保健師の需要・現状と将来性

保健師の現状

求人はまだそこまで多くはない

保健師は、以前から地域社会や企業において病気の予防や健康相談などに携わることで、健康に関する知識の普及や公衆衛生の向上に力を発揮してきました。

とりわけ現代社会では、人々が健康を保つために最も必要なことは病気や疾患の予防といわれるようになり、「予防医学」の意識が高まる世の流れとともに、予防医学に関する研究も進んでいます。

しかしながら、保健師の求人は少なく保健師として就職するのは狭き門、というのが今の日本の現状です。

とはいえ、医療への価値観や考え方の変化に伴い、保健師のあり方や活躍の場面も急激に変化している現在でもあります。

予防医療への社会的ニーズの高まりとともに

生活習慣病や成人病など疾病の増加や急激な高齢化による医療費の増大が懸念されている現代において、今日本全体は予防医療に取り組む時代に突入しています。

とくに、生活習慣病や成人病といった疾病においてはいかにその予兆をすばやくみつけ、早期に適切な処置ができるかがその後において重要になるため、健診や健康指導に携わる保健師の責任はより大きなものになりつつあります。

また、高齢化が進む現代において、高齢者についてはいかに自立して、本人らしく健康的な老後を送れるかが本人とその家族の幸せにつながると考えられてきています。

健康を保つために何ができるのかを広く世間に周知していくことが、予防医療のプロである保健師に期待される役割となっています。

保健師に求められること

病気になってから対処するのではなく、病気にならないような生活習慣や健康づくりを意識して、取り組むことを一人ひとりが心がけるようになれば、誰もが元気に生活し、働き続けられるようになります。

ひいてはそれが、国全体の生産性を上げ、経済力を高めることにもつながります。

とくに、少子高齢化社会が進んでいる今では、国の健康保険費用の負担を軽減するためにも、病気の予防はとても大切であると考えられています。

こうした背景のなか、定期健診や国民の健康に対する知識を向上させ、人々の健康をサポートする保健師の活躍はますます期待されています。

保健師の需要

法律の改正により、2008年から「特定健康診査、特定保健指導」が実施され、40歳~70歳の国民に対し、高血圧、高血糖、高脂肪などで異常が見つかった場合は生活習慣病として医師や保健師の指導を受けなくてはならなくなりました。

指導にあたる保健師がこれまで以上に求められています。

当然、会社や地域での「検診」にも力が入れられていくため、保健師の活躍の場は今後ますます増えることと予想されます。

自治体や病院がおもな活躍の場のひとつとなっていることからも、社会全体から必要とされている職業ということがわかります。

少子・高齢化や晩婚化に加え、国際化・情報化が急速に進む現代日本では、人の健康問題も複雑に変化しています。

行政や病院、企業、学校、そして介護と、保健師の活躍が期待される分野は多岐にわたります。

医学的知識をバックボーンにしながら人々の身体と心の両面のケアを行える保健師は、人々が健やかに暮らすうえで欠かせない人材として、信頼を得ています。

保健師という仕事は、今後さらに注目度や需要が高まっているといえるでしょう。

保健師の将来性

保健師の人数は増加傾向に

2018年に厚生労働省が発表したデータによると、2018年末現在の就業保健師は5万2955人となっており、2016年の調査から1675人(3.3%)増加しています。

また、同時期の就業看護師は121万8606人おり、人口10万人対で比較した場合、看護師が963.8人いるのに対し、保健師はわずか41.9人という結果が出ています。

人口10万人というとそれなりの大きさの市町村に匹敵しますから、それに対する人数としては、まだまだ保健師の数は足りていないという印象が否めません。

しかしながら、2008年は保健師の総数は4万3446人でしたので、10年間で約9000人保健師が増えた計算になります。

それ以降、毎年保健師の数は増加の一途をたどっています。

保健師の就職先は門戸が狭いと言われることもありますが、成人病・生活習慣病の予防や企業・学校におけるメンタルヘルスケアの重要性には年々注目が集まっています。

行政や企業などで、保健師の必要性の認識が高まっていけば、保健師が活躍するフィールドはさらに広がり、生活者へ提供できるサービスの質もよりいっそう高まっていくと予想できます。

業務の細分化によってスペシャリストが求められる

少子高齢化とともに、社会構造が複雑化し、保健師が対処する問題も多様化している現代では、今後はいっそう保健師の扱う業務の細分化が進むことが予想されています。

保健師の仕事においては、就業先によってこれまでも高齢者や母子、精神疾患のある人、成人全般などのように担当が分かれていることが一般的でしたが、ひとくちに高齢者や母子、といっても状況は多様化しています。

父母と同居していて家庭内での目が複数ある母親と、核家族かつ夫が多忙でほぼ一人で育児をこなさなくてはいけないワンオペレーション育児をしている母親とでは、置かれている状況や持つ悩みは当然変わってきます。

また、母子家庭の母親や家庭内暴力に悩む母親、虐待・育児放棄をしている母親、また自身が病気を患っている母親など、解決すべき問題は、その個人によってさまざまです。

一方、介護領域で活躍する保健師の役割も注目されています。

たとえば、医療行為のできない老人介護施設では、入所している高齢者がいかに健康に暮らせるかといったポイントがQOLの観点でも重要視されています。

そのため、入所者やその家族の悩みや不安のを解決する窓口となる保健師は、時には看護師としての知識と技術も発揮できるマルチな人材として、これからさらに需要が高まると考えられます。

このようなさまざまなケースに適切に対処し、保健師が力を発揮するには、専門的な知識や関係各所との連携が必要になってきます。

今後は、各分野のスペシャリストを育成することが保健師にも求められる時代になっていくとみて間違いありません。

保健師の活躍の場

保健所や市・区役所の行政で活躍する行政保健師、企業や病院・学校で活躍する産業保健師に関わらず、保健師は地域に深く根ざし、幅広い生活者の目線に立ったサポートを行っています。

また、保健師には「独居老人と呼ばれる一人暮らしの高齢者」「ワンオペ育児として問題になっている日中一人で育児をしている母親」「職場や学校にうまく馴染めない人」など、どこにも吐き出せない悩みや孤独感、不安を抱えている人たちの心のよりどころとしての役割も期待されています。

たとえまだ病名が診断されていなくとも、心身の不調やさまざまなストレスを感じ、日常生活に支障をきたしている人は少なくありません。

予防医学や健康指導だけでなく、何かあったら、まずは近くの保健師に相談してみようとひとびとが頭に浮かぶような、身近な存在になることが今後期待される保健師像でしょう。

それにしたがって、保健師の活躍の場は保健所などの役所や病院、企業のみならず、もっと開かれたニーズに変化していくと考えて間違いありません。

誰もが健康的で幸せな毎日を送れる社会をつくるため、増大する医療ニーズまでいかない水際の予防医療において、大切な役割を担う足掛かりになっていくことでしょう。