薬剤師の需要・現状と将来性
薬剤師の現状
薬剤師は、医薬品に関する豊富な知識を有する専門職です。
現代社会では、少子高齢化社会が進行していること、またアレルギーなどの慢性疾患をもつ人が増加していることなどもあって、医療市場は全体的に拡大の一途をたどり、薬剤師のニーズは増しています。
一方、薬剤師を養成する大学が増え、薬剤師資格の所有者は増加しています。
そのため、これから薬剤師の競争は激しくなっていくかもしれません。
しかしながら、昨今ではスポーツ分野におけるドーピングの知識を持った薬剤師「スポーツファーマシスト」に注目が集まるなどの流れもあり、今後、新たにニーズが高まる分野や領域が出てくる可能性が考えられます。
また、近年では化粧品会社やバイオ会社でも薬剤師の需要が増し、薬剤師の勤務先は多岐にわたります。
そう考えていくと、薬剤師は時代が変わっても安定した職業であるという見方もできます。
薬剤師の需要
薬剤師は、かつては「資格さえ取ることができれば、あとは一生就職に困らない」といわれる職業でした。
全国どこに行っても病院や調剤薬局はあるため、就職口を探すのにも苦労せず、専門性が高くて給料もよい、まさに「売り手市場」の職業だったのです。
しかし、昨今ではこの状況が大きく変わり始め、薬剤師の需要が減少しつつあります。
理由のひとつは、医療現場でのカルテや処方せんの電子化が進んだことです。
かつては薬剤師が自分の手で行ってきた入力作業がどんどん簡略化され、人手が少なくても作業できるようになってきました。
さらに、規制緩和の流れのなかで薬局以外のディスカウントストアやコンビニでの医薬品販売が進み、薬局での対面販売も減少傾向にあります。
薬の種類によっては、薬剤師ではなく「登録販売者」という資格があれば販売できるようになり、薬剤師の正規雇用を抑える病院や薬局が増えつつあります。
また、今後インターネットを使った薬の販売がさらに主流となれば、そのぶん薬剤師が求められる場も減少することが見込まれます。
薬剤師の将来性
薬剤師は需要が減少といわれる一方で、薬剤師を目指す人の数は増え続けています。
2004年頃から私大の薬学部開設が相次ぎ、かつては46校だった薬学部の設置大学が、15年ほどで70校を超えています。
薬剤師のおもな就職先となるのは「調剤薬局」「病院」「製薬会社」「大学の研究機関」です。
このうち「製薬会社」や「大学の研究機関」を目指すのは一部の難関大学の薬学部を卒業する学生が多く、こういった研究職の分野では今後も安定した需要が見込まれます。
一方で「調剤薬局」「病院」を目指す学生は、今後ますます増えていくことが予想されており、就職も狭き門になるかもしれません。
ただし、地方においては薬剤師の人数が足りていない地域もあるようです。
都市圏での勤務にこだわらず、地方での就職を目指すのであれば、就職先に困ることはそれほどないでしょう。
薬剤師の活躍の場
薬剤師は、働く場所が幅広いことも魅力です。
病院や調剤薬局、ドラッグストアのほか、新薬などの研究・開発や情報提供を行う民間の製薬会社がおもな活躍の場ではありますが、公務員として国の研究機関や、薬の認可を行う厚生労働省などで仕事をする薬剤師もいます。
また、なかには製薬会社や化粧品会社などで薬剤師の知識を生かす人もいます。
たとえば製薬会社では、難病やがんを治療する新薬の研究開発に携わったり、日々開発が進められる薬の情報を医療機関に提供する「薬剤情報提供者(MR)」として働いたりするキャリアがあります。