理学療法士が行う「物理療法」「運動療法」とは

理学療法士が行う物理療法

物理療法とは

物理療法とは、温熱、寒冷、電気、光線、超音波、水流、徒手など、物理エネルギーを利用した治療法です。

物理エネルギーというと難しく感じられるかもしれませんが、たとえば足首をねんざした際に、湿布を貼って患部を温めることは、温熱エネルギーを用いた物理療法の一種といえます。

同じように、寝違えて首が動かなくなったとき、患部にビリビリする電気を与えて筋肉をほぐすことも、電気エネルギーを用いた物理療法です。

このように、物理療法は私たちにとって比較的馴染みのある治療法であり、運動療法と並んで理学療法士が日常的に用いる治療方法のひとつです。

物理療法が用いられるケース

リハビリというと、患者の関節を屈曲させたり、歩行訓練を行ったりといった運動療法のイメージのほうが強いかもしれません。

しかし、けがをした直後や手術直後の急性期については、運動療法を行うことが困難であるため、痛みを抑えたり、症状を緩和させるために、物理療法を使った治療が行われます。

また、マッサージを筆頭に、物理療法には患者に心地よさを感じさせるものも多く、身体的というよりも心理的な効果を期待して、維持期の患者に用いられることもあります。

とくに、劇的な回復が望みにくく、治療が長期間に及ぶ高齢者に対しては、精神面のケアのために物理療法が使われやすいといえます。

具体的な物理療法の種類

牽引療法

牽引(けんいん)療法は、けがや障がい、痛みのある部位に応じて、四肢や脊椎などをゆっくりと引っ張り、骨、筋肉、関節を伸ばす治療法です。

椎間板ヘルニアなど、骨に強い圧力がかかることで生じる病気の痛みを緩和したり、肩こりや腰痛など、筋肉の血行不良が原因で起こる症状を改善します。

また、骨の位置を整えたり、関節が変形するのを防ぐといった効果もあります。

牽引する角度、重さ、時間などを調整することで、さまざまな部位を治療することが可能です。

電気療法

電気療法は、電気を身体に流すための電極を皮膚に張り付け、低周波や中周波の電気刺激を患部に与える治療法です。

おもな目的は、一定間隔の刺激を与えることで筋肉をほぐし、慢性的な肩こりや腰痛、ひざ痛などにみられる疼痛(うずくような痛み)を和らげることです。

また、筋肉のこわばりを取り除くことで関節の可動域が広がったり、筋肉を電気で収縮させることで、筋力を回復させるといった効果も期待できます。

温熱療法

温熱療法は、温水や電磁波、超音波などを使って、患部に熱エネルギーを与え、血流を改善させたり、疼痛を軽減させたり、リラクゼーションを与える治療法です。

治療に使われる機器にはさまざまなものがありますが、加熱されたパックで患部をおおうホットパックや、赤外線治療器、極超短波治療器などが代表的です。

温熱療法の歴史は古く、温泉浴や日光浴なども、私たちの暮らしに身近な温熱療法の一種です。

マッサージ療法

マッサージ療法は、押したり揉んだりさすったりする力学的エネルギーで患部に刺激を与え、筋肉をほぐしたり、痛みを緩和したり、血行やリンパなどの代謝を促進させる治療法です。

また、マッサージにはリラクゼーション作用もあるため、交感神経が働きすぎて興奮状態にある場合など、自律神経のバランスを整えるために用いられることもあります。

徒手で行う方法が一般的ですが、ローラーを用いる方法や、水圧、空圧によるマッサージもあります。

なお、理学療法士が行うマッサージは、欧米のリハビリテーション医療に基づいており、世間一般のマッサージ師が行うあん摩や指圧など、中国由来の東洋医学を基礎としているものとは、まったく別物です。

