産業保健師の仕事内容・なり方・資格

産業保健師の仕事内容

保健師の種類は、大きく次の3つに分類されます。

それぞれ本質的な役割や使命は同じですが、具体的な仕事内容や求められるものが異なります。

  • 行政保健師:自治体で地域住民の健康維持、増進活動を行う
  • 学校保健師:教育機関で児童や生徒、教職員の健康管理を行う
  • 産業保健師:企業で働く従業員の健康管理を行う

このうち「産業保健師」は、企業など労働の現場で、働く人たちの心身の健康維持や健康推進のための仕事を行います。

また、働きやすい職場環境づくりのために、保健師の立場からアドバイスや指導を行ったりすることもあります。

以下では、産業保健師の役割や具体的な仕事内容について、詳しく紹介していきます。

産業保健師とは?

厚生労働省が行った2018年の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関して、「強いストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は約60%にものぼっています。

働く人の心身の健康を守ることは、企業にとっても現代社会にとっても大きな課題と認識されるようになっています。

こうした状況を背景に、民間企業において従業員の健康改善・維持・促進のための活動を行い、健康で安全な職場づくりを目指す「産業保健師」の存在に注目が集まっています。

しかし、産業保健師の数はまだまだ少なく、企業で働いていても実際に保健師に関わったことやお世話になったことのない人はたくさんいるでしょう。

この先、産業保健師の認知度や活躍の場がさらに広がっていくものと考えられます。

産業保健師の仕事

従業員の健康管理を担当する

産業保健師の仕事は、企業や大学などの組織で働く従業員や職員の健康の維持増進、そして管理です。

おもな勤務場所は、企業や大学内に設けられた「保健室」や「医務室」などと呼ばれるスペースとなります。

具体的な業務内容は、年に何度か実施される健康診断の実施と、その結果等を踏まえた健康指導、生活改善のアドバイスなどです。

さらに、従業員の健康に関する相談に応じたり、職場の人間関係の悩みやストレスにも耳を傾けたりして、従業員が心身ともによい状態で働けるようにサポートします。

ときには勤務状況(残業時間など)が従業員の健康を損ねていないか、その傾向がないかといった情報を調べ、企業や組織に対して働く人々の健康を維持するための提案を行います。

なお、工場などケガが発生しやすい場では、ケガの処置なども担当します。

メンタルヘルスに関する仕事が重要視されるように

保健師は、さらに職場の過重労働対策、職場視察の同行や安全衛生委員会への出席・提言など、企業や組織内における予防医学の専門家としての業務も担当します。

なかでも最近、産業保健師の仕事として重要視されているのが、従業員のメンタルヘルス対策です。

2015年に「労働安全衛生法」の改正があり、従業員が50人以上いる事業所においては、毎年1回ストレスチェックの検査を行うことが義務付けられることになりました。

このストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に職員や従業員が記入回答し、それを集計及び分析することで、その人のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

この検査を通して、職員や従業員のストレス状態を知ることでうつなどのメンタルヘルスの不調を未然に防止したり、職場環境の改善につなげることを目的としています。

このストレスチェックが行えるのは、医師か保健師など限られた医療有資格者と定められています。

産業保健師に求められるもの

産業保健師に一般的に求められるのは、医療や保健に関する幅広い知識と判断力、ヒアリング力、カウンセリング能力です。

一般的に、企業や大学内の保健室には、「産業医」と呼ばれる常勤の医師はいないケースがほとんどです。

そのような組織において、職員や従業員が体調不良やメンタル不調を訴えた場合には、保健師が専門知識を生かして対応します。

技術面では、病気の看護や傷の手当てなど、看護師としての知識と技術が生かされる場合が多いといえるでしょう。

企業内の保健室で対応できることは限界があるため、医療機関を受診すべきかどうかなどといった判断も保健師に任せられます。

また、職員や従業員が心身ともに健康な状態で就労するために、保健師は相談相手としての役割も求められており、カウンセラーの資格を取得する保健師もいます。

産業保健師に求められるものは、業種や職種など、企業や組織によっても異なります。

実際に産業保健師として働こうとする場合は、企業の特色や仕事内容、その職場で保健師に求められる業務をよく知る必要があります。

産業保健師として働くには

産業保健師は、あくまでも保健師の一種です。

この仕事に就くには、まず保健師になるための保健師国家試験および看護師国家試験への合格が必須です。

保健師免許取得後は、企業の採用試験を受けるのが一般的な流れです。

ただし、産業保健師を正社員として採用しているのは、現状では一部の大手企業がほとんどで、全体としては求人数が少なく、狭き門となっています。

また、多くの企業で保健師は一人体制の場合がほとんどでもあるため、求人の絶対数が少ないことだけでなく、欠員補充といった機会もあまりありません。

さらに、企業は産業保健師の経験者採用を希望する場合が多いため、新卒者にとっては厳しい就職活動になるでしょう。

産業保健師を志望する場合は、こまめに求人をチェックしながら情報キャッチに努めることが重要です。