機械設計の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「機械設計」とは
機械工学の専門的知識をもち、さまざまな機械製品の設計に携わる。
機械設計とは、さまざまな機械製品が動く仕組み、メカニズムを設計していく技術者のことです。
機械設計者が携わる機械の種類は、テレビやスマートフォン、電子レンジのような、わたしたちの身のまわりの電化製品から、自動車などの乗り物、あるいはプラントといった巨大な機械まで多種多様です。
機械設計者は自動車メーカー、電機メーカーなどに勤務し、製品のコンセプトを考える企画担当者などとも連携して、機械の仕様や各部の基礎的な設計などを進めます。
最終的に試作品を作り、機能・性能テストを繰り返しながら、実際に製品として生産できる状態まで仕上げるのが、機械設計のおおまかな役割です。
現代社会では多様な機械があふれているため、機械設計者のニーズは安定して大きなものとなっています。
また、近年は機械設計分野の技術者が不足しており、若い人材の活躍に期待が寄せられています。
「機械設計」の仕事紹介
機械設計の仕事内容
ものづくりの場で、機械の仕様決定や詳細な設計に携わる
「機械設計」とは、さまざまな機械製品の動く仕組みや、メカニズムの設計に携わる技術者のことです。
「機械設計エンジニア」「機械設計者」「メカニカルデザイナー」などと呼ばれることもあります。
機械設計者が設計を手掛ける機械の種類は、テレビやスマートフォン、オーディオなど身のまわりの電化製品をはじめ、自動車や電車などの乗り物、あるいは生産プラントや工場設備といった産業用の大型機械まで、多種多様です。
とくに活躍が目立つのが製造業(メーカー)の企業で、大きな企業には複数の機械設計者が在籍し、分業しながらチームで仕事を進めていくのが一般的です。
機械設計の仕事の流れ
機械設計者は、まず作りたい製品(完成品)のコンセプトに沿って、機械の機能や使う部品、仕様などを決定する「概念設計」を行います。
次に、CADといった製図ソフトを用いた設計図の書き起こし、さらに解析ソフトでのシミュレーションを行いながら、概念設計が実現できるかどうか検証する「基本設計」を進めます。
その後は、細部を作り上げていく「詳細設計」、さらに製造前の具体的な設計図に仕上げる「生産設計」などの各工程を経て、ようやく製造がスタートします。
ものづくりを行う企業にとって、機械設計はなくてはならない重要な役割を担う存在です。
機械設計になるには
学校で機械工学を学びメーカーへ就職するのが一般的
機械設計の仕事ができる場として代表的なのが、電機メーカーや自動車メーカーなど、製造業の企業です。
完成品の開発・生産を手掛けるメーカーは大手企業が中心で、多くの機械設計者が働いています。
また、バッテリーや電装品など、製品に使用される一部の部品を作る部品メーカーで活躍する機械設計者も多いです。
どのようなメーカーで働くにしても、機械設計の仕事では、機械工学に関する専門的知識・技術が不可欠です。
そのため、大学や専門学校、高等専門学校などで、機械工学を学んでおくと有利になります。
若い人材を求める企業が増えている
機械設計は、昔から安定したニーズがある職種ですが、最近は技術者の高齢化が進み、若い人材の不足が課題になっています。
そのため、学校で機械について学んでいない、まったくの未経験者でも、年齢が若ければ成長する可能性を期待して採用されることもあります。
ただし、大手企業では新卒採用でも高い学歴を求める傾向があり、優秀な人材が多数応募するため、大学の理工系学部に進んでおくほうが選択肢は広がるでしょう。
機械設計の学校・学費
大手企業を目指すなら大学進学を検討
機械設計の仕事に就くために、必ず通わなくてはならない学校はありません。
現役で機械設計に携わる技術者も、さまざまな学校を出ている人がいますが、一般的な進路のルートとしては、高校卒業後に大学の理工系学部へ進学し、就職する道です。
大手メーカーでは大卒の志望者が集まりやすく、「機械工学科」をはじめ、「機械システム工学科」や「電気電子工学科」などで学んでおくと、機械設計職の就職には有利になるでしょう。
私立大学(理工系)の学費は、年間で約130万円~160万円です。
企業の規模や学歴にこだわらない場合には、中学校卒業後に高等専門学校に進学して就職、あるいは高校卒業後に専門学校で機械工学を学んで就職を目指す人もいます。