理学療法士が行う運動療法

運動療法とは

運動療法とは、患者の身体を実際に動かすことで、自立して日常生活を送るために必要な機能を取り戻す、あるいは機能の低下を防ぐ治療法です。

総合病院やリハビリテーション病院などでは、マットや平行棒、階段などが用意された、運動療法を行うための専用ルームが設けられています。

物理療法とは違って、実際に運動療法を受けたことがある人はまれかもしれませんが、理学療法士の介助の下で運動に励む患者を見たことがある人は多いでしょう。

運動療法にも、物理療法と同様さまざまな種類がありますが、医師の指導に基づいて、計画的に負荷を上げていくという点は共通しています。

運動療法が用いられるケース

運動療法が用いられるのは、骨折や脊椎損傷など、外傷の治療が一通り終わったあとの回復期や、人工関節の手術後、脳卒中などの後遺症で手足に麻痺が残った場合などです。

神経が麻痺してしまっていても、繰り返し刺激を与えることで神経が回復することがわかっており、治療のために運動療法が役立てられています。

また、高齢者が介護などを受けず、自立して生活できる期間を少しでも長くするため、関節を長持ちさせるなど、身体機能を維持する目的で運動療法が用いられるケースもよく見られます。

そのほか、スポーツ選手がけがをした場合に行われるスポーツリハビリでも、各種競技に合わせた専門的な運動療法が取り入れられています。

具体的な運動療法の種類

関節可動域訓練

関節可動域訓練は、関節を曲げたり伸ばしたりして筋肉をほぐし、可動域を拡げたり、関節が固まる「拘縮(こうしゅく)」を予防するための訓練です。

最初は理学療法士が患者の四肢を動かす「多動運動」から始め、徐々に、患者自身が自由に動かせる手などを使って障がいのある四肢を動かし、理学療法士はその介助を行う「自動介助運動」へ移行します。

最終的には、対象の関節だけを自力で動かす「能動運動」ができるようになるまで、訓練を続けます。

痛みが伴ったり、炎症などが再発する恐れもありますので、長い時間をかけて慎重に行っていく必要があります。

筋力増強訓練

筋力増強訓練は、ゴムボールやチューブ、ダンベルなどの器具を使って、特定の筋肉に負荷をかける訓練です。

病気やけがなどで筋肉が損傷してしまったり、あるいはギプスに長期間固定すると、筋力は著しく弱まってしまいます。

そこで、最初は理学療法士が徒手で抑えるなど、ごく弱い抵抗から始めて、徐々に日常生活を送れるレベルまで筋力を回復させます。

介護施設においても、パワーリハビリテーションと呼ばれる、筋力増強を目的としたマシントレーニングが実施されています。

基本動作訓練

基本動作訓練は、立つ、座る、歩くなど、日常生活を送るうえで必要な動作機能を取り戻すための訓練であり、病院で最もよく見られるリハビリテーションです。

基本動作訓練はいくつかのステップに分かれており、最初は、理学療法士の介助の下、寝返りや起き上がりといった、ベッド上での動作からスタートします。

それらが問題なくできるようになれば、次に長い時間座っていられるようにするための座位耐久性訓練を行い、椅子に座った状態から手すりにつかまって立ち上がるなどの歩行準備訓練に移ります。

そして、平行棒のなかでバランスを取る訓練、平行棒のなかを歩行する訓練を経て、補助なしで歩く平地歩行訓練、階段を上り下りする訓練へと進みます。

協調性訓練

運動機能は、身体のなかのさまざまな筋肉や関節が正しく連動することで成り立っています。

しかし、脳血管障害や脳外傷、脳性麻痺などの患者は、中枢神経のコントロール機能に異常が生じ、ものを持ち上げる、身体の一部を触るといった、複数の関節と筋肉が絡む動作ができなくなることがあります。

協調性訓練は、理学療法士の指導の下、同じ動作を何度も繰り返すことで、異常な運動パターンの信号を取り除く訓練です。

平衡感覚を保つバランス訓練なども、協調性訓練の一種です。