女性の建築士のキャリアパス・結婚後の生活
女性の建築士の現状
女性の建築士の割合
建築士は設計業務だけでなく、工事現場に実際に足を運んで大工などに指示を与える監督業務もこなす必要があるため、かつては男性の職業というイメージが強くありました。
しかし建築士業界においても、ほかの多くの職業と同じように男女の均等化が急速に進んでおり、女性建築士の活躍も目立つようになっています。
建築士資格の入口ともいえる二級建築士の試験結果を見ても、女性合格者の割合は右肩上がりで増加し続けており、近年では3割ほどが女性です。
今後については政府が推し進める「働き方改革」などの追い風もあり、育児休暇制度の拡充などで女性でも働きやすい環境が整いつつあるため、ますます女性の建築士割合は増加していくと想定されます。
女性の建築士同士の横のつながり
男性に比べると、まだまだ女性建築士の人数は少ないですが、そのぶん女性の建築士同士の結びつきは非常に強いです。
公益社団法人の「日本建築士会連合会」には、女性専門の委員会が設立されており、毎年女性建築士の活動支援を目的とした「全国女性建築士連絡協議会」が開催されています。
女性建築士の交流ネットワークを拡げたり、定期的に研修会を開いて最新の建築法について学習したりと、意見交換や自己研鑽のために、多くの女性建築士がこの会に参加しています。
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女性の建築士の強み・弱み
女性ならではの強み
住宅の設計には、キッチンの使い勝手や家事動線、掃除のしやすさなど、主婦としての目線が役に立つ場合も多々あります。
職場と同じように、家庭生活における家事全般についても、男女の平等化が進みつつあるのは間違いありませんが、それでも出産や育児などで、どうしても女性のほうが家庭にいる頻度は高くなりがちです。
住宅設備の実使用者に近いことが、男性にはない女性建築士の強みといえます。
また、建物全体の意匠やデザインなどに女性ならではの感性を生かすことで、男性建築士とは一線を画した建物を建てることもできるでしょう。
女性ならではの弱み
女性建築士の弱みとしては、体力的に男性に劣る人が多く、徹夜作業や長時間労働などの無理が効きにくいという点が挙げられます。
とくに締め切り前などの繁忙期は、男性建築士にフォローしてもらわないといけないときもあるかもしれません。
また、大工などの現場作業を担う人々は、力仕事が大半であるために現在でもほぼ男性が100%ですから、そういった作業員の気持ちを理解し、統率することには男性より苦労が伴いやすいかもしれません。
結婚後の働き方
近年では、結婚しても退職せずに仕事を続ける女性建築士が増えています。
国家資格保有者のみが行えるという高い専門性や、ゼロから建物を生み出していくというやりがいに魅力を感じ、家庭と両立させながら生涯にわたって仕事に励んでいきたいと考える女性は珍しくありません。
しかし、建築士は定時になったら帰宅できるという種類の仕事ではなく、納期前などはかなりの高確率で長時間残業が発生します。
また勤め先によっては、お客さまとの打ち合わせなどで休日に働かないといけないケースもあり、家族への負担が大きくなる可能性もあります。
配偶者の理解、あるいは家事などをサポートしてくれる人の存在は不可欠といえるでしょう。
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子育てしながら働ける?
企業などに勤める
女性建築士のなかには、日中は保育所などに子どもを預け、子育てしながら働いている人もいます。
ゼネコンなどの大手企業では、育児休暇制度が充実しているところもありますので、以前に比べれば育児と仕事は両立させやすくなっているといえるでしょう。
しかし、仕事が終わったあとの短い時間で、育児や家事など、多くのことをこなさないといけませんから、肉体的・精神的な負担は決して小さくはありません。
独立して働く
設計事務所や建設会社などに勤めながら、家庭生活を両立させるのが困難であると感じた場合、思い切って独立開業する選択肢もあります。
建築士の業務には、特殊な機材などは基本的に必要ありませんから、CADなどのソフトウェアが使えるパソコンさえあれば、どこでも仕事をすることができます。
自宅を事務所にしてしまえば、通勤時間がゼロになるうえ、子どもの面倒も見やすいでしょう。
独立開業にはさまざまな苦労・リスクも伴いますが、結婚や子育てと仕事を両立させたい女性建築士にとっては、有効な手段のひとつです。
建築士は女性が一生働ける仕事?
かつては建築士資格を保有して業界の第一線で働いていても、結婚や出産、育児などを機に一度現場を離れてしまうと、職場復帰することは容易ではありませんでした。
しかし近年では、大手企業を中心として女性スタッフが継続して働ける制度、また復職しやすい制度を整える動きが目立っており、女性であっても一生働ける環境になりつつあります。
女性だからこそできる価値ある提案が、職場で重宝されることもあるでしょう。
今後、働き手の総数が減少していくにつれて女性の活躍はますます重要になってくると想定されるため、これから建築士を志す女性については、よりチャンスは大きくなっていく見通しです。
長い年月にわたって世の中に残り続ける、建造物をつくるという建築士の業務は、一生涯をかけて取り組むに値するやりがいと魅力があります。