心理学部で学ぶこと、学科、志望理由、就職先

心のメカニズムを科学的に探求
心理学部とは
心理学部は、人の心のしくみや働きについて学ぶ学部です。
心理学の分野は大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」に分類されます。
基礎心理学では、心についての一般的な法則について考えます。
人の行動と心は密接に関係しており、行動には認知が影響していると考える認知心理学などを学びます。
応用心理学は、基礎心理学で得られた知見を医療現場などで実際に活かしていく方法を考える分野です。
実際に測定や検査を行うことによって、仮説を検証することもよく行われます。
心理学部は文系学部の中でも専門性が高いため、心理学部を志望する学生の中には将来的に心理学の知見を活かした仕事に就くことや、研究職へと進むことを視野に入れて心理学部を選ぶ人も少なくありません。
文系学部の中でも女子学生が多めの傾向があり、研究熱心な人が少なくありません。
就職先についてはカウンセラーやケースワーカーをはじめ、教育や医療の分野でプロフェッショナルとして働く人材を輩出しています。
また、臨床心理士の資格取得を目指して大学院へ進学する人もいます。
このように、研究内容の専門性の高さと、専門性を活かしたプロフェッショナルへと進む道もあることが、心理学部の大きな特徴と言えるでしょう。
心理学部の理念
心理学は、科学的な方法を用いて、人の心のしくみや働きを解明する学問です。
心と体がどのように影響し合っているのか、そして、その結果として人間の心はどのような働きをするのかなどについての仮説を立て、実験や調査などを行ってデータを集め、実証していきます。
ストレスの多い現代社会では、多くの人が何かしらの心の問題を抱えており、それを解決に導いていける専門家の存在が不可欠となっています。
心理学部では、幅広い心理学の基礎知識を修得することで、社会に貢献する人材の育成を目指します。
心理学部で学ぶこと、勉強すること、授業内容、卒論
心理学部で学ぶこと
心理学は、研究の目的や対象によっていくつもの分野に分かれています。
代表的な分野としては、心の援助やカウンセリングについて研究する「臨床心理学」のほか、人間の知覚・記憶・思考などを研究する「認知心理学」、動物の心的過程あるいは行動を研究する「動物心理学」、心と体の機能の関係を研究する「生理心理学」などが挙げられます。
いずれも、それぞれの基礎となる「心理学概論」などを学んだうえで、応用的な科目を学ぶ流れとなっており、なかには「心理学実験」などの実験科目もあります。
また、臨床心理の専門家を目指す場合などは、病院や福祉施設、教育現場などでカウンセリング実習が必修とされることもあります。
近年は工学や医学など他分野と連携した研究も進んでおり、多様な視点から、社会の中で人間がどう生きていくかを考えていきます。
心理学部の授業内容
人の心のメカニズムに迫るには、多岐にわたる知識が必要になります。
そのため、心理学部の授業ではさまざまなアプローチによって人の心理を分析・検証するための基礎的な知識を学びます。
認知心理学、知覚心理学、発達心理学、社会心理学といった各分野の概論をはじめ、研究を進める上で必要となる情報処理や統計法についての基礎的な知識を学ぶ授業があります。
また、心理学に関する研究を進める方法論そのものを学ぶ心理学研究法や調査計画法といった授業が用意されている場合もあります。
このように心理学に関する幅広い知見を身につけたのち、ゼミや研究室において専門分野の研究へと進んでいくことになります。
心理学部の卒論の例
- 香りから想起される意味情報とイメージ色の関係
- 声による性格判断の正確性とその特徴
- 女子大学生の自尊心と化粧の関連
- SNSでのコミュニケーションが対人感情に及ぼす影響
- 認知のゆがみと過剰適応の組み合わせにおける社会不安傾向の違い
- 他者・外的対象へののめりこみ傾向と自己愛との関連について
- 虐待を受けた子の自己イメージと対人関係パターン
心理学部で学んだことの口コミ
- アンガーマネジメントを学んだことで自分の心の状態を冷静に見つめられるようになった。
- カウンセリング技術の知識は、友人や家族の相談に乗るときに役立っている。
- 心理学の知識によって、人間関係や恋愛関係を良好に保つことができていると思う。
- 薬物依存についての実体験を聞くなど、貴重な経験ができた。
- 精神疾患に対する理解が深まり、偏見がなくなった。
