消防士の年収・給料を階級別に紹介・ 高卒と大卒で差はある?

消防士の平均年収の概要

公務員である消防士は、各地方自治体の消防本部や消防署に所属して働きます。

職員の採用も自治体ごとに行われており、給与をはじめ、勤務時間やその他の勤務条件は、市町村の条例によって定められています。

そのため、所属する自治体によって給料・年収には違いがありますが、同じ公務員のなかでも、職務の特殊性や危険性などから、一般事務に携わる職員よりも1割ほど高めの給与水準となっています。

また、出動回数などに応じた手当の支給もあり、危険をともなう現場でも、安心して働けるような待遇が用意されています。

消防士の平均年収・月収・ボーナス

令和2年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によれば、消防職員の平均給料月額は、30万514円(平均年齢38.3歳)となっています。

また、平均諸手当月額は9万3,496円と、他の職業に比べ非常に高くなっています。

ここには出動手当など消防士ならではの手当が含まれています。

自治体ごとに給料の金額を定めている「給料表」は異なりますが、同じ自治体内であれば、事務などを担当する行政職の職員よりも1割ほど高い給料が支払われます。

ボーナスの支給状況は自治体によって異なり、おおよそ平均給料月額の4.05〜4.65ヵ月分ほどとなっています。

上記のことから、ボーナスを含めた平均年収は650万円~700万円ほどと推定されます。

総務省の令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果によると、平均年収は635万円となっています。

高卒と大卒で年収に違いはある?

初任給は全国的に、高卒よりも大卒の方が高い傾向があります。

自治体によってその額は異なりますが、両者では月給で3~4万円ほど差があるようです。

基本的に高卒と大卒で仕事内容に変わりはありませんが、年齢を重ねると大卒の人のほうが昇進・昇給しやすくなっているため、給料も高めになること事が多いようです。

一方で、消防士は高度な技能が求められるため、経験がを積んだり昇進試験を受けたりすれば、高卒の人が大卒の人の階級を抜くことも珍しくありません。

このため一概に大卒の方が給料がよいとはいえません。

消防士の階級による年収の差は?

消防士の階級は以下のように定められています。

・消防総監
・消防司監
・消防正監
・消防監
・消防司令長
・消防司令
・消防司令補
・消防士長及び消防士

東京消防庁の場合、消防士ではおよそ400万円ほど、消防隊、救急隊、はしご隊、救助隊などの部隊の隊長となれる消防司令補や消防士長に昇給すると、年収500万円を超えるようになってきます。

消防士全体の5%に満たない消防司令長まで昇りつめると、年収600~700万円をゆうに超える人も少なくないです。

消防士のトップである東京消防庁の消防総監になると、その年収は1,000万円以上になるようです。

ただし、自治体によって消防士の階級と職務には差があり、給料にも違いが出てきます。

消防士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

消防士の手取りの平均月収は、平均給料月額の7~8割ほどとなります。

40万円ほどの月給であれば、32万円前後が手取りの月収となります。

消防士の場合、不規則な勤務体系となり出動手当等の支給金額が大きめとなっているので、出動件数によっては、同世代の地方公務員よりも多くの収入を手にしている人もいるようです。

各種手当の充実度なども踏まえると、それなりによい給料や待遇で働けますが、勤務時間が不規則であったり、危険な現場に出動しなくてはならなかったりと、その分、大変なこともあります。

消防士の初任給はどれくらい?

消防士の初任給は自治体によって異なりますが、学歴や試験区分によっても違いがあり、大卒者のほうが高卒者よりも数万円ほど高めになっていることが多いようです。

たとえば東京消防庁の令和4年度職員採用募集要項によると、初任給は、

・専門職採用者が約261,300円
・I類採用者が約253,000円
・II類採用者が約239,900円
・III類採用者が約213,900円

となっています。

※この数字は、令和4年1月1日の給料月額に地域手当を加えたものとなっています。

20代・30代・40代の年収はいくら?

令和2年4月1日現在の地方公務員給与実態調査や、各自治体で公開されている公務員の給与などから見ると、消防士の平均年収は、20代では400万円前後と一般的です。

ただし30代になると一気に上昇し600万円~700万円ほど、40代になると700万円を超えるとされています。

50代で順調に昇給すると、700~800万円以上を目指せることも珍しくありません。

ただしこれは採用された自治体や配属されたポジション、仕事内容によって変わるため、これらよりも年収が低くなる可能性もあります。

消防士の福利厚生・待遇の特徴は?

