農家の年収・給料はいくら? 高収入は目指せる? 農家の種類別に解説
しかし、農家の収入は、就業形態や作る作物、天候で左右される部分が大きいのも事実です。
ここでは、農家の収入について解説するとともに、収入を安定させるためにはどうしたらいいのかについても紹介します。
農家の平均年収・給料の統計データ
農家の年収は、以下のような条件によって大きく異なります。
- 専業農家か兼業農家かといった農業にかける費用と時間
- 独立した自営就農なのか雇用就農なのかといった勤務形態
- 個別経営か組織経営かといった経営規模
- 育てる品目
こうした点から、平均値を出すのは難しいといえます。
高収入を得ている人もいれば、農業だけでは生計を立てるのが難しく、他の仕事と兼業でやっているような人もいるのが実情です。
農家の平均年収・月収・ボーナス
各種統計データをもとに算出すると、農家の平均年収は350万円前後となるでしょう。
現在、日本人全体の平均年収が約460万円と言われていることから考えると、一般的な職業よりも給与水準は低めとなっています。
ただ、農家は自営業でやっている人も多く、経営が順調で大きな利益を出せれば高収入を得ることも可能です。
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、農家(農林漁業従事者)の平均年収は47.2歳で374万円ほどとなっています。
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
農業経営統計調査
農林水産省が発表している令和4年農業経営統計調査によると、全農業経営体1経営体当たりの農業経営収支は、農業粗収益が1,165.6万円、農業経営費が1,067.4万円です。
この結果、農業所得は98.2万円となります。
また、個人経営の農家1経営体当たりの農業経営収支は、農業粗収益が2,035.9万円、農業経営費が1673.0万円で、農業所得は362.9万円でした。
全農業経営体の1経営体あたりの農業所得を営農類型別に比較してみると、令和4年の年間農業所得は下記のようになります。
- 水田作:1万円
- 畑作:223万円
- 露地野菜作:218万円
- 施設野菜作:331万円
- 果樹作:215万円
- 露地花き作:178万円
- 施設花き作:406万円
- 酪農:△49万円
- 肉用肥育牛:△38万円
- 肉用繁殖牛:△24万円
- 養豚:305万円
- ブロイラー養鶏:603万円
これは、すべて粗収益から農業経営費を引いた差額の農業所得であり、全国の平均値です。
個人農家の年収
令和元年の「農林水産省 令和元年農業経営体の経営収支(概数値)」によると、全体の農業所得の平均は121万円となっています。
そのうち個人農家の所得は114.7万円となっています。
個人農家の平均データを見ると、赤字を出している業種はありません。
農業所得が最も高かったのは酪農経営で826.6万円、次いでブロイラー養鶏経営で666.2万円、養豚経営で609.1万円となっています。
ただし、これらは経営費も高く、労働時間も長くなる傾向があります。
一方、農業所得が最も低かったのは水田作経営で12.2万円、次いで採卵養鶏経営で65.8万円、露地花き作経営で170.6万円です。
農業法人の年収
令和元年の「農林水産省 令和元年農業経営体の経営収支(概数値)」によると農業法人の収入は327.5万円です。
農業法人の平均データをみると、農業所得が最も高かったのはブロイラー養鶏経営で4,975.9万円、次いで酪農経営で2,385.1万円、養豚経営で1,757.0万円となっています。
一方、農業所得が最も低かったのは採卵養鶏経営で-3,067.3万円、次いで施設花き作経営で-321.7万円、露地野菜作経営で-319.8万円、施設野菜作経営で-288.1万円、露地花き作経営で-25.7万円と、5つの農業形態が赤字となっています。
経営形態による違い(主業農家・準主業農家・副業的農家)
かつて、農業の収入のみで生計を立てている人を専業農家、別な仕事を持ちながら農業をする人を兼業農家といいました。
ただし、近年では経営形態により「主業農家」「準主業農家」「副業的農家」の3つの区分に分けられるようになっています。
「主業農家」とは、農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している65 歳未満の世帯員がいる農家のことです。
農林水産省の「農業経営の動向」によると、2018年(平成30年)の主業農家の農業所得は662万円です。
ただし年によって年収には幅があり、平成20年では420万円と、大幅な違いがあります。
「準主業農家」とは、農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している 65歳未満の世帯員がいる農家のことです。
準主業農家の農業所得は42万円です。
農業以外の収入が558万円であり、収入の多くを農業以外の所得に頼っていることがわかります。
副業的農家は、自営農業に 60 日以上従事している 65 歳 未満の世帯員がいない農家(主業農家及び準主業農家以外の農家)のことです。
副業的農家の農業所得は57万円で、農業以外の収入は426万円です。
農家の手取りの平均月収・年収は?
