小学校教師になるには? 資格は必要? 【社会人からも目指せる】
小学校の教員免許資格は教職課程のある大学や短期大学に進学するほか、教員資格認定試験に合格することでも取ることができます。
教員免許を取得し、さらに自治体(公立学校の場合)や各学校(私立学校の場合)の教員採用試験に合格することで、小学校教師として教壇に立てます。
この記事では、小学校教師になるために通う大学など進学先の選び方に加え、社会人や高卒から小学校教師を目指す方法まで詳しく解説しています。
小学校教師になるには【教員免許・採用試験合格が必要】
まずは小学校の先生になるための流れを確認しましょう。
小学校教師になる一般的なルートには、上の図のように3つのステップがあります。
- 大学などで必要な科目を履修する
- 大学などを卒業し教員免許状をとる
- 小学校教員採用試験に合格する
小学校の先生になるには、国家資格である「小学校教諭免許状」が必要です。
大学や短期大学、大学院などで決められた科目を履修して卒業すると、小学校教諭免許状を取得できます。
必要な科目を履修していても、大学などを卒業しないと小学校教諭免許状は取れないので注意が必要です。
小学校教諭免許状の資格には、学士や修士といった学位が必要だからです。
小学校教諭免許状を取得するだけではなく、教員採用試験に合格してはじめて、小学校の先生になります。
20代で正社員への就職・転職
小学校教師の資格(教員免許)の取り方と進学先の選び方
この章では、小学校の教師になるために必要な「小学校教諭免許状」の取り方や、進学先の選び方を解説します。
社会人や高卒からも小学校の先生は目指せるのか、年齢制限があるのか、といった点も紹介していきます。
小学校教師の資格は3種類
- 小学校教諭専修免許状:大学院卒で取得
- 小学校教諭第一種免許状:4年制大学卒で取得
- 小学校教諭第二種免許状:短期大学or小学校教員資格認定試験で取得
一般的に「教員免許」と呼ばれる資格で、正式な資格の名称は上記の通りです。
小学校の先生の資格は上の3種類ですが、小学校教諭第一種免許状を取得する人が最も多いです。
どの資格を持っていても、任される仕事の内容は同じです。第二種免許状だから担任を持てない、といったことはありません。
ただし、第二種免許状より第一種免許状のほうが就職に有利に働くことが多いです。
もちろん第二種免許状で採用される人もいますが、採用後に第一種免許状の取得をするよう、勧められることがあるようです。
小学校教師になるための大学・進路の選び方【大学卒を目指すほうが有利】
小学校の教員免許をとるには、「教育職員免許法」で定められた単位の取得が必要です。
小学校教諭免許状の種類 | 基礎資格 | 最低修得単位数 | ||||
教科に関する科目 | 教職に関する科目 | 教科又は教職に関する科目 | その他(注) | 合計 | ||
専修免許状 | 修士の学位 | 8 | 41 | 34 | 8 | 91 |
一種免許状 | 学士の学位 | 8 | 41 | 10 | 8 | 67 |
二種免許状 | 短期大学士の学位 | 4 | 31 | 2 | 8 | 45 |
文部科学省「教員免許状取得に必要な科目の単位数」
第二種免許状でも採用試験で大きく不利に働くことはないものの、場合によっては一種や専修を所持する人が優遇されることがあります。
また、昇格などでも一種や専修だと有利に働くケースもあります。
とくに管理職を目指す場合は、基本的に小学校教諭第一種免許状の取得が求められます。
最初から小学校教師を目指す場合、教職課程のある大学に進学し、小学校教諭第一種免許状を取得しておくほうが効率的でしょう。
なお全国的に数は少ないものの、通信制大学で第一種免許状が取得可能な大学もあります。自宅学習以外にスクリーニング、教育実習があり、通学生大学と内容は変わりません。
4年制大学、通信制大学、短期大学で小学校教師を目指すメリット・デメリットをまとめると、次の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
4年制大学 | 一般教養など幅広く学べる。 | 学費が高い |
通信制大学 | 学費が安く第一種免許状をとれる | 自分でコントロールが必要 |
短期大学 | 短期間で教員になれる | 2年間なので忙しい |
通信制は自分で勉強時間をコントロールする意思の強さが求められますが、学費の安さが魅力です。
大学や短大に進学して教職課程をとる場合は、「難しい」というより「大変」といえます。
とくに短大の場合、2年という短い期間で単位を取得しなくてはならず、採用試験の勉強にまで手が回らないという人も多いです。
教職課程では、教育実習や介護実習にも時間が割かれます。
また、ピアノやプールなどの実技も単位取得の一部で、苦手な人は空き時間を使って特訓しなくてはなりません。
その大変さに教職をあきらめ、一般企業への就職に切り替える人も多いため、強い意思をもってコツコツ地道に努力することが大切といえます。
小学校教師になるには学費はいくらかかる?
