回路設計の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

回路設計の仕事とは

回路設計とは?

掃除機、冷蔵庫、テレビ、スマホなど、世の中にはさまざまな機械があり、現代の機械の多くは電子制御されています。

たとえばテレビを分解すれば、中には緑色の電子回路の基盤があり、コンセントから得た電力をつかって、ディスプレイに映像を映し出すための複雑な処理がおこなわれています。

そのような電子回路部分の設計を担当するのが、「回路設計」とよばれる職業です。

具体的には、お客さまからの要望を聞き、「電子回路をどのように動かすか」の骨組みを考え、設計図を書き起こすのがおもな仕事となります。

なお、働く会社によって設計する機械の種類はさまざまです。

テレビなど身近な家電製品の回路設計をする会社もあれば、自動車、電車、産業機械、プラントのような大きな機械に組み込まれる回路を設計する会社もあります。

アナログ回路とデジタル回路

回路設計は、「アナログ回路」と「デジタル回路」の大きく2つの分野に分けられます。

・アナログ回路 電圧、音、高周波など、アナログ信号(連続した信号)を用いる電子回路
・デジタル回路 0と1で表現されるデジタル信号を用いる電子回路

同じ回路設計の仕事でも、アナログ回路とデジタル回路では扱う知識やスキルが異なるため、どちらの分野を専門とするかを決める必要があります。

ただし、現代の機械の多くは、アナログ回路とデジタル回路の両方が組み込まれています。

例として「液晶テレビ」であれば、アナログ回路44%、デジタル回路が56%という比率で成り立っています(調査会社IHS Markit調べ)。

アナログ回路の設計者だからといってデジタル回路とは無縁というわけではなく、どちらかを専門にしつつも、両方を理解しておいたほうが強みとなるでしょう。

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回路設計の業務の内容

大まかな業務のイメージ

アナログ回路とデジタル回路のどちらを担当することになっても、業務の大まかな流れというのは似ています。

<回路設計の業務イメージ>
・顧客や各部門の担当者と話し合いながら「仕様書」を作成

・仕様書をもとに回路の構造を設計

・CAD(Computer-Aided-Design)ソフトなどを用いて、設計図に書き出す

・パソコンを使ってシミュレーションをし、事前に課題を見つけ出す

・試作機を作りテスト

・トライ&エラーをくり返しながら製品化を目指す

電子回路は複雑であるため、回路を機能ごとに「ブロック」と呼ばれる単位で分けて設計を進めます。

電源、入出力、駆動など、ブロックごとに別々の設計担当者がいるのが基本です。

製品化して問題ないレベルまで設計をつめる必要があり、何度もトライ&エラーをくり返すことになります。

アナログ回路の設計

アナログ回路の設計では、電子部品(トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、配線など)を目標の特性に合わせて選び、電子基盤上で組み合わせていく作業が特徴的です。

アナログ回路の場合、机上のシミュレーションでは問題なく動作するはずでも、実際の部品の配置場所や配線の長さなどが違うと特性が変わることもあります。

実際にさわって組んでみないとわからないのが、むずかしいところでしょう。

長年つちかった「感覚」や「勘」が問われる職人的な仕事でもあるため、一人前になるにも時間がかかり、多くのベテランエンジニアが活躍しています。

デジタル回路の設計

デジタル回路の設計は、HDL(ハードウェア記述言語:Hardware Description Language)を利用し、プログラミングによって設計していくのが一般的になってきています。

HDLを用いることで、動作や機能をある程度、自動的に設計できるため、アナログ設計に比べると設計の難易度は下がりつつあります。

なおHDLは、C言語やjavaのようなIT系のプログラミング言語とは性質がことなる言語です。

プログラミング経験があったとしても知識の流用はむずかしく、独自の勉強が必要となるでしょう

回路設計の役割

組織内の役割

企業の組織内では、次のように役割を分けています。

<組織内の役割の違い>
・回路設計 電子回路を設計する
・機械設計 機械としての全体的な構造や仕組みを設計する
・企画部門 新製品の「コンセプト」や「イメージ」を考える
・デザイナー 新製品の「外観」をデザインする
・生産部門 設計をもとに市販品を量産する

回路設計が担当するのは、あくまで電子回路の設計のみです。

全体的な構造を設計するのは機械設計であり、外観の見た目を考えるのは「デザイナー」、工場で製品を量産していくのは「生産部門」です。

企業の組織内ではそれぞれ役割があり、お互いが協力をしながら、ひとつの機械の完成を目指します。

社会的な役割

電子回路はいわば機械の「頭脳」とも呼べる部分であるため、すぐれた頭脳を作り、世の中を便利にしていくことが回路設計の社会的役割でありミッションです。

たとえば最近のスマホやカメラなどは、どんどんと小型化され高機能になってきています。

これは、回路設計者が電子回路を小さなサイズに集約化させる技術を生み出したおかげです。

また頭脳となる電子回路の誤動作が起きると大事故が発生するおそれもあるため、安全に対しての責任も日頃から求められます。

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回路設計の勤務先の種類

代表的な勤務先

回路設計の代表的な勤務先として、次のような場所が挙げられます。

<回路設計の勤務先の例>
・完成品メーカー、総合メーカー(例:東芝、ソニー、パナソニック、村田製作所など)
・部品メーカー、サプライヤー(例:パナソニック、デンソー、マブチモーターなど)
・設計事務所(例:〇〇回路設計事務所、〇〇電子設計事務所など)

