不動産鑑定士と税理士の違い
不動産鑑定士と税理士の仕事内容の違い
不動産鑑定士は、国や地方自治体、裁判所といった公的機関や、金融機関、一般企業といった民間から依頼を受けて、土地や建物の価値を鑑定評価する仕事です。
これに対し税理士は、法人・個人と顧問契約を締結し、法人税や所得税を計算したり、年末調整や確定申告といった作業を代行することがおもな仕事です。
端的にいえば、不動産鑑定士は「不動産」の、税理士は「税」のプロフェッショナルであり、お互いの業務内容は一見すると関係性がないように感じられるかもしれません。
しかし、両親や親族から遺産を引き継ぐ際の相続税や、不動産所有者が毎年支払わなければならない固定資産税など、不動産と税金が両方関係するケースは少なくありません。
こうした税金は一般的に高額にのぼることが多いため、クライアントの意向によっては、納税額をできるだけ安く抑えるため、不動産鑑定士と税理士が協同でひとつの案件に取り組むこともあります。
20代で正社員への就職・転職
不動産鑑定士と税理士のなる方法・資格の違い
不動産鑑定士になるためには、不動産鑑定士試験を受けて合格する必要があります。
一方、税理士になるには、税理士試験を受験する方法が最も一般的ですが、ほかにもいくつかのルートが存在しています。
たとえば、税務署に就職し、職員として23年以上の実務経験を積むと、税務に十分精通しているとみなされて無試験で資格が得られますし、公認会計士資格を取得すると同時に税理士資格も得られます。
また、双方の資格とも、業務を行うためには資格取得後に所定の条件をクリアすることが必要です。
不動産鑑定士については、約2年間の実務研修を積んだ後に、修了考査を受けて合格しなければなりません。
一方、税理士については、研修や試験などはないものの、税理士事務所などで2年間の実務経験を積むことが条件となっています。
不動産鑑定士と税理士の資格の難易度の違い
不動産鑑定士試験と税理士試験は、試験制度自体がかなり異なるため、難易度については一概に比較できない部分があります。
税理士試験は、会計や税務などの全11科目のうち5科目に合格することが必要ですが、1科目に合格するだけでも数百時間単位の勉強が必要であり、数年かけて合格を目指すケースが一般的です。
これに対し、不動産鑑定士試験には、科目別合格のような制度はなく、一次試験の短答式、二次試験の論文式に分かれているだけです。
つまり、合格までに必要となる総期間を比べれば、税理士のほうが不動産鑑定士より長くなるものの、科目別合格制度がある税理士は、一度にすべてを勉強する必要がない分、負担としては軽くなります。
反対に、不動産鑑定士は幅広い分野を一度に勉強しなければならない分、勉強の負担は重くなりますが、勉強期間自体は1年半~2年ほどが目安であり、税理士ほど長くかかることは少ないでしょう。
あえて両者の難易度を比較すれば、やはり集中的に勉強しなければならない不動産鑑定士試験のほうが、税理士試験よりも難関とみなされることが多いようです。
20代で正社員への就職・転職
不動産鑑定士と税理士の学校・学費の違い
不動産鑑定士試験に学歴などの受験資格はなく、どこかの学校に通うことは必須ではありません。
これに対し、税理士試験には受験資格が設けられており、条件は複数ありますが、大学に通って法律や経済に関する科目を履修すると受験資格が得られます。
したがって、税理士試験を受けるならば大学の文系学部に進学することが望ましいでしょう。
また、どちらの資格も非常に難関ですので、大学に通っているかどうかに関わらず、資格の専門学校や予備校に通って勉強する人が大半です。
日中は社会人として働いている人の場合、仕事のあと夜間に開かれている講座に通ったり、通信教育を利用して自宅で学習する人もいます。
不動産鑑定士と税理士の給料・待遇の違い
不動産鑑定士の給料は、年収600万円~700万円程度が相場とされており、資格取得までの道のりが困難であるぶん、一般的な会社員を大きく上回る収入が期待できます。
税理士の年収もほぼ同水準であり、700万円前後がボリュームゾーンであるようです。
ただし、どちらの資格についても、一般会社員と比べると実力主義の傾向が強く、キャリアを積んで大手企業や外資系企業で活躍している人のなかには年収1000万円を稼いでいる人も少なくありません。
また、独立開業することもできる資格で、経営が軌道に乗れば勤務時代の収入を大きく超えることも不可能ではなく、とくに開業税理士の場合、平均年収が3000万円というデータもあります。
ただ、不動産鑑定士・税理士ともに、古くから各都市に根づいている事務所が幅を利かせているせいもあって、新規参入しても成功するのは容易ではありません。
不動産鑑定士と税理士はどっちがおすすめ?
不動産鑑定士と税理士はどちらも独占業務をもつ文系専門職であり、また試験の難易度も似通っているため、どちらを目指すべきか迷っている人も少なくないかもしれません。
両者の試験制度の違いに焦点を当てた場合「受験資格の有無」と「科目合格の有無」の2点が挙げられます。
前者についてみれば、税理士試験の受験資格を満たしやすい大学の文系出身者は税理士のほうが、それ以外の人は、前段階のステップを踏む必要がないぶん、不動産鑑定士のほうが目指しやすいでしょう。
後者についていえば、仕事に追われる社会人は、1科目ずつ分けて受験できる税理士のほうが、反対に、まとまった勉強時間を確保できる人は不動産鑑定士のほうが、それぞれ目指しやすいといえます。
ただ、どちらを目指すにしても、非常に厳しい難関であることには違いありません。
途中でモチベーションを失わないためにも、資格取得に至るまでだけでなく、働きだした後のことも考えて、自身の将来像を明確にイメージしておくことが大切です。