建築士試験の難易度・合格率は?
建築士には国家資格が定められており、難易度が高い順に「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」となっています。
それぞれの資格の特徴と、試験の学科・製図試験をあわせた総合の合格率は以下の通りです。
- 一級建築士:大型施設まで制限なく対応可。合格率は約12%
- 二級建築士:主に戸建て住宅の設計・工事監督。合格率は約23%
- 木造建築士:木造建築のみ。住宅や歴史的建造物等。合格率は約35%
この記事では、資格ごとにおける受験資格や難易度、合格率について紹介します。
3つの建築士試験に共通すること
建築士試験は学科試験・製図試験の2段階
一級・二級・木造建築士すべてにおいて、最初に学科試験が実施され、建築計画・建築法規・建築構造・建築施工についての知識を問われます。
学科試験に合格できた人のみが、第二段階である設計製図の試験を受けることができ、設計製図の試験を突破すれば個々の建築士資格を取得できます。
なお、学科試験の合格者については、翌年と翌々年に限っては、再び学科試験を受けなくてもいきなり設計製図試験を受けることができます。
双方の試験を一発合格するに越したことはありませんが、学科試験と設計製図試験を同一年度に突破しなくてもよいという点には留意しておく必要があるでしょう。
法改正で令和2年以降受験資格が変更に
平成30年に建築士法第4条、第14条及び第15条が改正されました。
これにより、それまで「受験資格」を得るために必要だった実務経験は、「免許の登録要件」に改められました。
つまり、試験を受ける時点では実務経験がない人でも、免許登録までに所定の実務経験を積めばOKとなっています。
法律改正による受験資格の変更については、以下の図をご覧ください。
詳細は公益社団法人建築技術教育普及センターのホームページに掲載されます。
この法律改正は、以下の2つが背景にあると考えられています。
- 少子化による建築士受験者数の減少
- 建築士高齢化による建築士人数の減少
簡単にいうと、建築士の人数を増加させることが法改正の目的です。
もし人数を増やすために建築士の合格基準を下げてしまえば建築士の質が落ちてしまうため、受験できる人の母数を増やすという方針がとられたのです。
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木造建築士の難易度は?
木造建築士は、木造建築の専門家で一級建築士・二級建築士ではまかないきれない、木造住宅の設計や歴史的建造物の維持管理を行います。
- 二級建築士の資格を持っていれば、木造建築士が扱える規模の建築に携われる
- 日本の歴史的建造物や神社仏閣の維持管理の仕事には重宝される資格
- 木造建築士は3つの資格のなかでは最も難易度が易しい試験
- 独学でも合格可能だが、参考書類が少ないため二級建築士試験のテキストも併用する
業務範囲が木造建築に限られるため、木造建築士の難易度は、3つの資格のなかでは最も低く独学でも合格が可能です。
木造建築士とは、木造建築の専門的な知識を持ち、設計・施工監督等を行います。
二級建築士の資格を持っていれば、木造建築士が扱える規模の建築に携わることができるため、二級建築士の資格取得から目指す人も多いです。
ただし、木造建築士は木造の建造物の専門知識を持っているので、日本の歴史的建造物や神社仏閣の維持管理の仕事をする際には重宝される資格です。
木造建築士の受験資格と勉強時間
木造建築士の受験資格は二級建築士と同じです。
学歴などがあれば実務経験が不要、学歴がなくても実務経験を積めば受験が可能です。
平成30年の法改正により、令和2年から受験資格が変更となりましたが、現行の受験資格は以下の通りです。
必要な学習期間については、半年〜1年ほどといわれています。
受験者が少なく参考書類もあまり多くないため、二級建築士試験のテキストも併用するとよいでしょう。
木造建築士の合格率
木造建築士の難易度を知るために、合格率を把握しておきましょう。
- 学科試験:50%〜60%
- 設計製図試験:40%〜70%
- 最終合格率:30%〜40%
木造建築士試験は、双方を突破した最終合格率が30%〜40%前後となっています。
二級建築士試験の最終合格率は20%~25%ですから、木造建築士試験のほうが難易度が低いです。
設計製図試験の難易度は年度によって多少のばらつきがありますが、木造建築物に特有の製図問題が多数出題されるため、入念に対策する必要があります。
二級建築士の難易度は?
