵜飼いは、鵜という鳥の習性を利用し、潜水した鵜が鮎をとったところで引き揚げ、鮎を吐き出させる漁です。

鵜匠は舟にかがり火をたいて鮎を舟に引き寄せ、それぞれ鵜をつないだ縄を操って漁を行います。

漁が終わると鵜を自らあげ、かごにもどし、鵜に餌をやります。

鵜飼いのシーズンはほぼ休みなく漁を行うため、毎日の準備や鵜のケア、体調管理も欠かせません。

舟や道具のチェック、鵜のえさやりや体調のチェック、小屋の清掃など実際に鵜飼いをするまでにも多くの仕事があります。

一度の漁に10羽前後の鵜を使うため、多くの鵜匠は15羽前後の鵜を飼っています。

鵜とは毎日の生活をともにし、信頼関係を築かなくては鵜飼いができないため、鵜と触れ合って個性を把握したり、鵜飼いの練習をしたりすることも大切です。

「一日の行動はすべて鵜飼いのため」というほど生活と密接な関係になる人も多く、世襲制の場合は幼いころから鵜に親しんでいたことで、鵜飼いは生活の一部と考える人もいます。

また鵜飼いは漁であり、たくさん魚を捕ることが求められるため、それぞれの鵜匠がたくさんの鵜がとれるよう工夫しています。

なお、長良川では1シーズンに8回「御料鵜飼い」と呼ばれる皇室に届ける鮎を捕る漁が行われます。

この際には普段禁漁とされている区域で鵜飼いを行い、いつもより多くの距離を下ります。

鵜匠になるには

鵜匠に弟子入りし修業をする

鵜匠になるのは、一般的な職業と比べて難しい一面があります。

もともと鵜匠の仕事は世襲制で、親から子へ代々受け継がれてきた技術や道具があり、一般の人には就けない仕事でした。

しかし、後継者不足のため、近年は一般にも門戸が開かれており、まったく鵜匠に関係のない人でもなれる職業になったという背景があります。

現在も鵜飼いが行われている場所は限られているため、働ける場所や人数は非常に限定的です。

鵜匠になるには、現在活躍している鵜匠に弟子入りし、修行することで技術を身に付けるしかありません。

まずは鵜匠の動きを観察したり、櫂とさおを使って舟を動かしたりすることからはじめ、鵜飼の飼育方法や漁のしかたなどをひとつひとつ覚えていくのが一般的です。

そして師匠から認められると、一人前としてデビューすることが多くなっています。

一般的な職種と違い求人が出ることはないため、鵜飼いが行われている観光課や観光協会などに問い合わせてみるとよいでしょう。

ただし、日本で唯一、長良川で行われている鵜飼いだけは、現代も世襲制を守り続けており、鵜匠の家に生まれた男性だけが代々技術を守り続けています。

そのため長良川で鵜飼いをすることは一般人にはできません。

なお、鵜匠になる際に特別な知識や技術は求められませんが、鵜や鮎という動物を相手にする仕事であることから、畜産や水産、生物学などを学んでおくと有利になるでしょう。

鵜匠の学校・学費

特別な学歴は必要ない

鵜匠になるために特別な学歴は必要なく、鵜匠を目指すタイミングもまちまちです。

幼いころから家族と一緒に舟にのり手伝っていたという人、中学卒業後にすぐ弟子入りをしたという人、大学を卒業し、社会人になってから鵜匠を目指したという人などさまざまです。

鵜匠になるための知識は弟子入りしてから十分に教えてもらえますが、鵜を扱うため動物に関する知識や、川に関する知識を持っていると実際に仕事をする上では役に立つでしょう。

また、鵜匠は観光の一部となっているため、観光に関する勉強をしていると、鵜飼いのあり方や伝統文化についても深く知ることができ、鵜匠の仕事に活かすことができるでしょう。

