内部監査の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「内部監査」とは
企業の業務効率化や不正・不祥事の防止などのために、業務や会計の監査をする仕事。
内部監査とは、企業において、業務効率化や不正・不祥事の防止、ガバナンス強化などのために、業務や会計の監査(監督し検査すること)を担当する仕事です。
企業全体を見渡す必要があると同時に、会社法やSOX法といった法律、また経理や財務などの専門知識も求められます。
内部監査担当に求められるのは「第三者」としての立場であり、その企業に属しながらも、客観的な視点で経営状況や事業の進め方などを評価していきます。
そのため、ある程度ビジネスの現場で社会人としての経験を積んでいる人や、ビジネスマンとしての十分な知識や経験を持っている人が、内部監査部門へ配置されることが多くなっています。
給与水準はやや高めとなっており、「公認会計士」や「公認内部監査人(CIA)」などの専門資格を取得し、スキルを磨いていくと、年収1000万円以上を得ることも可能になるでしょう。
最近の内部監査には、社内の不正や問題点を見つけ出すというだけでなく、業務効率化のための提案や、経営面のサポートといった役割が期待されることも増えてきています。
「内部監査」の仕事紹介
内部監査の仕事内容
企業の業務や会計の監査を客観的立場で行う
組織の内側から企業運営を健全化する
内部監査とは、業務効率化や不正・不祥事の防止、ガバナンス強化など、さまざまな目的のために、企業の業務や会計の監査(監督し検査すること)を行う仕事です。
会社のルールに基づいて経営が正しく行われているかどうかや、組織内で従業員による不正が行われていないか、業務の進め方が非効率でないかといったことなどを調査・分析します。
規模の大きな企業ほど、経営者がすべての従業員の行動や業務内容を把握することはきわめて困難です。
そのため経営者に代わって組織を専門的にモニタリングし、さまざまなリスクを排除しつつ、業務を効率化していくことが内部監査の役割です。
もしなんらかの問題が見つかれば、その改善点を考えたり、経営者に対して提案を行ったりして、企業運営の健全化に努めます。
、社内でも独立した立ち位置で業務を行う
主に上場企業では、社員が守るべきルールや仕組みを構築し、不正や不祥事を起こさないための「内部統制システム」の構築が義務化されています。
業種により監査項目や実施方法、目的などは異なりますが、健全な企業運営のために業務を改善し、不正を防ぐという内部監査の仕事の根本は変わりません。
内部監査が役割を果たすには客観性を持つことが重要で、社内でも独立した立ち位置で業務を行い、利害関係を生むことなく適切な指示や提案をすることが職務といえます。
これには社内のあらゆる部署に精通した知識が必要で、改善提案するためにはある程度の業務経験も必要です。
内部監査になるには
一定のキャリアを積んだ後に配属される
配属されるのはある程度キャリアを積んでから
内部監査になるためには、内部監査部門のある企業に勤めなければなりませんが、その多くは上場企業などの大企業です。
仮に就職できたとしても、新卒でいきなり内部監査部門に配属されることはほとんどありません。
内部監査の仕事では、会社法や日本版SOX法といわれる金融商品取引法などの関連する法律や、経理・財務などの専門知識に加え、会社全体を広い視野で見渡すための経験や知識が必要になります。
このため、ある程度長い勤続年数と複数職の実務経験歴があり、会社組織に精通している人が、内部監査部門へ配置されることが多いようです。
ベテラン社員になるまで待てないなら、公認内部監査人などの資格を取得してアピールするか、あるいは公認会計士となって外部から監査業務に携わる道も検討すべきでしょう。
内部監査の経験を生かして働く
内部監査としての実績を積んだあとは、内部監査人としての道を進む人もいれば、幅広い知識や経験を生かして経理や財務、営業などの別部署にチャレンジするケースもあります。
内部監査を担当していると「公認内部監査人」や「公認会計士」などの資格を取得していることもあり、そうした資格を生かして監査法人や会計事務所などへ転職する人もいます。
