パティシエの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
パティシエの仕事とは
パティシエとは、フランス語で「菓子製造人」という意味です。
日本では洋菓子の職人に対しての呼び方で、和菓子を作る人のことは通常パティシエとは呼びません。
なお、フランスでは非常にステータスの高い職業として親しまれています。
パティシエに対して「新しいものを創り出す」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際の業務では、同じ商品を、同じ味で作り続ける技術が求められる仕事です。
たとえば、皆さんのお気に入りのケーキやクッキーを想像してみてください。
同じ種類のものなのに、おととい食べたものと今日食べたもので味や見た目に差が出ていたら驚きますよね?
パティシエは、洋菓子の主な材料となる小麦粉、バター、砂糖、卵の分量やタイミングを正確に測り、経験と技術によって同じ品質のものを作らなければなりません。
パティシエは、いわゆる「街のお菓子屋さん」のような洋菓子店のほか、ホテルやレストラン、洋菓子メーカーなどでも勤務しています。
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パティシエの業務の内容
洋菓子を作る
パティシエの仕事の基本は、お店に出す洋菓子を作ることです。
ケーキやムースなどの生菓子から、マドレーヌやフィナンシェといった焼き菓子、アイスクリームなどまで、さまざまな洋菓子を作って提供します。
まずは小麦粉や卵などから生地を作り、型に流し入れてオーブンで焼きます。
焼きあがったらクリームなどを塗ったり果物を飾ったりして仕上げます。
新人のパティシエは主に下準備を担うことが多く、果物をカットしたりクリームを泡立てたり、粉を計量するといった基本の作業をおこないます。
新商品やレシピを研究する
パティシエにとっては、長く愛されるお菓子を作り続けることも大切ですが、新しい商品を開発してお客さまに喜んでもらうことも大事です。
多くの人がおいしいと感じ、なおかつインパクトのある目新しい商品を生み出せれば、お店の評判にも繋がります。
勤務先によってはオーダーメイドのケーキを作ることもあります。
結婚式場などで働くパティシエは、花嫁さんや花婿さんの希望を聞きながら、デザインや使用する材料、レシピを考える必要があります。
経営や営業、宣伝をおこなう
パティシエのなかには、洋菓子作りをしながらお店の経営も担う「オーナーパティシエ」と呼ばれる人がいます。
修業を積んだのちに独立するパティシエは多くおり、その場合には予算を組んだり従業員の管理をしたり、お店の営業を続けていくためのマネジメント能力が求められます。
自分のお店を多くの人に知ってもらうためのプロモーションや営業なども、重要な仕事のひとつです。
お店の存続や経営に関わる業務は責任感を伴いますが、自分の力でお店を繁盛させていく大きなやりがいも感じられます。
パティシエの役割
パティシエは洋菓子のマイスター
パティシエの役割は、小麦粉、卵、砂糖、バターの4つを基本とする材料から、さまざまな種類の洋菓子を作り出すことです。
主な活躍の場は洋菓子店(パティスリー・ケーキ屋)、ホテル、レストランですが、他にも近年はテレビ番組やレシピ本などでお菓子作りの指導・監修をしたり、大手企業やお菓子メーカーとコラボレーションをしてお菓子を開発したりすることもあります。
パティシエは、洋菓子に対する専門知識と技術を持つ「職人」だといえます。
作業の役割分担をすることも
パティシエの勤務先はさまざまですが、複数のパティシエが「分担制」で作業を進めることが多いという特徴があります。
お菓子作りでは「生地を作る」「焼く」「仕上げをする」というようないくつもの工程があり、大抵のお店ではパティシエごとに担当パートが決まっています。
とくに洋菓子作りの本場フランスでは、このパートはきっちりと分かれており、パートごとに担当の「シェフ・パティシエ」がいます(ただし、日本では「シェフ・パティシエ」は全体工程を見る人という意味で使われています)。
個人店の場合は一人で生地作りから仕上げまで全体をおこなう場合もありますが、大きな店やホテルなどでは、ほとんどの場合でパート分けされた作業を分担すると考えておくとよいでしょう。
経験によって任される仕事が異なる
洋菓子店の場合は、製造だけでなく店頭での販売も行っています。
接客に関しては専任の販売スタッフがおこなうことが多いですが、店によってはパティシエが接客業務まで担当することがあります。
そういったお店の場合、一般的にパティシエの役割は、接客、オーブン担当、生地担当、仕上げ担当、シェフパティシエという5つに分かれます。
見習いとして働くパティシエは、最初に接客を担当することが基本で、接客業務を一通り覚えたらオーブン担当として生地を焼く工程を任されます。
