捜査一課の刑事になるには? 担当する仕事内容や年収などを解説
しかし、凶悪犯罪を捜査する過酷な現場で働くには、さまざまな苦労が伴います。
そこでこの記事では、捜査一課の刑事になるために必要な条件や、実際の仕事内容、年収などについてくわしく解説します。
警視庁捜査一課の仕事内容
日本最大の警察で凶悪犯罪を捜査
「警視庁」は、東京都を管轄し、100以上の警察署を持ち、4万6千人以上の警察職員が働いている警察機関です。
この「警視庁」の捜査第一課(捜査一課)は、「刑事部」に属しています。
おもに都内の殺人や強盗、暴行、傷害に加えて、誘拐、立てこもり、性犯罪、放火などの凶悪犯罪を担当しています。
ドラマや映画などのメディアでも取り上げられる、花形部署といえます。
また、「警視庁捜査一課」は、第一強行犯捜査から第七強行犯捜査など、10のチームに分かれ、それぞれ犯罪捜査に当たっています。
立てこもり事件やハイジャック事件への対処を目的とした特殊犯捜査チームや、未解決事件を担当する特命捜査対策室もあります。
しかし、詐欺や窃盗、暴力団関係の犯罪は刑事部の他の課が担当します
警視庁以外の都道府県警察にも捜査一課がある
警視庁以外の都道府県警察の刑事部にも、捜査一課はあります。
警視庁と同じように凶悪犯罪を担当し、事件の内容ごとに「強行犯係」「特殊犯係」「検視調査係」などに分かれ、おのおのの役割に応じた職務をまっとうします。
刑事部には、捜査一課以外にも以下の様な部署が置かれ、分業しながら犯罪捜査を遂行していきます。
- 捜査二課
- 鑑識課
- 機動捜査隊、
- 科学捜査研究所
捜査一課の仕事と刑事ドラマの違い
捜査一課は警察組織の中でも最も重要な部署の一つであり、凶悪犯罪の捜査に当たっています。
テレビドラマや映画で描かれる刑事たちは、捜査一課に所属することが多いですが、実際の仕事内容とは異なるところがあります。
例えば、刑事ドラマでは犯罪が解決するまでの時間がわずか数日や数週間で描かれることがあります。
しかし、実際の捜査では事件解決までに数か月、場合によっては数年かかることがあります。
また、刑事ドラマでは容疑者の取調べや尋問の場面が多く出てきます。
一方で、実際の捜査では証拠の収集や分析、犯人の逃走経路の特定などの地道な捜査も行われます。
また、書類整理などといった裏方仕事も非常に多いことが特長です。
なお、捜査一課では、複数のチームに分かれて捜査を行っており、各チームは特定の犯罪に特化しています。
一方で、刑事ドラマでは登場人物がさまざまな犯罪を次々に担当することが多いため、これも現実とは異なります。
刑事ドラマはエンターテインメントとして描かれているため、実際の捜査とは異なる場合も多々あります。
捜査二課や捜査三課は何をしている?
警視庁捜査二課は、刑事部の中でも主に詐欺事件、横領事件をはじめとした汚職、選挙違反、企業犯罪など政治や経済をむしばむ犯罪を担当しています。
警視庁捜査三課は、主に空き巣やひったくり、すりなどの窃盗事件を扱い、暴力団関係の事件や、組織犯罪に関する事件を担当しています。
ちなみに警視庁捜査四課は、暴力団を担当する部署で、暴力団員との接点を持つ刑事や専門家、暴力団対策のプロフェッショナルなどが所属しています。
近年では「組織犯罪対策部」「暴力団対策部」として独立させているところもあります。
これらの部署も、捜査一課と同じく、厳しい研修や訓練を受け、日夜事件解決に向けて努力しています。
知名度の高い警視庁捜査一課ですが、捜査二課や捜査三課などの捜査班についてはあまり知られていません。
捜査二課や捜査三課が担当する事件も、刑事ドラマのようにスピーディーに解決することはほとんどないのが現状です。
しかし、捜査員たちは根気強く事件を追及し、犯罪者を追い詰めるために奮闘しています。
捜査一課の刑事の1日の流れ
昼夜を問わず捜査に当たる
凶悪犯罪の早期解決に向け、昼夜を問わず犯罪捜査に当たるのが刑事の役割です。
事件発生の第一報を受ければ、現場に急行し聞き取りや証拠収集をはじめます。
夜間の事件に対応するため、当直業務もあります。
警視庁捜査一課の刑事になるには
警察官になることが第一歩
警視庁捜査一課の刑事になるには、まずは警察官になることからはじまります。
警察官になるには、高卒以上の学歴が必要であり、警察官採用試験を受ける必要があります。
試験はⅠ類(大卒程度、21歳以上35歳未満)とⅢ類(高卒程度、17歳以上35歳未満)の二種類があり、男女とも年3回ほど採用試験が開かれています。
その際、身体検査も行われ、男性は身長約160cm体重約48kg以上、女性は身長約154cm体重約45kg以上が求められます。
視力は両目の裸眼が0.6もしくは矯正で両目1.0以上が必要です。
採用試験に合格すれば、警察官として働くことができます。
捜査一課になれるのは一部のエリート
その後、刑事課に配属されるためには、警察官として一定の年数勤務することが必要です。
基本的には交番勤務の警察官として都内各所の警察署に配属され、その後刑事になるための選考を受けることになります。
ただし、希望通り配属されることは難しく、多くの経験を積んでいる刑事や優秀な成績を収めたエリートが優先されます。
警察官としての専門知識や技術を磨き、実務経験を積んで、日々の努力を怠らずに勉強することが大切です。
捜査一課の刑事になるために必要な学歴は? 高卒でもなれる?