関連記事機械設計になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学学部・専門学校)
機械設計の資格・試験の難易度
就職時点で資格は必須でないが、技術向上を目指すことが大切
機械設計として働く、あるいは就職する上で必須の資格はありません。
ただし、業務に関連する資格取得を目指すことで、知識・技術の向上につながったり、社内での昇進や転職時に有利になったりすることがあるでしょう。
機械設計に関連する代表的な民間資格としては、「CAD利用技術者試験」や「機械設計技術者」が挙げられます。
「CAD利用技術者試験」は難易度が比較的やさしく、学生時代に取得する人もいます。
「機械設計技術者」はレベル別に分かれていますが、最も難易度が低い3級でも大学の機械工学科卒業レベルの知識が求められます。
経験者向けの国家資格「技術士」
上記のほか、国家資格として「技術士(機械部門)」があります。
こちらは、理系の資格では最高峰に位置付けられるもので、最低でも大学の機械工学科卒業レベルの理解は必要とされています。
1次試験は誰でも受験できるものの、2次試験の受験には最大7年間の実務経験が必要なため、ベテランの技術者が取得を目指すことが多いです。
機械設計の給料・年収
大手メーカーの機械設計職は給与水準が高め
機械設計の年収は、一般的な会社員の平均年収の水準よりもやや高めです。
令和2年度賃金構造基本統計調査によると、機械設計の平均年収は、41.2歳で583万円ほどとなっています。
ただし、大手企業と中小企業では給料に大きな差が出る場合があります。
大手メーカーでは、キャリアを重ねて管理職になると、年収1000万円を超える人もいます。
歴史ある大企業では年功序列の企業も多く、20代ではさほど収入が高くなくても、基本的には長く働き続けるうちに少しずつ昇給が望めるでしょう。
契約社員やアルバイトの給料は時給制となりますが、専門的なスキルを要することから、一般的なアルバイトよりも高時給に設定されていることが多いです。
大手企業では手当・福利厚生も充実
機械設計の仕事は納期を意識して進める必要があるため、業務の状況によっては残業が発生します。
「残業手当」や「休日出勤手当」が給料に加算されることで、収入の底上げにつながっている場合があります。
その他の手当・福利厚生として、大手企業では社会保険制度のほか、賞与や退職金制度、保養施設の利用、社宅・社員寮完備、各種研修制度などが充実しています。
関連記事機械設計の年収・給料はどれくらい? 初任給やボーナス、統計データも解説
機械設計の現状と将来性・今後の見通し
人手不足の傾向にあり、若手人材の活躍に期待が集まる
機械設計のニーズは年々拡大傾向です。
既存のメーカーはもちろん、新たに機械製品の開発に乗り出す企業も出てきており、今後も機械設計者の活躍の場は広がると考えられます。
一方、機械設計分野に携わるエンジニアは、さまざまな技術職のなかでも、とりわけ人手不足といわれています。
ベテランエンジニアが続々と定年退職を迎えているため、これから機械設計を目指す若いエンジニアの活躍に期待が集まっています。
これから機械設計を目指す若手人材にとっては、活躍のチャンスがまだまだある仕事といえます。
AI時代で技術者として活躍し続けるために
高齢化社会が進むなか、今後の機械設計の仕事は、とくに介護ロボットや医療ロボットの需要が大きく拡大するといわれています。
現状ではIoTやロボットなどの分野に精通した技術者は決して多くないため、これらを得意とするエンジニアになれば、安定したキャリアを見込める可能性が高いでしょう。
ただし、機械設計の業務でも使用するソフト「CAD」での製図作業などは、近い将来にはAIに置き換えられていくと言われています。
専門性を磨き、人間にしかできない仕事を究めていくことも、機械設計として長く活躍し続けるために大切なポイントとなるでしょう。
機械設計の就職先・活躍の場
多種多様な機械製品を扱うメーカーを中心に活躍
機械設計者の就職先・活躍の場は多岐にわたります。
代表的なのは、ものづくりを行うメーカー(製造業)です。
自動車や家電製品、産業用機械など、多種多様なメーカーで機械設計者の需要があります。
また、上記に挙げたような製品の生産に使用する「部品づくり」を専門的に手掛けているメーカーも、設計開発者の就職先のひとつです。
