機械設計になるには
機械設計になるまでの道のり
一般的な進路
機械設計エンジニアになる決まったルートはありませんが、一般的な進路は次のようになります。
<現役学生が歩む一般的な進路例>
・中学卒業後、工業高校の機械科もしくは普通高校の理系コースなどに進学する(3年)
↓
・高校卒業後、4年制大学の理工学部機械工学科などに進学する(4年)
↓
・より深く学びたい場合は、必要に応じて大学院に進学する(2年)
↓
・新卒で、電機メーカー、部品メーカー、設計事務所などに就職
最近は大学全入学時代でもあり、大学を卒業したのちに就職する学生が多くなっています。
「マイナビエージェント」の調査によれば、機械設計の仕事につく人の8割近くが、大学もしくは大学院を卒業しています。
なお大学に進学する場合においては、高校の段階から必ずしも機械系を学んでおく必要はありません。
高校では普通科や文系のコースに進んでも、大学入学時に進路の修正は可能です。
大学に進まない場合の進路
大学に進学せず、機械設計の仕事につくルートもあります。
例としては、次のようなものが挙げられます。
<大学に進まず機械設計になるルート>
・中学卒業後、工業高校の機械科などに進学し、3年間学び、卒業後に就職
・高校卒業後、専門学校の機械工学科に進学し、2年間学び、卒業後に就職
・中学卒業後、高等専門学校(高専)で5年間学び、卒業後に就職
高校卒業後すぐに就職したい場合は、工業高校の機械科などで、機械工学や物理の基礎を学んで置くのがよいでしょう。
4年制大学への進学が時間・費用・学力などの理由で難しい場合は、2年制の専門学校に進学し、すぐに役立つ技術を学んで就職するルートもあります。
中学生の早い段階から将来を決めている人であれば、5年間の一貫教育で大学とほぼ同等の知識が身につく高等専門学校(高専)に進むのも一つの選択肢です。
未経験からなれるか?
機械設計の仕事は人手不足が深刻化しています。
そのため学校で機械について学んでもいない、まったくの未経験者でも年齢が若ければ採用されることもあります。
ただし、経験者と比べると採用のハードルは上がり、狭き門となってくるでしょう。
未経験の求職者であれば、地域の「職業訓練校」で機械設計やCAD製図の基礎を無料で学ぶこともできるので、そういった就職支援サービスを利用してみるのもよいでしょう。
20代で正社員への就職・転職
機械設計の資格・難易度
資格は必要か?
機械設計の仕事は専門的ではありますが、就職する上で必須となる資格や免許というのはありません。
ビルや建物の設計では、法律上「建築士」の資格が必ず必要ですが、機械分野ではそのような資格は存在しません。
実際に、とくに資格を持たずに機械設計エンジニアとして活躍している人も大勢います。
資格を取るメリット
機械設計になるのに資格は必要ありませんが、資格をとることで次のようなメリットが得られます。
<機械設計エンジニアが資格をとるメリット>
・資格の勉強を通じて、仕事にも役立てる基礎知識を学べる
・知識やスキルを客観的に評価されることで、エンジニアとしての自信につながる
・資格があると、意欲や熱意を示しやすくなるので、就職面接で好印象をもってもらえる
・上司や同僚、お客さま担当者などからの信頼が厚くなる
・会社によっては、「資格手当」として給料がアップしたり、昇進に影響することもある
とくに、学生や未経験者であれば、資格をとることの意味やメリットは大きいでしょう。
おすすめの資格
機械設計の仕事をするうえでおすすめの資格は、次のようなものが挙げられます。
<機械設計エンジニアにおすすめの資格>
・CAD利用技術者試験 民間資格、難易度 易しい
・機械設計技術者 民間資格、難易度 やや難しい
・技術士(機械部門) 国家資格、難易度 難しい
CAD利用技術者試験
「CAD利用技術者試験」は、コンピュータ上で設計を行うためのツールとなるCAD(Computer-Aided-Design)の知識を身につけられます。
難易度もさほど高くないため、学生や未経験者でも挑戦しやすいでしょう。
試験区分は、「2次元CAD」、「3次元CAD」の大きく2系統に分かれ、それぞれで級が用意されています。
・2次元CAD利用技術者試験 1級(建築/機械/トレース)、2級(CBT)、基礎(IBT)
・3次元CAD利用技術者試験 2級、準1級、1級
どの級においても、年齢や実務経験などの受験資格はなく、学生であっても受験できます。
特に「基礎(IBT)」や「2級」であれば実技試験はなく筆記試験のみであるため、独学で合格を目指せるでしょう。
ひと昔前の機械設計は手書きで行っていましたが、いまやCADを使いコンピュータ上で設計図を作るのが当たり前になっていますので、CAD利用技術者試験を通してCADの基本を身に付けておくと現場に出た際に心強いでしょう。
