理学療法士と作業療法士の違い
理学療法士と作業療法士の仕事内容の違い
理学療法士と作業療法士は、両者ともリハビリテーションに携わる職業ですが、それぞれの仕事内容は明確に異なります。
理学療法士は、立つ、座る、歩く、寝返りをうつなど、日常生活を送るための基礎的な身体機能の改善・維持を図ることが仕事であり、マッサージなどの物理療法や、歩行訓練などの運動療法が専門です。
一方、作業療法士は、着替える、食事する、排せつする、入浴する、文字を書くなど、日常生活のなかでも応用的な動作を回復させることが仕事であり、手や指を使った細かい動作の訓練を手掛けます。
また、理学療法士の仕事は身体面に特化している一方、作業療法士は料理や遊び、手芸などを通して、身体面・心理面のケアを同時に手掛けるという点に、両者の大きな違いがあります。
端的に表すと、理学療法士は「運動機能回復の専門家」、作業療法士は「生きがい支援の専門家」ということができるでしょう。
理学療法士と作業療法士のなる方法・資格の違い
理学療法士・作業療法士ともに、その国家資格は、職業名を名乗るために必要となる「名称独占資格」と呼ばれる種類のものですが、事実上、働くうえでは資格取得が必須です。
双方とも資格を取得するためには、まず国や都道府県によって指定された養成校で3年以上学び、所定の課程を修了して、国家試験の受験資格を得なければなりません。
その後に、厚生労働省が主管する国家試験を受けて合格すると、それぞれの資格が得られます。
なお、理学療法士・作業療法士どちらかの資格をすでに持っていて、もう一方の資格を取得する場合は、養成校での勉強期間が2年間に短縮されます。
業務内容の共通性が高いこともあり、双方の資格を取得してダブルライセンスで働いている人も少なくありません。
理学療法士と作業療法士の資格の難易度の違い
理学療法士と作業療法士それぞれの試験は、「理学療法士及び作業療法士法」という同じ法律に基づいていることもあって、試験形式、日程、難易度など、多くの部分が共通しています。
試験は毎年2月頃に実施され、5択のマークシート形式で、一般問題と実地問題の2分野にわけて出題されます。
問題数が200問とかなりボリュームがあることが特徴的で、一日がかりの試験となります。
正答率60%ほどがボーダーラインとされており、合格率は年度によって多少のばらつきがあるものの、おおむね80%前後で推移しています。
合格率が高いのは、試験問題がやさしいというよりも、しっかりと合格できるレベルまで勉強してから試験に臨む人が大半であるという事情が強く影響しています。
それでも、多くの人が新卒後1回の受験で合格していますので、養成校での勉強に真面目に取り組めば、十分にクリアできるレベルといえるでしょう。
理学療法士と作業療法士の学校・学費の違い
理学療法士、作業療法士とも、目指せる学校としては、4年制大学、3年制の短大、3年制・4年制の専門学校などがあります。
できるだけ早く現場に出たい場合は3年制、じっくりと時間をかけて、より幅広い知識を学びたい場合は4年制の学校を選択するとよいでしょう。
また、さらに高度な知識を得たかったり、研究職を目指す場合は、大学院に進学する選択肢もあります。
両者の違いとしては、それぞれを目指せる学校の数の違いが挙げられます。
理学療法を学べる学校は全国に250前後あるのに対し、作業療法を学べる学校は180校前後と、理学療法士の養成校のほうがかなり多くなっています。
学費については、どちらも大学・短大で年間100万円前後、専門学校で年間170万円前後が相場とされていますので、卒業までには300万円~700万円ほどかかる計算になります。
ただし、奨学金制度や授業料減免制度を取り入れている学校も多いため、実際の経済的負担はより少なくなることもあります。
理学療法士と作業療法士の給料・待遇の違い
理学療法士と作業療法士の間で、給料面の違いはほとんどありません。
両方の職業とも、年収400万円前後が相場とされており、平均的なサラリーマンの収入とほぼ同じ程度の水準です。
専門職であることが加味されて、初任給については同世代よりも高いものの、その後キャリアを重ねていっても、それほど収入が伸びていかないという職場が多いようです。
ただし、理学療法士・作業療法士ともに、年齢構成がかなり若い世代に偏っているために、職業としての平均年収が低くなっているという事情もあります。
同じ職場に留まり、ある程度の勤続年数を重ねていけば、徐々にでも確実に昇給していきますので、比較的早期のうちに収入は平均年収を上回るでしょう。
理学療法士と作業療法士はどっちがおすすめ?
理学療法士と作業療法士は、どちらもけがや病気で日常生活に困難を抱えた人をサポートするリハビリ専門職であり、資格取得までの道のりや学校、待遇面など、多くの面で共通しています。
したがって、どちらを目指すべきか迷っているなら、純粋に仕事内容そのものを比較し、より自分が惹かれるほう、あるいは向いていると感じるほうに進むのがよいでしょう。
わかりやすく比較するとすれば、理学療法士は運動を行ったり、身体が不自由な人をサポートしたりと、筋力や体力が必要になる仕事ですので、身体を動かすのが好きな体育会系の人が向いています。
一方、作業療法士は、料理、手芸、陶芸、木工、園芸など、手先を使う細かい作業が主ですので、運動部よりも文化部のほうが好きな人のほうが向いているでしょう。
もちろんそれらは各職業の単なる一面にすぎませんから、職場を見学したり、実際に働いている人に話を聞いたりして、自分なりの職業像を掴んで進路の参考にするとよいでしょう。