警察官の仕事内容とは? 警視庁と都道府県警察の違い、仕事の種類を解説
ただ、警察組織は約30万人という膨大な数の人員を抱える巨大組織であり、実際にはたくさんの部署や業務が存在します。
ここでは警察官の仕事内容と、さまざまな業務内容について詳しくご紹介します。
警察官の仕事とは
警察官の仕事は、おおまかに「警察庁」と「都道府県警察」という2種類の勤務先によって、その仕事内容を大別できます。
- 警察庁:警察行政に関する計画や管理、都道府県警察間の調整業務などを行う
- 各都道府県警察:パトロールや犯罪捜査、生活指導、警備、交通の取り締まりなどを行う
上記のうち、都道府県警察は一般の人々の生活により身近な存在であり、全国にいる30万人弱の警察官のうち、29万人近くが都道府県警察で働いています。
そして、交番勤務で道案内する人も、交通機動隊に所属する白バイ隊員も、殺人事件を捜査する刑事も、職業としては同じ警察官です。
所属部署などによって実際の仕事内容はさまざまですが、平和で安全な社会を実現するという共通目的の下、数多くの警察官が日々各人の仕事をまっとうしています。
警察官の業務の内容
ここでは、警察官の業務の内容について、「警察庁」と「都道府県警察」別に、詳しく紹介します。
警察庁の業務
警察庁は、金融庁や国税庁などと同じ、国の行政機関のひとつです。
その主な業務は、警察に関する法律に基づいて警察組織全体を管理・運営していくことです。
各都道府県警察を監督したり、犯罪や事件が複数の都道府県をまたいで発生した際の調整業務を行ったりしており、基本的に実際に犯罪を捜査したり、犯罪を取り締まることはありません。
ただし、例外的に、警察庁内には「公安」という特殊組織が存在します。
公安は、一般的な警察とは異なり、私たち国民ではなく「国」そのものを守ることが役割であり、政治事件やテロ、国際犯罪など、国家全体の安全を脅かす犯罪を専門的に取り締まります。
都道府県警察の業務
都道府県警察は、各都道府県に置かれる組織で、各区域で発生する事件・事故などの事案を担当します。
さらに「警察本部」と「所轄署」が配置されています。
都道府県警察では、それぞれの都道府県内で起きた犯罪や事件、事故に対応して、地域住民の暮らしを守ることを役割とします
以下では、その代表的な部門についてご紹介します。
地域警察部門
地域警察部門は、地域に密着して市民の安全を守る部門です。
交番や駐在所などに常駐する、いわゆる「お巡りさん」もこの部門に所属しています。
110番対応、パトロール、道案内、職務質問、任意同行など、さまざまな仕事をこなします。
また、周辺で凶悪事件が起きたときは、刑事の指示を受けて、張り込み捜査や犯人の追跡を行うこともあります。
生活安全部門
生活安全部門は、ストーカーや悪徳商法、少年の非行など、生活に身近な犯罪に取り組む部門です。
各家庭に対して防犯活動を呼びかけたり、学校で覚せい剤に関する講習を行ったり、またストーカー被害などの相談に乗ったりします。
繁華街や遅い時間に出歩いている子どもの補導を行うこともあり、犯罪を取り締まるというよりも、犯罪を未然に防ぐ役割が大きいといえます。
刑事警察部門
刑事警察部門は、殺人、傷害、窃盗、詐欺、違法薬物などの犯罪を取り締まる部門です。
事件が発生すると現場に急行し、被害者の事情聴取や周辺への聞き込みを行ったりして、事件を捜査します。
証拠を掴むために張り込みや尾行などをすることもあり、また犯人特定後には、逮捕・取り調べなどを行います。
交通部門
交通部門は白バイなどで街頭に出て、速度違反や駐禁といった交通違反の取り締まりを行う部門であり、「交通課」とも呼ばれます。
また、交通事故の捜査や交通安全指導、交通規制、暴走族対策などに関する仕事もあります。
白バイを意のままに操る高度な運転技術に加え、状況を的確に判断する観察眼が必要となります。
警備部門
警備部門は、社会情勢の緊迫によるテロやゲリラ活動などを未然に防ぐために、国会や官庁、駅、空港といった要所を警備する部門で、要人を警護します。
お祭りやイベントなど、大勢の人が一度に訪れる場所の警備、災害時の救助活動、地域のパトロールなども行っており、メディアなどでよく取り上げられる「機動隊」もこの部門に所属しています。
総務・警務部門
総務・警務部門は、警察官が安心して仕事に取り組める労働環境をつくるなど、警察組織をバックアップする部門です。
総務や広報、福利厚生、会計など組織を運営するためのさまざまな仕事を担っています。
デスクワークが中心ですが、事件や事故などで手助けが必要になると、現場へ応援に出向くこともあります。
警察官の役割
警察官は、人々の暮らしを犯罪や事件、事故から守り、治安を維持するために働きます。
ここでは、警察官の役割について説明します。
社会の治安を守るために働く
