「農家」とは

米、野菜、果物、花木などの農作物を一から育て、商品として出荷することで利益を出す。
農家は、第一次産業である「農業」によって収入を得る職業です。
野菜や果物、花木や米と、さまざまな農作物を育てている農家がいます。農家には、農業を中心に生計を立てている「専業農家」と、農業と他の仕事を両立しながら生計を立てている「兼業農家」がいます。
農業離れが進む近年では「専業農家」「兼業農家」ともに減少する傾向にあり、農業従事者の高齢化も大きな問題になっています。
一方で、国民の食の安全への意識や自給率に対する問題意識は少しずつ広がってきており、農業は今大きく注目されている仕事のひとつと言うことができます。
農業を営むためにはさまざまな知識が必要となりますので、実家が農家ではない場合には、専門の学校で学んだり、農業法人に就職して働きながら学ぶ必要があります。
「農家」の仕事紹介
農家の仕事内容
農作物を生産し出荷する仕事
農家は、米・野菜・果物・花などを育てて市場に出荷し、収入を得る仕事です。
私たちが普段口にする米や野菜だけでなく、飼料作物になる穀物類や繊維に加工する綿や麻など、生産するものの種類は多岐にわたります。
農家は季節や気温に合わせて、土づくりや種の植え付け、肥料まき、収穫などを行います。
かつてはとても手のかかり体力勝負の仕事でしたが、現代は機械化が進み、さまざまな農機具を使って農作業ができるようになりました。
中には「無農薬栽培」や「有機栽培」など、質や安全性にこだわった栽培方法で農業に取り組む人もいます。
ただ農作物を生産して売ればいいというわけではなく、利益を出すためには、「何をどう売るのか?」といった販売戦略を考えることも重要です。
農家の就職先・活躍の場
農家に雇われるか、独立開業か
農家の大きな特徴として、家業を継ぐために農家になるという人が多いことが挙げられます。
新規就農として働く場合は、大きく分けると、個人事業主として独立開業しながら働く道と、農業法人に就職して働く道の2つの選択肢があります。
農業法人に就職する場合、サラリーマンと同じように給料をもらいながら働くことになるので、1から農業をはじめたいという人でも安定した収入を得ながら技術力を身につけることができます。
このように知識や技術を身に付け、その後独立開業する人が多いようです。
農家の1日
農家の仕事は屋外での作業が中心になることが多いため、日照時間に合わせた労働スタイルをとるのが基本です。
朝早くに起きて日が昇る時間には作業を始め、日が沈む夕方頃には作業を終えるようにしています。
5:00 起床
5:30 農作業開始
8:00 自宅に戻り朝食休憩
9:00 農作業・出荷
12:00 昼食休憩(昼寝をすることも)
13:00 農作業・出荷の準備
15:30 小休憩(お茶・おやつなど)
16:00 次の種まきや肥料に使うものの準備作業
18:30 終了
農家になるには
誰にでも新規就農のチャンスが
農家になるために特別な学歴や資格は必要なく、「農業をやりたい」という気持ちさえあれば、どんな人でもなれるチャンスはあります。
ただし専門的な知識と技術が必要となるため、何の勉強もせずにいきなり挑戦して成功できるほど簡単ではありません。
まずは農業高校や農業大学などで農作物に関する知識を学んだり、農業従事者の下で働いたりしながらノウハウを身につける人が大半です。
実家が農家ですでに農業の知識がある人は、すぐに働きはじめることも可能です。
農家の学校・学費
農業高校や農学系が学べる大学へ進学
農業について学べる学校は全国にあります。
農業高校、農業について専門的に学べる大学、そして専門学校に当たる農業大学校などです。
こうした学校はカリキュラムや専門分野もさまざまで、農業実習として実際の農家で農業を体験したり、学校内で農作物を育てたりすることもあります。
自分が将来どのような農家になりたいかをしっかり考えて、目指す農業に適したところを選びましょう。
農学系の大学を卒業したあとは、農家を目指すだけでなく農業、食品、環境、化学などの関連分野で就職を目指す方もたくさんいます。
農家の資格・試験の難易度
業務上さまざまな資格が必要
農家になるために特別な資格は必要ありませんが、実際に農家として働くうえで、ほとんど必須ともいえる資格や免許もあります。
まず運搬や移動のために「普通自動車運転免許」は不可欠で、経営規模によっては「大型特殊自動車運転免許(農耕車限定)」や「けん引免許(農耕車限定)」が必要な場合もあります。
ボイラーのあるハウス栽培を行う場合は「危険物取扱者(乙種第4類)」、農薬をつかう場合は「毒物劇物取扱責任者(農業用品目または一般)という国家資格が必要です。
それぞれ必要に応じて取得を検討してみましょう。
農家の給料・年収
収入が不安定な職業
農家の収入は、「何を・どれだけ・どのように売るか」によって大きく異なります。
同じ農作物を育てていたとしても、年間で収入が1000万円以上という農家もあれば、100万円以下という農家もあります。
条件が整い、高値で売れる農作物を量産できるときもあれば、台風などの自然災害に見舞われ収穫ができず、赤字になってしまうときもあり、自然環境に大きく収入が左右される仕事だといえるでしょう。
こうしたことから、他の仕事と両立させる「兼業農家」として安定した収入を得るよう努めている人も少なくありません。
