自衛隊の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「自衛隊」とは
「陸・海・空」から日本の平和と安全を守り、外部侵略に対して防衛する任務を果たす。
自衛官は、日本の平和と安全を守り、外部からの侵略に対して防衛する任務をもつ公務員です。
自衛隊の活動には、国家を守る「防衛活動」、大規模災害のときに救助をする「緊急救助活動」、海外の紛争地域で、その地域の平和を維持する「国際平和協力活動」などがあります。
自衛隊は非常に大きな組織のため、募集している職種が多岐に渡ります。
必要とされる学歴もさまざまであるため、自分が希望する職種の募集状況を確認することが必要です。
震災時の救助活動による活躍で、自衛隊に対する期待や注目度は高まりをみせています。
また、日本近海において緊張が高まっている現代では、防衛面においても自衛隊の重要性が増してきている状況です。
「自衛隊」の仕事紹介
自衛隊の仕事内容
国の平和と安全を守る公務員
自衛隊とは、日本の平和と安全を守り、外部からの侵略に対して防衛することを目的に作られた組織です。
組織としては「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」の3つに分かれており、これらのいずれかの組織に属する人を「自衛官」と呼びます。
自衛官は公務員として採用され、日本全国に23万人ほどいます。
日頃から厳しい訓練やトレーニングを積んで有事に備えます。
自衛隊での具体的な業務としては、陸・海・空、それぞれの範囲における防衛活動が主となります。
要人を警護したり、不審船を確保したり、航空管制業務を行ったり、ミサイルを監視したりと、その活動内容は多岐にわたります。
災害時の救助や国際的な貢献活動も行う
上記のほか、自衛隊は地震や洪水などの災害発生時には、警察や消防と連携をとって救助活動にあたったり、復興支援に協力したりします。
さらには、国連の平和維持活動(PKO)に協力するため海外派遣されるなど、国際社会に貢献する活動も行っています。
陸上自衛隊だけでみても16もの職種があり、個々の隊員に与えられた任務を遂行しながら、さまざまな事態に対処します。
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自衛隊になるには
なりたい職種によってルートが異なる
自衛官になるには、自衛隊の採用試験を受けて合格する必要があります。
自衛隊は非常に大規模な組織であるため、数多くの職種で募集がかけられています。
どのようなキャリアを目指すかによって応募資格が異なりますが、学歴ひとつとっても中卒から高卒、大卒まで、広く門戸が開かれています。
年齢や学歴によって応募できる職種に違いがあるため、どのようなキャリアを目指したいのかをよくイメージして、学校選びをしていくとよいでしょう。
20歳~30歳前後で受験できる試験が多い
ここでは、学歴別に応募できる主要な種目を紹介します。
・大卒:自衛隊幹部候補生
・高卒:一般曹候補生、自衛官候補生
・中卒:陸上自衛隊高等工科学校
大卒者向けの自衛隊幹部候補生は、将来的に幹部になりたい人のための試験です。
このほか、海上自衛隊・航空自衛隊のパイロットになりたい人向けの試験として、高校卒業後に「航空学生」制度に応募する道もあります。
なお、最近では自衛官不足が大きな課題となっていることから、採用年齢の引き上げが積極的に行われています。
25歳~30歳前後で受けられる試験もいくつもあり、社会人経験を積んでから自衛隊に入ることも可能です。
自衛隊の学校・学費
さまざまな学校から自衛隊を目指せる
自衛隊に入るルートは複数あるため、さまざまな学校から自衛官を目指せます。
できる限り早く自衛官になりたいなら、中学校卒業後に自衛官を養成するための「高等工科学校」へ進学する道や、高校卒業後に「自衛官候補生」に応募するルートがあります。
また、将来の幹部を目指していきたい人は「防衛大学校」という幹部候補生を育成するための大学に入るのも一つの方法です。
こうした自衛隊の教育機関に通う学生は「特別職国家公務員生徒」という身分になるため、入学金や授業料などの学費はかからず、学びながらにして給与が支給されます。
もちろん、一般の高校や大学を卒業後、自衛隊の試験を受けることも可能です。
どのルートから自衛隊に入ったかによって、その後のキャリアや昇任スピードなどに違いが出ます。
自衛隊の資格・試験の難易度
難易度は職種によって大きな差がある
自衛隊の採用試験の倍率や、各学校に入学するための試験の難易度はさまざまで、自衛隊に入るための難易度を一概に述べることは困難です。
たとえば、陸上自衛官の「一般自衛官候補生」の採用試験では、筆記試験の内容は中学校卒業程度、身体検査も健康状態に問題がなければクリアできるため、難易度は易しいといえます。
