航空自衛隊パイロットになるには? 仕事内容や給料は?

航空自衛隊パイロットの仕事内容

日本の空を守る唯一の部隊

航空自衛隊は陸・海・空からなる自衛隊のうち、空域の防衛を担う部隊です。

人員は4万3千人程度。

地上では自衛隊に加え警察が、海上では海上保安庁が活躍しているのに対し、日本の空域を守っているのは航空自衛隊のみです。

航空管制やレーダー、迎撃ミサイルなど高度なシステムをいくつも持ち、戦闘機、偵察機、輸送機、救難捜索機ヘリコプターなど多種多様な航空機を運用しています。

空自のパイロットは、これらの航空機を操縦する操縦士のことです。

高度な専門知識を持った隊員ばかりの空自の中で、さらに一握りのプロフェッショナルがこの重責を担います。

なるためには倍率の高い選考をクリアする必要がありますが、女性の参画が進むなど門戸が広がりつつある職業でもあります。

航空自衛隊パイロットの1日

全国25基地に展開

空自は全国に25の基地(分屯地も含めると73)を持ちます。

このうち、戦闘機が配備されているのは、千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原、那覇の7基地です。

国籍不明機の許可ない侵入を察知し空自の戦闘機が緊急発進することを「スクランブル」と呼びますが、空自の戦闘機パイロットはそのスクランブルに備え、24時間待機するという勤務があります。

勤務は朝に始まり、翌日の同時刻に終了。

いつでも数分以内に戦闘機を発進できるよう、数人の戦闘機パイロットがフライトスーツを着て専用の待機所で過ごすという、長い緊張を伴う勤務です。

航空自衛隊パイロットになるには

航空学生への入隊が確実

空自のパイロットになるためのルートは3つありますが、最も可能性が高いのが、高校卒業後に航空学生として空自に入ることです。

空自のパイロットの約6割は航空学生の出身者です。

応募は18歳以上21歳未満の高卒生(もしくは見込み)が対象。

視力は裸眼が0.1、矯正が1.0以上必要です。

ちなみに、男女別の採用人数枠は2015年に撤廃され、すでに多くの女性パイロットが空自で活躍しています。

航空学生のプログラム修了後は、山口県の防府北基地で行われる飛行準備課程と、各基地で実施される操縦訓練に従事し、最終的に空自パイロットの証である「ウィングマーク」を取得します。

