保健師になるには? 必要な資格は?
この職業に就くには、まず保健師を養成するための学校で所定のカリキュラムを修め、国家試験に合格しなくてはなりません。
看護師国家試験合格を経て保健師国家試験合格を目指すなど、やや特殊な道のりとなっています。
この記事では、保健師になるための一般的なルート、なるための学校や資格、キャリアパスなどについて詳しく解説しています。
保健師になるには
ここでは、保健師になるまでの道のりを紹介します。
保健師国家試験に合格して資格を取るまで
保健師は国家資格が定められている職業であり、この職業に就くには保健師の国家試験に合格しなくてはいけません。
しかし、保健師国家試験を受けるためには、前提として看護師の国家試験に合格する必要があります。
したがって、保健師を目指す人は、まず看護師の養成学校(3年制の短期大学や専門学校、4年制大学の看護学科など)で教育を受け、看護師国家試験を受験します。
看護師国家試験に合格することが保健師になるための前提条件であり、なるための第一歩となります。
看護師免許を取得すると、いよいよ保健師国家試験の受験となります。
なお、保健師国家試験を受験するには以下のいずれかを満たす必要があります。
まとめると、まず看護師の免許を取った後に、保健師になるための指定の学校や養成所で学ぶと、ようやく保健師国家資格の受験資格が得られる道筋になっています。
ただし、昨今では4年制の看護大学や一部の看護専門学校など、卒業と同時に「看護師」と「保健師」両方の受験資格が同時にもらえるカリキュラムを設置する学校が増えてきています。
そういった学校に進学すれば、より早く保健師を目指すことが可能です。
しかし、そのような学校で学ぶ場合も、保健師国家試験の合格は看護師国家試験の合格を前提条件としています。
たとえ保健師の国家試験に合格しても、看護師国家試験に不合格であれば、保健師として働くことはできません。
なお、保健師国家試験は年に1回実施されており、合格率は80~90%程度です。
保健師養成課程への入学は簡単ではない
4年制の看護大学や専門学校に設置されている保健師養成課程は募集人数が少ないこともあって、競争率が高くなる傾向です。
つまり、入学の段階で狭き門となっています。
また、実際に入学してからも保健師養成課程でとらなければならない単位や授業の数は多く、看護過程の学生に比べると、勉強量などの負担は相当増えると考えておく必要があります。
そのため、まずは看護師として病院に就職し、働きながら保健師を目指す人も少なくありません。
看護師と保健師の免許がないと保健師として仕事はできませんが、看護師免許を持っていれば看護師としての業務に就くことができるからです。
現場で働いている保健師のなかには、以下のような理由・きっかけで保健師になった人もいます。
- もともと看護師として働くつもりだったが、勉強するうちに保健師にも興味が湧いた
- 看護師として臨床の現場経験を積んでから保健師になろうと考えた
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保健師の働き方の種類・雇用形態
ここからは、保健師の働き方の種類や雇用形態を説明します。
保健師は企業のほか、さまざまな場所で活躍することができます。
保健師の勤務先と働き方
保健師の勤務先は、大きく「行政機関」「民間企業」「学校」の3パターンがあります。
いずれの場で働くにしろ、国家資格をもつ専門職として、正社員や正職員として採用されるケースが多いです。
ただし、イレギュラー的に派遣保健師として働く方法や、期間限定の契約アルバイト・パート等で働く方法もあります。
さまざまな活躍の場のなかでも、とくに企業で働く産業保健師は多数の求人があるわけではないため、欠員募集が行われるタイミングを逃さないようにすることが重要です。
保健師の雇用形態の種類
行政保健師として働く
保健師の主要な働き方のひとつが行政保健師、つまり公務員になることです。
行政保健師になるには、保健師の資格を取得することに加え、各自治体などの公務員採用試験を受けて採用される必要があります。
正規雇用されると公務員としての安定した待遇が望めることもあって、人気がある働き方です。
行政保健師は、保健所や保健センターを中心に勤務し、地域住民の健康管理や健康推進のための活動に取り組みます。