警察官は、私たちの生命、身体、財産などを、犯罪や事件、事故などから守るという、重要な社会的役割を担っています。
その役割をまっとうするために、逮捕権や拳銃の使用など、ほかの職業にはない強力な権限が多数与えられているのも特徴です。
また、警察組織は非常に大きいため、たとえばひとつの事件に対しても、目撃証言を集める人、犯人の足取りを追う人、捜査全体を指揮する人など、個々の警察官に異なった役割が与えられ、チームで解決にあたります。
各組織で明確な役割分担がなされている
さらに、それぞれの組織単位でみても、互いの権力が衝突しないよう明確な役割分担がなされています。
各都道府県で起こった犯罪や事件に対して、他の都道府県警察が捜査に乗り出してくることは基本的になく、無用なトラブルを避けるための棲み分けがなされています。
複数の都道府県にまたがるような広域の事件が発生した場合、それぞれの都道府県警察を調整するのは警察庁の役割で、合同捜査本部を設置したりして事件の捜査にあたります。
個人単位、組織単位で、おのおのの役割がはっきりと分かれていることが、警察官という職業のひとつの特徴といえるでしょう。
警察官の勤務先
警察庁組織は、長官官房と5つの局、2つの部からなる内部部局、3つの附属機関があり、また地方機関として7つの管区警察局と2つの警察情報通信部があります。
国家公務員試験をパスして警察庁に採用されると、全国に点在するいずれかの組織で働くことになりますが、現場経験を積むために、各都道府県警察に出向することもあります。
一方、都道府県警察に所属する警察官の勤務先としては、私たちにとって身近な交番や駐在所、警察署、そしてそれらを統括する警察本部などが中心です。
テレビドラマなどでは、警察官が使う隠語として、各地域を管轄する警察署を「ショカツ」、警察本部を「ホンチョウ」と呼ぶこともあります。
なお、警察本部については、神奈川ならば「神奈川県警」、大阪ならば「大阪府警」と呼ばれますが、例外的に東京都だけは東京都警ではなく「警視庁」という名称で呼ばれます。
警察官の仕事の流れ
警察組織にはさまざまな業務を担う警察官が働いており、協力して仕事にあたっています。
仕事の流れは、担当業務やその時々の状況によってまったく異なるものとなりますが、ここでは事件・事故が起きた場合の、おおまかな警察官の動きをご紹介します。
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1.予防活動
生活安全部門や警備部門などの警察官が、日頃から生活指導やパトロール、イベント時の警備など、犯罪や事件・事故を未然に防ぐための予防活動を行います。 -
2.捜査活動
なんらかの事件などが発生した場合は、その種類に応じて、地域警察部門や刑事警察部門、交通部門の警察官が、事故の対応に当たったり、犯人の捜査を行ったりします。 -
3.逮捕
捜査活動の結果、犯人・容疑が特定されたら、任意同行や事情聴取などを行ったうえ、必要があれば逮捕、拘留します。 -
4.身柄を引き渡す
その後、取り調べなどを行い、犯人の身柄を検察庁に引き渡すと、後の業務は「検察官」が引継ぎ、警察官としての一連の業務は完了します。
警察官と関連した職業
世の中には、警察官と同じように、社会の治安や人々の命を守る仕事がたくさんあります。
ここでは、同じ公務員である「消防士」「海上保安官」「皇宮護衛官」「検事」の4つの職業を取り上げて、それぞれの仕事内容を簡単に紹介します。
消防士
消防士は、消火活動や救助活動などを行って、人々の人命を守る仕事であり、警察官と同じ「公安職」に属する職業です。
災害や事件、事故などが発生した場合は、警察官・医療機関と連携して、被害者の救助活動や救急救命活動に当たります。
海上保安官
海上保安官は、巡視船や航空機などを使って、海の治安と安全を守る仕事で、「海の警察官」とも呼ばれます。
事件や事故の発生現場が海上や港である場合、救助活動を行ったり、捜査活動を行ったり、犯人を逮捕したりします。
皇宮護衛官
皇宮護衛官は、天皇陛下をはじめとした皇族の警護や、皇居など皇族関係施設の警備を行う仕事です。
身分としては、警察庁内に組織された「皇宮警察本部」に所属する国家公務員になります。
検事
検事は、全部で5つある検察官の役職名のうちのひとつで、警察から送検されてきた被疑者に対し、取り調べを行って起訴するかどうかの判断を下し、事件についての立証を行う仕事です。
起訴した場合は、裁判に出廷して相手方の弁護士と争い、量刑などについて意見を述べます。
「警察官の仕事内容」のまとめ
警察官の仕事は、大きく「警察庁」と「都道府県警察」で分けられ、それぞれに所属する警察官が協力しながら任務をこなします。
また、消防士など関連した職業の人たちと連携しながら仕事に当たることも多いです。
仕事内容は配属によっても大きく異なるため、目指す勤務先や部門がある場合はしっかりと調べておきましょう。