保育士になるには? 必要な資格のとり方・難易度を解説

保育士とは、保育士の国家資格を持つ保育の専門家です。

保育士資格を取得する方法には、保育士資格を得られる学校で学ぶ方法と、保育士試験に合格する方法の2通りがあります。

なお、保育士は、高卒の人でも、主婦や社会人になってからでも目指すことができる職業です。

この記事では、保育士を目指す前に知っておくべきことをわかりやすく解説します。

保育士になるには

保育士として働くためには、国家資格である「保育士」の資格が必要です。

ここでは、保育士になるまでの道のりや学校、保育士資格を取得する難易度などを説明します。

以下で、それぞれについて詳しく説明します。

保育士になるまでの道のり

保育士の資格を取得する方法は、大きく分けて2通りです。

保育士になる方法
  1. 大学・短大・専門学校などの保育士養成課程で所定の課程を修了する
  2. 保育士試験に合格する

このうち、中学や高校から保育士を目指す人の多くが、大学・短大・専門学校のルートを選んで進学しています。

保育士養成課程をもつ学校には、2年制の短大や専門学校(一部は3年制)、4年制の大学などがあり、各学校で在学期間のほか、カリキュラム・学費・就職サポート体制などに違いがあります。

次からは、保育士になるための学校の種類について、さらに詳しく紹介していきます。

保育士になるための学校の種類

保育士になるための養成課程をもつ学校は、「4年制大学」「短大」「専門学校」の3種類があります。

それぞれのメリット・デメリットと学費の目安は以下の通りです。

【保育士になるための学校の種類と比較】

メリット デメリット 学費の目安
4年制大学 大卒資格を得られる 学費が高額 400万円(4年)
短期大学 学校数・定員が多い 2年間なので忙しい 250万円(2年)
専門学校 実践的な知識を習得できる 大卒・短大卒より昇進が遅い 200万円(2年)

専門学校は3年制のところもありますが、多くが短大と同じく2年制となっています。

なお、学校によっては幼稚園教諭」など、子どもと関わる他資格との同時取得が目指せるカリキュラムを設置しています。

4年制大学の特徴

4年制大学では、4年間かけてじっくりと保育の知識・技術を身につけていくことができます。

また、保育以外の一般教養を幅広く学べることも特徴で、卒業すれば大卒の学歴を持つことができます。

就職先によっては、初任給は学歴によって差がつけられ、大卒者のほうが多少よい給料をもらえることがあります。

専門学校・短大の特徴

専門学校は、2年間(あるいは3年間)で保育の知識・技術を学ぶため、4年制大学よりも忙しい学校生活になることが多いです。

ただし、保育に特化した勉強が中心であるため、いち早く保育の現場に出たい人には適しているといえるでしょう。

また、4年制大学よりも、学費を安く抑えることができます。

短大は、4年制大学と専門学校の中間的な立ち位置といえ、大学ほどではありませんが、教養科目も学びながら専門的な知識・技術を早く習得できます。

また、学校の数が多めで、各地域に密着した学校が多いことも特徴です。

保育士になるための学校については、以下のページでさらに詳しく紹介しています。
保育士になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学・専門学校・短大)

保育士の資格・難易度

保育士養成課程のある学校を卒業すれば、自動的に保育士の資格を取得することができます。

それ以外の人が保育士を目指そうとする場合には、保育士試験を受験することになるでしょう。

保育士試験は、毎年4万人から5万人が受験をしている人気の試験で、保育士養成課程のない一般の大学を卒業した人や短大の卒業生などでも受験可能です。

また、条件によっては中卒や高卒の人でも受験することができます。

保育士試験は、社会人となってから通信講座などを利用して受験をする人もいるようですが、保育士試験の難易度は高く、合格率は例年10%~20%程度となっています。

保育士試験の難易度・合格率
保育士試験通信講座について

現在中学生や高校生で、将来保育士を目指すと決めているのであれば、保育士養成学校へ入学するほうが、確実に保育士資格を取得することができるでしょう。

保育士になるまでのルート

保育士の年収・給与水準

保育士を目指すにあたっては、年収・給与についても事前に知っておくことが大事です。

ここからは、保育士の年収事情や、昇給について紹介します。

保育士の平均年収は358万円

保育士の平均年収は38歳で397万円です。(令和5年度「厚生労働省 賃金構造基本統計調査」より)

一般的な初任給は18~20万円ほど、税金などを差し引くと手取りは約15万円となります。

最近では保育士の待遇が少し改善しつつあるものの、とくにキャリアの前半は、金銭的には余裕がない日々が続くことも頭に置いておきましょう。

保育士の昇進・昇給はある?