また、内部監査の人材はどの業界も不足しているといわれており、つちかった業務経験を武器に他社に転職してキャリアアップを目指すこともできます。
内部監査の学校・学費
学歴と同時に知識と経験も必要
内部監査に配属されるためには学歴が最優先事項ではありません。
ただし、内部監査が義務付けられているのは上場企業や大企業です。
新卒で入社を目指す場合は大卒が応募条件になるケースがほとんどなので、内部監査として働きたい場合は大学を卒業する必要があります。
また、学歴に加え、内部監査にはビジネスマンとしての十分な実務経験と、法律や会計などに関する深い専門知識が求められます。
将来的に内部監査職を目指すなら、学生や若手社員のうちから、会計や経理、経営について勉強しておくと有利となるでしょう。
なお新卒で内部監査に配属される可能性はゼロに近いため、まずは入社し業務実績を積むことを考えた方がよいでしょう。
内部監査の資格・試験の難易度
関連する国際資格や国内資格がある
内部監査を実施するために必須となる資格はありません。
必要なのは業務経験や客観的な視点であり、また社内業務に通じていなければ内部監査は務まらないので、資格よりも経験値を求められるといえます。
ただし関連する資格はいくつか存在し、取得できればキャリア形成や転職に有利に働く可能性があります。
国際的な資格としては公認内部監査人(CIA)という世界水準の認定資格が有名です。
世界約190の国と地域で試験が実施されており、資格を取得していると、内部監査人としての能力を証明する資格であると同時に、世界水準で監査を行っている証明にもなります。
海外に複数の拠点をもつグローバル企業に勤めるなら、非常に重宝される資格といえるでしょう。
試験に合格するだけでなく、内部監査、または監査や評価業務に関する実務経験を2年経験し、はじめて公認内部監査人(CIA)の資格が得られます。
国内資格としては、内部監査士という資格があります。
こちらは講座を受講した後に論文を提出する形式で、公認内部監査人と比べるとかなり難易度は低いといえます。
公認リスク管理監査人はリスク・マネジメントやガバナンス・プロセス、品質評価を提供する責任と能力を持っていることを証明する資格です。
資格を得るには初回の登録から4年以内に合格する必要があるほか、内部監査実務経験またはコントロールに関する2年以上の実務経験(CSA、品質評価、リスク・マネジメント)も必要です。
試験は英語で行われるため、合格までのハードルは高い資格といえるでしょう。
内部監査の給料・年収
就職先は大手企業が中心で安定した収入が得られる
専門性の高さに応じた収入が期待できる
内部監査の給料は、勤め先によって異なりますが、平均年収は500万円~600万円程度といわれています。
高度な専門スキルを要する難易度の高い仕事であり、また営業職などと比べて内部監査に従事する人の数はさほど多くないことから、他職種に比べるとやや高めの収入が期待できるといえそうです。
内部監査部門を置く企業は大手が多いため、全体的に給与相場が高めであったり、ボーナスの支給があったりすることも、平均年収を上げている要因のひとつといえるでしょう。
また内部監査の仕事は経営とも密接に結びついているため、企業によっては、内部監査部門からそのまま経営幹部へと昇格していく人もおり、さらなるキャリアアップも期待できます。
資格を取得することで給料アップ
内部監査の仕事をするうえで、特定の資格を持っていると手当やインセンティブがついたり、転職の際により良い条件で採用されたりすることもあります。
公認会計士や公認内部監査人(CIA)などの難関専門資格を取得し、経験を積んでスキルを磨いていくと、年収1000万円以上を得ることも可能になるでしょう。
いずれも取得は簡単ではありませんが、内部監査としてスキルアップを目指すのならば、ぜひ取っておきたい資格です。
また、会社によっては語学力も求められるため、TOEICの高いスコアを持っていることでプラスに評価されることがあります。
内部監査の現状と将来性・今後の見通し
実務経験者の需要はきわめて大きい
不正や不祥事といった企業にとってのリスクを低減させ、健全な企業運営を行っていくために、内部監査は欠かせない存在です。
