歯科医師(歯医者)の給料や手取りはどれくらい? 初任給も解説
歯の治療や予防だけでなく、美容面でもさまざまなサービスを提供しています。
この記事では、そんな歯科医師の給料・年収について、病院勤めの歯科医師と独立・開業した歯科医師の違いなども含め、詳しく解説しています。
歯科医師の平均年収・給料の統計データ
歯科医師の給与・年収は、さまざまな領域で活躍する医師の中でも高水準といわれることがあります。
しかしながら、すべての歯科医師が高額な収入を得ているわけではありません。
歯科医師の収入は地域や経験、働き方によって大きく異なります。
大手歯科医院や病院の歯科に常勤として勤務している場合、月給は30万円から50万円くらいが一般的です。
加えて賞与が支給される場合もあり、年収は約450万円から700万円程度になることが多いです。
独立・開業して成功すれば、年収1000万円以上を見込むことも可能です。
しかし、近年は歯科医院の数が増加しており競争も激化しているため、事業が軌道に乗るまでは平均的な勤務医の収入よりも少なくなる場合もあるでしょう。
歯科医師の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によれば、歯科医師の平均年収は、42.5歳で924万円ほどとなっています。
・平均年齢: 42.5歳
・勤続年数: 8.3年
・労働時間/月: 167時間/月
・超過労働: 3時間/月
・月額給与: 695,800円
・年間賞与: 893,400円
・平均年収: 9,243,000円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
歯科医師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
正確な歯科医師の給料・年収は、経験年数やスキル、勤務先や働き方などさまざまな要素によって大きく変動します。
若手の歯科医師であれば、年収400万円~500万円程度が一般的であり、ベテランの歯科医師であれば年収1000万円を超えることもあります。
勤務医として街の歯科医院で働く場合、年収570万円であれば、ボーナスが年に2回支給される場合、月の手取りは約25万円~30万円ほどと推定されます。
待遇がよい勤務先では各種手当がつくこともあり、手取り額がさらに高くなる場合もあります。
一方、独立・開業した場合は、売上から様々な経費を差し引いた利益が収入となります。
しかし、高額な医療用機材などの投資が必要となるため、開業直後は収入が限られることが考えられます。
最終的な収入は個人の努力や経営力、勤務先の条件などによって大きく変わるため、将来の収入を考える際には個人の状況に合わせた計画が必要です。
歯科医師の初任給はどれくらい?
歯科医師は、なるまでに大学で6年間の勉強をし、国家資格を取得してからも1年以上の臨床研修を受けなくてはなりません。
研修医時代の給料が非常に低く、手取りにすると10万円少々にしかならない場合もあり、苦しい経済的状況があることは事実です。
一般企業に比べて初期の給料は低いため、若い歯科医師にとっては厳しい時期かもしれません。
しかし、経験を積み、スキルを磨くことで歯科医師の収入は着実に上昇します。
30代を超える頃には年収500万円以上を安定して稼げるようになることが期待できます。
歯科医師を目指す人にとっては、研修医時代の苦しい経済的状況を乗り越えるための覚悟と忍耐力が必要です。
一時的な厳しい状況を耐え抜き、経験を積むことで将来の収入が大きく伸びることが見込まれるでしょう。
歯科医師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
歯科医師の多くは小規模の診療所で働いているため、規模別では10〜99人に属する人がほとんどです。1000人以上の規模に勤める歯科医師は勤務医となり、開業医がほとんど含まれないため、年収は低くなっていると考えられます。
10〜99人の事業所に勤める歯科医師の年収は997万円、100〜999人は604万円、1,000人以上は940万円、10人以上平均は924万円となっています。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
歯科医師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
母数が少ないため、統計にばらつきがありますが、40歳以上の歯科医師はおおむね年収が1,000万円を超えるようです。最も年収が高い世代は、50~54歳の1,377万円です。
全年代の平均年収は924万円となっています。
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歯科医師の給料・年収の特徴
