女性の理学療法士のキャリアパス・結婚後の生活

女性の理学療法士の現状

リハビリ=力仕事というイメージもあって、理学療法士はとても男性の多い職業だと考えている人もいるかもしれません。

国家資格が創設された当初こそ、そのイメージ通り、女性の資格取得者は1割ほどにすぎませんでしたが、近年の女性割合は4割弱にまで上昇しており、かつてのような男女差の偏りはみられなくなっています。

こうした傾向は若い世代ほど顕著であり、理学療法士の養成校では、男女比がほとんど同じくらいであるところも多いようです。

また、職場においても仕事内容に男女間の違いは一切ありませんし、昇進に性別が影響することもなく、女性の管理職も増えています。

これから女性の理学療法士は、ますます増えていくものと考えられます。

参考:日本理学療法士協会 会員の分布

女性の理学療法士の強み

理学療法士に限らず、病気やけがなどで弱った人の治療にあたる医療職には、通常の職業以上に「気遣い」が求められます。

女性ならではの細やかな心配りや優しさが、リハビリなどで患者に接する際には非常に役立ちますし、とくに患者が女性の場合、同性だからこそ気づけること、できることも多々あるでしょう。

また、リハビリを行う際に理学療法士は物理的に患者の身体を支える必要があるため、女性患者のなかには、同性の理学療法士に担当してほしいという人も一定数います。

女性であること自体が、理学療法士としての強みといえるかもしれません。

女性の理学療法士の弱み

理学療法士の仕事に男女差が一切ないのは上述の通りですが、それは逆にいうと、女性であっても男性とまったく同じだけの力仕事をこなさなければならないということでもあります。

人体は想像以上に重く、患者の四肢を動かしたり動作を補助したりするにはかなりの筋力が必要ですし、ときには自分より大きな身体の患者を支えないといけないときもあります。

アスリートのように人並み以上の能力が求められるわけではないものの、筋力面・体力面でどうしても男性よりハンデを抱える女性は、仕事できつい思いをするケースも多いかもしれません。

結婚後の働き方

かつては、結婚を機に理学療法士を退職するという人も多くみられましたが、近年は徐々に減りつつあります。

理学療法士は、比較的残業が少なく、また看護師などのように夜勤することもないため、医療職のなかでもワークライフバランスを取りやすい職業といえるでしょう。

さらに、どうしても家庭生活を優先させたいという場合は、常勤の勤務形態から、パートなどの非常勤に移る方法もあります。

理学療法士の国家資格があれば、一般的なパートよりもはるかに高時給で働くことができるでしょう。

なお、理学療法士は、同じ理学療法士同士、あるいは作業療法士言語聴覚士などのリハビリ専門職同士で職場結婚するケースが目立ちます。

そうした場合、仕事に対する理解が深いこともあって、結婚後も共働きで働く人が非常に多いようです。

理学療法士は子育てしながら働ける?

理学療法士は比較的女性が多い職業であることもあって、産休・育休制度の整っている職場も数多く見受けられます。

施設によって差がありますが、産休は出産予定日の2ヵ月前から、育休は出産後1年ほど認められているところが多いようです。

また、理学療法士の仕事は体力勝負という側面もあるため、妊娠中で体力が低下している期間、育休明けで体力が戻っていない期間については、時短勤務制度を利用するケースも少なくありません。

それでも子育ては非常に大変ですから、職場の都合や本人の体力的事情などで、職場を離れざるを得なくなることもあるかもしれません。

そうした場合でも、退職ではなく休職とする手続きを取って、ある程度子どもが成長し、生活に余裕が生まれた時点で復職するケースが多くなっています。

理学療法士は女性が一生働ける仕事?

理学療法士協会の統計によれば、女性理学療法士の世代別就業率は、20代で9割近くあるものの、30代では8割ほどに減少しています。

しかし、40代後半あたりから徐々に就業率は回復しており、育児を終えた後に職場復帰している女性が多いことがうかがえます。

理学療法士の国家資格さえあれば、元の職場に復帰したり、あるいは別の職場を探すこともさほど難しくはありませんし、ブランクがあっても非常勤などで徐々に慣れていくことが可能です。

結婚、出産、育児などのライフイベントによってキャリアが中断されやすい女性であっても、理学療法士は一生続けられる仕事といえるでしょう。

日本はこれから本格的な高齢化社会を迎え、理学療法士のリハビリ需要は増え続ける一方、人口減少の影響により働き手の不足は深刻していく見通しです。

今後、世代を問わず女性理学療法士が幅広く活躍していくことが不可欠であり、またそれを後押しするための制度づくりもより進んでいくものと思われます。