学歴に関しては、高校卒業以上が必要ですが、大学を卒業している必要はありません。
採用試験は1次の筆記試験と2次試験からなります。
筆記試験は一般教養(五肢択一式、50題、2時間)と論文(1題、1時間20分)、記述式の国語試験(20分)の3部構成。
一般教養は文章理解や判断推理、自然科学、国語、英語など幅広く出題され、対策用の問題集も市販されています。
筆記試験後は、身体検査と適性検査があります。
2次試験の構成は面接と第2次身体検査、適性検査、体力検査です。
体力検査では腕立て伏せや上体起こしなどで、職務遂行に必要な体力をチェックします。
試験に合格した後は、全員が警察学校に入学し、大卒が6ヵ月、高卒が10ヵ月研修を受けます。
そして、警察官として晴れて警察署に配属されてから、警視庁捜査一課の刑事を目指すための準備が本格的に始まります。
捜査一課の刑事になるには試験を受けることが必要
警視庁で働く警察官になると、刑事になるためにはさらに上級の試験を受ける必要があります。
しかし、そのためには以下の様な厳しい条件をクリアする必要があります。
- 警察学校の成績が優秀であること
- 品行方正であること
普段の勤務だけではなく、休日や職務の合間を使って刑事の仕事を学ぶことも必要です。
このような段階を経て、警察署から推薦をもらい、刑事になるための試験を受けることができます。
合格すれば、数ヶ月間の研修を受けた後に、現場で働くことができます。
捜査一課の刑事の給料はいくら? 警視庁の給料は?
警視庁の警察官の初任給は、2018年時点で大卒が25万2100円、高卒が21万2700円です。
年間の期末・勤勉手当は給与月額×4.5か月分で、これらを合計すると大卒の初任給は年間で約416万円、高卒は約351万円となります。
これに加えて扶養、住居、通勤、特殊勤務の手当などが支給されます。
東京都の警察職の平均月給は39万円を超え全都道府県の警察職の中では最高です。
昇給は年功序列のため、キャリアを積めば順調な年収アップが期待できます。
捜査一課のやりがいや魅力は?
犯罪捜査に従事する刑事は、犯罪を解決することで社会に貢献できることにやりがいを感じることができます。
東京都の治安を守り、被害者やその家族が安心して暮らせるように、警察官は職務に全力で取り組みます。
その中で、事件を解決し、被害者から感謝されることは、他の職業では得られない貴重な経験となります。
また、性犯罪は刑事の担当分野のひとつです。
とくに女性の刑事は、犯罪被害者に深く寄り添うという重要な役割を担っており、大きなやりがいを感じることができるでしょう。
捜査一課のつらいことや大変なことは?
殺人事件などを担当した刑事が精神的に疲れてしまうことも多く、心身の不調から復帰できずに退職に至ってしまうということも少なくありません。
凶悪犯罪を担当するためには、事件現場に行くことが必要ですが、時にはどうしても危険な場面に出くわすこともあるからです。
また、捜査一課で働くには、柔剣道や拳銃の訓練を受ける必要があり、体力的にも非常にタフである必要があります。
さらに、事件はいつ起こるか分からないので、当直勤務もあり定時には帰れず、不規則な生活になりがちなところもつらいところです。
捜査一課の刑事に向いている人とは?