勤務先の種類が多岐にわたり、人によって給料・年収に差が出やすい
歯科医師の勤務先は多様であり、それによって収入にも違いがあります。
個人経営の地域密着型の歯科クリニックや小規模な歯科医院では、患者数が限られることから収入もそれに応じた水準となる場合があります。
一方で、複数名の歯科医師がかかわる大きな歯科クリニックや総合病院の歯科・口腔外科では、規模が大きいため患者数も多くなり、その分収入も増える傾向にあります。
特に保険外の自費診療を多く手がける歯科医院では、歯科医師に高度な技術力や経験を求めることが多いため、その分収入が大きくなるケースがみられます。
こういった歯科医院では、特別なスキルを持つ歯科医師に対して好待遇を提供することで、高品質のサービスを提供し続けることができます。
勤務先の規模や方針、歯科医師自身の技術力・経験のほか、地域の需要や競争状況も給与に影響を与える要因になります。
各歯科医師は自身の専門性やキャリア目標に応じて、最適な勤務先を選ぶことが大切です。
スキルアップによって収入が上がる
歯科医師がより高い収入を得るためには、持続的な努力とスキル向上が重要です。
歯科医師は専門的な技術や知識を持つことが求められるため、新しい治療法や技術の学習に努めることが大切です。
例えば、歯列矯正やインプラントなどの専門技術を習得することで、患者からの信頼を得るだけでなく、高度な診療を提供することができます。
これにより、給与の面でもプラスの影響を及ぼすことがあります。
また、患者数や治療数に応じて給与や賞与を増減させる制度を取り入れている歯科医院もあります。
これは歯科医師の貢献度に応じて報酬を調整する仕組みで、成果に応じて収入を増やす動機付けになるでしょう。
さらに、独立・開業を選択することで、歯科医師自身が経営者となり、自身の能力や努力次第で収入を増やしていくチャンスを得ることができます。
歯科医師の特徴は、自らの実力やスキルを最大限に発揮して収入を向上させることが可能な点にあります。
歯科医師の給与・収入は、自身の努力や専門性、経験に大きく影響される職業であり、積極的なスキル向上と持続的な学びの姿勢が重要だといえるでしょう。
歯科医師の福利厚生の特徴
歯科医師の勤務先には、さまざまな医療機関がありますが、福利厚生の充実度も各医療機関によって異なります。
規模の大きな総合病院や大学病院、大型法人が運営するクリニックは、一般的な企業と同様に各種制度が整っている傾向があります。
たとえば、各種社会保険や通勤手当、住宅手当、家族手当などの基本的な福利厚生に加えて、退職金制度や保育所の利用、資格取得支援制度、健康診断など、より充実した制度が提供されています。
これにより、歯科医師が働きやすい環境が整えられています。
また、地域密着型の歯科クリニックでも、福利厚生が整っていることが多いです。
歯科医師が連休を取りやすい環境であることも、歯科医師にとっては魅力的な点でしょう。
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歯科医師の勤務先別の給料・年収
民間の医療機関で働く歯科医師
一般的に、民間の医療機関で働く歯科医師の給与は能力と経験に応じて決まるといえます。
初めて現場に出てからの経験年数が5年以内では、年収500万円~600万円程度が一般的とされています。
しかし、経験を積み重ねてベテランになると、年収1000万円以上を得ることが難しくないというのは事実です。
また、歯科医師の給与に影響を与える要因としては、勤務先の規模も重要です。
医療法人や大きな歯科クリニックでは、患者数が多く、高度な設備やスタッフが揃っている場合が多く、その分給与や待遇が良いことがあります。
一方で、給与だけでなく、勤務先の環境や福利厚生、ワークライフバランスなども歯科医師の転職に影響を与える要素です。
腕のよい歯科医師が、より給料・待遇の良い勤務先を求めて転職する例は多く見られます。
公務員として働く歯科医師
公務員として働く歯科医師は、大きく「国家公務員」と「地方公務員」の2種類に分けられます。
国家公務員(医系技官)
国家公務員としての歯科医師は、主に「医系技官」として専門的な知識を生かし、厚生労働省や関連する機関で保健医療に関連する政策立案や実施、研究などを担当します。
国が直接する医療機関に勤める国家公務員の歯科医師もいます。
国家公務員歯科医師の給与は、法律にもとづいた「俸給表」に沿って支給されます。
以下の図は、人事院の「平成4年国家公務員給与等実態調査」をもとに、国家公務員の医師および歯科医師の給料・年収を表したものです。
国家公務員の医師・歯科医師は「医療職俸給表(一)」が適用され、平均年齢52.8歳、平均経験年数25.8年で、平均年収は約1,370万円です。
