回路設計の需要・現状と将来性

回路設計の現状

世の中からのニーズは大きい

電子回路というのは、家電、自動車、医療や航空宇宙まで、さまざまな産業で用いられています。

身近なところではテレビやスマホなど、世の中の多くのモノは電子回路で制御されているため、社会の人々がいまの便利な生活を捨てない以上は、回路設計のニーズは今後も継続していくものと考えられます。

また、あらゆるモノのデジタル化がすすみ、これまでアナログな機械であったものにも電子回路が搭載されるケースも増えているため、需要は現在進行形で拡大しています。

慢性的な人手不足を抱えている

回路設計の仕事では、電気工学などの専門的知識も必要になってくるため、誰もができる仕事ではなく、もともと働き手というのは限られています。

その上で、近年は機械や電子を専攻する学生というのは減ってきており、高度経済成長期に大量に採用された団塊世代のベテラン設計者たちも定年退職していく流れにあります。

慢性的に人手が不足している業界であり、この流れは今後より加速するともいわれています。

とくにアナログ回路は人手不足

回路設計は「アナログ回路設計」と「デジタル回路設計」の大きく2タイプにわけられます。

一般的にアナログ回路設計はデジタル回路設計よりも難易度が高く、長年の「感覚」や「勘」なども重要になります。

そのため、アナログ回路を熟知したエンジニアというのは常に不足している状況です。

一方でデジタル回路設計は若いエンジニアでも活躍しやすく、また「デジタル」という言葉の響きから若者が興味をもちやすいこともあるため、アナログ回路設計に比べれば働き手は集まっている状況です。

民生品から産業機械へ

「民生品」というのは、テレビやスマホなど、一般的なユーザーが日常的に使う製品です。

「産業機械」というのは、工場にある工作機械のような、あまり人目に触れない業務用の機械をさします。

近年の日本のモノづくりは、民生品から産業機械へシフトしている傾向にあります。

もともと産業機械というのは、環境に合わせて機能をひとつひとつオーダーメイドやカスタマイズをすることも多いため、回路設計としての仕事も多い分野です。

しかし、回路設計を目指す学生の多くは、慣れ親しんだ民生品の設計を望むため、産業機械の設計をする人がなかなか集まらない状況におちいっています。

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回路設計の需要

既卒者のニーズ

回路設計の仕事には、電子工学分野の専門知識が必要となり、一人前に育てるまでには長い時間とコストがかかります。

そのため採用する企業側としては、ある程度ベースとなる経験・知識をそなえた人が欲しいというのが本音でしょう。

すでに社会に出ている既卒者であれば、「回路設計の設計経験〇年」、「〇〇分野の回路設計経験〇年」のように具体的な経験が求められるのが一般的です。

一方で人手不足の影響もあり、中小企業や小規模な設計事務所などであれば、未経験採用を行う会社もあります。

ただし未経験採用の場合でも「学生時代に電気・電子系を専攻していること」などを条件としている求人が目立ちます。

新卒学生のニーズ

新卒学生の場合も、ベースとなる専門知識はあるにこしたことはありません。

企業側のニーズとしては、大学や専門学校で電気工学や電子工学を専攻してきた学生にニーズが集まり、採用面接でも優遇されやすくなります。

ただし新卒学生は年齢が若いこともあり、潜在的な能力や適性があれば、学部に関係なく歓迎されるでしょう。

なお大手メーカーの場合は「4年制大学卒以上」の学歴を応募条件としている会社もあるので、学歴に注意が必要です。

回路設計の将来性

先端分野の需要拡大

今後の時代は、次のような先端分野で回路設計の仕事が増えるといわれています。

<先端分野の回路設計>
・IoT(Internet of Things)
・ロボット
・AI(人工知能)
・5G製品
など

とくに注目されているのは、一つ目の「IoT」です。

「IoT」というのは、あらゆるモノがインターネットでつながり管理される仕組みのことです。

たとえばスマートフォンからコントロールできる冷蔵庫、インターネットにつながるオーディスピーカーなど、いわゆる「スマート家電」と呼ばれているものもIoTの一種であり、今後はこのような技術がどんどんと普及してきます。

IoT製品の回路設計ができるエンジニアになればニーズも多く、転職しやすくなるでしょう。

アナログ回路設計とデジタル回路設計の将来

アナログ回路設計というと「アナログで古くさい」というイメージも持たれがちですが、落ち目な技術というわけではありません。

太陽光発電、風力発電、EV(電気自動車)、スマートグリッド(次世代送電網)、医療機器など、これらかの成長産業にもアナログ回路設計の需要が多々あり、今後が期待できるのがアナログ回路設計です。

職人的な腕も問われ、人手も不足している分野でもあるため、アナログ回路設計で実績のあるエンジニアになれれば、将来は安心でしょう。

一方でデジタル回路設計も、需要は拡大しており、将来は明るい分野です。

ただしデジタル回路設計は、プログラミングやツールを使って設計作業を「自動化」しやすく、自分ならではの強みを見出しにくいかもしれません。

今後、デジタル回路設計の開発ツールがより進化すると、設計エンジニアが今ほどいらなくなり、仕事が減ってしまうおそれもあります。

なお、現代の多くの機械は、アナログ回路とデジタル回路の両方を備えており、設計をする上でも両方の理解があるにこしたことはありません。

アナログ回路とデジタル回路の両方に明るいエンジニアとなることが理想形といえます。

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回路設計の今後の活躍の場

1990年頃までは日本の半導体産業は世界トップでしたが、現在では海外が回路設計の本場であり、たとえば韓国「サムスン」などが、世界中から優秀な技術者を集めています。

将来的には日本から出て、本場海外の電機メーカーや外資系企業で活躍するというのも、これからの時代のエンジニアの選択肢となってきます。

収入的にも、優秀なエンジニアであれば国内の何倍もの報酬が得られることもあります。

ただし海外で活躍するには、世界に通用するだけの設計スキルが必要となり、かつ「語学力」も必須となります。