消防士に支給される各種手当

身を危険にさらすことが多くなる消防士の仕事は、デスクワークの公務員と比べると、やはり心身ともに大きな負担を要します。

こうした職務の性質から、消防士は月額の給与とは別に各種手当が支給されます。

その額は自治体によって異なりますが、毎月数万円から10万円を超えるケースもしばしば見られます。

手当の例としては、まず、火災や事故の現場に急行する第一線で働く消防士の場合、出動の回数に応じて「消防業務手当」が支給されます。

また、非番の日に緊急出動があった場合の「緊急出動手当」、さらに隊長になるとその職務に対する「警防手当」や、梯子隊としての業務に従事した場合の「梯子手当」などもあります。

こうした手当の支給額は、1回につき数百円程度とそこまで大きい額ではありませんが、消防署によっては出動回数が非常に多くなるため、結果としてだいぶ給料に上積みされることになる人もいるようです。

万が一の事態を助ける補償制度がある

消防士は常に危険と隣合わせの仕事です。

一般的な公務員と比べて負担が大きい職務内容となるため、さまざまな補償制度が用意されています。

そして職務中にケガをしたり、万が一、殉職してしまった際には、各種補償を受けることができます。

たとえば、入院が必要など一定期間職務に戻れない場合には「療養補償」や「休業補償」が、職務で障害を負ったり殉職してしまったりした際には「介護補償」「障害補償」「傷病補償年金」「遺族補償」および「葬祭補償」などが支給されます。

また、社会復帰に要する費用や、遺族への援護資金が支給される場合もあります。

消防士が加入できる保険

とくに家庭を持つ消防士の場合、ほとんどの人が手厚い補償が受けられる保険に加入しています。

消防士を対象とした死亡保険・入院保険・傷害保険には民間のサービスもありますが、消防署全体を対象とした団体保険に加入することもできます。

団体保険は全国の消防士が加入する財団法人全国消防協会などが提供し、民間の保険よりも安く加入することができるという特徴があります。

しかし、こうした団体保険はあくまでも定期であり、それに加えて別の民間の終身保険に加入することもできます。

自分の職務内容のリスクや家庭状況などをよく考え、バランスの良い保険を組むことが大切だといえるでしょう。

消防士の寮

多くの消防署では、消防士専用の寮が完備されています。

独身寮だけでなく家族寮もあるため、結婚してから住まいの心配をする必要はないかもしれません。

こうした、いわゆる公務員宿舎は家賃や共益費が一般のマンションなどと比べて非常に安くなっています。

消防士は心身ともにハードな仕事ではありますが、その分、公務員としての手厚い待遇の下に働くことができます。

消防士は退職金が高い

消防士の退職金は自治体の給与条例で定められており、定年まで勤めた場合でおよそ2200万円です。

一般的な職業と比べると非常に高いように思えますが、消防士がほかの地方公務員と比べて特別に退職手当が多いわけではありません。

一般的な消防士は20代前半、や高卒後の10代後半に働きはじめ、そのまま定年まで働き詰めるケースが多く、勤務年数はほとんど上限に到達してから定年退職にすることが多いからです。

このため、退職手当も比較的高額になる傾向があり、消防士の退職金は高いというイメージにつながっているようです。

さらに、消防士を対象とした保険サービス、消防署全体を対象とした団体保険に加入することもでき、民間の保険よりも安く加入することができるという特徴があります。

このようにさまざまな補償制度があるからこそ、消防士は身を挺して働くことができるのです。

主な自治体の消防士の年収

東京都(東京消防庁)

東京消防庁は東京都のほぼ全域を担い、ほかの自治体の消防と一線を画す存在です。

消防士の給与は都から支払われるため、年収はほかの自治体に比べると給料も高めに設定されています。

初任給も年収286万円と、全国平均の247万円に比べ高めになっています。

神奈川県 横浜市

神奈川県 横浜市消防の平均年収は704万円です。

横浜市全域をカバーすることや、特に人口の多い地域であることから、年収も高めとなっています。

大阪府 大阪市

大阪府 大阪市消防の平均年収は659万円です。

東京都に比べると低めではありますが、関西圏ではトップクラスの年収です。 

レスキュー隊の給料は?

消防士には、いわゆる消防隊員だけでなく、はしご隊員、救助隊員(レスキュー隊員)、救急隊員などさまざまなポジションがあります。

なかでも救助活動を専門とする「レスキュー隊」や「ハイパーレスキュー」は消防の花形ではありますが、その給料はほかの消防士と同じ俸給表で決まっており、大きな金額の違いはありません。
レスキュー隊になるには

ただし、救急救命士」の資格者は、資格手当が上乗せされ比較的給料が高くなる傾向にあるようです。

救急救命士の給料・年収

そのほか、消防士のなかには火災原因調査員や予防課員など縁の下の力持ちとして直接火災現場でない場所で働く人もいますが、こうした場合も基本的に給料は変わりません。

ただし仕事内容により手当や勤務日数に違いが出てくるため、数万円の差が出てきます。

消防士の給料・年収は低い?