専門性の高い職種であるため、国家公務員のなかでも俸給表の設定は高水準となっています。
地方公務員
地方公務員としての歯科医師は、自治体の職員として採用される場合や、各地域の公立病院に勤務する場合などがあります。
地方公務員としての給与は自治体ごとに定める「給料表」に沿ったものになりますが、通常、国家公務員よりはやや低めです。
また、民間の病院・クリニック勤務の場合と比べても、年収はやや低めになることもあります。
ただし、ボーナスも含めた安定した収入と福利厚生を得られるのは、公務員として働く魅力といえるでしょう。
歯科医師の正社員以外の給料・年収
非常勤
歯科医師が非常勤で働く場合、勤務する日数や時間に応じて給与が支払われることが一般的です。
非常勤としての給与は、通常時給制で支払われることが多いですが、一部の医療機関では日給や週給での支給も行われることがあります。
非常勤の場合、常勤と比べて勤務日数や時間が限定されるため、収入は常勤よりも低めになりやすい傾向があります。
一方で、出勤日数や時間がフレキシブルに調整できるため、ライフワークバランスを重視しながら働くことができるという利点もあります。
また、非常勤の歯科医師は複数の歯科医院を掛け持ちして働くケースもあります。
これにより、給与を増やすことができると同時に、異なる診療や症例に携わることでスキルを磨く機会も得られます。
派遣社員
歯科医師が派遣スタイルで働く場合は、一般的には紹介予定派遣になります。
医師の労働派遣が法律上認められていないため、紹介予定派遣は派遣先の医療機関に一定の期間での正社員としての採用を前提として派遣される形態です。
派遣スタイルを選択する理由として、決まった期間や時間しか働けない、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を求めるといった要因が挙げられます。
一般的な派遣とは異なり、歯科医師のように国家資格や専門的な知識・技術が必要な職種では、時給が高めに設定されることも多く、時給3,000円以上のケースもあります。
ただし、派遣の求人数は一般の医療機関の求人に比べて少ない場合があるため、希望条件に合う派遣求人を見つけることが難しいこともあります。
独立・開業
歯科医師の中には将来的に独立・開業を目指す人が多いです。
開業医は自分で経営方針を決めることができるため、自分の理念やビジョンに基づいた診療を行うことが可能です。
また、得意分野に特化した診療を提供することで、地域のニーズに応えることができるでしょう。
収入面でも、経営に成功すれば年収1000万円を超えることができる可能性があります。
歯科医院は保険外の自費診療を行うことができるため、高額な治療を提供することで収益を上げることができる場合があります。
しかし、歯科医院の競争は激化しており、特に都市部では多くの歯科医院が存在し、患者数を確保することが難しい場合もあります。
また、設備や人件費などの経営コストもかかるため、経営状況によっては収益が得られない場合もあります。
開業医として成功するためには、経営能力やマーケティング力だけでなく、質の高い診療と患者への満足度を重視することが重要です。
歯科医師が収入を上げるためには?
現在の日本の歯科医師を取り巻く状況は厳しいものとなっています。
人口減少が進む中で、歯科医院の数が増加していることに加え、歯科医師の数も増えているため、競争が激化しているのは事実です。
かつては独立・開業すれば高い収入を得られるというイメージがありましたが、現実はそれほど単純ではありません。
そのため、若手の歯科医師の中には、安定して働ける大学病院や歯科医院への就職を選択するケースが増える傾向にあります。
大きな医療機関では福利厚生や待遇が充実しており、医師として安心して働くことができるでしょう。
ただし、独立・開業を目指す場合でも、自費診療を積極的に行うことは重要です。
保険診療だけではなく、自費診療に対応することで、より高い収入を得ることが可能になります。
そのためには、最新の治療法や技術に対する知識を持ち続けることが必要です。
どのような選択をするにせよ、歯科医師としてのスキルや経験を高めることは重要です。
競争が激化している中で、自身の専門性を高めることで、将来的により良いキャリアパスを築くことができるでしょう。
歯科医師の年収・給料のまとめ
歯科医師の年収は、経験や地域、勤務形態によって異なるものの、一般的には高収入の職業とされています。
独立開業や、専門的な分野で活躍することが給料をアップさせるポイントです。
ただし、近年では歯科医院の数が増加傾向にあり、競争も激しくなっているのが現状です。
歯科医師は大学に通う期間も長く、確かな技術と精密な診断が求められるプレッシャーがあるものの、年収も高めであり、患者の笑顔を支えるやりがいも大きい仕事です。