公立の保育園で正社員として働く場合、身分は地方公務員となります。

そのため、比較的安定した給与を得て働くことができ、毎年、定期的な昇給も見込むことができます。

一方、私立の保育園の場合は、昇給による給料の増加はあまり期待できないかもしれません。

しかしながら、キャリアを重ねて「リーダー」や「園長補佐」といった役職になると、基本給が増えたり、手当が多くついたりして、収入アップが望めます。

保育士の給料・年収

保育士を目指せる年齢

保育士は、高卒の人、そして社会人・主婦など、幅広い年代から目指すことができます。

高卒からでも保育士を目指せる

高卒の人が保育士を目指すためのルートは2種類あります。

  1. 保育士養成課程のある大学・短大・専門学校といった保育士養成学校に入学する
  2. 保育士試験を受験し、合格を目指す

保育士の養成学校の多くは、出願資格として「高等学校卒業もしくはこれに準ずる学校を卒業していること」といった条件を掲げています。

一般的に、年齢は18歳以上であれば入学することが可能です。

養成学校において年齢制限はなく、入試に合格さえすれば、何歳でも保育士になるための勉強をすることができます。

これらの学校では、高校を卒業したばかりの人が入学することが多いですが、すでに高卒の資格を持った20代以上の人でも入学ができ、卒業と同時に保育士資格を取得することが可能です。

2年制の短大や専門学校であれば、最短で2年学ぶことで保育士として働き始めることができます。

保育士試験に合格すれば、専門学校に通わずに保育士になることができます。

ただし、受験には児童福祉施設や保育関連施設で一定の期間・時間以上働いた経験がある、などの条件を満たす必要があります。

保育士試験は独学で合格できる?

社会人や主婦から保育士を目指す人もいる

保育士国家試験の受験にあたって年齢制限はありません。

そのため、社会人として何年も働いてから保育士を目指す人もいます。

保育士の年代は、正社員では「20代から30代の割合が最も多い」というデータがありますが、キャリアアップして40代以上も引き続き働く人もいます。

また、結婚や出産などを機に、正社員から契約社員やパートなどの雇用形態に変更して働き続ける人も少なくありません。

保育士のキャリアプラン・キャリアパス

保育士_画像

保育士はキャリアを積むことで、保育園内でキャリアアップしたり、病院内の保育施設で働いたりと活躍の場を広げることができます。

保育園内でのキャリアアップ

保育士として長く働き続けると、もちろんベテラン保育士として現場で頼られる存在になりますが、役職につくチャンスも得られます。

保育士の役職は保育施設によって違いがあるものの、担任・リーダー・主任・園長といったものが一般的です。

  • リーダー:クラス業務の責任をもつ、新人保育士の指導や育成などを担当する
  • 主任:リーダーの育成や園長の補佐など組織全体を見て動く仕事を任されるようになる
  • 園長:保育園のトップにあたる立場。保育士全体の管理をし、園の運営や経営面にも責任を持つ

公立保育園の園長になるには、長く勤めて空きポストが出た際に昇格試験を受け、合格する必要があります。

民間の保育園であれば経験や実績・スキルなどの評価によって園長になることが可能です。

保育士は若い人が多く、結婚や出産などを機に仕事を辞めてしまう人も多いですが、頑張りによってはキャリアアップを目指すことが可能です。

保育士として他の施設や企業へ転職する

保育士が求められる場所は、保育園以外にもあります。

【保育士の活躍の場の例】

  • 病児保育施設(病気の子どもを一時的に預かる)
  • 美容院や歯医者、商業施設内の保育スペース
  • 保育士の自宅や利用者の自宅
  • 企業内の保育施設
  • 商業施設などの保育スペースは、子どもを預けてゆっくりサービスを受けたい親からの支持を受け、増加傾向にあります。

    また、企業が福利厚生の一環として、企業内に保育園を設ける事例もあります。

    また、保育士の自宅で子どもを預かったり、利用者の自宅を訪問して面倒を見たりする保育サービスを提供する人もいます。

    キャリアを積むうちに、保育園以外の場所で活躍する道を目指すことも可能です。

    保育士の仕事内容とは

    ここからは、保育士の仕事内容について、事前に知っておきたい情報を簡単にまとめています。

    子どものお世話・保育と保護者へのアドバイス

    保育士の仕事内容は大きく2つに分けることができます。

    保育士の仕事
    • 子どもの身の回りのお世話・保育
    • 保育の専門家としての保護者への指導

    保育士は、お世話をするだけでなく、周囲の子どもとの協調性、自分のことを自分でできるようにする自立性を養う役割も担っています。

    【子どもの保育の仕事の例】

    • 食事やおやつを決まった時間に与えて規則正しい生活リズムを身につけさせる
    • 排泄や着替えの補助をして自立性を養う
    • 遊び相手になり、コミュニケーション能力や協調性を養う

