音楽療法士になるには? ピアノは弾けないとなれない?
音楽療法士になるまでの道のり
音楽療法士には公的な資格がないため、どのような人でも音楽療法士として働くことは可能です。
ただし、専門性が問われる職業であることから、音楽療法について専門的に勉強して知識を備える必要があります。
民間の資格はいくつか存在しており、その中でも「日本音楽療法学会」が認定する音楽療法士の資格がよく知られています。
音楽療法士の活躍の場は、病院、高齢者施設、特別支援学校、一般の学校、NPO法人など多岐に渡ります。
このような場所では、音楽療法士の資格を持っていることは有利に働きます。
しかし、音楽療法士としての常勤の求人情報はまだまだ少ないのが現状であり、他の医療や福祉関連の仕事との兼業であるか、非常勤やパート、派遣といった雇用形態で働く人もいます。
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音楽療法士の資格・難易度
「認定音楽療法士」資格の取得方法
音楽療法系の民間資格はいくつかあり、その代表的なものが「日本音楽療法学会」が認定する音楽療法士の資格です。
日本音楽療法学会が認定する音楽療法士の受験資格を得る方法としては、以下の2つのルートがあります。
- 日本音楽療法学会が認定する学校(認定校)へ入学し、音楽療法について体系的に学ぶ(認定校コース)
- 学会が主催する資格試験受験のための制度に参加する(必修講習会コース)
このうち、上記の2を選んだ場合、下記の3つを満たしていることが必要となります。
- 日本音楽療法学会正会員である。申請時点ですでに会員である者は、前年度の会費を納めていること。
- 学校法人格を有する専門学校(2年以上)・高等専門学校・短期大学・大学いずれかの修了証を有すること。
- 臨床経験5年以上(音楽を使用した臨床経験2年を含む)を有すること。(ただし3年でスタートし2年間の必修講習会受講と並行して臨床経験を積み、合計5年となる場合も可とする)
これらに加えて、下記の必要項目を満たす必要もあります。
必要項目
・必修講習会中に実施される音楽試験を受験(ピアノ実技、音楽理論)
2. 音楽療法関連分野(医学・心理・福祉・教育)18単位の取得
・臨床経験(本制度申請時に臨床経験年数が5年に満たない者、あるいは、音楽を使用した臨床経験が2年未満の者)
3. 学会参加など、200ポイントの取得
その後、筆記試験に合格し、年に一回開催されている「学会認定音楽療法士資格審査」に合格すると、認定音楽療法士の資格を取得することができます。
「認定音楽療法士」資格試験の内容
認定音楽療法士の資格試験では、書類審査と面接が行われます。
通常の資格試験のような筆記テストはありませんが、書類審査時には音楽療法に関するレポートや研究発表を審査されることになります。
面接では、おもに音楽療法士としての適性を持っているかどうかが問われるようです。
また、実技試験も行われており、学会指定の課題曲の中から、キーボードまたはギターを使っての「弾き歌い」を行います。
本試験は、1年に1回開催されています。
参考:日本音楽療法学会
音楽療法士資格の難易度はどれくらい?
音楽療法士になるための学校の種類
日本音楽療法学会の認定校では、音楽療法士になるための3年以上の教育が課せられます。
具体的には3年制の専門学校と、4年制の大学がありますが、認定校の数は全国合計でも20校弱しかありません。
音楽療法士の認定校では、専門分野にあたる音楽や音楽療法についての知識・技術に加え、医学・福祉・心理学の知識といった関連分野の学び、さらに音楽の技術と援助の技術などの実践力を身につけていきます。
認定校以外でも、音楽系の専門学校で音楽療法を学べるところが増えつつあるようです。
将来、音楽療法士になりたいと考えている人は検討してみるとよいでしょう。
認定音楽療法士の資格以外に、各学校が独自に認定する音楽療法士の資格もあります。
ただし、音楽療法士は絶対的な求人数が多くなく、音楽療法関連の資格だけで就職活動を成功させるのは難しいのが実情です。
現状では、まずは「心理カウンセラー」や「看護師」、「作業療法士」など、そのほかの医療系、福祉系の資格の取得をし、それから音楽療法士を目指すほうが現実的とされています。
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音楽療法士に向いている人
心理学に興味があり、他人の悩みに寄り添える
音楽療法を受ける人は、心身に何かしらの問題を抱えています。
音楽療法士は、そうした相手の悩みや不安に対してきちんと向き合い、音楽療法を通してどのように状態を改善させていくかを考えなくてはなりません。
専門知識の勉強は不可欠となりますが、まずは心理学に興味があり、困っている人の力になりたいと思えるようなタイプの人に向いている仕事だといえます。
明るく快活であること
音楽療法士は人を元気にする仕事ですから、いつも明るく、前向きで、何事にも好奇心旺盛である人が向いています。
少しくらい嫌なことがあっても、相手の前で暗い顔をするわけにはいきません。
すぐに気持ちを切り替えて、周囲を元気にすることができるような人が、この仕事には向いています。
音楽の可能性を信じていること
音楽療法士は日々、音楽と接する仕事です。
そして、音楽を扱って人を元気にすることが音楽療法士の役割です。
だからこそ、まずは自分自身が音楽を愛しており、音楽を楽しめるかどうかということが、この仕事をするうえではとても大切になってきます。
「自分自身、音楽を聞いて元気になったり勇気をもらったりしたことがある」「音楽の無限の力を感じている」といった思いに共感できる人であれば、音楽療法士には向いています。
音楽療法士のキャリアプラン・キャリアパス
音楽療法士は国家資格でないということもあり、音楽療法士としての常勤の求人情報はまだまだ少ないのが現状です。
音楽療法士として常勤や正社員待遇での勤務先を見つけるのは簡単ではありませんが、音楽療法の治療効果は認められつつあり、非常勤や派遣といった雇用形態で働ける職場は増えているようです。
また、「作業療法士」などの他のリハビリテーション関連資格を持つ人が、仕事の幅を広げるために認定音楽療法士の資格を取るということもあります。
この資格を取得するうえで臨床経験が役立つことを考えると、現状では、医療や福祉の現場で働く人がプラスαで目指す資格といえます。
人が抱える心の問題は、これから先も複雑化していくことが予想されます。
時代が移り変わるにしたがって、音楽を用いて心のケアを行う音楽療法士の活躍の場も増えてくるかもしれません。
ちなみに、音楽療法士は女性が多いといった特徴があります。
心の悩みを抱えている女性の患者にとっては、女性にしか話したくないような問題も多いため、そのような場では女性音楽療法士の力が発揮されます。
女性らしい柔軟な感覚も、音楽療法には役立つと言われています。
ピアノが弾けなくても音楽療法士になれる?