農家のやりがい、楽しさ
手間暇をかけて農作物を育てる
農家の一番のやりがいは、自分の手で一から農作物を育てられることでしょう。
ひとつの農作物を収穫するまでには、長い時間と手間がかかります。
それだけにさまざまな苦労を経てやっと収穫した農作物は、まるで自分の子どものように感じるという農家も少なくありません。
そんな自慢の農作物が、市場を経て消費者に渡り、高い評価を受けたり、人気を集めたり、直接「おいしい」と言ってもらえたりすることは、農家にとって何よりの喜びです。
農家のつらいこと、大変なこと
自分の力ではどうにもできないことも
農家は自然を相手にする仕事なので、どうしても人間の力ではコントロールできないことがあります。
暑さや寒さなどの苦労もありますが、農家にとって最もダメージが大きいのは自然災害です。
一度激しい台風や大雨、地震などにあえば、大事に育ててきた農作物や畑に大きな被害をもたらされてしまいます。
どれだけ気をつけていても、自然の猛威が激しければ農作物や畑を守りきれないことがあり、まさに人間の力ではどうしようもないのが現状です。
農家に向いている人・適性
自然の中で仕事がしたい人
農家は、自然の中で仕事ができる職業です。
暑さや寒さはもちろんのこと、雨の量や雲の流れ、花や虫の変化など、農業を通して毎日自然の移り変わりを感じることができます。
もともとアウトドアが好きだったり、動植物を相手に仕事がしたかったり、自然のなかで仕事がしたいというあこがれがある人にとっては、農家は向いているといえるでしょう。
実際に、都会でのサラリーマン生活を辞めて僻地での農家に転職する人の多くが「自然のなかで生活してみたい」という動機をもっているそうです。
自然が好きな人にとっては、農家はうってつけの仕事と言えるでしょう。
農家志望動機・目指すきっかけ
農作物を作ることに憧れて
農家を目指すきっかけとして最も多いのは「家が農家だったため」というものです。
身近で働く人たちを見ていたり、農作業を手伝ったりしているうちに、いつしか憧れに変わり、農家を目指したという人が多いようです。
また、もともと植物や野菜が好きで実際に自分で農作物を作ってみたい、自然に囲まれた中で仕事がしたいと農家を目指す人もいます。
一度はサラリーマンとして就職したものの、環境のよい田舎で暮らしたいの思いから農家の仕事を選ぶ人も増えてきています。
農家の雇用形態・働き方
さまざまな形のアルバイトがある
農家の多くは、自分で独立開業しているか、農業法人に勤めているかのどちらかです。
そのほかにアルバイトとしての雇用も多くあります。
時給や日給で雇われることが多く、期間は数日だけのものから一年単位のものまでさまざまです。
とくに田植えや収穫の時期など人手が不足する時期は、さまざまな農家でアルバイトを募集しています。
「農業をしてみたいけど、実践経験がないので不安」「農業に興味があるので短期間だけ手伝ってみたい」という人たちに人気です。
農家の勤務時間・休日・生活
長期休暇をとるのは難しい
農家の生活として特徴的なのは「長期で仕事を休めない」ことです。
農作業があるため遠方に出かけることはなかなかできません。
一方で、ちょっとした休みは取りやすくなっています。
農家の場合、職場である畑や田んぼと家が近くにあることがが多いので、作業の合間に休憩したり所用を済ませたりすることも可能です。
また雨や風で作業ができなければ仕事が休みになることもあります。
農家として働く場合は、すべてにおいて農作物や季節・天候に合わせた生活スタイルになります。
農家の求人・就職状況・需要
働き手の高齢化で求人も増えている
現在、個人事業主にしても農業法人にしても、働き手の高齢化に悩まされているところがほとんどです。
今、後継者を育てておかなければ、いずれ自分たちが農業をできなくなったときに、大事に育ててきた畑や田んぼが耕作放棄地になってしまうのです。
こうした背景もあり、全国の農家の求人も増えつつあります。
とくに今の農業業界は積極的に若い人の力を求めていて、新卒者はもちろんのこと、脱サラして農業をはじめたいと考えている人などはどこも歓迎してくれます。
農家の転職状況・未経験採用
新規就農の場合は支援制度を利用
農業法人に転職する場合は、普通のサラリーマンと同じように給料をもらいながら農業の担い手として働くことになります。
一方、個人事業主として開業する場合は、農地から農耕機具まで一通りを自力で揃えなければ農業をはじめることができません。
開業には500万円以上の初期投資が必要だといわれていますので、開業を考えている人はまず十分な資金を貯めることが大切です。
新規で就農する人は、農林水産省の支援制度をうまく活用することで農家への転職の可能性を高めることができるでしょう。
農家の現状と将来性・今後の見通し
農業へのハードルは低くなりつつある
近年、農業従事者の高齢化や農家の減少が問題となっています。
農業は人々の生活に不可欠な産業ですが、農業の収入の不安定さや都市部への人口の流出などで農業離れが進んでいるからです。
そんな中、国が新規就農者への給付金を支給したり、地方移住者に農業用の土地を安く提供したりといった取り組みがはじまっています。
また、農業機械の自動運転やドローンの活用、LED照明を使った土を使わない栽培などの技術開発が進み、農業に対するハードルはこれからますます下がり働きやすくなっていくことでしょう。