鵜匠の資格・試験の難易度

特別な資格は必要ない

鵜匠は、働く上で特別に求められる資格はありません。

鵜匠になる時点で資格が条件になることもほとんどありませんが、動物や川という人間以外のものを相手にする仕事であるため、動物や自然に造詣が深ければ、仕事をする上で有利となるでしょう。

畜産や水産、生物学などに関する資格が何らかの資格を持っていることで、鵜匠になる際に大きく有利になることはめったにありませんが、身につけた知識や技術は業務にもおおいに生かせるでしょう。

鵜飼いについて学ぶには、現在活躍している鵜匠に弟子入りし、修行することで技術を身に付けなくてはならないため、過去の経歴や資格よりも実践が重要視されます。

鵜匠の給料・年収

給料が特別高いわけではない

鵜匠は鵜を飼って漁をする仕事ですが、漁で生計を立てているわけではなく、観光客に鵜飼いを見せるというパフォーマンスが主な役割となっています。

多くの鵜匠は市町村の職員や観光協会の職員である場合が多く、鵜飼いのシーズンは鵜飼いの仕事に専念し、それ以外の時期は観光舟の手伝いや観光案内などをしていることが多いようです。

これは、もともと日本は野鳥を飼育してはならない法律があり、環境庁から許可を得て一定期間だけ鵜の飼育が認められているため、冬場は放鳥しているところが多いからです。

給料は18万~25万円ほどが相場とされ、特別な仕事をしているからといってさほど高いわけではありません。

なかには副業をしながら鵜飼いを続けているという鵜匠もいるようです。

なお、長良川で行われている鵜飼いは「御料鵜飼」と呼ばれ、長良川で働く鵜匠は「宮内庁式部職鵜匠」という 非常勤国家公務員です。

月給は約8000円ですが、岐阜市から給料とは別に、年間約2900万円の「報償費」が支払われています。

額面は非常に高いように見えますが、これで鵜の訓練や鵜飼いの時に舟頭を雇うなど伝統技能を守る経費を賄っているのです。

また基本的に公務員は副業を持つことを禁じられていますが、鵜匠の場合は特別で、鵜飼いのシーズン以外は副業をすることが認められています。

鵜匠の現状と将来性・今後の見通し

鵜匠のあり方には議論がなされている

鵜飼いは伝統的な文化を伝承するという側面から、鵜匠という仕事は今後もなくなることはないと考えられます。

鵜飼いを観光資源としているところは多くありますが、需要が急速に拡大することは見込めないため、今後も世襲制や師弟制をとりながら継承されていくでしょう。

多くの鵜匠は国や自治体からの補助金で雇用されていること、鵜飼いの観覧事業が赤字の都市もあることなどから鵜匠のあり方にはかつてから議論がなされています。

今後は鵜匠がNPO法人や株式会社をつくるなど、新しい組織の形をつくっていく可能性もあります。

これからの鵜匠は文化として伝統を守りながらも、時代に合った働き方や変化を求められていくでしょう。

鵜匠の就職先・活躍の場

鵜匠の元で修業をするのが一般的

鵜飼いは一般に広く募集することはなく、基本的には世襲制です。

企業への就職とは違い、現在活躍している鵜匠に弟子入りし、修業をして一人前になるという流れが一般的です。

岐阜県の長良川の鵜飼いは完全世襲制で、現在9名ほどが働いています。

また京都では師弟関係で鵜飼いの伝統を引き継ぐ流れが残っており、一般からでも鵜飼いを目指すことが可能です。

なお、愛知県のように、市の職員として働いていたり、観光協会の職員として働いていたりするケースもあります。

なお、鵜飼いは基本的に男性の世襲制で、女性はなれない決まりが暗黙としてありますが、現在では数名の女性鵜匠がおり、女性では鵜飼いになれないということはありません。

鵜匠の1日

鵜飼いの仕事は夜が中心

鵜飼いは夕方から夜間にかけて行われるため、午前中は比較的ゆったりと過ごしています。

鵜飼いが行われる時間はあらかじめ決められており、それに合わせたスケジュールで働きます。

7:00 鵜の健康管理
朝起きるとすぐに鵜の様子を見に行きます。