捜査一課の役割は、東京都の人々の生活を守り、事件をいち早く解決することです。
そのため、仕事に使命感を持って働ける人が向いているでしょう。
また、犯罪被害者や家族の気持ちを理解することも重要で、間違ったことは許さないという正義感があることも必要です。
さらに、刑事は、危険な状況に遭遇することもあります。
そのため柔剣道などで体力をつけることのほかに、どのような相手に対しても逃げずに対応するという勇気を持つことも必要です。
一方で、警察官は、時に人々に命令や強制をすることもあります。
法律を正しく理解し、厳しく自分に接することができる素質も求められます。
捜査一課の志望動機・目指すきっかけで多いものは?
これまでの警察学校や交番勤務で身に付けた能力を最大限に活かし、時には大きな事件に対処することは、警察官としておおいにやりがいを感じるところです。
また、自分自身や家族が犯罪被害にあった経験があるという人が、捜査一課を目指すきっかけになることがあります。
犯罪に巻き込まれることは少ないですが、そういった苦しい経験を乗り越えたからこそ、強い意志が生まれることもあります。
警視庁の中でも、刑事部捜査一課は一番人気の高い部署といってもよい、多くの警察官たちが憧れる花形の部署です。
しかし、この部署で働くためには、厳しい任務をこなさなくてはならないことを覚悟しておきましょう。
捜査一課の勤務時間と休日
捜査一課の刑事は東京都の地方公務員という立場です。
基本的な勤務時間は8:30~17:15ですが、この通りにはいかないことが多いです。
必要があれば犯罪捜査は昼夜を問わず行われ、ひとたび事件が発生すれば、激務の日々が続くことを覚悟する必要があります。
休日は、基本的に4週間ごとに8日です。
そのほか祝日休、年末年始休、年次有給休暇(20日)、特別休暇(夏季、結婚、出産、ボランティア等)、介護休暇、育児休業等があります。
捜査一課の採用状況は?
捜査一課のみに限定した採用状況は、現在のところ公表されていません。
なお警視庁の採用情報を見ると、採用試験は年3回実施されており、採用予定人数は年によって変わりますが、近年は約1900人ほどで推移しています。
男女の内訳は男性が約1600人(内大卒約1200人)、女性が約300人(内大卒約200)と、現状の差は大きいです。
倍率は男性が大卒、高卒ともに5~6倍です。
一方で、採用数の少ない女性は大卒が8~9倍、高卒が6~7倍となっています。
警視庁というネームバリューや、安定した待遇などから全国の警察官の中でも倍率は高めです。
捜査一課から転職する人はいる?未経験でも採用してる?
全体を通して、警察官の厳しい勤務形態を理由に転職するケースは非常に多いです。
日夜、事件の対応に追われ、休日でも緊急配備がかかれば出動しなくてはなりません。
それに加えて当直勤務もあります。
ただ、厳しい選考を経て、念願の花形部署の捜査一課に配属されてから転職する事例がどれくらいあるかは不明です。
また、採用試験を経て合格し入校した警察学校で、訓練の厳しさに耐え兼ね退職する事例も見られます。
一方で、未経験であっても35歳未満までは警察官採用試験を受けることができますので、転職でも捜査一課に入るチャンスはまったくないわけではありません。
捜査一課の将来性・今後の見通し
警察官は公務員として働くことで非常に安定しており、ひどい失態を犯さない限り、基本的に雇用が打ち切られることはありません。
また警視庁はなくなることがないため、警察官として採用されれば、ずっと働き続けることができます。
そして、捜査一課に配属されることができれば、警察官としてのキャリアを十分に築くことができ、高収入が狙えます。
ちなみに、捜査一課の課長には、刑事畑でキャリアを積んだ生え抜きの捜査官が就任することが多く見られます。
国家公務員の「キャリア組」でなくても、刑事として出世し、活躍していくことができます。
「捜査一課になるには? 仕事内容とは」のまとめ
捜査一課に配属されるには、まず警察の採用試験に合格し、経験を積んでいく必要があります。
凶悪事件を捜査する非常にやりがいのある仕事ではありますが、一方で激務や精神的負担などのつらさを感じることもあります。
警察組織の中でも、とくにバリバリと活躍したいという人に向いているといえるでしょう。