参考:一般社団法人コンピュータ教育振興協会 CAD利用技術者試験
機械設計技術者
「機械設計技術者」は、機械設計に関する総合的な知識を身につけられますが、難易度の低い3級でも大学の機械工学科卒業レベルの知識が必要です。
試験区分は、3級、2級、1級があり、最難関の1級を受験するには最大で10年もの実務経験が必要となることがあります。
とくに就職前の学生が3級を取得しておくと、機械分野の採用面接で有利です。
簡単ではないもの、以降で紹介する「技術士」に比べれば合格率は高めであり、挑戦しやすいでしょう。
技術士(機械部門)
「技術士(機械部門)」は、理系の資格では最高峰に位置付けられる、権威のある国家資格です。
技術士は、理工系では最難関の資格に位置付けられ、「技術分野で最も権威のある国家資格」ともいわれています。
文系でいえば公認会計士資格などに匹敵するような資格となります。
試験区分は「機械部門」「船舶・海洋部門」「航空・宇宙部門」など計21部門に分かれ、各分野の優秀な技術者を、国が「技術士」として認定する制度となります。
難易度が非常に高く、また2次試験を受験するには一定年数の実務経験が必要となることから、就職をして現場での経験を積んでから目指す資格となります。
ただし1次試験のみであれば実務経験の制限はないため、学生のうちから挑戦することも可能です。
また、試験は1次試験+2次試験からなり、2次試験を受験するには最大で7年間もの実務経験が必要となりますが、1次試験に関しては学生のうちに合格しておくことは可能です(1次試験に合格すると「技術士補」の資格が得られます)。
資格合格者の平均年齢は42歳前後で、基本的には経験を積んだベテランのエンジニアがようやく取得できるような資格となってきます。
難しい技術士資格に合格すると、会社からの評価が高まり、重要な仕事をまかされたり、昇進が早くなったりするようです。
技術士に合格すると、周囲のエンジニアたちから一目置かれる存在にもなれるため、技術者としての高みを目指したい人にとっては挑戦する価値のある資格といえるでしょう。
機械設計になるための学校の種類
学校の種類
機械設計になるための学校は、「大学」「専門学校」「高等専門学校(高専)」「職業訓練校」の大きく4種類に分類されます。
<学校別の特徴>
・大学 機械工学や物理学などの学問を深く追求できる、学歴的な信用度も高い、デメリットは学費が高い
・専門学校 実習形式の授業が多く、2年という短期間で実務的なスキルを身につけやすい、
・高等専門学校:5年間で大学教育とほぼ同等の知識を学ぶことができる、専門学校同様に早く社会に出れるメリットもある
・職業訓練校:自治体などが運営する就職支援サービス、就職に必要な技能を無料で学ぶことができる、デメリットとして基本的には離職者しか利用できず、また学歴にはならない
学費の違い
それぞれの学校に通った場合の学費の目安としては次のようになります。
<1年間当たりの学費の目安>
・大学 国公立大学は約53万円、私立大学は約130万円~160万円
・専門学校 約100万円~110万円
・高等専門学校:約23万円
・職業訓練校 受講料は基本的に無料(テキスト代などは発生)
最も学費が安いのは高等専門学校で、5年間にかかる学費総額は、私立大学の1年分の学費と同額かそれ以下になります。
有利な学部・学科
機械設計は、理系・文系でいえば、理系の職種です。
中には、機械設計職の採用条件に「理工系学部出身者のみ」と定めている会社もあるため、機械設計の仕事を目指すうえでは理工系学部に進むことが望ましいでしょう。
名称は学校によっても異なりますが、機械について総合的に学べる理工学部の「機械工学科」が適しています。
ほかにも「機械システム工学科」「機械・自動車工学科」「電気電子工学科」「ロボティクス工学科」など分野をしぼった学科も存在します。
「自動車分野の設計がしたい」「ロボット分野の設計がしたい」など、方向性が固まっている人であれば、そのような個別の学科も選択肢となるでしょう。
学歴について
東証一部に上場しているような大手の電機メーカーや部品メーカーの場合、新卒採用時の学歴が「専門学校卒以上」と制限されていることがあります。
その場合は高卒者は採用試験が受けられません。
大手企業の中には「4年制大学卒以上」で採用学生を制限している会社もあり、その場合は専門学校卒や高等専門学校卒でも対象からはずれることがあります。
就職先の選択肢を広げる意味では、4年制大学の理工系学部を卒業するのが確実といえるでしょう。
また学歴によって、「初任給」の額が変わる会社も多いです。
一般的には、高卒、短大・専門学校卒、高等専門学校卒、大学卒、大学院卒の順に、1万円程度ずつ初任給を上乗せしていく会社が多く、高卒と大学院卒では初任給額に5万円以上の差が出ることもあります。