一方、大卒の学歴をもつ人が受ける「幹部候補生試験」では、陸海空の一般幹部候補生試験合計で300名ほどの採用枠に対して、毎年数千を超える受験者が集まります。
採用倍率はほとんど一桁の狭き門となっています。
このように、自衛隊の試験は募集職種によっては人気があり、倍率が高いため、きちんと対策をして試験に臨む必要があります。
自衛隊の給料・年収
公務員のなかでも高めの給与水準
自衛隊に所属する自衛官は、特別職の国家公務員の身分となります。
給料は法律で定められた「俸給表」に則って支給されますが、自衛官の場合、危険を伴う職務であることや、体力的な面から定年退職が早いことなどなどから、一般の公務員よりも高めの金額が設定されています。
すべての年代の平均年収は約640万円、平均月収は約40万円であり、一般的な民間会社員の平均年収よりも高めの収入が見込めます。
基本的に年齢や階級が上がるにしたがって給料は増え、幹部自衛官になると、40代で年収900万円ほどに達するケースが多いようです。
手厚い福利厚生が用意されている
自衛隊では、他の公務員と同じように、数々の福利厚生が用意されています。
手当については、年に2回のボーナス(期末・勤勉手当)、扶養手当など一般的な手当のほか、航空手当や災害派遣等手当といった、自衛隊ならではの手当も複数あります。
なお、自衛官は原則として、一定の年齢や階級になるまでは、駐屯地や基地内の寮で団体生活を送ります。
住居費や生活費がほとんどかからないため、若手のうちから安定した生活を送り、お金を貯めやすい環境にあるといえるでしょう。
このほか、退職金制度があったり、自衛隊関連の病院で無料で診察や治療を受けられたり、防衛省の共済組合への加入もできたりなど、待遇面は非常に充実しています。
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自衛隊の現状と将来性・今後の見通し
門戸は開かれているが、続けられるかは自分次第
日本の平和と安全を守るために、自衛官は時代を問わず必要とされる職業です。
とくに近年は頻発する自然災害のせいもあって、その重要性が再認識されています。
ただ、自衛官は「公務員」という安定した地位が得られる一方、厳格なルールの下に動く集団生活を強いられる点や、海外を含めた危険地域に派遣される可能性もあり、職業としての人気はそれほど高くないのが現状です。
自衛隊では常に若い人材を求めているため、これから自衛官を目指す人にとっては、就職しやすくなっているのは確かです。
しかし、自衛隊で長年働き続けるには、訓練の厳しさを乗り越えることはもちろん、昇任試験に通る必要もあるなど、シビアな面も多々あります。
せっかく自衛隊の採用試験に合格しても、比較的早い段階で自衛隊を辞めてしまう人もいます。
続けられるかどうかは、個人の資質と目的意識によるところが大きいといえるでしょう。
自衛隊の就職先・活躍の場
自衛隊の活躍の場は全国にある
自衛官は、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊のいずれかに所属します。
それぞれの役割は以下の通りです。
・陸上自衛隊:国民や国土を直接守るため、陸上での戦闘や情報収集、補給にあたる
・海上自衛隊:日本の領海を守り、海上からの侵略を防ぐ
・航空自衛隊:日本に侵略してくる敵に対して、空での防衛を行う
自衛隊は、これらのすべて合わせると約23万人もの自衛官が所属する巨大組織であり、およそ260ヵ所の勤務地があります。
このため、採用後の配属先は必ずしも希望通りになるとは限らず、全国各地のいたるところで勤務する可能性があります。
また、数年単位での異動もあるため、全国各地へ引っ越しを伴う隔地転勤を繰り返すケースも珍しくありません。
自衛隊の1日
自衛官は規則正しい生活を送る
配属先や部隊によって細かい部分は異なりますが、自衛官の1日のスケジュールは大枠が定められています。
とくに若いうちは駐屯地内にある隊舎で集団生活を送ることになるため、1日の過ごし方はかなり規則的です。
ここでは、陸上自衛隊の若手自衛官のある1日を紹介します。
以下は、航空自衛隊の航空学生のある1日です。
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自衛隊のやりがい、楽しさ
国を守っている誇りと使命感
自衛隊の真価は、有事の際こそ発揮されるといえるでしょう。
近年は東日本大震災をはじめとして全国各地で大規模災害が相次ぎ、救助活動にあたる自衛官の存在感が増しています。
災害が発生するたびに、現場にいち早く駆け付けた自衛隊が、人命救助や救援物資の運搬、がれきの撤去など、八面六臂の活躍を見せ、それによって多くの国民の命が救われました。