鵜を鳥小屋に放し、夕方までは自由に過ごさせます。
9:00 道具の手入れ
鵜を入れる鳥かごや、手縄などの道具を手入れします。
15:00 舟の準備
鵜飼いをする舟を操作する舟頭が道具を運び入れ、準備を開始します。
その日使う鵜を選び、かごにいれて準備をします。
18:00 待機
舟に乗り込み川の上流へ移動し、漁を始める準備をします。
上流の待機場所ではくじ引きをおこない、川を下る順番を決めます。
19:00 鵜飼い開始
鵜の様子や川の流れを見ながら、集中して漁をおこないます。
20:30 総がらみ
舟が協力し合い川幅いっせいに並ばせ、鮎を浅瀬に追い込んで漁を行います。
21:00 終了
舟のなかの道具を片付け、鵜を寝床へ戻します。

鵜匠のやりがい、楽しさ

鵜を自在に操れるようになること

鵜匠の大きなやりがいは、鵜を自在に操れるようになったときです。

鵜匠が扱う多くの鵜はもともと野生のもので、手なずけるまでには時間がかかりますし、鵜との信頼関係が欠かせません。

世話をしながら鵜の特徴や性格を知り、なかなかいうことを聞かなかったり、魚を捕るのが下手だったりした鵜が、無事に魚を獲れるようになった際には、大きな達成感を得られるでしょう。

そのほか、伝統文化の担い手として、古来より続く漁法を多くの人に知ってもらうことも大きな喜びです。

鵜を操って見事な鵜飼いを披露し、観光客など多くの人に感動を与えられたときには、やりがいを感じられるでしょう。

鵜匠のつらいこと、大変なこと

突発的な事態も多く起こる

鵜匠は鵜や川など自然を相手に仕事をしているため、予測できない事態が起きることがままあります。

とくに天気の善し悪しでは鵜飼いができなくなってしまうこともありますし、舟が流されてしまったり、鵜が体調不良になってしまったりすることも珍しくありません。

突発的な事態にも冷静に対応できる人でなくては、自分自身や鵜を危険にさらしてしまう可能性があるため、非常に責任の重い仕事といえるでしょう。

また鵜によっても性格があり、暴れたり、魚を捕らなかったりということを聞いてくれないこともあります。

鵜を自在に扱えるようになるには長い時間がかかるため、辛抱強く鵜と信頼関係を築いていく必要があります。

鵜匠に向いている人・適性

自然に興味があり好きな人

鵜匠になるには、鵜や鮎、川といった動物や自然に興味があり、好きであることが大前提です。

鵜の体調や川の流れなどを読みながら仕事をしなくてはならないため、ちょっとした変化にもすぐ気が付ける観察眼のある人が向いているでしょう。

修業をしているなかでは、鵜の動きや舟の動かし方などを少しずつ覚えていく必要があるため、経験を積みながらこつこつと知識を重ねていける人も向いています。

また、鵜匠という仕事は伝統文化を受け継いでいくことでもあるため、鵜飼いという伝統を守りたいという強い意志のある人、多くの人や後世に伝えたいという思いを持つ人でなくてはなりません。

鵜匠志望動機・目指すきっかけ

実際に鵜飼いを見て興味を持った人が多い

鵜匠は多くが世襲制であるため、志望動機に関わらず「家族が鵜飼いをしていたから」と鵜匠となる人も多いです。

一般の人が鵜匠となる場合は、観光で鵜飼いを見て興味を持った人や、もともと動物や自然に興味があり、鵜匠を目指したという人が多いです。

鵜匠になるには弟子入りをして修業をしなくてはなりませんし、場合によっては転居をする必要もあります。

一人前となって生計を立てられる人はごく一部である一方、動物を相手にする仕事であるため簡単にやめられるものでもありません。

鵜匠を目指す場合に志望動機を問われることはあまりありませんが、自分自身でしっかりと志望動機を持ち、強い決心をする必要があります。

鵜匠の雇用形態・働き方

雇用形態は市町村によってさまざま

鵜匠の雇用形態は鵜飼いが行われている市町村によって異なり、市町村職員として雇用される場合、観光協会などの職員として雇用される場合、個人事業主としている場合などさまざまです。