二級建築士は主に戸建て住宅の設計・工事管理を行える資格で、建築士を目指す多くの人が始めに合格を目指します。
- 二級建築士の資格を持っていれば、木造建築士が扱える規模の建築に携われる
- 主に戸建て住宅の設計・施工監督を行う
- 建築士を目指す人の多くが最初に取得を目指す資格
- 独学でも合格可能だが、製図試験は添削が難しいので1日だけネット添削などを利用すべき
二級建築士試験の難易度は、建築の専門学校などでしっかりと勉強してきた人でも苦しみます。
一回の受験で合格できる人は少数派です。
設計製図試験は5時間休憩なしの過酷な試験なので、体力や集中力も必要です。
独学で合格を目指すなら、製図の執権勉強は1日だけの添削講座がネットや資格スクールで開催されているので利用するとよいでしょう。
二級建築士の受験資格と勉強時間
二級建築士試験の受験資格は木造建築士と同じです。
建築士試験は受験資格を得るまでにもハードルが高いため、難易度が高いと言えます。
現行の受験資格は以下の通りです。
- 大学、短大、又は高等専門学校指定科目卒業者:実務経験不要
- 高等学校又は中等教育学校指定科目卒業者:実務経験2年以上
- 都道府県知事が特に認める者:実務経験不要
- 建築設備士:実務経験不要
- 学歴なし:実務経験7年以上
二級建築士試験合格に必要な学習期間は約1年、勉強時間にして1000時間ほどといわれています。
二級建築士の合格率
二級建築士の難易度を把握するために、合格率をみていきましょう。
学科試験・製図試験とも合格した人は20%~25%です。
- 学科試験:30%〜40%
- 設計製図試験:50%〜55%
- 最終合格率:20%〜25%
二級建築士の受験者数や合格率推移などの詳細なグラフは、記事最後に掲載しています。
先に詳細を見たい方はこちらをクリック二級建築士の合格率詳細
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一級建築士の難易度は?
次に、二級建築士よりもさらに難しくなるとされる一級建築士の難易度を解説します。
基本的には、二級建築士として十分な実務経験を積んだ社会人が、キャリアアップのために取得を目指す資格です。
- 一級建築士は建築規模の制限がなく、大型商業施設や病院などの設計も可能
- 国家資格の中でも難易度が高く、勉強時間は1500時間は必要
- 学科試験と製図試験両方一発合格は難しい
一級建築士の試験も二級建築士のときと同じように「学科」と「設計製図」の2種類の試験があり、学科試験の合格者のみが設計製図試験を受けることになります。
一級建築士の合格率
一級建築士は学科試験の難易度が高く、合格率は15%〜20%程度です。
- 学科試験:15%〜20%
- 設計製図試験:約40%
- 最終合格率:10%〜15%
二級・木造建築士資格と比較すると、学科試験の合格率の低さが目立ちますので、とくにしっかりとした勉強が必要といえるでしょう。
非常に高度な専門知識を問われるため、木造・二級建築士のケースとは若干異なり、勉強時間の大半は学科試験対策に費やされるようです。
合格までには、多くの人が複数回の受験を必要とします。
一級建築士の受験資格と勉強時間
一級建築士の受験資格は、現行では学歴があっても実務経験が必要でした。
しかし、上述の通り平成30年の法律改正により、令和2年より実務経験不要で受験が可能となります。
その結果、大学生・大学院を卒業したばかりの新社会人の受験が増加するとみられています。
時間のある学生のうちから勉強し始める人が増えるので、合格基準の点数が上がることも考えられます。
なお、現行の受験資格は以下の通りです。
- 大学、短大、又は高等専門学校指定科目卒業者:実務経験2~4年
- 都道府県知事が特に認める者:所定年数以上の実務経験
- 建築設備士:実務経験4年
- 二級建築士:実務経験4年
さまざまな国家資格のなかでも非常に難易度の高い部類に入り、必要な学習期間はおよそ1年半、勉強時間は1500時間がひとつの目安とされています。
一級建築士の合格率
一級建築士の合格率は以下の通りです。
令和5年
学科:16.2%
製図:33.2%
総合格率:12.7%
令和4年
学科:21.0%
製図:33.0%
総合格率:9.9%
令和3年
学科:15.2%
製図:35.9%
総合格率:9.9%
令和2年
学科:20.7%
製図:34.4%
総合格率:10.6%
令和元年
学科:22.8%
製図:35.2%
総合格率:12.0%
平成30年
学科:18.3%
製図:41.4%
総合格率:12.5%
平成29年
学科:18.4%
製図:37.7%
総合格率:10.8%
平成28年
学科:16.1%
製図:42.4%
総合格率:12.0%
平成27年
学科:18.6%
製図:40.5%
総合格率:12.4%
平成26年
学科:18.3%
製図:40.4%
総合格率:12.6%
どの年も総合格率が1割ほどしかないことを考えても、一級建築士の試験の難易度の高さがうかがえます。
とくに、まずは学科をクリアすることのハードルが高いことが特徴です。何年にもわたってチャレンジを続け、ようやく合格するという人も多数いるといわれています。
一級建築士の難易度は姉歯事件以降上昇傾向にある?
