理学療法士の実習ではどんなことを学ぶ?

理学療法士の実習とは

理学療法士は、カルテの記入やリハビリ計画の策定といったデスクワークもありますが、患者と直接ふれあって、直にリハビリテーションを行うことがおもな仕事です。

このため、理学療法士の養成校では、生理学や解剖学、病理学といった座学の授業だけでなく、培った知識を実際の現場で発揮するための「臨床実習」も併せて行われます。

学校によっては、1年目や2年目のカリキュラムから既に実習が組み込まれているケースもありますが、「スーパーバイザー」と呼ばれる指導教官の下、本格的な臨床実習が行われるのは3年目以降が一般的です。

臨床実習は1ヵ月~2ヵ月ほどの長期間にわたるうえ、その間のスケジュールも厳しく、肉体的にも精神的にもハードになりがちです。

国家試験に臨むにあたって、最後に立ちはだかる大きな山場といえるでしょう。

臨床実習の内容

臨床実習においては、病院や施設に入院・入所している実際の患者を担当し、理学療法のプログラムを自分で立てて、治療やリハビリ訓練を行います。

日々の治療経過を観察しながら、必要に応じてプログラムを修正し、また患者の家族ともコミュニケーションを取るなど、実習生という身分とはいえ、その内容は実際に働く場合とほとんど変わりません。

物理療法や運動療法などの手技、病状の診断や機能の評価、リハビリ計画の組み立て方など、理学療法士として必要な実務知識・スキルを一通り身につけることができるでしょう。

ただし、実習期間中は、そうした施設における実務と並行して、スーパーバイザーから出されるレポート作成などの各種課題もこなすことが求められます。

一概にはいえないものの、この課題は非常にボリュームが大きいケースが多く、厚生労働省のアンケートによれば、7割以上の実習生が時間内に作業を終えられず、自宅に持ち帰ってレポートを書いていたそうです。

直に患者に接することによる緊張感もあって、日中の疲労度は大きいにもかかわらず、夜は課題作成などに追われて、十分な睡眠時間を確保できないケースもあります。

実習期間中は、できる限り翌日に疲れを引きずらないようにするなど、体調の維持管理にも気を配る必要があるでしょう。

臨床実習で気を付けるべきこと

患者とのコミュニケーションを大切にする

実際の患者を前にして治療や訓練を行うと、手順を誤らないように、あるいは少しでも手際よくこなせるようにといった意識がはたらいて、技術面にばかり神経がいきがちです。

しかし、患者の気持ちをないがしろにしていては、たとえどんなに手技が優れていても、リハビリは思うように進まず、スーパーバイザーからも評価されないでしょう。

臨床の現場において最も大切なことは、専門知識やスキルなどではなく、患者とのコミュニケーションです。

それぞれの患者の話をよく聞き、各自の年齢や性格、体力、希望などを勘案して、患者自身が意欲的にリハビリに取り組めるようサポートしていくことが、理学療法士の本分です。

ときには気難しい患者を担当し、試行錯誤することもあるかもしれませんが、そこで得た知識や経験は、教科書からでは決して身につかない、貴重な財産となるでしょう。

スーパーバイザーとの人間関係に気を配る

実際に臨床実習を経験した人の話を聞くと、スーパーバイザーとの人間関係に悩んだという人が目立ちます。

スーパーバイザーは実習生を指導する役割にあるとはいえ、あくまで現役の理学療法士であり、人にものを教えるプロである養成校の教師と同じように考えるわけにはいきません。

場合によっては、厳しい言葉を投げかけられたり、かなり高圧的な態度を取られたりと、嫌な思いをすることもあるかもしれません。

しかし、教えてもらう立場である以上、忙しい仕事の合間を縫って時間を割いてもらっているという感謝を忘れず、どんなときでも礼儀正しく振る舞い、好印象を持ってもらえるよう努力するべきです。

スーパーバイザーとの関係が良好であればあるほど、実習を円滑に進めることができるでしょう。

ただし、どうしてもスーパーバイザーとうまくやっていけそうにない場合は、学校側に一度相談してみることも必要かもしれません。

過去には、実習生とスーパーバイザーの間でトラブルが相次いだこともあったため、厚生労働省はスーパーバイザーになれる理学療法士の条件を厳格化することも検討しています。

職場との相性を確かめる

臨床実習は、学びの場であると同時に、実際の職場の雰囲気を知る絶好の機会でもあります。

医師や看護師の仕事に直接ふれることはあっても、自分でけがでもしない限り、理学療法士の仕事を見ることはほとんどないでしょう。

知識としては知っていても、自分の目で見るのとは大違いであり、想像と違っている部分もあるはずです。

就職してからミスマッチに気付いても手遅れであり、早期離職には自分にとっても就職先にとっても不利益しかありません。

長く勤務し続けるためにも、臨床実習のうちに、自分がそこで働く姿をイメージして、職場との相性を確認することが大切です。

理学療法士には、医療、介護、福祉、スポーツなど、数多くの分野で活躍できるチャンスがありますので、たとえひとつの職場が自分に合わないと感じても、悲観する必要はまったくありません。

むしろ、現場を知ることで、当初は考えもしなかったほかの進路に気付く契機になることもあるでしょう。