ピアノで伴奏をする機会はとても多い
歌謡曲の伴奏
音楽療法士の仕事に興味がある、でも「ピアノは弾けないといけないの?」「どれくらいの技術が必要?」などと不安になる人もいるかもしれません。
結論から言うと、ピアノが全く弾けない状態では音楽療法士として働くのは難しいです。
その理由として、音楽療法では音楽療法士の伴奏に合わせ、対象者に歌を歌ってもらうケースが非常に多いことが挙げられます。
高齢者を対象とする場合は、青春時代の懐かしい曲、その人が好きな曲など、歌謡曲を中心にさまざまな曲を弾く必要が出てきます。
また、相手の声の高さに合わせてキーを変えるようなこともありますので、それに応じてできるだけ対応するピアノの技術が必要となります。
即興演奏
児童に対して音楽療法を実践する際には、即興演奏の技術が求められることがあります。
代わりに、向かってコミュニケーションをとるのが苦手な子がいる場合は、その子に自由にピアノを弾いてもらうことで、音楽療法士はそれに応じて即興で音で合わせるといった対処をします。
バリアを通じて、自然に向かうとコミュニケーションを得て楽しさを覚えられるといわれています。
即興演奏には慣れも必要なので、普段から想定ケースを想定した練習をしておく必要があります。
ピアノの訓練の仕方は?
音楽療法士として働く現在のピアノの演奏技術は必須となりますが、子どもの頃から長年ピアノを習っていたり、クラシックの名曲を弾きこなせばならないというわけではありません。
要するに、上記で挙げたような、音楽療法を実践できる限りの技術があれば問題ありませんが、それは同時に、正しい音楽療法のためのピアノの知識・技術を習得する必要があるということです。
音楽療法士として求められるピアノの学びは、音楽療法士を養成するための学校(大学・専門学校等)で行うことができます。
協力学校では、音楽療法を基礎から体系的に学べますし、ピアノ以外に他の楽器(弦・管・打)や声楽などの実技レッスンを通して、音楽の総合的な知識と技術を学ぶことができる場合もあります。
今後音楽療法士を目指していきたい場合には、音楽療法士の代表的な資格である「認定音楽療法士」になるための学校を探してみるとよいかもしれません。
対象者の状態を見ながら演奏することが重要
音楽療法士として大事なのは、対象者の心身の状態を判断して、その人にあった音楽療法を行うということです。
音楽療法の目的は、いきなり音や音楽を使って、対象者を元気にするということです。
音楽療法士はピアニストや作曲家ではありませんから、とびぬけて高いレベルのピアノの技術は必要ありません。
しかし、その代わりに心理学などまで専門的に学ぶ必要があります。
音楽療法士を目指せる年齢は?
音楽療法士になる方法は色々と考えられますが、専門性が求められ、認定音楽療法士などの有資格者が優遇されることを考えると、やはり大学や専門学校などで音楽療法を専門とするに学ぶことが必要だといえます。
早くから音楽療法士になることを目指している場合には、高校卒業後、音楽療法について学べる大学や専門学校に進学することをおすすめします。
ただし、音楽療法の仕事一本で食べていくのは簡単ではありませんので、先に作業療法士や看護師などになって現場経験を積んでから、スキルアップのために音楽療法を学ぶ道を選択する人もいます。
そのため、すでに社会人経験のある人が、30代以上で音楽療法の道へ進むことも珍しくないです。
また、アメリカやドイツなど音楽療法の研究が進んでおり、音楽療法士の職業としての境界も確立されている国へ留学し、海外でより専門的に音楽療法を学ぶ人もいます。
音楽療法士になりたい気持ちがあれば、いくつになっても学んでいくことは可能です。