農家の手取りの平均月収・年収がどれくらいになるのかを紹介します。
農業で生計を立てるために必要な収入はどれくらい?
農業で生計を立てるためには、収入(売上)だけでなく経費を考えなくてはなりません。
とくに個人農家であれば、たくさんの収入を得られたとしても、それだけ経費がかかってしまえば、生計を立てられるとは限りません。
農林漁業就業・ふるさと情報サイト「iju info」が2006年に実施したアンケートによると、農業で生計が成り立っている新規就農者は約4割しかありません。
目安としては、平均して就農から生計が成り立つまで約2年半かかっており、生計が成り立った年の売上は約1,100万円です。
一方で、就農した年の売上は約432万円となっています。
農産物の種類や規模にもよりますが、売上があったとしても、大きく経費がかかれば、生計を立てることが難しいことがわかります。
人件費や物財費にお金がかかる
農業をするにはさまざまな経費がかかります。
一般的に、新規就農における自己資金額は平均およそ500万円~600万円とされています。
全国新規就農相談センターが行った「2016年度新規就農者の就農実態調査」によると、土地取得代を除いた額は平均569万円となっています。
就農1年目では、設備投資などに費やした金額が411万円、生活費に159万円となっています。
- 土地代
- 苗代
- 肥料代
- 農業機械代
- 水道光熱費
- アルバイトなどの人件費
悪天候などにより農作物をうまく育てることができなかったり、農作物の価格が下落した場合は、費用が経費を上回り、経営がうまくいかなくなる可能性もあります。
一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査結果
農家の初任給はどれくらい?
独立就農の場合は、初年度から十分な利益を上げられる場合もありますが、十分な収入を得られず軌道に乗るまでは赤字となることもあります。
「2016年度新規就農者の就農実態調査」によると、就農しておおむね10年以内の新規就農者の農業所得の平均値は109万円、中央値は60万円で、「おおむね農業所得で生計が成り立っている」新規就農者は全体の24.5%しかいません。
雇用就農の場合は給与制で入社する会社(農業法人)や地域によりますが、一般的には19万~28万円ほどのことが多いようです。
また、一般的な企業と同じように、業績によってボーナスが出ます。
農家の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
農家の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤める農家の平均年収は367万円、100〜999人規模は383万円、1,000人以上の規模では388万円、10人以上規模の事業所平均は374万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「農林漁業従事者」で漁師、庭師など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
農家の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
農家の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、45~49歳の459万円です。
全年代の平均年収は374万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「農林漁業従事者」で漁師、庭師など他職業を含むデータです。
20代で正社員への就職・転職
農家の福利厚生の特徴は?
会社(農業法人)に就職した場合、通勤手当や住宅手当、家族手当といった手当が支給されることもあります。
また労働時間や休日など就業規則が整備されていることも多く、自営の農家よりも比較的規則的に勤務できます。
一方、独立(自営)農家の場合は、こうした福利厚生は整っていないため注意しましょう。
農家の種類による年収の違い
ここからは、農家の種類別の年収について紹介します。
育てる作物が異なると、年収にも違いが出ることがわかります。
しいたけ(マッシュルーム)農家の年収
平成18年度農林水産省の「きのこ経営体の経営収支調査結果」によると、全国1戸当たり平均の原木栽培生しいたけの粗収益は295万8000円、経営費は254万5000円で、所得は41万3000円です。
しいたけやマッシュルームといったきのこ栽培は気候に左右されにくく、安定して収入が得られることや、初期投資が低く抑えられることから人気を集めています。
ぶどう農家の年収
2007年の「品目別経営統計」によると、ブドウ農家の年収(年間農業所得)は、10a当たり106万円です。
平均作付面積は40aとされているので、1戸当たり40aでは約424万円です。
近年ぶどうはシャインマスカットなど高品質、高価格のものが販売されるようになり、ぶどう農家の利益率はぐっとあがりました。
トマト農家の年収
2007年の「品目別経営統計」によると、トマト農家の年収(年間農業所得)は、10a当たり176万円です。
平均作付面積は35aとされているので、1戸当たり35aでは約616万円です。
施設野菜を育てる農家の年収を見ても、ミニトマト農家の平均年収は約551万円、トマト(大玉トマト)農家の平均年収は約429万円となっています。
施設野菜農家の平均年収が343万円となっているのを見ると、トマト農家はほかの施設野菜をつくっている農家と比べて年収は高くなっています。
20代で正社員への就職・転職
農家の給料・年収の特徴は?