- 乳幼児心理学を学んだ経験が、子育てをするようになってとても役立った。
心理学部の主な学科・分野と概要
心理学科
人間の心に科学的にアプローチし、思考や行動の心理的過程やメカニズムを研究します。
臨床心理学科
ストレスなどを原因とする心の病を予防・治療するための理論と技術を修得します。
発達心理学科
乳幼児期、児童期、青年期、成年期、高年齢期まで、人間の一生の中で心がどう発達していくのかについて研究します。
応用心理学科
日常生活に密着した人間の行動・感覚などを研究し、社会の中での人間の行動における問題を解決します。
福祉心理学科
心に関する理論を学び、福祉と心理の両面から、子どもや高齢者、障害者を支援できる専門家を育成します。
心理学部で学ぶ学問分野・概要
認知心理学
知覚、記憶、理解といった作用や行動をコントロールする過程について研究します。
対人心理学
人とのつながりの中で生じる心の動きや行動について考えます。
犯罪心理学
反社会的、反公共的な行動の背景にある心理を深く探求します。
教育心理学
乳児期から青年期にかけての心の発達について教育的視点から研究します。
産業心理学
産業における人的要因の利用と管理について、心理学を応用して研究します。
組織心理学
組織という特殊な状況下での行動を心理学の手法を用いて解明していきます。
災害心理学
自然災害が発生した際の個人・集会の行動について、心理学の知見を元に考えます。
心理学部で目指せる主な資格
・公認心理師
・臨床心理士
・学校心理士
・産業カウンセラー
・認定心理士
・音楽療法士
・福祉心理士
・心理カウンセラー
・特別支援教育士
心理学部で目指せる資格には、国家資格である公認心理師をはじめ、臨床心理士や学校心理士といった教育機関による資格、音楽療法士や福祉心理士といった学会認定の民間資格、心理カウンセラーや特別支援教育士といった民間法人・団体認定の民間資格があります。
試験や講座を受講することで取得可能なものから、臨床心理士のように修士号取得が必須条件のものまであるので、取得に必要な要件をよく調べておくことが大切です。
心理学部の大学選びのポイント
心理学は研究対象が広く、研究内容が多岐にわたることから、同じ心理学部でも大学によって授業内容が異なることがあります。
大学が公開しているシラバスや教授陣の専門領域、卒業生の卒論テーマなどから、自分がやりたい研究ができそうか、興味を持てそうな授業がありそうか、といったことをよく確認しておくようにしましょう。
大学院への進学も視野に入れている人は、大学院が併設されているかどうかも確認しておくべきポイントです。
心理学部の入試方法・受験科目
心理学部の研究では、文献を読み解く力のほか、研究領域によっては統計など数学の力が必要になる場合があります。
そのため、心理学部の入試では英語・国語を必須科目とし、ほかに地歴・公民・数学の中から1科目を選ぶといった形の試験を課している大学が多く見られます。
また、心理学部は一般的に文系の学生が多く志望する学部ですが、中には理系で心理学を志す学生もいます。
そのため、理系の学生が受験する際に理系科目を選べるような配慮がされている場合もあります。
心理学部の学費
心理学部の研究は他の文系学科と同様、特別な研究費用を必要としないことから、他学科と比べても平均的な学費の大学が多くなっています。
一例として、
立正大学心理学部臨床心理学科では、1,290,000円(入学金288,000円、授業料718,000円、施設費253,000円、諸経費31,000)、4年間で4,296,000円 といった学費になっています。
学科によっては実習の機会があり「研究実験費」といった費用が必要になる場合もあります。
心理学部の志望理由、例文、面接
心理学部の志望動機
心理学部を選択する人は、昔から人間の心の動きに興味があり、それを深く突き詰めていきたいという考えを持っていることが多いようです。
子どもの頃に楽しんだ心理テストや性格診断など、生活に身近なところで心理学の一部に触れることがあり、それをきっかけにこの世界に足を踏み入れたという声はよく聞かれます。
また、自身が悩んだときに心理カウンセリングで救われた経験があり、自分も心理学の専門知識を得て、人を助ける立場になりたいという気持ちを持っている人もいます。
文系の中では大学院に進む人の割合も高めで、専門色が強い学問であるため、具体的な将来の姿をイメージしている人もそれなりに多いようです。
大学によっては、心理学部で社会福祉の援助方法なども学べるため、そうした進路の希望を踏まえてこの学部への進学を選択する人もいます。