そして、徐々に生地作りや仕上げに携わらせてもらえるようになります。
どのパートを任されたパティシエたちも、責任を持って自らの作業をこなしています。
段階的に作業を学び、実力をつけることで、一人前のパティシエとして認められるようになります。
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パティシエの仕事の流れ
個人の洋菓子専門店に勤務するパティシエの仕事の流れをご紹介します。
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1.仕込み
お店のオープン時間に合わせて担当ごとにクリームの泡だてや果物のカット、粉の軽量といった仕込みを開始します。 -
2.開店準備
出来上がった洋菓子をショーケースに並べて、お店をオープンします。 -
3.追加で商品を作る
商品の売れ行きに合わせて追加で作業をしながら、合間に接客を担当します。賞味期限の長い焼き菓子やジャムなどを箱に詰める作業もおこないます。
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4.閉店・片付け
閉店時間になったらお店を閉め、翌日の仕込みと店内の清掃・片付けをします。管理者として働く場合には、従業員の翌日のシフトを作成し、予算の見直しと収支の確認をします。技術の向上やコンテストの出場を目指して、仕事を終えてからさらに練習を重ねる人もいます。
パティシエの就職先と仕事内容の違い
パティシエの勤務先・働き方の種類
パティシエの中心的な職場となるのが洋菓子店やパティスリーです。
しかし、ひと口に「洋菓子店」といってもその特徴はさまざま。
地域密着型でアットホームな町のお菓子屋さんから、洗練されたスイーツ店、あるいは大手チェーン店まで、さまざまな形態の店舗でパティシエは働いています。
洋菓子店と並んで多くのパティシエが活躍しているのがホテルです。
一流の高級ホテルからシティホテル、リゾートホテルまでさまざまなホテルがあります。
レストランやカフェでもデザートに力を入れている店では、専任のパティシエが力を発揮しています。
勤務先ごとの具体的な仕事内容を見ていきましょう。
洋菓子専門店で働くパティシエ
洋菓子店やパティスリーといっても、規模や形態はまちまちです。
大手チェーン店もあれば、個人オーナーが経営する小規模の店、また有名人などがこぞって訪れる高級店もあります。
一人で仕込みから仕上げまでを担当することもあれば、工程ごとに分業していることもあるなど、店の規模やスタッフの数によって求められる役割は異なります。
有名店・一流店の場合
一般的に有名店の場合は、完全分担制が敷かれています。
複数のパティシエが所属し、Aさんは生地作り担当、Bさんはフルーツカット担当、Cさんはデコレーション担当…といった形で働きます。
一流パティシエがいる有名店で働ければ、いずれ別の店舗やホテル等へ転職する場合にも立派な職歴として認められやすくなります。
なかには修行を積んで独立し、自分のお店を持つパティシエもいます。
小規模店の場合
小規模店の場合は、個人の力量や経験に応じて幅広く作業を任されていくことが多いです。
現場に入ったばかりのころは接客まで担当することも珍しくありません。
店舗によって個性や教育体制、経営方針は異なるため一概にはいえませんが、基本的にはその店のシェフの技法を学ぶことになります。
同じものを正確に作る力が身につくほか、小規模の店の場合、お客さまと身近な立場で働けるということもメリットといえるでしょう。
待遇は手厚いところもあれば、過酷な労働環境の職場もあります。
健康保険制度などが整っていないケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
ホテル・ブライダル業界で働くパティシエ
分業のケースがほとんど
ホテルで働く場合は、館内のレストランで提供するデザートのほか、ウエディングケーキ製作、ショップ販売用の洋菓子作りなど、相当量の洋菓子を毎日作り続けなければならないため、大勢のパティシエが勤務します。
ホテルでは大勢のパティシエと一緒に、分業して働くケースがほとんどです。
一人で洋菓子を完成させるわけではなく、生地担当、飾り付け担当…と分業をして専門ごとに技術を深めていきます。
ホテルには名の知れたシェフがいますし、パティシエ以外に料理人やパン職人など、飲食に関わる大勢のスタッフのすぐそばで働くため、業界で生きていくうえで役立つ人脈も生まれやすいでしょう。
季節や月ごとにテーマが変わることも多く、店舗以上にさまざまな技法を身につけやすいといった面もあります。
仕事量が多い
ただし、個人の洋菓子店に比べれば、仕事量は膨大なものとなります。
また、スタッフが多いだけに上下関係がしっかりしており、下積み時代はかなり厳しく鍛えられます。
給料や福利厚生などは安定していることが多く、休みも交代でしっかりととれる職場が多いようです。