ごくわずかですが、国家公務員として国の機関で働く保健師もいます。
産業保健師として働く
産業保健師は、民間の企業や事業所、病院などの組織の従業員(社員・職員)として働きます。
おもな仕事は職員やスタッフなどその組織に属する従業員の健康診断や健康指導、メンタルヘルスケア、メタボリックシンドロームなどの成人病や生活習慣病の予防などです。
設置義務が法律で課されていないため、すべての企業に産業保健師がいるわけではありませんが、中・大企業では産業保健師の求人が出ています。
企業の規模にもよりますが、産業保健師は公務員の行政保健師よりも高収入が期待できます。
雇用形態は正社員・常勤であるケースがほとんどで、勤務時間や休日などは就業規定によりますが、ほかの社員や職員と同様の勤務時間であることが多いでしょう。
学校保健師として働く
行政や産業の保健師と比較するとあまり数は多くありませんが、各種学校でも保健師資格を持つ人が正職員として雇用されることがあります。
学校保健師のおもな業務の内容は、ケガや病気の応急処置、健康管理などです。
これらは「保健室の先生」と呼ばれる「養護教諭」と似ている点もありますが、養護教諭が教育者であることに対し、学校の保健師はあくまでも保健のプロフェッショナルとして児童・生徒や教職員の健康を守る役割を担います。
保健師は派遣社員やパートとして働ける?
派遣の保健師
企業などでは、新年度の健診シーズンや社内の健康に関するイベントなどで、一時的に常時勤務している保健師以外に、保健師が数名必要になるタイミングがあります。
このような単発的場面において、活躍するのが派遣保健師です。
派遣保健師の仕事の内容は、受ける仕事や派遣される事業所により異なりますが、通常はそこで働く保健師の補助業務になります。
即戦力として高時給を得ながらさまざまな職場で視野や経験を広げたい、自分の希望のライフスタイルを重視したいと考える保健師にぴったりな働き方です。
就業場所や時間、給与など、条件で職場を選ぶことができるため、最もよい条件で働きたいと考える人にはメリットがあります。
保健師の派遣社員は、その専門性の高さから時給も高く、時給2,000円以上になることは珍しくありません。
一般的な派遣の仕事と比べても割のよい仕事といえるでしょう。
派遣社員の保健師として働いているのはおもに女性で、結婚や育児でフルタイムでは働けないけれど資格を生かして働き続けたいと考える人たちが、派遣社員として活躍しています。
ただし、よいタイミングで希望の派遣先が見つかるとは限らず、正規雇用に比べると長期的なキャリアは築きにくいなどのデメリットもあります。
また、派遣保健師は派遣会社と契約を行うため、基本的にボーナスや諸手当などはないケースが多く、交通費も時間給に含まれている場合もあります。
パートの保健師
保健師としてフルタイムで働くことができないという人に向いているのが、パートで働く方法です。
パートタイムの保健師は、自分にあった条件で働くという点で派遣の保健師と似ていますが、派遣保健師は雇用主が派遣会社であるのに対し、パート保健師は雇用主と直接契約を結びます。
また、派遣のように期間限定の雇用ではなく、一定期間雇用が継続することが多いです。
パートタイム保健師の仕事内容は、経験やスキルによって正社員の補助業務となる場合もあれば、正職員とまったく同じ仕事を任せられることもあります。
保健師に役立つ資格
人々の健康指導や相談相手となり、寄り添うことが求められる保健師という仕事において、保健師と看護師資格以外に持っていると業務に役立つ資格がいくつかあります。
たとえば、「産業カウンセラー」や「心理カウンセラー」の資格です。
産業カウンセラーは、企業や組織で働く人に対してメンタルカウンセリングや組織づくりのアドバイスなどを行い、働く人や組織が抱える心の問題の解決への支援を行い、快適な職場環境づくりに寄与する役割を担います。
一方、心理カウンセラーは、悩みを抱えているあらゆる人の話を聞くことによって、心をケアし解決に導く役割です。
どちらも保健師の業務に関連する知識やスキルが求められるため、公務員として働く保健師や、企業や病院で働く保健師のどちらにとっても有効な資格といえます。