    保育士は、子どもの乳幼児期の人間形成を助ける役割を担います。

    また、保護者への保育のアドバイスも保育士の役割です。

    【保護者へのアドバイスの例】

    • 保育園での子どもの様子を保護者に伝える
    • 保護者からの相談に応じる

    保育の専門的な知識・技術を生かして、保護者が安心して子どもを預けられるようにすることも、保育士の役割です。

    保育士の仕事内容については、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
    保育士の仕事内容

    保育士の1日のスケジュール

    以下は、保育士のある1日のスケジュール例です。

  • 6:30 出勤
  • 7:00 登園開始
  • 9:30 クラスでの遊び
  • 11:30 昼食準備
  • 12:00 食事
  • 13:00 お昼寝
  • 15:00 おやつ・遊び
  • 16:00 業務終了
  • 保育士の1日・生活スタイル

    保育士と幼稚園教諭との違い

    保育士と幼稚園教諭の主な違いは、以下の通りです。

    【保育士と幼稚園教諭の違い】

  • 保育士:保護者の代わりに基本的な生活習慣を身に着けさせる
  • 幼稚園教諭:幼稚園は学校の一種で生活面や知識などについての教育・指導を行う
  • 保育士と幼稚園教諭では、そもそも資格が異なります。

    保育士になるには、厚生労働省が認定する「保育士」の資格が必要です。

    一方、幼稚園は学校の一種であり、その教諭になるためには文部科学省管轄の「幼稚園教諭免許」を取得する必要があります。

    保育士と幼稚園教諭の違い

    保育士とベビーシッターとの違い

    保育士には資格が必要ですが、ベビーシッターに必要とされる資格はありません。

    主な違いは以下の通りです。

    【保育士とベビーシッターの違い】

  • 保育士:保育士資格を持ち、保育園で複数の子どもの保育を行う
  • ベビーシッター:資格は必要なく、主に利用者の自宅で1対1で子どもの面倒を見る
  • 保育士の資格を生かしてベビーシッターの仕事をしている人もいます。

    ベビーシッターはお客さまと信頼関係を築きながら、1対1で深く子どもと向き合いやすいことが特徴です。

    ベビーシッターと保育士の違い

    保育士に向いている人・適性

    保育士に向いている人の特徴を大きく3つ紹介します。

    【保育士に向いている人】

    • 子どもが好き
    • 責任感が強い
    • 体力がある

    保育士に向いている人の特徴1.子どもが好きなこと

    保育士の仕事は、当然ながら子どもが好きなことが何よりも大事です。

    子どもを思いやる優しさや、子どもの気持ちを考えて、一緒に楽しんだり悲しんだりする感受性が必要とされます。

    少しくらい大変なことがあっても、子どもの笑顔を見ていると頑張れるといえるような人であれば、保育士に向いているといえるでしょう。

    保育士に向いている人の特徴2.責任感が強い

    保育士は、保護者に代わって子どもを安全に預かり、保育をするという重大な役割を担います。

    保育中は、子どもがケガをしたり事故などの危険に遭ったりしないように最新の注意を払う必要があり、「子どもをきちんと守る」という責任感を持てることが大事になります。

    また、保育中に何かトラブルがあった場合などは、確実に保護者に連絡をすることも欠かせません。

    目の前の仕事に一つひとつ責任を持ち、しっかりと向き合える人に向いている仕事です。

    保育士に向いている人の特徴3.体力がある

    いうつも子どもと遊んだり、子どもをあやしたりしている保育士の姿は楽しそうに見えますが、実際には相当な体力が必要とされます。

    1日中、元気に動き回る子どもたちの相手をすることはとても大変ですし、抱っこをする時間が多くなると足腰に負担もかかりやすい仕事です。

    しかし、どんなに疲れていても、子どもの前ではそうした姿を見せないようにする必要があるため、体力をつけておくに越したことはありません。

    保育士に向いている人・適性・必要なスキル

    保育士の求人・就職状況・就職先選びのポイント

    保育士は、保育園を中心に、さまざまな場所でニーズがある職業です。

    ここからは、実際の就職先の例や、求人の状況、採用試験を受ける際のポイントなどについて説明します。

    ポイント1.保育士の就職先・活躍の場にはどんなところがある?