とはいえ、繁忙期前は徹夜になることもあり、残業もそれなりにあります。
結婚式場などのブライダル業界で働く場合は、花嫁や花婿の希望を聞きながらオーダーメイドのケーキを作ることもあります。
オーダーメイドの商品作りは、製菓の知識や技術だけでなく、デザインのセンスやレシピを考える力も必要となります。
レストラン・カフェで働くパティシエ
レストランで働くパティシエは、主に「アシェットデセール」と呼ばれる皿盛りのデザート作りを担当します。
お菓子作りの工程は洋菓子専門店に勤務する場合とほとんど変わりませんが、お客さまへ提供するお皿への盛り付けまでおこなうので、美的センスが求められるでしょう。
レストランでは洋菓子以外の料理も提供しているので、人手が少ないお店や忙しい時間帯などには調理補助や接客業務もこなさなければいけません。
カフェでデザート作りを担当するパティシエは、長時間勤務や上下関係に悩むことの多いパティスリーやホテル、レストランに比べてカジュアルに働けるイメージがあるかもしれません。
たしかにカフェで働くパティシエにはそのような一面もありますが、実際には専門店やホテルなどとは異なる大変さもあります。
カフェにはパティスリーやホテルに比べてパティシエの数が少ないため、仕込みから焼成、盛り付けまでの工程をすべて一人で担当することが多いです。
レストランと同じく人手が少ないときには接客を手伝ったり、調理補助の業務についたりする場合もあります。
また、カフェのなかにはタルトやスポンジ生地を外注しているところも多く、専門店とは異なりメインの業務が仕上げや盛り付けといった最終工程に限られることがあります。
工場で働くパティシエ
パティシエのなかには食品メーカーなどの工場で洋菓子を作っている人もいます。
専門店やホテルとは異なりたくさんの人数で大量のお菓子を生産するため、生産工程の管理がしやすく比較的勤務時間が短いという特徴があります。
一方で、1つの工程だけを担当するケースも多く、パティスリーやレストランなどでの勤務に比べて製菓の総合的な技術を身につけるのに時間がかかる傾向もあります。
企業の商品を扱うため徹底した衛生管理が求められますが、いろんな種類のお菓子作りや従業員のマネジメントなどが経験できるという点は工場勤務のメリットです。
自分が担当したお菓子がたくさんの人の手に届けられる仕事です。
パティシエの活躍の場は他にもある
パティシエの活躍の場はパティスリーやホテル、工場のみにとどまりません。
お菓子開発をするメーカーが、パティシエの知識を求めるケースも増えています。
洋菓子店やホテル勤務の場合とは少し毛色が異なるポジションですが、商品開発部などに所属し、自社の社員としてマーケティングや企画から携われるのが特徴です。
自分の活躍によって大ヒット商品が生まれるかもしれません。
また、お菓子教室のインストラクターになる人や、カフェなどのプロデュースを行う人、お菓子のレシピ本を執筆する人、お菓子を得意分野とするフードコーディネーターとしてメディアなどに出演する人などもいます。
全体としては、やはり店舗やホテルの厨房でお客さま向けの商品を作る人が多いですが、自分の意志次第で活躍の場はあらゆる方向へ広がっていく仕事です。
「どんなパティシエになりたいか」を考える
同じパティシエといっても、どこで働くかによって任される仕事や働き方はかなり異なります。
厳しい環境の中でさまざまな技法を学び、将来に生きる人脈を築きたいということであればホテルが適しているといえますし、もし信頼・尊敬できるシェフがいるのであれば、その人の店の門を叩いて弟子にしてもらうのもよいでしょう。
パティシエはもともと、厳しい下積み生活を何年も経なければ一人前になれないとされる世界です。
そして、いくつもの職場を渡り歩きながら、自分の目指すパティシエ像に向かって腕を磨いていく人が多いです。
「とにかく給料や待遇に満足できる職場を探したい」という気持ちもあるかもしれませんが、まずは「どのようなパティシエになりたいか」を明確にし、夢に近づける環境を見つけ出すことが大切だといえるでしょう。
パティシエに関連する職業との違い
パティシエと関連する職業として「調理師」や「和菓子職人」「ショコラティエ」「パン職人」などが挙げられます。
調理師は、レストランやホテルなどでおいしい料理を提供したり、病院や福祉施設で健康に配慮した料理を作ったりする仕事です。
和食から洋食、中華やエスニックなどジャンルもさまざまで、料理に関する幅広い知識と技術を必要とします。
調理師と比べると、パティシエは洋菓子作りに特化しているという違いがあります。
和菓子職人は、洋菓子ではなく日本の伝統的なお菓子である和菓子作りを専門とする職人です。
洋菓子作りとは異なり、小麦粉の他に上新粉や白玉粉、きな粉などを使ったり、小豆やいんげん豆から作られる餡を扱ったりします。
また、ショコラティエは洋菓子のなかでもチョコレート作りに特化しており、パン職人はパン作りを専門としている点でパティシエとは異なります。