機械設計になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学学部・専門学校)
20代で正社員への就職・転職
機械設計に向いている人
機械設計の仕事に向いている人の性格的特徴としては、次のようなものが挙げられます。
<機械設計に向いている人の性格>
・機械が好き、モノづくりが好き
・学ぶことが苦にならない
・細かい作業が得意
・座り続けてのデスクワークが苦にならない
・根気がよい
この中でも特に重要になってくるのが、一つ目の「機械が好き、モノづくりが好き」です。
機械設計の仕事につくと、毎日のように、朝から晩まで、どのような機械を設計するかについて頭を悩ますことになります。
機械やモノづくりが好きな人であれば、機械について考え抜く日々を楽しめますが、機械に関心が持てない人にとっては大きなストレスとなってしまうでしょう。
専門的で突きつめる仕事でもあるため、長く働いていくには、機械に対する情熱が大切です。
機械設計のキャリアプラン・キャリアパス
一人前になるまでのキャリアパス
機械設計では覚えることは無数にあるため、一人前になるためには少なくとも3~5年が必要となります。
たとえ学生時代に機械工学を専攻していた人であっても、入社した段階では何をどうすればいいかわからない状態から始まります。
先輩のOJT(職場内訓練)を受けながら、1歩ずつ成長していくことになるでしょう。
最初は雑用やCADでの簡単な製図作業などを指示を受けながら取り組みつつ、評価テスト→詳細設計→基本設計→概念設計と徐々に上流工程の仕事にシフトしていくのが一般的です。
ただし、人手の足りない会社では、新人の教育に手が回らないこともあるので、自分から率先して仕事を覚える姿勢が大事になってくるでしょう。
一人前になったあとの努力
機械設計は「職人」的な面もある仕事なので、先輩の手を離れ、一人で設計作業が行えるようになっても、それで終わりではありません。
その後もさまざまな機械の設計を担当し、経験を重ねることで、エンジニアとしての腕をみがいていきます。
また機械設計に必要な知識というのは時代と共に新しくなっていくため、最新の機械設計技術を追っていく必要もあります。
エンジニアとして活躍し続けるためには、つねに学ぶ姿勢が求められるでしょう。
その先のキャリアプラン
機械設計として経験を積んだあとのキャリアプランとしては、次のようなものが挙げられます。
<機械設計のキャリアプランの代表例>
・引き続き現場の設計エンジニアとして働く(特に設計事務所の場合)
・社内の技術系管理職に移行する(特に大手メーカーの場合)
・社内の企画職やセールスエンジニア職などに移行する(特に大手メーカーの場合)
・同業他社に転職し、新しい分野の機械設計にチャレンジする
・独立して、フリーランスの機械設計エンジニアとして活躍する
設計事務所や中小メーカーに勤務する場合は、長く設計を続けていくことが多いようです。
一方で大手メーカーの場合は、ある程度の年数を重ねると技術管理職に移行したり、ジョブローテーションの一貫で企画職など別の職種をまかされることもあります。
技術が武器となる職業であるため、経験を積んだのちに独立してフリーランスの機械設計エンジニアとして活躍したり、設計事務所を立ち上げたりすることも視野に入れられます。
機械設計を目指せる年齢は?
機械設計エンジニアが一人前になるまでには長い育成期間が必要になるため、年齢の若い人材が欲しいというのが企業側の本音です。
特にまったくの未経験者の場合は、30代以降ではメーカーに転職するのが難しくなるかもしれません。
できる限り20代のうちに機械設計の仕事についておくのが望ましいでしょう。
それこそ大手志望であれば、20代の「第二新卒」の間に行動を起こしておくことが大切です。
一方、機械設計エンジニアは人手不足が深刻化しているため、「年齢不問」、「経験不問」などのゆるい条件で募集を出す企業も増えてきています。
なかなか人手の集まらない中小企業であれば、30代以降であっても採用されるかもしれません。
実際に、職業訓練所でCADなどの基礎スキルを身に付け、30代の未経験で採用された人もいます。
機械設計は女性でもなれる?
機械設計は、もちろん女性でもなることができます。
デスクワークの設計作業が中心であり、体力や腕力などが必要な仕事もないため、男女の差が生じにくい職業でもあります。
むしろ女性ならではの「こまやかさ」や「丁寧さ」が、CADを使った細かな製図作業などに生きることもあります。
ただし、機械設計エンジニアとして働く女性は男性に比べると圧倒的に少なく、多くの設計現場では9割以上が男性エンジニアとなっているようです。