他には、防衛大学校もしくは一般大学を卒業した後、空自の幹部候補生学校の「飛行要員」枠に応募することも一つの選択肢です。

視力は裸眼0.1、矯正0.8以上が求められます。

幹部候補生学校終了後は航空学生と同じルートをたどります。

航空自衛隊パイロットの学校・学歴・資格

高倍率の航空学生入試

空自パイロットの約6割を輩出する航空学生。

倍率は50~60倍になることもあります。

試験は3次まであり、筆記試験や適性検査、実際に航空機に乗って行われる操縦適性検査などを含みます。

合格後は約2年間、一般教養や物理化学に加え、航空気象、航空力学、電子工学といったパイロットに必要な専門知識を身に着けます。

同時にパイロットの必須知識である英語にも力を入れます。

航空学生の課程を修了後はプロペラ機やジェット機による操縦教育を経て、パイロット資格を取得します。

最終的には機種ごとのコースに分かれ教育訓練を受け、パイロットとして任務に当たることとなります。

航空自衛隊パイロットの給料・年収

給料は安定、貯金も可

空自の採用時の階級は、航空学生が2士、幹部候補生学校の飛行要員は3等空尉(院卒は2等空尉)となります。

航空学生は空自の隊員であり、国家公務員という立場になりますので給料が出ます。

月給は約17万円、賞与は年2回です。

2士の年収は約300万円、3等空尉は500~600万円ほどど推定されます。

防大や一般大学を卒業し幹部候補生として入隊した自衛官の方が昇進が早く、給料も高くなります。

また、給料は階級だけでなく年齢にも左右されます。

基地の勤務はお金を使う機会も限られ、貯金はしやすいようです。

航空自衛隊パイロットのやりがい、楽しさ、魅力

防空のプロフェッショナル

国の平和と国民の生命、財産を守るという、国家に欠かせない役割を担うのが自衛官です。

そうした重責を担う自衛隊において、空自は唯一日本の空域を守ることができる組織です。

全ての隊員に専門的な知識と技術が求められ、空自全体で高度なシステムを運用します。

その中で、空自パイロットは航空機を操縦するという最重要ポジションを任されます。

また、つらい訓練を修了し、初めて一人でジェット機を操縦した時のことは忘れられない体験となります。

他の職業ではまず不可能な経験ができるのも魅力です。

航空自衛隊パイロットのつらいこと、大変なこと

過酷な警戒勤務

海に囲まれた日本においては、外国の侵入は空から、極めて短時間のうちになされることが想定されます。

そのため空自は、外国の侵入を察知し次第素早く出動できるよう24時間365日の即応態勢を布いています。

それが、上にも紹介したスクランブル発進です。

中国やロシアとの関係が緊迫化する中、年間のスクランブル発進は千回近くになることもあります。

空自のパイロットはそうした状況に立ち向かわねばならず、常に緊張が続きます。

これまで、空自の戦闘機が他国と交戦したことはありません。

万が一、他国の航空機と戦闘する事態が発生すれば、それは自衛隊の歴史始まって以来のことです。

空自パイロットはそうしたリスクにも向き合わなければなりません。

航空自衛隊パイロットに向いている人、適性

高い能力と強い精神が必要

プロフェッショナルぞろいの空自にあって、パイロットはさらに高い能力が求められます。

高度に複雑なシステムを搭載し、空を高速で移動する航空機を扱うためには、電子機器の操作や航空・流体力学などを理解する必要があります。

そうした知識を身に着けたうえで、瞬時の判断や複数の機械を同時操作する能力が必要です。

また、航空学生や幹部候補生学校の飛行要員の入隊試験に課される身体検査では、視力のほか肺活量や色覚が正常なことが求められます。

逆に、身長は190㎝以下でなくてはいけません。(下限は158㎝)

航空自衛隊パイロットの志望動機・目指すきっかけ

ジェット機を操縦したいなら

自衛隊は雇用の継続と安定した給料が魅力ですが、空自のパイロットを目指す人は多くの場合、強い目的意識を持ってパイロットの道を目指します。

プロフェッショナルとして、高度な知識と技術を活かし責任重大な役割を担いたい人がパイロットへの厳しい道を選ぶわけです。

もちろん、ジェット機に乗って大空を飛びたいという、純粋な動機も大きなきっかけとなります。

航空学生は最短で20歳で操縦訓練を始めます。

これは世界的にも珍しく、ジェット機を操縦するというほかにない夢をかなえるには最適な道でもあります。

航空自衛隊パイロットの勤務時間・休日・生活

不規則な勤務だが休日はしっかり

空自の事務職は昼のみの部署もありますが、パイロットはそうもいきません。

24時間365日の即応態勢が必要な空自では当然夜勤があります。

また、戦闘機パイロットになればスクランブル発進のための待機もあります。

言わずもがな、有事の際には昼夜を問わず出動する必要も出てきます。

一方、有給日数が多く、年末年始や夏季休暇を取りやすいのは魅力です。

日本全国にあるどこかの基地が勤務地となりますが、長期休暇を利用して地元に帰ることもできます。

航空自衛隊パイロットの雇用形態、働き方

女性登用に注力

男性社会の傾向が強い自衛隊において、空自は女性の登用に力を入れており、陸海空のなかでは最も女性が働きやすい部隊といえるかもしれません。

空自は2015年、戦闘機と偵察機の女性自衛官の配置制限を撤廃。

18年には初の女性パイロットが誕生しました。

女性でも能力があれば第一線で活躍することができます。

また、任務の特殊性を配慮し、育児休暇の取得促進などの働き方改革にも力を入れています。

埼玉県の入間基地には空自初となる庁内託児施設が16年に開園しています。

航空自衛隊パイロットの求人・就職状況・需要

空自パイロットは高倍率

陸海空いずれも、自衛官の数は定員に対し9割程度にとどまっており、自衛隊はリクルートに力を入れています。

大学生の応募を促す「カレッジリクルータ」という制度もあり、近くの地方協力本部にメールなどで連絡するれば、大卒の自衛官からさまざまなアドバイスや体験談を聞くことができます。

一方でパイロットの道を志す人は多く、航空学生にしろ幹部候補生学校の飛行要員にしろ非常に狭き門となっています。

航空学生は7~8月、幹部候補生学校は3~4月がおおむねの募集受け付け期間です。

航空自衛隊パイロットの転職状況・未経験採用

航空学生が幹部候補生学校へ

航空学生は18歳から21歳未満が対象ですので、3回しか受験資格がありません。

一方で、大卒を対象とした幹部候補生学校は26歳未満(修士課程修了者は28歳未満)まで受け付けています。

これらの道以外で空自のパイロットを希望するのはほぼ不可能でしょう。

空自パイロットに必要とされる専門知識と技術は日本の他のどんな職業で得られるものではなく、空自での長く厳しい訓練を経る必要があります。

もし本当にその道を志すなら、早めの情報収集と準備が必須です。

航空自衛隊パイロットの現状と将来性・今後の見通し

空自パイロットの需要は大きい

格安航空会社の利用増や外国人観光客の増加で、民間企業のパイロットは不足気味です。

空自パイロットは、そうした市場に強く必要とされている人材です。

空自の定年は50歳代半ば。

一方民間企業は60歳代後半まで乗務できます。

空自定年後でも再就職は十分可能です。

さらにその場合、給料は大きく上がると予想されます。

ただ、日本を取り巻く安全保障の状況は絶えず変化しています。

空自パイロットの将来性について考えるときは、いつ有事が発生するかわからないということも念頭に入れる必要があります。