回路設計の仕事は専門的なため、勤務先のバリエーションはさほど多いとはいえません。

4年制大学を卒業した人であれば、電機メーカーや部品メーカーの設計開発部門に就職するのが一般的です。

地域の〇〇回路設計事務所なども就職先となり、中には個人経営の小さな設計事務所などもあります。

メーカー勤務の回路設計

東芝やソニーのようなメーカー系の会社に就職すると、そのメーカーが販売している製品の回路設計を担当することになります。

メーカーというのは自分たちでモノをつくる会社であるため、クライアントから指示や制約を受けることも少なく、比較的自由な環境でモノづくりができます。

メーカーの場合は、いずれはリーダーや部課長職などの管理職にステップアップしていくことが多く、延々と現場での設計にたずさわれるとは限りません。

また、能力の幅を広げるため「ジョブローテーション制度」を採用していることも多く、セールスエンジニア、企画職、生産部門など、ステップアップの課程で回路設計とは別の仕事を経験することもあります。

設計事務所の回路設計

設計事務所や中小メーカーの場合は、下請けの立場として、大手メーカーから設計の仕事を委託されることが多いです。

たとえばテレビの回路設計というのは、テレビメーカーだけで行うのではなく、その一部を下請けの設計事務所に依頼していることもあります。

そのように立場的に下の位置となるため、時にはクライアントから厳しい指示を受けたり、厳しいスケジュールで作業を依頼されることもあります。

一方、設計事務所や中小企業の魅力は、一人のエンジニアが幅広い業務をまかされるので、多くの経験をつめることです。

大手企業は開発業務を多くのスタッフで細分化しており、自分の担当分野しかたずさわれません。

大手企業に就職するか、設計事務所や中小メーカーを選ぶか、働き方をよく考えて検討するとよいでしょう。

回路設計の仕事の流れ

回路設計の仕事の大まかな流れは「仕様書を作成」→「回路の構造を設計」→「設計図を作成」→「シミュレーション」→「試作機でテスト」といったイメージです。

ただし、このすべての工程を一人のエンジニアが担当するとは限りません。

たとえば新人のエンジニアは、テスト作業部分のみ担当する下積み期間があります。

回路設計の仕事というのは、1日や2日で終わりません。

一つの機械の回路を設計するのに、何カ月、何年もの時間がかることもあります。

その間、同じお客さまやチームメンバーと長く付き合っていくこともあるので、長期的に良好な人間関係を保つ力も求められます。

回路設計と関連した職業

回路設計と機械設計の違い

「回路設計」と「機械設計」の2つは似ていますが、次のようなちがいがあります。

・機械設計 機械としての全体的な構造や仕組みを設計する
・回路設計 電子回路を設計する

たとえば液晶テレビなら、テレビのディスプレイの構造・素材・寸法など、機械としての全体の枠組みを設計するのは「機械設計」です。

一方、テレビ内部にある電子回路を設計するのが「回路設計」の役割となります。

回路設計は、電子回路という一部分のみに特化した設計職であり、いわゆるスペシャリストです。

回路設計と機械設計の仕事はたがいに関連する部分があり、打ち合せなどをして、お互いの意見をすり合わせる機会も多いでしょう。

機械設計の仕事

回路設計と制御系エンジニアの違い

制御系エンジニアは、機械を制御させるために使用する「ソフトウェア」を設計する職種を指します。

たとえば、炊飯機や電子レンジには、温度や調理方法を管理するためのソフトウェアが組み込まれています。

テレビには、最近は番組表やインターネットブラウザなどの機能が搭載されるようになっていますが、これも一つの制御系ソフトウェアです。

このようなソフトウェアを作るのが制御系エンジニアの役割となります。

制御系エンジニアは、いわば機械業界のシステムエンジニアプログラマーです。

C言語やjavaなどIT系のプログラミング言語を使用してソフトウェアを開発していきます。

一方、「回路設計」は、ソフトウェアではなくハードウェアの設計職です。

ソフトウェアを搭載するには、土台となる電子回路というハードウェアが必要となりますが、それを考えることが回路設計の役割となります。

なお回路設計においても、デジタル回路を設計する場合にはHDL(ハードウェア記述言語)と呼ばれるプログラミング言語を使います。

あくまでハードウェアを設計するために使うものであり、ソフトウェアを開発するわけではありません。