理学療法士は独立・開業できる?

独立開業する理学療法士の働き方・仕事内容

理学療法士が理学療法を行う際には、必ず医師の指導の下で施術しなければなりません。

このため、理学療法士の国家資格には、単独で事業を行うための「開業権」が認められておらず、この点は同じリハビリ職である作業療法士言語聴覚士も同様です。

しかし、それはあくまで理学療法士の資格を使って開業できないというだけであり、一般の人が会社を立ち上げるのと同じように、個人としてなんらかの事業を起業することは可能です。

理学療法士の資格保有者が起業する例として多いのは、デイサービスセンターや訪問介護事業所といった、介護関係の事業です。

また、整体院やマッサージ店など、健康保険に関係のないサービス事業を手掛けるケースもあります。

その場合の仕事内容は、スタッフの労務管理や施設管理、利用者獲得のための営業活動、他施設との情報共有など、施設経営全般におよびます。

また、経営者兼機能訓練指導員として、施設利用者に直接リハビリを行うこともあり、仕事内容は多岐にわたるうえ、業務量自体も多くなりがちです。

独立開業するまでのキャリアパス

理学療法士が独立開業するまでに明確なキャリアパスはありませんが、最初から起業する意思があっても、国家資格取得後は、まずは医療施設や介護施設などに就職するケースが一般的です。

知識やスキルを積むとともに、できる限り多くの人脈をつくったり、開業資金を貯めるなど、将来の開業を見据えた動きをすることが望ましいでしょう。

また、患者や利用者の声を直接聞き、どんなサービスが求められているのか、どこに不満点があるかといった情報を集めて、優れたビジネスモデルを構築することも非常に大切です。

さまざまな事業形態を模索していくなかで、柔道整復師や作業療法士など、ほかの国家資格取得が必要になるケースもあるかもしれません。

とくに柔道整復師は、理学療法士と違って、接骨院や整骨院などを単独で経営できる「開業権」があることから、資格取得を目指す理学療法士も一定数いるようです。

準備が整ったら、開業場所の選定やスタッフの確保などとあわせて、必要に応じて役所などに届出を行い、自分の施設を開業します。

理学療法士が独立開業するメリット

理学療法士が独立開業するメリットとしては、資格を持たない一般の人が運営する介護施設や、あるいは柔道整復師資格しか持たない接骨院などとの差別化を図りやすい点があります。

理学療法士が介護施設を運営すれば、食事や入浴の補助、レクリエーションといった通常の介護サービスに加えて、クリニックなどと連携することで、リハビリサービスも同時に行うことが可能です。

同じように、理学療法士と柔道整復師のダブルライセンスで働けば、けがの治療だけでなく、けがによって失われた身体機能を回復させるための指導や助言も行うことができます。

施設利用者やその家族からしても、さまざまなサービスを1ヵ所で受けられるほうが便利です。

また、施設運営者自身が国家資格を持っていることで、施設自体の信用度アップにもつながります。

理学療法士が独立開業するデメリット

理学療法士が独立開業する最大のデメリットは、経済面・生活面など、あらゆるリスクを負わなければならないという点です。

病院や介護施設などに勤務する場合、その待遇面はかなり安定しており、また残業もさほど多くはなく、仕事とと家庭生活を両立させることも難しくはありません。

しかし、独立開業するとなれば、収入は施設の運営状況次第で大きく変わります。

高収入を稼げるチャンスもある一方、食べていくのがやっとという可能性もありますし、最悪の場合廃業するケースもあります。

また、たとえ事業自体が堅調でも、経営形態によっては看護師などの専門スタッフを一定数雇用しなければならないため、人繰りに困ることもあるかもしれません。

さらに、経営者であるために労働時間などの規定はなく、どれだけ働いても仕事が終わらないこともありますし、雇用保険も対象外ですので、病気や事故などで働けなくなっても補償はありません。

成功するためには、経営者としての手腕やセンスが必要であり、誰もが独立開業に向いているわけではないということ、そしてさまざまなリスクがあるということには、あらかじめ留意しておく必要があります。

独立開業後の理学療法士の給料・年収

独立開業後の理学療法士は、成功して年収1000万円以上を稼いでいる人もいれば、ほとんど客がつかず、開業資金の借入返済や家賃・水光熱費などを差し引けば、実質的に収支がマイナスという人もいます。

事情はさまざまですが、収入面についてみれば、資格を使って開業できない以上、かなり大きな危険性が伴うのは間違いありません。

まずは理学療法士として病院などに勤務するかたわら、週末に副業としてビジネスを始めるなど、ある程度リスクヘッジすることも考える必要があるでしょう。

理学療法士の収入は決して恵まれているとはいいがたく、開業1ヵ月で100万円近くを売り上げたという景気のよい話などをネット上で目にすると、開業に飛びつきたくなることもあるかもしれません。

しかし、そうした成功談ばかりにとらわれることなく、まずは副業で月商数万円程度を目標にするなど、少しずつステップアップしていくことを考えましょう。