一級建築士試験の難易度が、2005年の姉歯事件以降に上昇しているという意見もありますが、必ずしもそうとは言えません。
その証拠に、受験者に対する合格者の割合は10%代でほとんど変わっていません。
確かに、合格基準点数だけを見れば難易度が上がっているように見えますが、2009年以降で選択式が5択から4択に変更になっています。
選択肢が減れば、当然平均点が上がります。
✅ 姉歯事件前後の合格基準点の比較
- 姉歯事件以前 5択 合格点=60~67点/100点満点(正答率60~67%)
- 姉歯事件以降 4択 合格点=90点/125点満点(正答率72%)
合格点だけで見れば正答率は上がっていますが、合格率は常に10%程度。
受験者のレベルが急変することは考えにくいので、難易度に変化がないことはお分かりいただけると思います。
一級建築士試験は、姉歯事件以前も現在も、10人に1人しか合格できない非常に難易度が高いものだと言えます。
参考:二級建築士試験の合格率詳細
二級建築士試験の受験者数や合格率などの詳細をグラフで紹介します。
二級建築士試験の受験者数
令和5年度の二級建築士試験の受験者数は、学科17,805人、製図9,988人、総合22,328人となっています。
二級建築士試験の合格率
令和5年度の二級建築士試験の合格率は、学科35.0%、製図49.9%、総合22.3%となっています。
令和5年度 二級建築士(学科の試験) 受験資格別合格者
令和5年度 二級建築士(学科の試験) 職域別合格者
令和5年度 二級建築士(学科の試験) 職務内容別合格者
令和5年度 二級建築士(学科の試験) 男女別合格者
令和5年度 二級建築士(学科の試験) 年齢別合格者
令和5年度 二級建築士(設計製図) 受験資格別合格者
令和5年度 二級建築士(設計製図) 職域別合格者
令和5年度 二級建築士(設計製図) 職務内容別合格者
令和5年度 二級建築士(設計製図) 男女別合格者
令和5年度 二級建築士(設計製図) 年齢別合格者
令和6年度 二級建築士試験の概要
試験日 | 学科の試験:令和6年7月7日(日) 設計製図の試験:令和6年9月15日(日) |
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受付期間 | インターネット:令和6年4月1日(月)午前10時~令和6年4月15日(月)午後4時 |
試験地 | 各都道府県 |
受験資格 | ・大学(短期大学を含む)又は高等専門学校において、指定科目を修めて卒業した者 ・高等学校又は中等教育学校において、指定科目を修めて卒業した者(建築実務の経験年数3年以上) ・その他都道府県知事が特に認める者(建築実務の経験所定の年数以上) ・建築に関する学歴なし(建築実務の経験年数7年以上) |
試験内容 | 学科の試験: 五肢択一式 学科Ⅰ(建築計画)及び学科Ⅱ(建築法規)(3時間) 学科Ⅲ(建築構造)及び学科Ⅳ(建築施工)(3時間) 設計製図の試験: あらかじめ公表する課題の建築物についての設計図書の作成 設計製図(5時間) |
合格率 | 22.3%(令和5年度) |
合格発表 | 学科の試験:令和6年8月26日(月)(予定) 設計製図の試験:令和6年12月5日(木)(予定) |
受験料 | 18,500円 |
詳細情報 | 公益財団法人建築技術普及センター |