このほか、機械設計を専門的に手掛ける事務所や、公務員のエンジニアとして働く人も一部います。
大手企業では設計部門の規模が大きく、多数のエンジニアが在籍しているため、基本的にはチームを組んで分業しながら仕事を進めます。
一方、規模が小さな企業や事務所では、一人のエンジニアが幅広く設計業務に携わることも多いです。
機械設計の1日
納期を意識しながら業務を進めていく日々
機械設計の仕事では、長期のスケジュールを組み、納期やマイルストーン(中間目標地点)を定め、それに間に合うように日々の業務を組み立てていきます。
デスクで設計作業する時間は長いですが、それ以外に打ち合わせなども頻繁に発生するため、忙しい毎日です。
日によってはクライアント先に外出することもあります。
また、始業前には、掃除、朝礼、ラジオ体操などを社員一丸となって行う職場も少なくありません。
ここでは、メーカー勤務の機械設計者のある1日の流れを紹介します。
関連記事機械設計の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
機械設計のやりがい、楽しさ
ものづくりの根幹を成す仕事に携わることができる
機械設計のやりがいは、ものづくりの最前線で、かつその根幹を成す仕事に携わっていけることです。
とくに大手メーカーでは、機械を設計するための環境や設備が充実しているため、機械設計の業務に没頭できます。
この仕事に就く人は、もともと機械いじりが大好きであったり、機械のことを考えるとワクワクするようなタイプが多いため、同じような興味を持つ仲間と切磋琢磨しながら日々の業務にも前向きに取り組めるでしょう。
機械設計者が作成した設計図によって、完成品の仕上がりや機能は大きく変わることがあります。
メーカーにはなくてはならない、非常に重要な仕事に携わるぶん、プロジェクトを終えたときの達成感は大きなものとなります。
機械設計のつらいこと、大変なこと
さまざまな制約がある中で完璧な設計をする難しさ
機械設計が携わる業務は専門性が高いものばかりで、技術者としてのハイレベルな知識や技術力が求められます。
設計ルールや設計に使うソフトの使用方法、あるいは業界用語や規格・設計基準などまで、習得しなくてはならないことが山積みです。
職場ごとに独自のルールもあるため、いざ就職してからも勉強の日々を送ることになるでしょう。
また、機械設計の仕事では日々機械のことを考えられる楽しさがある一方、100%自分の思い通りに設計ができるわけではありません。
コストや使いやすさ、安全性、納期、量産しやすさなど、設計にはさまざまな制約があり、時には他部門から無理難題を突き付けられることもあります。
あらゆる制約の中でベストな機械を設計する難しさに直面することもあるでしょう。
機械設計に向いている人・適性
機械の仕組みを考えることに情熱を注げる人
機械設計者に向いているのは、何よりも「機械が大好き」ということです。
機械設計の仕事は非常に専門的で、難解な理論や業界用語、規格・設計基準、設計に必要な技術などを身につけなくてはなりません。
誰がなんと言おうと機械が好きで、ずっと機械のことを考えていても苦にしないタイプの人でないと、この仕事を続けるのは難しいでしょう。
プラモデルやDIYなど、手を動かしてものづくりをするのが好きだったり、ものの構造や原理を調べることに強い関心があったりする人なら、機械設計に向いています。
また、機械設計ではミリ単位で作業を進めていくため、細かな作業が得意な人、あまりおおざっぱな性格でない人のほうがよいでしょう。
しかし、まずはなによりも機械に対する情熱が大切です。
業務に必要な知識・技術は自分の努力次第でいくらでも学べます。
関連記事機械設計に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
機械設計志望動機・目指すきっかけ
幼い頃からものづくりや機械いじりが好きだった人が多い
機械設計を志望する人の多くが、目指すきっかけとして「子どもの頃から機械いじりや、ものづくりに強い興味関心があった」と答えます。
プラモデルづくりに没頭するうちに、将来は機械に携わる仕事がしたいと考えている人もいれば、高校や大学進学など進路を考えていく際に、手に職をつけて活躍する技術者に憧れて、機械系の分野に進むことを決意する人もいます。
実際、機械設計職に就く人の多くが、工業高校の機械科や大学の機械工学科などを卒業しています。