また、より専門的に人々の心理に寄り添うためのブラッシュアップがしたいと考える場合は、「臨床心理士」や「公認心理師」を目指すのもスキルアップにつながります。
臨床心理士は、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて人間のこころの問題にアプローチする心の専門家で、公認心理師も同じような役割を担う国家資格です。
ただし、臨床心理士や公認心理師は、それぞれ所定の大学や大学院で心理学を専門的に学ぶ必要があるなど、なるためのハードルが高めです。
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保健師に向いている人
ここからは、保健師に向いている人はどのような特徴があるのかを紹介します。
専門性と思いやりを兼ね備えた人
保健師も、看護師同様に医療や健康と深く関連性のある仕事です。
そのため、専門知識とその応用力、状況を判断する力と、それを実行に移す行動力などの「ハード面」と、健康に不安を感じ、病気を恐れる人に対して温かく接することができる「ソフト面」を兼ね備えていなければいけません。
また、保健師は人々の病気を予防するために、生活習慣の改善の指導、乳幼児の発達診断など、人々に対して指導的立場に立つ機会が多いことが特徴です。
しかし、上からの視線で人々と接するのではなく、相手と目線を合わせて寄り添えるような指導が理想的です。
とくに、健康状態や健やかな暮らしに不安を抱えている人は、不安な気持ちをもって相談に訪れる場合がほとんどです。
したがって、保健師は包容力があり、人の話に耳を傾けられる人が向いているでしょう。
人と接することが好きな人
保健師は、指導のほかにも、健康に関する相談を受けたり、地域住民のお宅を訪問したり、あらゆる年齢層の人と接する機会の多いです。
そのため、人と接することが好きで、他者に寄り添うことを面倒に思わない人に、適性があるといえます。
データを読み、物事を広く見る力をもつ人
保健師は、健康診断の結果や地域性、年齢などを広く検討して、起こりうる病気や今後考えられるリスクを想定し指導していきます。
したがって、たくさんの情報を解析する力、物事を総合的に見る広い視野が求められます。
また、保健師に一番求められるのは「人々の健康を守る」という使命感であるといえます。
「どうしたら人々が健康について関心を持ってくれるか? 健康意識を高めてくれるか?」ということを考えることを楽しめる人に、向いている仕事です。
保健師を目指せる年齢
保健師を目指すための年齢制限などはとくにありません。
国家試験の受験資格を得て、国家試験をパスすれば保健師の免許が得られます。
また、保健師を目指すための専門学校や大学の保健師養成課程などにも、年齢制限はとくにありません。
しかしながら、看護師としてすでに働いている人が保健師を目指す道のりと、まったくの異業種から保健師を目指して転職を希望する人とでは、その道のりのハードさが異なってくることは間違いありません。
とくに、保健師は看護師免許の取得が必要になるため、看護学生と同様、ハードな試験勉強や実習をこなす必要があります。
保健師になるための年齢制限はありませんが、資格を取得するまでの間モチベーションを維持し、しっかりカリキュラムや国家試験対策の勉強をこなしていくエネルギーは、年齢に関わらず欠かすことができません。
参考:保健師に関するデータ
保健師数の推移
保健師の人数は年々増加しつつあります。令和2年時点での保健師の人数は55,595人となっています。
年齢別の保健師数
年齢別に保健師数をみると、20代以外では年齢が若くなるほど保健師の人数が多くなっています。最も多いのは40〜44歳の8,016人です。
保健師の雇用形態
保健師の雇用形態は、正規職員81.5%、非常勤職員18.0%、派遣0.5%となっています。
「保健師になるには」まとめ
保健師は、国家資格の取得が求められる専門的な職業です。
なるまでには、まず看護師の資格を取得したうえで、定められた保健師養成カリキュラムで学ぶなど、決まった道のりをたどる必要があります。
行政機関や企業、学校など、さまざまな場で活躍する保健師がおり、それぞれの場で、接する人や具体的な業務内容などには違いがあります。
保健師になりたい人は、なるまでの道筋をよく確認し、自身にふさわしい進路選択をするようにしてください。