鷹匠になるには? 年収や仕事内容、弟子入りについて解説

「鷹匠」とは

鷹匠になるには? 年収や仕事内容、弟子入りについて解説

日本の伝統文化として受け継がれてきた鷹の飼育、訓練を行う専門家。

鷹匠とは、日本の伝統文化として受け継がれてきた鷹の飼育、訓練を行う専門家のことをいいます。

もともとは「狩り」のための鷹を調教する仕事でしたが、現代では害鳥駆除を目的として鷹を調教したり、鷹匠の技術を各種イベント等で披露したりすることが多くなっています。

日本で鷹匠を目指す場合には、複数存在する鷹匠の民間団体の研修会に参加して、認定試験合格を目指す流れが一般的です。

主な収入源は、イベント等への「出演料」や、害鳥の追い払いを受注して得られる「日当」です。

鷹匠の仕事だけで生計を立てるのは非常に難しく、別の仕事をしながら兼業で活動している人がほとんどといわれます。

最近では、放鷹による害鳥の追い払いを専門に受注する会社も増えつつあり、新しい鷹匠のあり方が確立する日も近いかもしれません。

「鷹匠」の仕事紹介

鷹匠の仕事内容

鷹の飼育や訓練を行い、特別な技術を披露する

鷹匠(たかじょう)とは、鳥類の一種である「鷹(たか)」の飼育、訓練を行う専門家です。

鷹匠の歴史は古く、かつては天皇家や徳川家などの大名に仕えて鷹を調教し、狩りにも同行する立場でした。

昔の鷹匠は鷹を育てて狩りを行い、獲物を売ることで生計を立てる職業と認識されていたのです。

しかし現代の日本では自然保護の観点から狩猟が制限されていることもあり、ほとんどの鷹匠が狩り以外で収入を得る手段を持っています。

主な活動内容のひとつとしては、訓練を積んで習得した鷹匠の技術を各種イベント等で披露することです。

害鳥駆除など新たな役割にも期待が

もうひとつ、現代の鷹匠に期待される役割が「害鳥駆除」です。

市街地など依頼のあった場所に鷹を放つことで、糞害を起こすカラスやハトを本来の棲み処である山に返すことができるため、多くの自治体が鷹匠に依頼をしています。

さらに全国の空港を悩ませる「バードストライク」の解消にも一役買っています。

バードストライクとは鳥が航空機と衝突することで、それが起こると航空機の損傷や飛行計画の変更、離陸中止といった被害が発生する可能性があります。

この対策としても鷹匠の技術に大きな期待が集まっています。

鷹匠は、日本の伝統文化の継承者という側面を持ちながら、現代の生活に即した新たな活躍の場も生まれています。

鷹匠になるには

鷹匠を扱う民間団体に入り、認定試験を受ける

アメリカでは鷹を扱うための国家資格があるのに対して、日本には同等の公的な資格は存在しません。

日本で鷹匠を目指す場合は、国内に複数存在する鷹匠の民間団体主催の認定試験合格を目指すことになります。

試験を受ける前に、いずれかの流派に入門あるいは会員となり、研修や訓練を受けるのが一般的です。

身近に一流の鷹匠がおり直接流派を継承できるような人でなければ、まずは関連団体に入ることが、鷹匠になるための最も近道となるでしょう。

認定試験を受けるレベルに達するには目安として3年以上、師匠の下に弟子入りして鷹匠の基本を学び、鷹の飼育に慣れることが必要になってきます。

鷹匠になるために必要なこと

鷹匠を目指す上では、鷹を飼育する際の大きな鳥小屋の設置や餌の確保などの環境や費用を準備しなくてはなりません。

そのためにも、安定した経済状況を保つ術を見つけた上で志すべきであるといえるでしょう。

また、鷹匠は長期間にわたって鷹と接し、地道に訓練を重ねながらパートナーとしての良好な関係を築いていくことになります。

常に鷹のことを考え、生活の多くの時間を鷹に捧げられるくらいの覚悟がないと、なかなか続けられない仕事です。

鷹匠の学校・学費

教育機関はなく、民間団体への加入や入門をする

鷹匠を目指す人のために、専門的な教育を行う学校はとくにありません。

この仕事は高い学歴が求められるわけではないため、誰でも「鷹匠になりたい」という熱意があれば、目指すことが可能です。

鷹匠を志望するのなら、まずは鷹匠を扱う民間団体に加入、あるいは入門するのがよいでしょう。

NPO法人である日本放鷹協会や日本鷹匠協会など、各地にさまざまな関連団体があります。

団体によって活動内容や理念、流派、認定資格の内容などが異なるため、まずはさまざまな団体の情報を調べてみてください。