一定規模の企業には内部監査が義務付けられている以上、職種としてのニーズは途切れることはないでしょう。
最近の内部監査には、社内の不正や問題点を見つけ出すというだけでなく、業務効率化のための提案や、経営面のサポートといった役割も同時に期待されているようです。
また企業内でのインターネット利用が一般的になった昨今、IT監査やシステム監査なども求められており、そのような専門知識を持った人材も求められています。
内部監査の知識を持つ人は決して多くなく、一定の実務経験や資格、スキルがある人材には非常に大きな需要がありますので、将来の見通しは明るいといえるでしょう。
内部監査の就職先・活躍の場
一定規模以上の企業には必須で、さまざまな業界で活躍できる
現在、一定規模の企業には内部監査が義務付けられています。
主な就職先としては、接客業や製造業、金融業などがあげられますが、監査項目や実施方法、目的などは業界によってちがいます。
しかし健全な企業運営のために業務を改善し、不正を防ぐという内部監査の仕事の根本は変わりません。
予備調査、監査計画、本調査、監査報告、改善提案、フォローアップという一連の流れに沿って業務を行います。
あくまででも内部監査は任意で行うため、定義や手法など、内容を決める難しさも変わらないということです。
業務特性上ある程度の業務経験が求められるため、新卒がいきなり内部監査部門に配属されることはありません。
経験を積んだ人を内部監査人に任命するため、多くの企業では内部監査の人材不足が課題となっています。
内部監査の1日
コミュニケーションに多くの時間を充てる
内部監査は販売業や製造業、サービス業など業種によって細かな内容は違いますが、業務改善や不正を防止するといった役割は変わりません。
業種が何であれ実務を担当するわけではないため監査は昼間に行うのが基本です。
そのため始業9:00、終業18:00というように、ごく一般的な勤務時間になります。
<大手企業で働く内部監査の1日>
内部監査のやりがい、楽しさ
会社全体を見渡すことができる仕事
内部監査は他の部署と関わる機会が非常に多く、会社組織全体を客観的に見渡すことができる立場にあります。
内部監査は社内の部門でありながら、第三者の立場で各部門の監査を行います。
一般的に内部監査部門自体が経営陣直下に配置されていることもあって、従業員というよりも経営者に近い目線から企業経営を学べる点は、内部監査という仕事の大きな魅力です。
また、内部監査は会社運営を正常に行うために不可欠な仕事であると同時に、結果的に社会的な信用を得ることにもつながります。
さまざまなリスクから会社組織を守るという仕事は、長年勤めるなどして会社に対する愛着が強い人ほど、やりがいを感じやすいといえるでしょう。
内部監査のつらいこと、大変なこと
業務の性質上、他の社員から避けられることも
不正や不祥事を未然に防ぐという大義があるとはいえ、本来仲間であるはずの社員を調査せねばならない内部監査は、一般の社員とは一線を画する立場となります。
そのためどうしても他の社員から避けられたり、嫌われたりする存在になってしまうことも少なくありません。
関わる部門や人が多い分、人間関係に頭を悩ませる苦労も多くなり、仕事と割り切っていても人によってはストレスを感じるでしょう。
また業務上の問題点や改善点を指摘してコンサルティングを行う際も、こちらの言い方や相手の捉え方によっては、険悪な雰囲気になってしまうこともあり得ます。
人間関係をこじらせないためにも、内部監査職は常日頃から言動には人一倍気を配る必要があるでしょう。
内部監査に向いている人・適性
客観的にものごとを捉えられる人
内部監査は、社内の人間でありながら、第三者の視点に立って業務を監督・調査し、助言しなければならないという難しい立場にあります。
同じ会社の部門、スタッフ同士だったとしても、正しい判断を行うには客観性が求められます。
主観的な視点や先入観をできる限り排除して、広い視野に立って客観的に正しい判断を下せる人は、内部監査の適性があります。
また、業務の改善点を見出し、的確にアドバイスするためには、高い情報収集能力と情報分析力が必要になります。
