宅建士試験の難易度・合格率
合格率は15~17%とあまり高くはありませんが、受験制限がない試験ゆえに「お試し受験」のような人も少なからずいることから、コツコツと計画的に勉強をすれば実務未経験者でも十分に合格を目指せます。
この記事では、宅建士試験の内容や難易度・合格率、勉強方法、独学のポイントなどについて、詳しく解説しています。
・不動産業界の就職・転職で役に立つ人気国家資格
・合格率は15~17%程度、勉強時間の目安は約400時間
・独学合格も目指せるが、最短で合格したい人は通信講座やスクール利用がおすすめ
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宅建士資格とは
宅建士とはどんな資格?
宅建士(宅地建物取引士)とは、国土交通省が管轄する国家資格です。
年に1回実施される「宅建士試験」に合格した後、都道府県知事への資格登録をし、宅建士証の交付を受けることによって、宅建士としての仕事ができるようになります。
宅建士には、大きく分けて以下3種類の「独占業務」があります。
- 重要事項の説明
- 35条書面(重要事項書面)への記名
- 37条書面への記名
上記の業務は、一般の人々がお部屋探しをするときの「賃貸仲介」も含め、さまざまな不動産取引を行う際に欠かせないものです。
ニーズが大きいこともあって、宅建士試験は年間約20万人が受験しており、多様な不動産関連の資格のなかでも最もメジャーなものといえます。
宅建士資格取得のメリットは?
不動産業界での就職・転職に有利
先述した通り、宅建士には独占業務があり、不動産取引の場においていなくてはならない存在です。
また、不動産業の事務所においては「業務に従事する者」5人につき1人以上の割合で、専任の宅建士を設置することが義務付けられています。
こういった事情から、宅建士資格を取得していれば、不動産会社への就職・転職の際にプラス評価されることが多いです。
ただし、宅建士の資格登録者数は年々増え続けており、2024年3月時点で約118万人となっています。
不動産業界で働く上で、この資格を持っていることはもはや当たり前になりつつあるため、宅建士資格を取れば生涯安泰と考えるのは厳しいのが実情でしょう。
昇進・ステップアップにつながる
とはいえ、宅建士資格を取ることで社内で昇進したり、「資格手当」が付いて収入アップにつながったりすることもしばしばあります。
また、宅建士とあわせて他の国家資格を取得し、多方面に知識を深めていくことによって、独立・開業などステップアップも目指しやすくなります。
宅建士との関連性がある他の国家資格としては、「司法書士」「行政書士」「不動産鑑定士」「土地家屋調査士」「マンション管理士」などが挙げられます。
加えて、宅建士として身につけた知識は、自分で不動産を購入したり建てたりする際にも役立つため、直接的に業務とは関わりのない点でのメリットもあります。
宅建士試験の出題内容・形式
宅建士試験は全50問、大きく分けて「4科目」で構成されています。
各科目とも、4つの選択肢のなかから答えを選ぶマークシート形式で実施されます。
試験科目と出題数は以下の通りです。
- 宅建業法:20問
- 権利関係(民法など):14問
- 法令上の制限:8問
- 税・その他:8問
※ただし、登録講習修了者は試験の一部が免除され、全45問の出題となります。
このうち最も出題数が多い「宅建業法」は、宅地や建物の取引に関するルールを定めた法律で、宅建士としての実務でも必ず必要になる知識です。
権利関係では、民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法から出題されますが、その多くを民法が占めます。
法令上の制限は、国土利用計画法や都市計画法、建築基準法など、土地や建物に関する権利を制限する法令についての問題が出題されます。
税・その他では、固定資産税や登録免許税などの不動産関係の税、また鑑定評価基準、土地・建物などから出題されます。
合格最低点(合格ライン)は年度ごとに変わりますが、2013年から2021年までの試験結果を見ると、31点~38点におさまっています。
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宅建士試験の受験資格は?