    保育士の就職先として、最も代表的な場が保育園です。

    保育園では、おもに0歳~6歳までの子どもを預かり、保護者に代わって保育をおこないます。

    他の保育士と協力して、親御さんともコミュニケーションをとりながら、たくさんの子どものお世話や遊びに携わることになります。

    このほか、以下の場でも保育士が活躍しています。

    • 病院
    • 児童福祉施設(障害児施設・児童養護施設など)
    • 保育所
    • 託児所 など

    とくに、最近増えているのが「企業内保育所」といって、企業で働く親御さんの子どもを預かる保育施設です。

    ここで挙げたような保育施設は全国各地にあるため、保育士は場所を問わずに働きやすい職業といえます。

    保育士の勤務先と仕事内容の違い

    ポイント2.保育士の求人の状況

    「就職難」といわれることも多い現代ですが、保育士の需要は高まっています。

    実際、保育士の求人を集めたインターネットサイトをのぞいてみると、各地で数多くの保育士の求人があることがわかります。

    このような背景には、保育に対する世の中のニーズが高まってきたことが挙げられます。

    現代は女性が結婚・出産後も仕事をすることはもはや当たり前になっている時代であり、都心部を中心に夜遅くまで働く人も増えています。

    こうしたなか、最近では夜間保育・延長保育などを行う保育園が多くなっており、これまで以上にたくさんの保育士が求められています。

    一方、少子化の急激な進行によって、今後は保育士の雇用が厳しくなっていくだろうという見解もあります。

    これから保育士を目指していく人は、今後の状況をよく確認しながら対応していく必要があるでしょう。

    ポイント3.保育士の就職先の選び方

    世の中の保育に対するニーズが多様化し、保育士の活躍の場は以前よりも広がっているといえます。

    しかし、働く場所によって具体的な業務内容や求められる役割が多少異なる場合があるため、まずは自分がどのように働きたいのかを明確にするとよいでしょう。

    朝、親御さんから子どもを預かり、日中に保育をして夕方以降にお見送りをする一般的な保育士のイメージ通りの仕事がしたいのであれば、保育園が最も適しているかもしれません。

    しかし、保育園によって保育方針は異なりますし、公立か、私立かによっても雰囲気には違いが出てきます。

    一方、病院で働く保育士のように、小児科医や看護師と連携をとりながら、病気を抱える子どものケアに携わる仕事もあります。

    児童福祉施設では、ときに親族や保護者のいない子どもと関わったり、障害を抱える子どもと接することもあります。

    また、企業内保育所で働く保育士は、その企業の社員として働けるケースが多く、給料や福利厚生などの面も含め、より安定感のある働き方がしやすいことが多いようです。

    このような、施設別の特徴をおさえたうえで、自分がどのような場所で働きたいのかを考えていくとよいでしょう。

    ポイント4.保育士の志望動機・面接

    保育士を目指す人のほとんどが、「子どもが大好きで、子どもとたくさん関わる仕事がしたい」という思いを持っています。

    保育士の志望動機を考えていくうえで、「子どもが好き」という思いはもちろんですが、その気持ちを具体的に伝えられるようにすることが大事です。

    「どんな保育士を目指しているか」「子どもとどのように接していきたいと思ってか」などをしっかりと考え、自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

    面接では、自分の強みや個性、これまでに経験して学んだこと、これからどうなっていきたいのかなどを明確にすることと、自分の実体験に基づく回答をすることを心がけるとよいです。

    保育士採用試験の志望動機と自己PR・面接で気をつけるべきことは?

    ポイント5.就職先はどのように探したらいい?

    保育士の就職先は、保育士専門の求人サイトや各保育園のホームページ、ハローワークなどで探すことが可能です。

    自分の勤務に関する希望条件を確認しておき、その条件に合った施設があれば問い合わせてみましょう。

    保育士の就職では、「条件が合っていても施設の中は思っているのと違っていた」「職場の人間関係がよくなかったなど」という失敗がよくあります。

    このような失敗をしないためにも、できるかぎり志望先の情報を調べ、場合によっては足を運び、実態をしっかりと把握しておくことが大切です。

    保育園によっては、見学や実習の機会が用意されていたり、積極的に説明会が開催されているところもあります。

    保育士の求人は多いため、焦らずに確認しながら、自分に合った勤務先をじっくりと見つけてください。

    「保育士になるには」まとめ

    保育士になるには、保育士養成課程のある学校で学ぶなどの方法で、まずは保育士の国家資格を取得する必要があります。

    通う学校によって特徴が異なるため、いろいろな学校を見比べて、自分に合うところを選びましょう。

    なお、保育士は保育園で働く人が多いですが、それ以外にも保育所や託児施設など、日本各地のさまざまな場所で求人が出ています。

    勤務先によって仕事の進め方や雰囲気などが異なってくるため、どんな場所で働きたいのかも、早めにイメージしてみるとよいでしょう。