心理学部の志望動機の例文
私は大学に入学して以来、学習塾でアルバイト講師をしています。
生徒たちと話す中で、学校生活や友人関係についての悩みを抱えている生徒がとても多いことを知りました。
近年ではスクールカウンセラーを学校に派遣するなど、子どもの悩みを受け止めるための仕組みが整備されつつあります。
私は将来、スクールカウンセラーになって子どもたちのフォローをしたいと思っています。
そのために心理学を基礎からしっかりと学び、頼られるカウンセラーを目指していきたいと考えています。
心理学部のAO・推薦入試の面接で聞かれること
心理学は専門性の高い学問分野です。
授業内容も高度なものが少なくないため、心理学に対して深い興味関心を抱いているかどうかが面接時のポイントになります。
心理学に本当に興味を持って志望しているかどうか、なぜ心理学部を志望したのか、といった点が最も重要です。
入学後に具体的にやってみたい研究テーマがあれば、面接で伝えても問題ありませんが、具体的な研究内容が決まっていない人も心理学に興味を持ったきっかけについて、エピソードを添えて伝えるようにするといいでしょう。
心理学部の志望理由の口コミ
- 心理学は汎用性が高く、一般企業の営業職など仕事でも活かせそうだと思ったから。
- ニュースで凄惨な事件の報道を耳にすることが増え、犯罪心理学に興味を持ったので。
- 友人関係に悩んだ時期があり、人の心の動きと行動にどう表れるかが気になっていたから。
- 将来、心理カウンセラーを目指したいと思うようになり、心理学部で学ぶ必要があったため。
- 文系の学部の中でも、専門性の高い研究を行っているイメージがあった。
心理学部の雰囲気・男女比
心理学部の男女比は、3:7あるいは4:6くらいで女性のほうが多めとなっています。大学によっては、これ以上に女性の割合が大きいこともあるようです。
そのため、穏やかで落ち着いた雰囲気が特徴のひとつといえるでしょう。
他学部同様、さまざまな個性を持った人が集まっていますが、目に見えない人間の心についてアプローチしていくことから、真面目で探求熱心なタイプの人が多いようです。
大学によっても異なりますが、年次が上がり専門科目や実習が増えてくると、課題やレポート提出などが重なってとても忙しくなることもあります。
就職ではなく大学院進学希望者がそれなりにいることから、「研究色」の強い独特の雰囲気も、心理学部の特徴といえるかもしれません。
心理学部の雰囲気・男女比の口コミ
- 他の文系の学部と比べても女子学生の比率が高い。
- 人の心に興味があるからか、話してみると面白い人が多かった。
- 臨床心理士を目指している人など、具体的な目標がある人もたくさんいた。
- 絵や音楽など、学問以外で自分の好きなことを突き詰めている人も多い。
- 授業を欠席する人が少ないので、他学部では欠席だらけと聞いて驚いた。
心理学部の楽しいこと・大変なこと・つらいこと
心理学の楽しいこととしては、人の心について研究する分野のため、学んだことを日常生活で活かせる点を挙げる人が多いです。
また、授業内容が興味深く、実習などを通して知的好奇心を刺激されると感じていた人もいるようです。
反対につらいこととして、心理学は専門性が高い分野のため、授業によっては内容が難しく、ついていくためにしっかりと勉強しなくてはならないものもあります。
ベテランの先生になると学生と年齢が離れている方もいるため、考え方が古いと感じる場合もあるようです。
心理学部の楽しいことの口コミ
- 学んだ知識やスキルを日常生活で活かすことができる。
- 授業が興味を惹かれる内容のものが多く、心理学の奥深さに触れられる。
- カウンセリング体験など、実習を通して学ぶことも多く興味深かった。
心理学部のつらいことの口コミ
- 授業によっては専門的な内容を学ぶので、きちんと勉強しないとついていけなくなる。
- 先生の年齢層が高めなので、考え方が古いと感じたこともあった。
心理学部の就職先・業界、目指せる職業・仕事、進路
心理学部の就職先
心理学部出身者の就職の特徴は、他の学部同様、各業界の一般企業に就職する人がいる一方、身につけた知識・スキルを生かして専門職の道に進む人も多くいます。
一般企業であれば、教育業界のほか、職種でいうと人事や広報などの管理部門を目指す人が若干多くなっているようです。
ただし、一般企業での仕事であれば、心理学に直接関わる仕事内容でないとしても、人との関わりは必ず生じますので、心理学部で学んだ知識やスキルが活かせる場面は必ずあるはずです。