宅建士試験には、年齢や学歴などの受験要件は一切定められておらず、誰でも試験を受けることが可能です。
実務経験も求められないため、すでに社会人として働いている人はもちろん、学生やアルバイト、主婦など、さまざまな受験者がいます。
例年、合格者の平均年齢は33~35歳ほどですが、受験者は20代が最も多い一方、40代以上の受験者も少なからずおり、幅広い年代の人がこの試験を受けています。
なお、過去試験の合格者のうち、最年少は12歳、最年長は90歳です。
ちなみに、宅建士試験自体に受験資格はありませんが、試験合格後、資格を登録するためには以下3つのいずれかを満たさなくてはなりません。
- 宅地建物取引業における実務経験を2年以上積む
- 国土交通大臣の登録を受けた、宅地または建物の取引に関する実務の講習を修了する
- 国や地方公共団体や、これらの出資によって設立された法人で、宅地や建物の取得業務または処分業務に通算で2年以上従事する
宅建士試験の難易度はどれくらい?
宅建士試験の合格率は15~17%
宅建士試験の合格率は、近年では15~17%前後を推移しています。
毎年20万人ほどが受験し、3万人前後の人が合格しています。
宅建士は相対評価の試験であり、合格率がだいたい15%程度になるように毎回の試験で合格最低点が変動します。
できるだけ高得点率を目指すことが、確実に合格するポイントです。
宅建士試験の合格率が低い理由は?
宅建士試験の合格率は決して高い数字ではありませんが、「司法試験」や「公認会計士」のような最難関国家資格、また「不動産鑑定士」や「税理士」のような難関国家資格に比べれば合格しやすいといわれています。
宅建士試験の合格率があまり高くない理由の一つは、試験主催者側が合格者数を調整していることです。
毎回の宅建士試験の受験者は非常に多いため、合格者が一気に増え過ぎないように、受験者全体の得点を見た上で、15~17%程度の合格率になるように合格ラインが定められます。
単純にいえば、自分が高得点を取ったとしても、それ以上に試験の出来がいい受験者が全受験者の2割以上いた場合には、不合格になってしまう可能性があるということです。
また、宅建士には受験制限がないことから、試験に対してあまり本気ではない受験者が一定数いることが考えられます。
お試し受験の人や、会社からの命令で仕方なく受けている人、勉強不足の人なども少なからずおり、受験者数の多さの割に不合格者数も多い試験となっています。
実際の宅建士試験の難易度は合格率から感じられるほどではなく、きちんと真剣に対策すれば、十分に合格できるレベルです。
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宅建士試験の勉強時間・勉強方法
宅建士試験の勉強方法の種類
独学
宅建士試験の勉強方法の主流は独学です。
宅建士試験は、正しく対策をすれば独学での合格は決して難しくない試験といわれています。
人気資格であるため、市販の参考書・問題集も数多く出回っていますし、「宅建士試験独学のコツ」のような情報もネット上にたくさん出ています。
もちろん計画的に勉強を続ける姿勢は必要ですが、一人で勉強することをあまり苦にしない人や、すでに不動産関連の知識が多少なりともある人であれば、そこまで苦労しないはずです。
ただ、独学をする場合には、少し余裕を持った学習スケジュールを立てておくとよいでしょう。
通信講座を受ける
完全に独学では不安という人は、通信講座を活用する方法を検討してみてください。
宅建士試験の勉強ができる通信講座には「ユーキャン」「クレアール」「アガルート」などがあり、受講料は5~6万円ほどのものが多いです。
この後に紹介する予備校・スクールに通うより費用を抑えつつも、ポイントをおさえてわかりやすく学べるテキストを使い、計画的に学習していけることは通信講座の魅力です。
仕事が忙しいなどの理由で決まった時間や場所で勉強するのが難しい人も、通信講座であれば自分のペースで学習を進めやすいでしょう。
予備校・スクールに通う
自宅ではだらけてしまう、すぐに講師に質問できる環境が望ましいと考える場合には、予備校・スクールに通学して試験合格を目指す方法もよいでしょう。
初学者向けに1年ほどじっくり時間をかけて学べるコースや、3~5ヵ月ほどで短期合格を目指すコースなど、さまざまなコースが用意されています。
また「LEC東京リーガルマインド」や「資格の大原」のように、校舎に通ってWeb・映像講義を受けるスタイルの予備校もあります。
受講費は最低でも10~15万円程度するものが多く、独学や通信講座に比べて割高ではありますが、確実かつ効率的に学んでいきたい人にはおすすめです。
宅建士試験の勉強時間は約400時間・勉強期間は半年~1年
宅建士試験合格のために必要な勉強時間の目安は400時間ほどとされています。
1日平均1~2時間勉強するなら、半年~1年ほどの準備期間を要する計算になります。
「数千時間の勉強時間が必要」といわれる他の難関法律系資格に比べれば、宅建士はだいぶ短い時間で合格を目指すことができます。
日々コツコツと勉強を続けつつ休日にはまとまった勉強時間を確保できる人、通信講座を使って効率的に勉強をしようと考えている人であれば、3か月程度でも合格することは可能でしょう。
ただし、不動産関連の知識がまったくない初学者の人、完全独学で進める人、勉強があまり得意でない人などは、500時間以上の勉強時間が必要になることがあります。
宅建士試験は毎年10月の第3日曜日に実施されるため、自身の勉強スタイルに合わせ、逆算して計画を立てていきましょう。
宅建士試験合格は独学で可能?