鷹匠の資格・試験の難易度

各流派・団体が独自の認定資格を与えている

鷹匠になるために、必ず取得しなくてはならない資格などはありません。

ただし一般的に、鷹匠志望者は、鷹匠を扱ういくつかの民間団体のうち、いずれかに入門することになります。

各団体が独自の鷹匠認定試験を実施しており、それに合格することで「鷹匠」と認められるのがスタンダードとなっています。

資格取得前には、各団体の研修会やトレーニングを受け、鷹匠に必要な知識・スキルを基本から学んでいくことができます。

決して簡単な仕事ではないため地道な努力が求められますが、本気で努力していく熱意があれば、どのような人でも鷹匠を目指せます。

鷹匠の給料・年収

現代の日本では、鷹狩での生活は難しい

鷹匠といえば、もともとは鷹狩を行うことで生計を立てていく職業でした。

しかしながら、現代は規制により捕獲できる獲物も少なくなっているうえ、毛皮の需要も小さいため、鷹狩りは生活手段にはなりえません。

現代の日本における鷹匠の収入源は、大きく2パターン考えられます。

ひとつは、イベント等で放鷹の技術を披露して得られる「出演料」、もうひとつは害鳥の追い払いを受注して得られる「日当」です。

ただし、多くの鷹匠はどこかの企業に就職するのではなく、個人で仕事をしています。

いずれの収入も交通費やエサ代で相殺されるため、鷹匠の活動のみで生計を立てるのは難しいと考える必要があります。

他に本業があり、副業で活動する人が多い

上記のような事情もあり、鷹匠は他に安定した本業を持ちながら、副業で活動をしている人が多くなっています。

平日に仕事をして、土日に趣味を兼ねて鷹匠の活動をしている人もいます。

ただし、趣味とはいっても鷹のお世話は毎日ありますから、簡単な気持ちで務まるものではありません。

最近では、放鷹による害鳥駆除を手掛ける会社が少しずつ増えてきています。

そういった企業に社員として雇ってもらえれば、鷹匠としても安定した生活を送りやすいでしょう。

鷹匠の現状と将来性・今後の見通し

伝統文化を受け継ぎながら、新たな役割も注目されつつある

全国各地で都市開発が進んでいくなか、鷹の調教や訓練を行う場所は減少の一途をたどっており、調教や飼育には決して良い環境であるとはいえません。

かつてのように狩りで生計を立てられる時代でもないため、鷹匠の人数自体も減ってきているのが現実です。

一方で、放鷹は古来より続く重要な日本の伝統文化とみなされており、その文化を後世に伝えていく継承者として技術を磨くことが求められています。

また、現代では鷹匠の新たな活躍の場や業務も登場しています。

放鷹による害鳥の追い払いがそのひとつで、それを専門に受注する会社も登場しています。

今後、こういった仕事が一般的になっていき、広がりを見せることで、時代に合った職業としての鷹匠が注目されることもあるかもしれません。

鷹匠の就職先・活躍の場

特定の企業などに就職する人は非常に少ない

鷹匠は、一般的なオフィスワークの会社員のように、どこか決まった企業に勤めて働くといった人はほとんどいません。

基本的には個人で活動しており、イベント出演や害鳥駆除などの依頼を受けると、単発で仕事をするものとなっています。

一部、鷹などの猛禽類を扱うペットショップや、動物園の飼育係などとして雇用されて働く人もいますが、数はあまり多くありません。

また、これらの働き方をする場合、それぞれ中心となる職務があるため、勤務中に鷹匠として活動できることはほとんどないと考えておいたほうがよいでしょう。

純粋に、鷹匠としての仕事ができる機会はさほど多くないため、他に仕事をしながら個人で副業的に鷹匠としても働くのが一般的なかたちになっています。

鷹匠のやりがい、楽しさ

鷹と信頼関係を築き、特殊な技術を生かした仕事ができること

鷹匠は、一般の多くの人々からすると、非常に特殊な職業といえるでしょう。

現代の日本では、日常生活の中で鷹匠を目にする機会はあまり多くありませんし、実際に鷹匠として活躍する人の数も限られています。

鷹匠は、誰もが簡単にできる仕事ではないからこそ、「難しいことに挑戦する」というやりがいや魅力があるといえます。

鷹匠としての技術習得のためには時間をかけての訓練・トレーニングが不可欠ですが、いざ鷹を飼いならし、パートナーとして信頼関係を築けたときには大きな喜びを実感できるでしょう。