市町村職員や観光協会の職員となる場合は、鵜匠以外の仕事を担うこともありますし、個人事業主の場合はほかに仕事を持ちながら鵜匠を行っている人もいます。

とくに雇用形態によって給料は大きく異なるため、しっかりと確認しておくことが大切です。

岐阜県の長良川の鵜匠は国家公務員(宮内庁の職員)として雇用されていますが、長良川での鵜飼いは世襲制で行われているため、一般の人は就くことができません。

鵜匠の勤務時間・休日・生活

鵜飼いのシーズンとそれ以外で異なる

鵜飼いが行われるのは一般的に夕方から夜間にかけてですが、これ以外にも鵜匠には多くの仕事があります。

鵜の飼育や身に付ける装束、舟や道具の手入などを行うため、午前中から働くことが多く、実働時間は長くなりがちです。

また、鵜飼いが行われる夏の期間は、大雨などの悪天候で増水の危険がある場合以外は基本的に毎日仕事があるため、休みはありません

一方で冬場は鵜飼いの仕事はなく、次のシーズンに向けての準備がはじまります。

鵜は冬場は飼育せずに放鳥されることが多く、鵜飼いを行わない時期はほかの仕事をしている人もいます。

また、新人時代には、通常の勤務に加えて、舟の操舟訓練や安全講習などもあり、より仕事量は多くなります。

鵜匠の求人・就職状況・需要

一般に募集されることはない

鵜匠という求人が一般に募集されることはほとんどありません。

鵜匠の需要は非常に少なく、多くは世襲制であるため、広く求人を出して人を雇うということはほとんどないのです。

鵜匠になった人の多くも、たいていは家族が鵜匠をやっていたか、自分で鵜飼いを行っている市町村に問い合わせ、弟子入りを志願したという人ばかりです。

志願したからといって、必ず受け入れられたり一人前になれたりするとは限らないため、非常に狭き門であるということを知っておきましょう。

ただし、鵜飼いに関する事務スタッフや舟頭は市町村や観光協会などで求人がある場合があり、まずこうした仕事から始め鵜匠を目指すという人もいます。

鵜匠の転職状況・未経験採用

転職でなる人も少なくない

鵜匠は明確な年齢制限はなく、転職でなることもできる仕事です。

実際、一旦はほかの仕事についたものの、鵜飼いに興味を持ち、弟子入りしたという人も少なくありません。

鵜飼いは市の職員や観光協会の職員として働いたり、アルバイトとして仕事を手伝ったりすることもあるため、鵜匠に興味がある人は鵜飼いを行っている市町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

なお、鵜飼いのみで生計を立てている鵜匠はごく一部であるため、大抵の場合は、ほかの仕事を持ったり、アルバイトをしたりしながら働いています。

鵜匠としてデビューするには長い期間修業を必要とし、鵜匠としての収入も少ないため、生計を立てられるようにしっかりと計画をたてておく必要があります。

宮内庁式部職鵜匠とは

国家公務員として働く鵜匠

鵜匠のなかでも、長良川で働く鵜匠は「宮内庁式部職鵜匠」とされており、国家公務員の身分で働きます。

長良川の鵜飼いが重要視されているのは、律令時代から鵜匠が宮廷直属の職人として漁をしていたことに由来し、岐阜市は長良川鵜飼のユネスコ無形文化遺産登録を目指しています。

2021年現在、長良川の鵜匠は9名で、男性のみの世襲制と決められており、一家に1人と決められています。

ケガや病気、死亡などにより先代(父)が引退すると、息子が跡を継ぐという流れです。

国からは月8000円ほどしかもらえませんが、岐阜市から舟頭を雇用するための報償費として、一人年間約2900万円支給されています。