心理学部の就職の状況と需要
卒業後には心理学部で学んだことを生かした仕事がしたいと考える人が多いようですが、今の日本ではまだ心理系専門職の社会的地位が確立されきっておらず、安定した待遇で働ける職場はさほど多くありません。
そのため、非常勤などの形でカウンセリングの仕事を掛け持ちして働いている人も多くいます。
臨床心理士のように、資格取得のために実務経験が必要になる場合があるものもありますので、非常勤を掛け持ちして働きながら資格取得に向けた勉強を続ける人もいるようです。
心理学部の就職以外の進路
専門性をさらに高め、心理学系の資格の中で最も権威があるとされる臨床心理士の受験資格を得るために、大学院へ進学する人もいます。
とくに臨床心理士になるには、指定大学院に進学して修了することが条件になっています。
指定大学院には第一種と第二種があり、第二種の大学院の場合は卒業後に1年間の実務経験が必要になります。
こうした事情から、卒業後すぐに就職するのではなく、非常勤などで実務経験を積みながら資格取得を目指す人もいます。
心理学部の就職の状況の口コミ
- 心理系の専門職は採用自体が少ないので、一般企業で心理学とは直接関係ない仕事に就く人が多い。
- マーケティングや営業といった、心理学を間接的に活かせそうな職種を意図的に選ぶ人もいる。
- 専門職を除けば、心理学部で学んだことで特に就職で有利になることはなさそう。
- カウンセリングで学んだスキルが役立ったのか、採用面接は思っていた以上に通過率が高かった。
- 大学院に進んで資格を取っても仕事があるとは限らないので、進学するか就職するかで最後まで悩む人もいる。
心理学部から公務員を目指せる?
公務員としてカウンセラーやケースワーカーなどの心理職に就いたり、産業、教育、医療、福祉など多岐にわたる領域で、心理学のプロフェッショナルとしての力を発揮することができます。
近年は学校や企業に属する人のストレスが社会問題化しており、カウンセラーの配置は急務と言われていますが、まだまだ十分に採用が確保されている状況とは言えません。
そのため、心理学部から公務員を目指す道は「あるにはある」といった捉え方をしておいたほうが無難でしょう。
心理学部の卒業生の感想
心理学部の卒業生の方々の中には、臨床心理士などいわゆる専門職として働いている人もいますが、どちらかと言うと少数と言わざるを得ません。
全体として見ると、心理学とは関係のない一般企業の仕事に就いている人が最も多く、次いで福祉関係など福祉心理学の知識を活かせる仕事に就いている人がいる、といったイメージでしょう。
このように、心理学部で学んだことが卒業後に直接的に役立つことはあまりないのが現実のようです。
しかし、多くの人が心理学部で学んだことが間接的に日常生活や仕事で役立っていると言い、心理学部で学んだ学生生活は楽しく充実していたと振り返っています。
子どもが生まれ、子育てをするようになると、心理学の知識が改めて役立つこともあるようです。
心理学部の卒業生の感想
- 心理系の専門職には就かなかったものの、心理学部で学んだことは役立っていると思う。
- 入学前に比べて、相手のことを考えて言葉を選んで話すようになった。
- 仕事に直接役立っているわけではないが、大学時代の授業やゼミが楽しかった印象が強く残っている。
- 社会心理学は社会学部と重なる部分も多く、卒業後に社会学部卒の人と意気投合した。
- 子育てをするようになってから、発達心理学で学んだことがとても役立った。
理系でも心理学部に入れる?
結論から言えば、理系でも心理学部に入ることは可能です。
入試の選択科目に数学を取り入れる大学が増えていますので、理系の人であれば数学を受験科目に使える可能性があります。
懸念されることとして、心理学部はあくまで文系寄りの学部のため、入試では英語や国語が必須科目となっています。
これらの文系科目が著しく苦手な場合は厳しいかもしれません。
なお、入学後の研究テーマによっては統計など数学の知識が必要になることがありますので、数学の基礎的な知識がしっかりと身についているに越したことはありません。
高校までで学んだ理系の知識は、心理学部でも活かせる場面がきっとあるはずです。
心理学部に入学する人の多くは、人の心について強い興味関心を持っています。
研究に対するモチベーションも高く、熱心に取り組む人が多いのも心理学部の特徴と言えるでしょう。
心理学の知識は対人関係の中で活かせるので、将来的に仕事やプライベートで活かせる場面がたくさんあるはずです。