警察のキャリア組とノンキャリア組の違いは? それぞれの仕事内容やなり方、年収についても解説

日本全国で活躍する警察官は、「キャリア」と「ノンキャリア」に分けられます。

キャリアは警察庁に勤務する国家公務員、ノンキャリアは都道府県警察に勤務する地方公務員であり、両者にはさまざまな違いがあります。

この記事では、警察官のキャリアとノンキャリアについて、それぞれの仕事内容や目指す方法・難易度、年収などの違いを紹介します。

キャリアとノンキャリアの仕事内容の違い

警察官は、「警察庁で働く職員」と「各都道府県警察で働く職員」の2種類に大別でき、前者は通称「キャリア組」、後者は「ノンキャリア組」と呼ばれます。

そして、両者は以下のように、仕事内容や役割が明確に区別されています。

  • キャリア組:警察行政を計画・管理する。仕事内容は法整備や都道府県警察の監督業務といったデスクワークが中心
  • ノンキャリア組:キャリア組が構築した法制度や治安維持の仕組みを体現する「実務部隊」として働く
  • キャリア組の警察官は、全国の警察本部や警察署において管理職として勤務したり、外務省など他の省庁に出向することもあります。

    一方、ノンキャリア組は、地域の交番での迷子や道案内の対応、パトロールによる街の監視、非行少年の補導、犯罪捜査、交通違反の取り締まりなど、生活に密着した多様な業務に携わります。

    わたしたち一般の人々にとって、より馴染みがある警察官はノンキャリアといえるでしょう。

    キャリアとノンキャリアになる方法の違い

    警察官の身分としては、キャリアの警察官は国家公務員、ノンキャリアの警察官は地方公務員に該当します。

    キャリアになるためには、外務省や厚生労働省、文部科学省などへの入庁を希望する人が受けるのと同じ、国家公務員総合職採用試験を受け、採用されることが必要です。

    さらに、その試験の合格者だけが行える「官庁訪問」において、警察庁での複数回の面接試験をすべてパスすると、警察庁への採用となり、そうした警察官は「警察官僚」と呼ばれることもあります。

    これに対し、ノンキャリアになるためには、各地方自治体が個別に行っている警察官採用試験を受け、採用されることが必要です。

    自治体の警察官採用試験には、Ⅰ類やⅡ類といった複数の区分があります。

    どの試験を受けて警察官になったかによって、初任給や昇任試験を受けるまでに必要な勤続年数などが異なるものの、実際の業務内容に違いはありません。

    キャリアとノンキャリアになる難易度の違い

    キャリアになるための国家公務員試験は、勉学に励んできた優秀な学生たちにとってのひとつの目標到達点であり、難易度が非常に高いことで知られています。

    とくに、警察庁は数ある省庁のなかでもかなり人気があり、競争は熾烈をきわめます。

    一方、ノンキャリアになるための警察官採用試験については、地方自治体や区分によって多少の差があるものの、採用倍率はおおむね6倍~10倍前後です。

    一般的な地方公務員よりも競争率は若干低く、ノンキャリアになるためのハードルはそこまで高くはないといえるでしょう。

    また、キャリア組の毎年の採用人数が10名前後であるのに対し、ノンキャリア組は全国合計で15,000人近くにのぼります。

    単純に「採用人数」という点で比較しても、難易度の違いがはっきり表れているといえるでしょう。

    キャリアとノンキャリアの学校・学費の違い

    キャリアになるための国家公務員総合職試験を受けるには、大卒以上の学歴が必要です。

    さらに、東京大学など、多数の官僚を輩出している超名門大学の学生がこぞって警察庁への入庁を目指すため、競争はきわめてハイレベルであり、ライバルたちと同程度の学歴・学力がないと戦えないでしょう。

    キャリアを目指すためには、中学校や高校、あるいはもっと下の世代から難関学校を受験し、学力を高めていく必要もあるかもしれません。

    進学のために通う塾や予備校の費用も含めると、どうしても学費は高くなりがちです。

    これに対し、ノンキャリアになるための警察官採用試験については、大卒程度、高卒程度といったいくつかの区分があるものの、どの試験も学歴は条件ではなく、特定の学校に通う必要はありません。

    実際、警察官採用試験の筆記試験の難易度はそこまで高くありません。

    警察官採用試験の講座を開講している民間スクールなどもありますが、書籍を使った独学や通信講座などでも、合格を目指すことは十分に可能です。

    高校まで公立学校に通い、塾にも通わなければ、そこまで学費をかけずにノンキャリアの警察官を目指すことができるでしょう。

    キャリアとノンキャリアの給料・待遇の違い

    警察組織は明確な階級制度で成り立っており、キャリア・ノンキャリアともに、警察官の給料は「階級」に大きく影響を受けます。

    ノンキャリアとして警察官になると、階級は一番下の「巡査」からスタートするのに対し、キャリアは警察官となった時点でいきなり下から4番目の「警部補」からスタートします。

    このため、キャリアのほうが早期のうちから高い収入が得られます。

    実際には、キャリアの平均年収は900万円前後、ノンキャリアの平均年収は780万円前後とされています。

    このように、ノンキャリアの収入は、キャリアと比べると低めの水準です。

    しかしながら、警察官の給与体系は危険かつハードな業務に見合った高い水準に設定されており、世間一般の会社員よりかなり高給です。

    なお、ノンキャリアについては、各地方自治体の財政事情によって差があり、警視庁(東京都)や神奈川県などの高いところで年収850万円前後、低いところでは680万円前後といわれています。

    キャリアとノンキャリアはどっちがおすすめ?

    警察官のキャリアとノンキャリアを比較した際に、単純な言葉の響きとしては「キャリア」のほうが格好よく感じられるかもしれません。

    しかしながら、キャリアとノンキャリアの仕事内容はそもそもまったく違っているため、一概に優劣を比べられるものではありません。

    ただ、両者は昇進するスピードには明確な差があるため、出世したいという意欲が強い人、リーダーとして組織を統率していきたい人は、キャリアを目指すほうがおすすめです。

    警察庁長官や警視総監といった警察組織のトップについては、キャリア組のみから選ばれるという古くからの慣習もあります。

    これとは反対に、地域で暮らす住民と直に触れ合い、社会の安全を守るために役立ちたい人や、現場の第一線で犯罪捜査を手掛けたい人は、ノンキャリアが向いているでしょう。

    刑事や鑑識官、白バイ隊員など、テレビドラマやメディアに取り上げられる機会が多い職種も、ほとんどノンキャリアで採用された人たちが担っています。

    これから警察官を目指す人は、キャリア・ノンキャリアといった言葉の印象に捉われずに、どんな仕事をして、どのように社会に関わっていきたいのか、自身の望む働き方を具体的にイメージすることが大切です。

    「警察官のキャリア組・ノンキャリア組の違い」まとめ

    警察官は、国家公務員である「キャリア組」と、地方公務員である「ノンキャリア組」がいます。

    ノンキャリアが交番勤務や地域パトロールといった暮らしに密着した業務に携わるのに対し、キャリアは管理者として、法制度や治安維持の仕組みなどを整えるデスクワークが中心です。

    人数としてはノンキャリアの警察官のほうが圧倒的に多く、なる難易度もキャリアに比べれば圧倒的にやさしいといえます。

    両者は目指すルートや役割も明確に異なるため、警察官になりたい人は、将来どんな仕事がしたいのかをよく考えておきましょう。