昨今では害鳥駆除などのニーズで鷹匠が求められる機会もあるため、自分が身につけた専門的かつ特殊なスキルで、人の役に立てることもやりがいにつながります。

鷹匠のつらいこと、大変なこと

鷹をきちんと飼いならし、共に生活を送る覚悟が必要

鷹をきちんと飼いならし、共に生活を送る覚悟が必要

鷹匠に向いている人・適性

鷹との暮らしを優先させ、地道な訓練を続けられる人

鷹匠が披露する華やかな技術の陰には、並々ならぬ努力があります。

鷹匠にとって最も必要なことは、地道な訓練を根気よく続けることのできる強い精神力だといえるでしょう。

また、鷹は生き物です。

言葉を話せない鷹との関わり合いのなかでは、こちらの思い通りにならないことも多々出てくるでしょう。

そんな鷹と信頼関係を築くために、まずは生活において鷹の存在を何よりも優先し、責任を持って飼育していくという覚悟も必須です。

鷹匠志望動機・目指すきっかけ

鷹狩文化への興味や、鷹を扱う姿に魅力を感じて

鷹匠は、現代の日本においては、かなり特殊な職業のひとつといえるでしょう。

日常生活で鷹匠と出会う機会はあまりないため、イベントなど、なんらかのきっかけで鷹を自在に操る鷹匠を目にし、その姿に魅力を感じて目指す人が多いようです。

また、鷹狩は古来から続く伝統文化のひとつであり、その文化や技術を受け継いでいきたいという思いから、鷹匠を目指すケースもあります。

鷹匠の世界に入っていくのは簡単ではないからこそ、強い信念や熱意をもって、鷹匠になることを心に決めている人が多いです。

鷹匠の雇用形態・働き方

個人で活動し、別に本業をもっている人が多い

一般的に、鷹匠を目指す人は、鷹匠の各流派の研修会に参加し、入門して鷹匠としてのスキルを身につけていきます。

各流派が認定する資格を取得するなど、最低限の知識・スキルを身につければ鷹匠としての活動を始められますが、この仕事だけで生計を立てていくことは非常に厳しいものとなっています。

基本的には個人事業主として活動し、イベント出演などの依頼を受けると、単発で仕事をするケースが一般的です。

一部、害鳥駆除の会社や動物園などで、鷹匠の技術を持つ人が継続的に採用されることはありますが、数はだいぶ限られています。

鷹匠として安定した働き方をするのは難しいため、他の本業があり、副業として鷹匠の活動をしている人が多くなっています。

鷹匠の勤務時間・休日・生活

鷹と過ごす時間を大事に考えなくてはならない

「週末鷹匠」という言葉でも聞かれる通り、鷹匠は、平日は他の職業に従事し、休日に鷹匠としての活動を行う人がほとんどです。

放鷹術をイベントで披露する際は、1回のショーにつき、1時間ほどになることが多いでしょう。

たいていは時間を空けて複数回行うため、移動も含めて丸1日かかります。

なお、鷹は犬や猫と違って本来人間に懐かない動物であり、媚びてくることも決してありません。

鷹との信頼関係を築くためには、できるだけ長い時間鷹と向き合っていくことが必要です。

普段から鷹との時間を優先して生活していかなければならないため、睡眠時間や食事の時間などを、自身のペースで確保できないことも多くなってきます。

このように考えると鷹匠を務める以上、休日は存在しないという見方もできます。

鷹匠の求人・就職状況・需要

害鳥駆除などの需要はあるが、専業で働くのは難しい

元来、鷹匠は狩りで得た獲物を売ることによって生計を立ててきました。

しかしながら、保護目的の規制が多い現在において、そうした働き方は難しいため、他に職業を持ちながら余暇を利用して活動する鷹匠が大半を占めています。

最近では、都会の害鳥を追い払う目的での鷹と鷹匠の需要が徐々に増しています。

そうした業務を専門的に受注する会社もあり、新たな鷹匠の活躍の場となりつつあります。

とはいえ、一般的な仕事のように「就職」という概念はあまりありません。

イベント出演や害鳥駆除の依頼を単発で受けることが多いため、鷹匠を専業でやっていくのは非常に厳しいと考えておいたほうがよいでしょう。