さまざまな手当がつく

消防士は、俸給表に基づく給与のほか、別途10万円程度の手当が支給されます。

諸手当には「出動手当」や「扶養手当」などが含まれます。

それ以外に、火災や災害等の現場に出動した場合には「消防業務手当」が、緊急の業務のため出勤した場合には「緊急出勤手当」が支給されます。

これらの手当の1回の支給額は数百円程度ですが、消防署によっては月に相当数の出動があるため、この手当で給料がだいぶ上積みされる人もいるようです。

行政職よりも高めの給料設定となる

消防士の給料は、職務の危険性や、勤務体系が24時間勤務と非番を繰り返すなど特殊なことから、一般の公務員と異なる給料表が適用されます。

消防士の給料表は各自治体が定めているため、どの自治体に所属するかによって適用される給料表は変わってきます。

ただ、自治体に対しては現在の国(国家公務員)の「公安職俸給表(一)」に相当するものを適用することが望ましいという通達が出されており、実際、多くの自治体において行政職などの一般職員よりも1割程度高水準の給料表が設定されています。

自治体によっては年収に差がある

東京都・神奈川県・大阪府の給与の差を見てもわかるように、自治体によって消防士の年収には差があります。

とくに小さな自治体の場合は昇任できる階級も少なく、給料が頭打ちになってしまうこともあります。

都会であれば必ずしも給料が高いということはありませんが、人口が高いところほど出動回数も多いため手当がつきやすく、この差も給料に大きな影響を与えています。

消防士が収入を上げるためには?

経験を積み上の役職を目指す

公務員である消防士は、年齢が上がるにつれて給料もアップしていきますが、昇任し、階級が上がることで給料の上がり幅が大きくなります。

消防士→消防副士長消防士長→消防司令補…といったように階級を上げるには、昇任試験(選考)を受けなくてはなりません。

採用区分によって、昇任試験を受験するために必要な勤務年数に違いはありますが、公平・厳正な競争試験で行われるので、誰でも出世のチャンスは得られます。

ただ、早いうちに昇任試験を受けて出世したい場合は、高卒よりも大卒の人のほうが有利になります。

自治体によっては、各種研修制度や技術認定試験などスキルアップのための制度が用意されており、仕事をしながら実力を磨けるチャンスは多く用意されています。

消防士の昇給の仕組みは?

消防士は、基本的に一年に一度昇給しますが、階級が自動で上がることはありません。

公務員の給与は、給料表における「級」と「号俸」の組合せで決定しています。

階級が上がると「号」だけでなく「級」も上がり、昇給の額が増加します。

基本的にはほかの公務員と同様、昇任試験に合格することで階級が上がり、それに伴って年収も増えていくしくみです。

昇格の制度は各自治体によって異なりますが、昇任試験を受けて合格しなければ上の階級に上がることはできません。

また、昇任試験を受ける場合、「消防士を◯年以上務めた経験がある者」などと、階級によって必要な勤続年数が定められており、誰でも簡単にステップアップできるわけではありません。

より規模の大きい消防本部に勤務する

より規模の大きい消防本部に就職することができれば、給料がぐっと増えます。

日本の中では東京消防庁が一番大きく、階級も10段階と一番多く、給料も高くなっています。

自治体の消防の規模によっては昇格できる階級に限りがあるので、年収をよりアップさせたい場合、消防本部の規模が大きいところに就職・転職するのがよいでしょう。

上級試験に合格する

消防士(消防官)の試験では上級(Ⅰ類)・中級(Ⅱ類)・初級(Ⅲ類)と、年齢による区分があります。

大卒程度の難易度である上級(Ⅰ類)試験に合格すれば、初任給の段階で数万円の差がつき、若いうちから昇給もしやすくなっていきます。

消防士で高収入を目指したい場合は、上級(Ⅰ類)試験に合格することを目指しましょう。

もうひとつ、救急救命士国家試験を受けて救急救命士の資格を取得する方法もあります。

救急救命士は消防士よりも出動回数が多いため、出動手当が加算されるため給料をよりアップさせることができます。

救急救命士の資格があれば、病院など消防以外の場所で活躍できるチャンスも増えます。

消防士で年収1000万円を目指せる?

消防士の仕事のみで年収1000万円稼ぐのは難しいといえます。

公務員という身分であるため、給与形態も自治体の基準で決まっており、あらかじめ決められた以上の給料が支払われないためです。

ただし、東京消防庁など規模の大きな消防で功績が認められ、消防監、消防正監、消防総監とトップまで昇任し続けていく場合は、1000万円を目指せることもあるようです。

消防士と警察官の年収はどっちが高い?

消防士と警察官の年収を比較した場合、消防士の年収は警察官よりも低くなることが多いようです。

総務省の令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果によれば、警察官の平均年収は約722万円、一方で消防士の平均年収は約635万円です。

似たような職業にもかかわらず年収の差が出ている理由としては、警察の方が手当の額が大きいことがあげられます。

警察はほかの職業よりも圧倒的に手当が多く、またその支給額も非常に高いため、給料全体に占める手当の割合が非常に高いのです。

またキャリア組といわれる、国家公務員総合職採用試験に合格した警察官、いわゆる「警察官僚」であれば、年収1000万円~2200万円まで昇給し続けることも可能です。