消防士が殉職してしまうことはある?

消防士の殉職とは?

「殉職」の言葉の意味

消防士の仕事について調べていると、ときどき「殉職(じゅんしょく)」という言葉を見かけることがあるかもしれません。

殉職とは、職務や業務中の事故などが原因で死亡することをいいます。

消防士のように火災や災害の現場へ出動する機会が多く、身を危険にさらすこともある職業では、他の職業に比べるとやや殉職をする人も多いといわれます。

消防士の殉職者数

それでは、消防士は実際にどれくらいの殉職者がいるのでしょうか。

総務省消防庁が毎年公表している消防白書によると、消防職員の公務災害による死者数は平成30年度中では7人と発表されています。

平成30年版 消防白書

全国の消防署職員の数はおよそ16万人であるため、殉職率は0.01%程度の計算となります。

また、公務により負傷した消防職員の数は2,314人となっています。

この数字が多いか少ないかを一概に述べることはできませんが、日本の消防署の技術水準の高さや、安全管理を徹底する姿勢は年々強くなっているようです。

ただし、平成23年に起こった東日本大震災の際には、住民の避難誘導や水門閉鎖等の業務に従事した消防士の多くが津波の被害に遭い、一般的に消防士といわれる消防職員のほか、民間の特別公務員である消防団員まで含めると、222人もの人が死者・行方不明になったと公表されています。

このような大災害が発生した場合にも、人々を守るために直ちに災害現場へ向かわなくてはならないことは消防士の宿命です。

この仕事に就く以上、そうした覚悟はつねに持っておく必要があるといえるでしょう。

訓練で命を失う消防士もいる

消防士は、現場へ出動しているとき以外にも、日常的な訓練の中でケガをしてしまったり、最悪の場合は命を落としたりしてしまったりする人もいます。

訓練の内容はさまざまで、消防署内で身体を鍛えるなどのものだけでなく、実際に起こりうる事故を想定した高所や急流など危険な場所でも実施されています。

そのようななか、高いところから落下してしまったり、予測できない水の流れに身体を運ばれて命を落としてしまった消防士も過去にはいます。

もちろん、訓練は細心の注意を払いながら行われていますが、事故の危険性をゼロにすることは難しいといえるでしょう。

消防士が殉職した際の金銭的な補償は?

仮に消防士が殉職してしまった場合、その遺族には「死亡退職金」と「賞恤金(しょうじゅつきん)」という補償金が支給されます。

賞恤金とは、公務員が生命の危険を伴って職務に当たり、殉職または重大な傷害を負うなどした場合に各自治体から支給される弔慰金を指します。

この金額は殉職者の功績によって上下し、自治体によってもさまざまですが、およそ500万円~3000万円といわれています。

また、死亡退職金についても自治体によってその額はまったく異なりますが、一般的に退職金は役職の階級が上がるにつれて額も大きくなります。

消防士が殉職した場合には、少しでも手厚い補償となるよう「二階級特進」が慣例となっていることから、定年退職金よりも大きな金額になることも出てきます。