機械設計は専門性が高く、この分野に関する知識・技術が求められる職種であることから、学生時代のうちに明確に進路を決めているケースが多いです。
関連記事機械設計の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
機械設計の雇用形態・働き方
正社員としてじっくり腰を据えて働く人が多い
機械設計は、高度な専門性が求められる技術専門職のひとつです。
実務を通じて知識が深まり、スキルアップできる部分も多く、この職に就く人の多くは正社員として勤務します。
同じ職場でじっくりと腰を据えて、新人時代から定年までキャリアを積んでいく人も少なくありません。
その過程でチームリーダーや管理職に昇進し、次第に設計実務からマネジメントへと役割が変わっていくこともあります。
正社員以外では、派遣の機械設計エンジニアとして働くことも可能です。
派遣であっても、高度な知識・技術、そして豊富な機械設計経験のあるエンジニアは高く評価され、とくに人手不足の中小メーカーなどからの需要が高くなっています。
機械設計の勤務時間・休日・生活
日勤の勤務体系が基本
機械設計者が働く職場の多くは、午前9時から実働8時間程度の勤務体系となっています。
日勤がほとんどで、夜勤やシフト勤務が入る職場はさほど多くありません。
なお、機械設計の業界では職場の規則が比較的カッチリとしており、全員が決まった時間に行動したり、ルールが細かく定められていたりすることが多いです。
一部の企業を除いて、柔軟な働き方はできない場合もあるでしょう。
通常時の残業はそこまで多くなく、休みも会社の規則に沿ってきちんととれます。
しかし、常に納期を意識しなくてはならない仕事のため、プロジェクトが大詰めの時期や業務が立て込んでいる時期は、夜遅くまで働いたり休日出勤を求められたりすることがあるでしょう。
機械設計の求人・就職状況・需要
大手メーカーから小さな設計事務所まで求人は多数
機械設計の求人は、電機系や自動車系などの製造業の企業(メーカー)を中心に多く見られます。
その大半は、大学の機械工学科などを卒業した人を対象とするもので、機械に関してまったく知識がないところからの就職は難しいです。
有名な大手メーカーでは定期的な新卒採用を実施することが多いですが、優秀な学生がこぞって応募するため、狭き門といえます。
しかし、中小規模のメーカーでも機械設計職の求人は多数出ており、そこまで視野を広げれば、就職先の選択肢は増えるでしょう。
近年の機械設計分野では、かつて大量に採用された世代の定年退職が進んでおり、若い人材が求められています。
誰もが簡単に就ける仕事ではないものの、就職希望者に有利な「売り手市場」になっていることは確かです。
機械設計の転職状況・未経験採用
機械設計の実務経験がある人が優遇される
機械設計の仕事では専門的な知識・スキルが必要になるため、転職する人の多くは機械設計関連の経験者です。
まったく同じ分野の機械設計に携わっていた人もいれば、異なる分野での機械設計の経験がある人もいます。
さほど多くありませんが、他業界の技術職として活躍していた人や、機械関連メーカーでセールスエンジニアなどの別職種に就いていた人などが、機械設計に転職する例もあります。
どのような場合でも、転職活動においては、たいてい「機械設計」あるいは「機械工学」の基礎知識が求められます。
中小企業で人手不足の場合は、機械設計の実務経験がなくても採用される可能性はありますが、それでも機械に関する知識がまったくないところからの転職は非常に難しいでしょう。
機械設計はフリーランスや副業として働ける?
副業からフリーランスになり、活躍している人も
機械設計は、製造業の企業で働く人が多いですが、独立して仕事をしている人もいます。
昨今は求人サイトやマッチングサービス、クラウドソーシングサービスも増えているため、それらを活用すれば、個人でも効率的に仕事を見つけやすくなっています。
ただし、実際にどれだけの仕事が獲得できるかは、個々の営業力や機械設計者としての実力にもよります。
特定の業界で十分な経験を積んだ人であれば、同業界からの仕事は請けやすくなるでしょう。
また、機械設計が求められる業界は家電や自動車、工作機械、医療器具などたくさんあるため、別業界の仕事にも挑戦できる可能性は十分にあります。
いきなりフリーランスになるのは不安があれば、まずは副業からスタートし、先が見えてきたところで完全に独立するのもひとつの方法です。