人々の命や生活を守るために働けることは、自衛官にとって何よりの誇りであり、日々の厳しい訓練をこなすモチベーションにつながっています。
また、訓練を続けることで心身ともに鍛えられるため、人間として一回りも、二回りもたくましくなれることに魅力を感じている自衛官も多いです。
自衛隊のつらいこと、大変なこと
厳しい命令の下に動き、自由が制限される
自衛隊では、いつ何時起こるかわからない緊急事態に備えるため、24時間、一定数の人員が駐屯地内に待機していなくてはなりません。
このため、若いうちは基本的に駐屯地の隊舎で暮らすことが義務づけられており、夜間の外出は制限されますし、休日であっても「残留」と呼ばれる当番にあたっている場合は外出できません。
国を守る大義のためとはいえ、私生活における自由がある程度少なくなってしまう点は、自衛官特有のつらい部分といえるでしょう。
また、自衛隊の組織は厳しい階級社会となっており、指示命令や上限関係がハッキリとしているため、その雰囲気に慣れないうちは精神的につらいと感じることもあるかもしれません。
自衛隊に向いている人・適性
決められたルールを守り、団体行動ができる人
自衛官は、普段の生活においても業務においても、集団行動をする機会が非常に多い職業です。
日常生活では複数のルームメイトと寝食をともにしますし、日中の訓練も班単位や中隊単位で行うため、基本的に単独で行動することはありません。
日頃からお互いを助け合い、チームワークを養うことで、有事の際に大きな力を発揮することができます。
自衛官には、過酷な任務に耐えられるだけの気力と体力はもちろん必要ですが、それと同じくらい、協調性があることも大事な資質といえるでしょう。
また、自衛隊は民間企業とは異なり、国や国民全体のために仕事をします。
社会の役に立つ仕事がしたいという気持ちがあり、困っている人を助ける使命感や責任感の強い人に向いている仕事といえます。
自衛隊志望動機・目指すきっかけ
日本や国民を守りたい気持ちがある
自衛隊を目指す動機は、人によってさまざまです。
人助けをしたいという人もいれば、体を動かすのが好きな人、銃器類などの装備に興味がある人、あるいは公務員としての安定した身分や待遇に魅力を感じる人もいます。
なお、同じ公務員の「警察官」や「消防士」といった公安職は、自衛官と多少似ているところがあります。
そのなかでも、あえて自衛官になる人に共通しているのは、日本という国が好きで、日本を守りたい気持ちが強いことです。
自衛隊に入ると、命令があれば自身の命を危険にさらしてでも業務を遂行することが求められため、強い目的意識がないと自衛官を続けることは困難でしょう。
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自衛隊の雇用形態・働き方
長く働き続けるには昇任試験への合格が必要
自衛官として採用された人は、特別職の国家公務員の身分となります。
公務員の一種であり、自衛隊の組織は厳しい階級社会で成り立っています。
基本的に勤続年数を重ねることで徐々に階級が上がっていきますが、「士長」から「曹」になるときと、「曹長」から幹部である「3尉」になるときには、昇進試験を受けなければなりません。
士長以下の階級の自衛官は約6年ほどしか任期がないため、それ以上の期間自衛隊に勤めたいなら、昇進試験を避けて通ることはできません。
試験では、学科と実技と体力測定がかなり高度なレベルで実施されるため、入隊から6年間のうちに、しっかりと準備しておく必要があります。
このように、自衛隊に入ってからも努力を続け、キャリアアップしていくことが求められてきます。
自衛隊の勤務時間・休日・生活
1日のスケジュールが決められている
自衛官の勤務時間は1日7時間45分と定められており、基本的に8:15に業務開始で、17:00に業務終了となります。
自衛隊の仕事に厳しいイメージを持っている人も少なくないかもしれませんが、勤務時間はかなり厳格に決まっており、通常は残業のようなものはほぼありません。
休日についても、土日を休みとする完全週休2日制となっており、きちんと休みが確保されています。
災害発生時などには勤務が連続するときもありますが、その分は、可能な限り後日代休を取得することができます。
労働環境としては民間企業より恵まれているかもしれません。
ただ、自衛官のなかでも幹部になると業務量が圧倒的に増え、非常に忙しくなるといわれています。
ある程度の自由が制限される
自衛隊の組織は、指示命令をきちんと行うために、ルールや決まり事が明確になっています。
とくに訓練などで団体生活をしている場合には、起床時間から消灯時間まで細かくスケジュールが割り当てられ、その通りに動かなくてはなりません。
一般的な仕事のように、個人の自由で行動できないケースも多々あるため、その点は頭に置いておいたほうがよいでしょう。
関連記事自衛隊の勤務時間・休日・休みの日や連休の過ごし方は?