先述したように、宅建士試験を受ける人は独学をする人も少なくありません。
ただし、独学には向き・不向きがあるのも確かです。
「自分一人でコツコツと勉強をするのが得意」であれば、十分に独学合格を目指していくことができるでしょう。
逆に、誰かにお尻をたたかれないとつい怠けてしまう人や計画的に勉強をするのが苦手な人は、完全な独学では苦労すると考えておいた方がよさそうです。
独学の場合には、主に市販の参考書・問題集を使っていくことになります。
宅建士は多数のテキストが出版されているため、ネットなどを使って情報収集し、独学での合格経験がある人がおすすめしているテキストを中心に集めていくとよいでしょう。
ただ、他の人がおすすめしているテキストであっても、最も大事なのは「自分にとって使いやすいと感じるかどうか」です。
実物を書店で手に取ってパラパラとめくりながら、これなら続けられそうだと思うものを選びましょう。
なお、自分の苦手科目を知ることと、試験の形式や会場の雰囲気に慣れておくためにも、資格の予備校などが実施している「模試」は積極的に受けておくことをおすすめします。
宅建士試験の難易度を下げるには?
宅建士試験には、試験の「一部免除制度」が設けられています。
具体的には、宅地建物取引業者として登録している不動産会社などに勤める人は、登録講習を受けて修了試験に合格することで、宅建士試験50問のうち5問が免除されるというものです。
これにより、たとえば合格点が35点だった場合、5問は自動的に正解扱いとなり、30点で合格となるため、試験の難易度は下がります。
ただ、登録講習では2か月間の通信教育やスクーリングなどを受けなければならず、負担は決して軽くない一方、免除されるのは比較的簡単な分野の問題であり、そこまでうま味があるわけではありません。
また、学生や別業界で働く社会人など不動産会社で働いていない人については、そもそも講習を受ける資格がないため、注意が必要です。
宅建士試験の受験者数・合格率
宅地建物取引士試験受験者数の推移
宅地建物取引士試験の受験者数は、20万人前後を推移しております(令和2年12月と令和3年12月を除く)。令和5年度の受験者数は前年より増加し233,276人となりました。
宅地建物取引士試験合格率の推移
宅地建物取引士試験の合格率は、15%~17%前後を推移しており例年ほとんどが変化がありません。令和5年度試験の合格率は17.2%となっています。
令和6年度 宅地建物取引士資格試験の概要
試験日 | 令和6年10月20日(日) |
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願書受付 | インターネット:令和6年7月1日(月)から同年7月31日(水) 郵送:令和6年7月1日(月)から同年7月16日(火) |
試験地 | 原則として、現在お住まいの試験地(都道府県)での受験となります。 10月初頭に送付する予定の「受験票」でお知らせいたします。 |
受験資格 | 受験資格に制限はありません |
試験内容 | 50問・四肢択一式による筆記試験 1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。 2.土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。 3.土地及び建物についての法令上の制限に関すること。 4.宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。 5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。 6.宅地及び建物の価格の評定に関すること。 7.宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。 ※出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。 |
合格基準 | 50問中36点(令和5年度) |
合格率 | 17.2%(令和5年度) |
合格発表 | 令和6年11月26日(火) |
受験料 | 8,200円 |
詳細情報 | 税関 通関士試験 |
宅建士試験の難易度まとめ
宅建士試験は、毎回の合格率が15~17%程度になるように調整されており、合格最低点が毎回変動することが特徴です。
できるだけ高得点を目指して勉強をしていくことが、確実に合格するためのポイントです。
早ければ3か月程度、長くても1年以内の勉強で合格している人が多いようです。
独学で合格する人もいますが、あまり自信がない人、最短で効率的に学びたい人は、通信講座やスクールを活用することも考えてみるとよいでしょう。