企業では、多少ルールから外れていても、業務を効率的に進めるため部門の人は目をつぶっていることも多くあります。
こうしたケースを見抜ける観察力と洞察力に秀でた人は、内部監査に向いているといえます。
関連記事内部監査に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
内部監査志望動機・目指すきっかけ
不正問題などに関心を抱いたことがきっかけ
近年では毎日のように企業の不正やコンプライアンス違反がメディアで報道されており、そういった問題に関心を持ったことが内部監査を志望する人の動機になっているようです。
内部監査を目指す人は、不正や不祥事を嫌悪する傾向が強く、高い倫理観や強い正義感を持っている人が多い印象です。
また、公認会計士の資格保有者や、公認会計士を目指して試験を受験した経歴のある人が、専門知識を活かすために内部監査を志望するケースもあります。
ただし内部監査は社内部門の一つですので、希望すれば必ずなれるわけではありませんし、業務特性上、新卒で配属されるケースはまれです。
業務経験を積んで異動を希望する、適性を認められ辞令をもらうなどして内部監査に配属されるのが一般的であるため、転職を契機に内部監査を目指すという人も多いです。
関連記事内部監査の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
内部監査の雇用形態・働き方
キャリアを活かして役員になる道も
内部監査は、基本的に正社員として働きます。
経営に大きく関わる仕事でもあるため、アルバイトやパートなどの非正規雇用がこの仕事を担うことはありません。
監査業務を実際に行っていく上で、財務や会計、コーポレートガバナンス、組織管理など、会社を経営していくために必要な知識やスキル、経験が身に付きます。
それらを活かして、一般社員から管理職を経て、経営陣や役員にキャリアアップしていくという働き方もできるでしょう。
また、内部監査を担当する役職として、株主総会で選任される「監査役」という会社法上の役員もありますので、会社役員に昇進した後も、引き続き内部監査にあたる場合もあります。
内部監査の勤務時間・休日・生活
閑散期と繁忙期が明確に分かれる
内部監査は、勤める企業の決算期に応じて、業務に追われて深夜まで働かねばならない時期と、相対的に余裕のある時期が明確に分かれる職種です。
最も忙しいのは年度監査に追われる決算期の翌月で、日本では3月決算の企業が一般的ですから、4月が繁忙期となります。
次いで、上場企業では四半期決算制度が導入されている関係上、3月決算の企業であれば四半期ごとの翌月、つまり7月、10月、1月が忙しい月です。
それらの月には休日出勤して業務をこなし、その代わりに閑散期にまとめて振替休日を取得するというケースもよくあるようです。
内部監査の求人・就職状況・需要
内部監査部門は慢性的な人手不足
相次ぐ企業の不正や不祥事発覚を受けて、どの企業でもリスクマネジメントの重要性が問われています。
また会社法の改正によって、内部統制の整備が大企業で義務化されたこともあり、義務化の対象でない中小企業でも、内部監査に対する関心は高まっています。
しかし、社会人としての勤続年数と専門知識が必要になる内部監査は、人材育成に時間がかかるため、需要に対して供給が追いついていないのが現状です。
どの企業も人手不足に悩んでおり、これから内部監査の仕事を目指したいという人には活躍の場が広がっているといえるでしょう。
内部監査の転職状況・未経験採用
スキルさえあれば転職先の選択肢は多数
内部監査としての実務経験があり、専門知識やスキルを有している人は、転職市場では非常に人気で、就職先として多くの企業が候補に上がるでしょう。
別の企業で内部監査業務を手掛けることもできますし、監査法人や会計事務所に勤めることもできます。
また業務改善や効率化が得意なら、コンサルティング会社に就職するという道もあります。
その一方、多くの企業は即戦力を求めており、内部監査の仕事を一から教育するという企業は少ないため、未経験から採用されることは非常に難しいのが現状です。
経理や会計での実務経験があったり、また関連する資格を有していたりすれば、働き口が見つかる可能性があるでしょう。