学費に関しては、私立か国公立かで大きく変わってきます。
- 4年制大学:国公立大250万円、私立大学500万円
- 通信制大学:2年間なら40万円前後
- 短期大学:公立100万円、私立200万円
通信制大学の場合、学費を大きく抑えることができます。
通信では基本的に自宅学習となりますが、「スクーリング」と呼ばれる、先生から直接授業を受けられるカリキュラムもあります。
1教科1万円前後の追加料金がかかりますが、先生に直接質問ができて理解が深まる、モチベーションが維持できる、といったメリットがあります。
教員資格認定試験に合格して教員免許を取る方法も
- 受験資格:高卒以上、受験年度の4月1日に20歳以上
- 合格で得られる資格:小学校教諭第二種免許状
- 合格率:10%前後
小学校の先生になるために、大学や短大に進学することは必須ではありません。
教員資格認定試験に合格すれば、小学校教諭第二種免許状が取得できるからです。認定試験では教育実習もなく、安価に教員免許を取得できるというメリットがあります。
受験資格は、高校卒業以上の学歴がある人、もしくは中卒で高等学校卒業程度認定試験に合格している人です。
詳しい受験資格などに関しては、教員資格認定試験を運営する独立行政法人教職員支援機構ホームページを確認してください。
小学校教師の免許を取るためにはどんな大学・学部に行けばいい?
社会人や高卒から小学校教師になるには?
社会人や高卒から小学校の先生を目指すには次の4つの方法があります。
- 大学や短期大学に入学しなおす
- 科目履修生として大学に通う
- 通信制大学で指定の科目を履修する
- 教員資格認定試験に合格する
大学や短期大学などに入学して、授業を受けるとなると学費や生活費など金銭的な負担が大きくなります。
仕事をつづけながら、小学校の先生を目指すのであれば「科目履修生」「通信制大学」「教員資格認定試験」の3つが現実的な選択肢といえます。
科目履修生とは、大学や短大をすでに卒業している人が、必要な科目の授業だけ履修するしくみです。学費を押さえて教員免許の取得が可能です。
基本的に高卒だからといって採用に大きく不利になることはありませんが、有名私立小の場合は教師にも高学歴を求める傾向にあります。
学歴で仕事内容が変わることはなく、研鑽を積み、児童や保護者から信頼される高卒の小学校教師も多くいます。
小学校の先生になるには年齢制限はある?
小学校教師の年齢制限については、近年は緩和される傾向にあります。
受験資格は各自治体のHPで確認でき、年齢制限を定年直前の59歳としている自治体も多いです。実際に50代の受験者もいるため、教員採用試験の受験自体には年齢制限はほぼないと考えてもいいでしょう。
しかし、現実的には年齢が高くなればなるほど、合格しにくくなります。
ある政令指定都市の教員採用試験における年代別合格者割合をみてみましょう。
- 20代:65%
- 30代:29%
- 40代:5%
- 50代:1%
このように、教員採用試験の合格者の大半が20代~30代で占められています。
合格して小学校教師として働くということを考えると30代までには目指しておくべきです。
なお40代以降で合格率を上げたい場合、講師経験や社会人経験を前面にだした特別先行枠でチャレンジするのもいいでしょう。
小学校の教師を目指すなら知っておきたい3つのこと
この章では、小学校の先生になりたい人が知っておきたい次の3つのことについて紹介します。
- 小学校の教師になる難易度
- 小学校の教師の年収
- 小学校の教師になった後のキャリア
小学校の教師になる難易度は?【倍率2.7倍】
小学校の先生になるには、教員免許を取った後に教員採用試験に合格する必要があります。
小学校の教員採用試験の倍率は下降傾向で、中学・高校と比較しても低くなっています。
- 小学校:2.7倍
- 中学校:5.0倍
- 高校:6.1倍
小学校の教師は、勤務時間が長くモンスターペアレント、学級崩壊といった問題も抱えており、民間企業への就職を選ぶ人も増えています。
小学校・中学校の教師の両方の教員免許を取る場合の履修科目を減らすなど、先生になりやすい仕組みを整えようと政府が動いています。
小学校教師の年収は671万円
- 平均年齢:42.3歳
- 平均月収:41万円
- 平均年収:671万円
公立小学校の先生の平均年収は671万円です。私立の小学校の場合には学校ごとに給与体系が異なります。
日本人全体の平均年収が400万円前後であることから考えると、小学校の先生の平均年収は高めです。