農家という職業の給料・年収の特徴を、さらに詳しく紹介します。
特徴1.収入は自然や気候に左右される
自然災害は農家の収入を大きく左右します。
大雨や台風によって稲が倒されてしまったり果実が落ちてしまったりすると、経費は通常通りかかっているにもかかわらず、その一年間の売り上げは大きく落ち込みます。
逆に条件が整ったときには高値で売れる農作物を量産できることもあり、一年ごとに収入は大きく変わるのです。
特徴2.収入を安定させるためには工夫が必要
農家の収入はどうしても不安定なため、ほかの仕事を持ち、兼業農家として農業以外に安定した収入を得ようと考える人が多くなっています。
また、ビニールハウスを利用して天候に左右されない栽培を目指す人も多くいます。
さらに、自然災害による収量減や市場価格の下落などといったさまざまなリスクに備え「収入保険」などに入り、万が一のときのために備えている人も多いです。
特徴3.収入が低めでも生活費を抑えやすい場合も
育てる品目にもよりますが、全体的に農業所得は決して高いとはいえない金額です。
ただし農家の多くは持ち家に住んでいたり大家族で同居したりしているケースも多く、生活費が抑えられるというメリットがあります。
また、農村部では食材や収穫物を譲り合ったりすることも日常茶飯事で、食料の確保にはさほど困りません。
衣食住の生活基盤が整っている割合が高く、都市部よりも生活コストが低いため、安定した生活を送れるという考え方もあるでしょう。
農家が収入を上げるためには?
農家としての収入を上げる方法は、いくつも考えられます。
ここでは、代表的な方法について紹介します。
農業規模を拡大する
農家が収入を上げる方法のひとつとして、作付面積を増やしたり、家畜頭数を多くするなど規模を拡大する方法が考えられます。
収穫量が増えればその分収入もアップしますが、手間や人手もかかることがデメリットで、大規模な農業のスキルがなければ難しいでしょう。
また、より高価格で販売できる以下のような野菜の栽培にチャレンジすることも収入アップにつながります。
- 一般のスーパーにはない珍しい野菜
- 加工品にしたり付加価値をつけたりしやすい野菜
- より高価格で売れる野菜の品種
品質の向上や収穫量のアップ
土壌の改良や品質向上に取り組み、収穫量をアップさせたり農作物自体の単価をアップさせたりします。
栽培方法を工夫し、これまで以上に収穫量が増えたり、品質が向上し付加価値をつけることができたりすれば収入がアップします。
販売方法を工夫したり、卸先を変えたりすることで収入をアップする方法もあります。
- 直売所
- 無人販売
- 移動販売
- インターネット販売
- 小売店や飲食店に直接卸す
近年はインターネットでの販売がしやすくなり、直接生産者と消費者がつながることにより流通コストを抑えられ、より農家に入るお金が増えるようになっています。
また農作物を農家同士や地域ぐるみでブランディングすることによって、販売単価をアップさせたり、加工品をつくったりすることで新たな価値を見出し消費を拡大させていきます。
支出を減らす
経営を見直し、支出を減らすという方法もあります。
より効率的に生産できるような機械やシステムを導入したりすることで、初期投資のコストはかかりますが、長期的にみると支出を大幅に減らすことができることもあります。
収入をアップさせるというと、売上の拡大ばかりに目がいきがちですが、支出を削減することも重要なポイントです。
農家で年収1000万円を目指せる?
各種統計を見ると、農家で年収1,0000万円以上稼いでいるのは、全体の10%未満で、さまざまな工夫をしなくては難しいといえます。
年収1,000万円超えているのは「専業農家」として働いている人が多く、地域では関東・北海道・東北の順となっています。
農家で年収1億円の人はいる?
農家のなかには年収2,000万円~1億円以上稼いでる人もわずかながらいます。
しかし、それを実現するには従来の農業では難しいのが現状です。
農家で年収1億円を達成するには、画期的な栽培システムを開発する、作物にブランド性を持たせ「高くても買いたい」と思わせるなどの工夫が必要になってきます。
販路の拡大やマーケティングなど、経営の手腕も問われるでしょう。
「農家の給料・年収」まとめ
農家の給料は自然や気候に左右されるため、毎月毎年安定して同じ額の収入が得られるとは限りません。
収入を上げるためには「面積を増やす」「品質の向上や収穫量をアップさせる」「販売方法の工夫やブランディング」などの方法があります。
また、農業以外にも仕事を持ち、兼業農家として働くという方法をとっている人も多く存在します。