自衛隊の求人・就職状況・需要
自衛官のなり手は不足している状況
自衛隊は公務員のなかでも最も求人数の多い職種であり、毎年、全隊合わせて1万人近い求人があります。
しかし近年は、その主力となる「自衛官候補生」において志願者数の不足が続いており、毎年の採用人数は大幅に予定数に達しておらず、防衛力の低下が危惧されています。
この背景には、少子化や大学進学率の増加、民間企業の有効求人倍率が高水準にあることなどが理由として挙げられています。
自衛官の人数を確保するため採用試験に応募できる年齢の引き上げも行われており、自衛隊に入りたい若者にとってはチャンスが広がっているといえるでしょう。
ただ、自衛隊は応募すれば誰でも簡単に合格できる組織ではなく、筆記試験や面接試験、身体検査などの一定基準を超えなくてはなりません。
応募する職種に合わせて十分な対策をとっておく必要があります。
自衛隊の転職状況・未経験採用
年齢次第では民間からの転職も可能
自衛隊に入隊するには、募集職種に応じた学歴や年齢の要件を満たす必要がありますが、それらをクリアしていれば社会人から自衛官になることも可能です。
近年では、採用人数の多い「自衛官候補生」や「一般曹候補生」試験に応募できる年齢の上限が引き上げられたこともあり、これまで以上に、転職によって自衛隊を目指しやすくなっています。
自衛隊では、これまでのキャリアやスキルを生かせる専門的なポジションに応募できる制度などもあるため、民間から自衛隊に入り、新しい道を模索していく人もいます。
ただ、自衛隊のキャリアは多岐にわたっているため、もし転職を考える際には、事前にどのようなキャリアを目指していくのかをしっかりと考えることが大切です。
自衛隊の寮の雰囲気は?
寮では先輩と一緒の部屋で集団生活を送る
自衛官は、自衛隊法によって指定された場所に住み、生活をすることが求められます。
若手自衛官の場合、基本的には拠点のエリア内にある「基地」や「駐屯地」で暮らし、そこでは寮での集団生活を送ります。
寮の部屋は、陸上自衛隊であれば、通常一部屋3~4人ほどが割り当てられます。
全員が異なる「期」のメンバーとなるのが通例で、最も下の立場のときは、先輩に気を遣って緊張感が続くかもしれません。
ただ、訓練や演習以外の時期は、その日の仕事が終われば各自でトレーニングをしたり、テレビやゲーム、読書をしたりできる自由時間も設けられています。
寮のある営内には売店、食堂、喫茶店、床屋など、さまざまな施設も設けられているため、日常生活に大きく不便を感じることはないでしょう。
幹部自衛官になったり、結婚したりすれば、基本的には寮を出て家族で過ごすことができます。
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自衛隊の昇級試験の内容は? 評価はどうやって決まる?
通常の勤務では体力面や仲間への気遣いなども評価される
自衛隊の組織は上下関係が明確で、個々の自衛官に「階級」が定められています。
階級の名称は陸・海・空で多少異なりますが、基本的には上から「幹部」「准尉」「曹士」に分かれます。
自衛隊内で階級が上がる方法は、昇任試験で合格するパターンと、一定の期間の経過でなれるパターンの2通りです。
陸上自衛隊の場合、昇任試験は、大きく分けて「士長」から「曹」へ昇級するときと、「曹長」から幹部である「3尉」へと上がるときに行われます。
士長から曹への昇任試験の内容は、学科・実技・体力測定の3本柱で、学科では、自衛隊の教本の内容や、自身の職種に関する問題が出されます。
実技では、数人の隊員を規定のスペースの範囲内で指揮することを行い、体力測定では、腕立て・懸垂・腹筋や持久走などを既定の回数こなすことが求められます。
このように、昇任試験では知識面から技術面まで幅広く問われますが、日ごろの勤務に関する評価で最も重要になるのは「体力」といわれます。
自衛隊として厳しい訓練を続け、任務を遂行するには身体の強さが不可欠だからです。
また、自分の役割を理解して正しい行動ができることや、仲間に対する気遣いができるかどうか、信頼されているかどうかなども評価対象となります。