また、公立の小学校の先生は地方公務員として、手厚い福利厚生が受けられます。
ただし、時間外労働など業務負担が大きく、業務量の割には給与が少ないと感じる人もいます。
小学校教師になった後のキャリアプラン
小学校の先生になった後はどのように仕事をするのか、どのようにキャリアを積んでいくのか、詳しく見てみましょう。
小学校教師1年目
教員採用試験に合格し、新規採用されると、1年間は条件付き採用となります。
1年間、初任者研修を受け、きちんと仕事ができる可能性があると認められれば、2年目からは正規採用となります。
1年目は研修期間でありながら新人教師は担任を持ち、授業の仕方、学級運営方法、事務処理方法を指導教官や教務担当教師、教頭から学びます。
他校の授業見学、キャンプ宿泊研修など校外の研修もあります。
業務とあわせて研修もあるため、忙しいものの、一人前の教師になるためにも先輩教師の授業と保護者対応をよく観察していくことが大切です。
経験を積み指導教諭や管理職へ
小学校教師が経験を積んでいくと、「指導教諭」という新人教師などの指導を行う存在に昇格します。
なかには教育委員会に異動となり、指導主事となる人もいます。
教頭や校長になりたい場合は、候補者選考試験をうけ、管理職になる必要があります。
管理職になった場合、学級担任をもつことはなく、学校全体の運営に責任をもつことになります。
管理職になると、どうしても生徒との距離ができるため、あえて管理職試験を受けずに一生涯一教師として児童に向き合いたいという人もいます。
管理職になるかならないかでは、仕事内容や年収も異なってきます。
自分が思い描く教師像、教師としてどんなことをしたいかを考え、キャリアプランを描く必要があるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
小学校教師に適性がある人・向いている人の特徴は?
小学校の先生に向いている人の特徴を解説します。
常に学び続ける姿勢
小学校教師の大きな特徴は、すべての科目を一人で教えるという点です。
先生として子ども達のお手本となるべく、すべての科目をオールマイティにこなすことを要求されます。
とはいえ、小学校の先生も人間ですから、当然苦手な科目や分野はあります。
とくにピアノや体育(水泳、鉄棒)などは、なんとか大学の単位を取得したという先生も少なくありません。
そのため、教師になった後も上達するように努力することが大切です。
さらに2020年には英語、道徳、プログラミングの授業が必修化されます。
小学校教師はこれらの授業をわかりやすく展開できるように、研修、体験会などを通じて、その知識を習得していく必要があります。
AI化などで今後も教育現場は変化していくことが予想され、小学校教師は柔軟に学び続ける姿勢が大切です。
子どもたちへの愛情
小学校教師は6歳~12歳という人間形成において重要な時期にある子どもを導く存在です。
学習だけでなく、あいさつや友達との付き合い方・掃除の仕方などを根気よく教える必要があります。
子どもたちの成長を保護者と同じように見守る存在のため、子どもたちへ深い愛情を持っていることが求められます。
小学校教師は勤務時間も長く、ときに自己犠牲の精神が求められがちです。
大変な仕事ですが、子どもたちの成長・笑顔が何よりの喜びというタイプであれば、長く働くことができるでしょう。
観察眼が鋭い人
小学校教師は、一人につき約30人~40人の児童を受け持ちます。
クラスの子どもたち一人ひとりを観察するだけでなく、クラス内にトラブルがないか常に見極めることが必要です。
なかには面と向かって相談をしてこない子もいて、友人関係や家庭環境に問題を抱えて後に大きな問題に発展することも少なくありません。
生徒の様子を細かく観察する広い視野が必要です。
教えるのが好きな人
小学校教師は生徒にすべての科目を1人で教えます。
学習以外にも生活指導も重要な教師の仕事で、「教える」ことは教師の本分です。
そのため、人に教えるのが好きで「わかってもらいたい」という気持ちが強いタイプが向いているでしょう。
小学校教師になるには|まとめ
- 教職課程のある大学に進学して第一種免許状を取得するのが一般的
- 教員資格認定試験に合格すれば第二種免許状を取得できる
- 年齢制限は実質なく、社会人や高卒からも目指せる
教員資格認定試験に合格すれば、大学に進学することなく小学校の先生になることができます。
決して楽な道ではありませんが、本当に努力をする気持ちがあれば、学歴関係なく小学校教師を目指せます。
ぜひ、自分に合う方法で小学校教師を目指してください。